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第一章 護衛艦フワデラ

第38話 古代神殿への道

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 宴会の翌日。ホドリスとミカエラには村で唯一の魔法使いカラデアの家へ足を運んでもらった。

 二人に古代神殿へ案内を依頼すると、彼らは必死で私たちを止めようとする。

 自分たちが古代神殿から無事に戻ることができたのは、魔法使いのタヌァカがいたからであって、あんな危険な場所には二度と行きたくないというのが彼らの言い分だった。

「本当に危険なんだ。俺たちは勇猛さにかけては大陸随一の北方人だ。だが奴らと出会って逃げ出したとしても恥とすることはない。あれは魔物ですらない。邪悪な神々が産み落とした澱《よどみ》みだ」

 化け物のことを思い出しているのか、二人の北方人の目には微かに恐怖が浮き出ていた。

 私はそんな二人を安心させるために胸を張る。

「心配しなくてもいいぞ! 我々だって凄い魔法使いだから!」

 まだ不安を隠せないでいる二人の説得をカラデアが手伝ってくれた。

「二人もうちの庭先に降りた大きな魔法鳥を見ただろう? タヌァカ殿とは違うかもしれないが、彼らもかなりの魔法が使えるんだ」

 二人を安心させるため、私はもう一押しする。

「古代神殿まで付いて来てくれとは言わない。私たちだけで神殿に確実に辿り着ける場所まで案内してくれればいい。もちろん二人が戻る際は、無事に村まで帰れるように護衛もつける。ちょっと来てくれ」

 私たちが庭先に出ると、フワーデが4機のドローンを頭上で旋回させた。

「おわっ! なんだ!? 魔法か!?」

 二人の北方人が驚いている様子を横目で見ながら、私はカラデアに確認する。

「カラデアさん、あれが私たちにお譲りいただける廃棄予定の荷馬車でしたね」

「そうです」

「では……フワーデ!」

「はぁぁい!」

 車輪が壊れて放置されている荷馬車に向って私が指をさすと、ドローンたちがその上空で旋回を始める。

「ってぇぇぇ!」

 ブォォォォン!

 私の号令と共にドローンから一斉掃射が行なわれ、一瞬にして荷馬車は跡形もなく粉々に砕け散った。

「「ひぃぃ!?」」

 勇猛果敢で知られる北方人二人が悲鳴をあげる。

「これだけじゃないぞ」

 私は腰に手を当ててふんぞり返るいつものポーズを決めながら、手を高く上げて叫ぶ。

「ティンダロス隊、起動!」

「「「「了!」」」」

 それまで伏せていた4つの機銃台座が四本脚で立ち上がり、私たちの前まで小走りでやってきて整列する。

 ティンダロスは着脱可能な62式7.62mm機関銃と40mm擲弾発射器を搭載した四足歩行型ドローンだ。4機ならフワーデだけでも操作が可能ではあるのだが、指揮系統の混乱を防ぐために砲雷科の射撃員4名が操作を担当している。

「1番機、起動! 動作異常なし!」
「2番機、起動! 動作異常なし!」
「3番機、起動! 動作異常なし!」
「4番機、起動! 動作異常なし!」

 ティンダロスに設置されているスピーカーから射撃員の声が響く。その度に、大陸随一勇猛果敢な北方人はビクッと震えていた。

「このドローンたちが道中の君たち二人を守る。もちろん私たちもだ。もう一度言うが、最後まで案内する必要はない。古代神殿の位置が確認できれば、帰ってもらって構わない」

 二人はお互いに目を合わせた。

「それなら……」

 こうして二人は古代神殿までの案内を引き受けてくれた。



~ 古代神殿への道 ~

 私たちは翌早朝にはマルラナ山脈に向けて出発した。村からマルラナ山の麓まではヘリで移送してもらったので、後は山道を進むだけだ。
 
 マルラナ山への道中は吹雪が強く、飛行ドローンは1機を除いて途中で待機させる。1機は銃火器を取り外して軽くして交代で運ぶことになった。

 ちなみに幼女たる私と南大尉は、ずっと大人におんぶしてもらっての移動である。

 北方人二人が私たちに古代神殿の場所を指差した頃には、既に化け物との戦闘が二度も発生していた。

 妖異ミ=ゴは蚊を人間の大きさに巨大化したような化け物だった。

 頭部はバラ科の蕾《つぼみ》のようにも、むき出しの脳にも見える不気味な形をしている。

 ブーンという不快な音を立てながら空中で揺れるそれは、悪夢そのものだ。もし一人でこいつに出会ったら絶対泣く。

 奴らの習性なのかどの個体も行動パターンは同じで、私たちの前に姿を見せて数秒間は空中で様子見をする。その後に突撃してくるのだが……

 パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!

 突撃の前に、坂上大尉の89式小銃がミ=ゴの頭部を正確に打ち抜いた。

「見た目は不気味ですが、大したことないですね」

 背中におぶった南大尉の位置をもぞもぞと肩で調整しながら坂上大尉がつぶやいた。
 
 その様子を見ながら北方人の二人が

「ここから俺たちだけで帰るなんて無理だ」

「もうアンタたちを信じて最後まで案内するしかない!」

 と覚悟を決めたようだった。

 その後、山中にある小さな洞窟で一泊する。以前にも誰かが利用していたのか、中には石を積んだ簡易な竈が残されていた。それを利用させてもらって私たちは暖を取る。

 焚火の温もりにほっこりした私と南大尉は早速レーションを取り出して食事に取り掛かった。

「焚火を前にすると、疲れが癒されていくなぁ」

「まったくです!」

 私たち二人を坂上大尉が冷たい目で見つめながら、

「お二人はおぶってもらってばかりでしたよね?」

 なにおう! 

 俺たちは幼女なんだぞ!  

 おぶってもらうのもそれなりに大変なんだからな!

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