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第一章 護衛艦フワデラ

第33話 DDOS攻撃

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 白狼族の二人がマルラナ山脈出身の冒険者とコンタクトを取ったことから、マルラナ山と古代神殿に関する情報収集が一気に進展した。

 翌日にはフワーデがドローンを飛ばして港湾都市ローエンからマルラナ山脈の麓にあるイザラス村までのマップを作成。

「マルラナ山は吹雪が凄くてドローンじゃ無理!」

 フワーデが大きな声を出しながら両手をバツにする。

グローバルホーク大型無人偵察機があればな。言っても仕方ないが……」
 
 思わず私がつぶやくと山形砲雷科長がパッと顔を輝かせて、

「艦長、フワーデちゃんの力でこっちに帝国の兵器を送り込むことはできないもんですかね?」

「どうなんだフワーデ?」

「ん-っ? 魔力転換できるもの一覧の中には、今のところ燃料と飲料系……あと電力しかないから無理かなぁ」

「そっか……A-10サンダーボルトⅡは無理かぁ」

 山形砲雷長が落ち込んだ。

 お前……米空軍の攻撃機で暴れたいだけだろ!

「なんとか神ネット業務スーパーで、ギリMG338とか行けませんかね? スナイパーライフルの威力でフルオート弾幕張れるんですよ」

「何がギリなのか全くわからん」
 
 私のツッコミに砲雷長が眉を逆立てて反論してきた。

「帝国じゃ訓練でも実弾を撃てなかったんですよ!」

「お、おう……それはそうだな……」

 山形砲雷科長の逆切れに一瞬たじろぐ。まぁ、その不満はわからないわけではない。

 帝国では万年予算不足のせいで、銃火器の訓練では目標を狙って引き金に手を掛けるまでしか許されていなかったからだ。

「だがさすがに業務スーパーで銃や弾薬は扱ってない……よな? フワーデ?」

 何でもありの異世界。しかも、帝国の業務スーパーで異世界のオンライン注文ができるという状況。

 もしかするとスーパーで銃火器が購入できるのかもしれない。そもそも元の世界でも米国なら普通にスーパーで買えるだろう。

「んー、商品一覧になければ無理じゃないかなー」

「ですよねー」

 んっ? ここで今更、補給についての疑問が私の頭をよぎる。フワーデの魔力転換炉で、てっきり大丈夫だと思い込んでいたが……。

「フワーデ、弾薬は魔力転換炉で補給できるんだよな? あと魚雷とか」

「んー、メニューにないから無理だよー」

「なんだ……と……」

 この場にいる全員の顔が青ざめた。

「フワーデ! 神様とやらに至急電文だ! 弾薬の補給を何としても許可してもらってくれ! 兵器もだ! 弾がなくては戦えないとBotで10秒毎に電文を発信してくれ! 今すぐに!」

「わかったー! でもきっと補給のときには魔力かEONポイントは必要になると思うよ」

「それは……承知している。もちろん対価は払うので供給は確約してもらってくれ」

「うん! 頑張る!」

 フワーデが目を閉じ頭に手を当ててうんうん唸り始める。目眉を寄せてしかめっ面になったり、ニッコリしたりと表情がコロコロと変わる。

「大丈夫かフワーデ?」

 ずっとフワーデが唸っているので、心配になって声を掛けた。

「うーん……相変わらず天上界はてんてこ舞いみたいで、なかなか返事がこないの。だからDDOS攻撃してるところよ。今は2000個のBotからタカツの電文を送ってる」

「それって、お前が天上界をてんてこ舞いさせてるんじゃないのか!?」

「頑張る!」

「ま、まぁ頼んだぞ」 

 再びフワーデが目を閉じてうんうん唸り始めた。



~ 天上界からの電文 ~

 それから一時間後、フワーデに天上界からの短い電文が届いた。

『異世界ニ転移シタ兵装ノ複製ヲ許可。Botハ止メテ』

「「「やった!」」」

 フワーデが電文を読み上げると、私たち全員が歓喜の声を上げた。

「タカツ! 魔力転換炉に兵装メニューが追加されたよ!」

「よくやったフワーデ! エライぞ!」

「後、業務スーパーの受注画面にも兵装メニュー追加してくれたって!」

「マジカ……」

「マジダヨ!」

 確認のためノートパソコンでビックマートのオンライン注文画面を開くと、お客様メニューの中に『兵装のご注文』が表示されていた。
 
「弾薬はもちろん、魚雷やミサイルまであるぞ……」

「割高ですね」

 山形砲雷長がいつの間にか私の隣に並んで注文画面を覗き込んでいた。

「まさか帝国でもこれと同じような注文が可能なのでしょうか」

 平野副長が恐ろしい発言をする。

「さすがにそれはないだろ……ないよね?」

 副長にツッコミを入れようとしたが、途中で心配になってきた。

「ととと、とにかくこれで弾薬の問題はクリアだ。あとはマルラナの古代神殿を破壊するクエストを達成するだけだな」

 とりあえず私は目の前の問題に集中することにする。他の皆も同じように思ったようで、話題がマルラナ攻略へと戻った。

「今回は妖異ミ=ゴの狩猟と基地破壊のクエストを受注した。フワーデによると狩猟というのはミ=ゴを殺傷すると考えて良いらしい」

 そこまで言って私が平野副長に顔を向けると、そこからは彼女が説明を継いだ。

「基地の破壊に当たっては、実行前に同施設の調査を行って魔鉱石の発見および鉱脈の存在を確認します」

 モニタにフワーデが作成したマルラナ山脈までのマップが表示された。

「おそらく古代神殿に至るまでに、このミ=ゴと呼ばれる敵との遭遇が予想されます。同地域は非常に風が強いため、ヘリや飛行ドローンによる支援はできません。そこで……」

 平野副長がフワーデに目線を送ると、モニタの映像が切り替る。

「古代神殿には、この新型の犬型ドローン『ティンダロス』を同行させます」

 モニタには機銃に脚を付けた四足歩行型のロボットが表示されていた。

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