34 / 195
第一章 護衛艦フワデラ
第33話 DDOS攻撃
しおりを挟む
白狼族の二人がマルラナ山脈出身の冒険者とコンタクトを取ったことから、マルラナ山と古代神殿に関する情報収集が一気に進展した。
翌日にはフワーデがドローンを飛ばして港湾都市ローエンからマルラナ山脈の麓にあるイザラス村までのマップを作成。
「マルラナ山は吹雪が凄くてドローンじゃ無理!」
フワーデが大きな声を出しながら両手をバツにする。
「グローバルホークがあればな。言っても仕方ないが……」
思わず私がつぶやくと山形砲雷科長がパッと顔を輝かせて、
「艦長、フワーデちゃんの力でこっちに帝国の兵器を送り込むことはできないもんですかね?」
「どうなんだフワーデ?」
「ん-っ? 魔力転換できるもの一覧の中には、今のところ燃料と飲料系……あと電力しかないから無理かなぁ」
「そっか……A-10は無理かぁ」
山形砲雷長が落ち込んだ。
お前……米空軍の攻撃機で暴れたいだけだろ!
「なんとか神ネット業務スーパーで、ギリMG338とか行けませんかね? スナイパーライフルの威力でフルオート弾幕張れるんですよ」
「何がギリなのか全くわからん」
私のツッコミに砲雷長が眉を逆立てて反論してきた。
「帝国じゃ訓練でも実弾を撃てなかったんですよ!」
「お、おう……それはそうだな……」
山形砲雷科長の逆切れに一瞬たじろぐ。まぁ、その不満はわからないわけではない。
帝国では万年予算不足のせいで、銃火器の訓練では目標を狙って引き金に手を掛けるまでしか許されていなかったからだ。
「だがさすがに業務スーパーで銃や弾薬は扱ってない……よな? フワーデ?」
何でもありの異世界。しかも、帝国の業務スーパーで異世界のオンライン注文ができるという状況。
もしかするとスーパーで銃火器が購入できるのかもしれない。そもそも元の世界でも米国なら普通にスーパーで買えるだろう。
「んー、商品一覧になければ無理じゃないかなー」
「ですよねー」
んっ? ここで今更、補給についての疑問が私の頭をよぎる。フワーデの魔力転換炉で、てっきり大丈夫だと思い込んでいたが……。
「フワーデ、弾薬は魔力転換炉で補給できるんだよな? あと魚雷とか」
「んー、メニューにないから無理だよー」
「なんだ……と……」
この場にいる全員の顔が青ざめた。
「フワーデ! 神様とやらに至急電文だ! 弾薬の補給を何としても許可してもらってくれ! 兵器もだ! 弾がなくては戦えないとBotで10秒毎に電文を発信してくれ! 今すぐに!」
「わかったー! でもきっと補給のときには魔力かEONポイントは必要になると思うよ」
「それは……承知している。もちろん対価は払うので供給は確約してもらってくれ」
「うん! 頑張る!」
フワーデが目を閉じ頭に手を当ててうんうん唸り始める。目眉を寄せてしかめっ面になったり、ニッコリしたりと表情がコロコロと変わる。
「大丈夫かフワーデ?」
ずっとフワーデが唸っているので、心配になって声を掛けた。
「うーん……相変わらず天上界はてんてこ舞いみたいで、なかなか返事がこないの。だからDDOS攻撃してるところよ。今は2000個のBotからタカツの電文を送ってる」
「それって、お前が天上界をてんてこ舞いさせてるんじゃないのか!?」
「頑張る!」
「ま、まぁ頼んだぞ」
再びフワーデが目を閉じてうんうん唸り始めた。
~ 天上界からの電文 ~
それから一時間後、フワーデに天上界からの短い電文が届いた。
『異世界ニ転移シタ兵装ノ複製ヲ許可。Botハ止メテ』
「「「やった!」」」
フワーデが電文を読み上げると、私たち全員が歓喜の声を上げた。
「タカツ! 魔力転換炉に兵装メニューが追加されたよ!」
「よくやったフワーデ! エライぞ!」
「後、業務スーパーの受注画面にも兵装メニュー追加してくれたって!」
「マジカ……」
「マジダヨ!」
確認のためノートパソコンでビックマートのオンライン注文画面を開くと、お客様メニューの中に『兵装のご注文』が表示されていた。
「弾薬はもちろん、魚雷やミサイルまであるぞ……」
「割高ですね」
山形砲雷長がいつの間にか私の隣に並んで注文画面を覗き込んでいた。
「まさか帝国でもこれと同じような注文が可能なのでしょうか」
平野副長が恐ろしい発言をする。
「さすがにそれはないだろ……ないよね?」
副長にツッコミを入れようとしたが、途中で心配になってきた。
「ととと、とにかくこれで弾薬の問題はクリアだ。あとはマルラナの古代神殿を破壊するクエストを達成するだけだな」
とりあえず私は目の前の問題に集中することにする。他の皆も同じように思ったようで、話題がマルラナ攻略へと戻った。
「今回は妖異ミ=ゴの狩猟と基地破壊のクエストを受注した。フワーデによると狩猟というのはミ=ゴを殺傷すると考えて良いらしい」
そこまで言って私が平野副長に顔を向けると、そこからは彼女が説明を継いだ。
「基地の破壊に当たっては、実行前に同施設の調査を行って魔鉱石の発見および鉱脈の存在を確認します」
モニタにフワーデが作成したマルラナ山脈までのマップが表示された。
「おそらく古代神殿に至るまでに、このミ=ゴと呼ばれる敵との遭遇が予想されます。同地域は非常に風が強いため、ヘリや飛行ドローンによる支援はできません。そこで……」
平野副長がフワーデに目線を送ると、モニタの映像が切り替る。
「古代神殿には、この新型の犬型ドローン『ティンダロス』を同行させます」
モニタには機銃に脚を付けた四足歩行型のロボットが表示されていた。
翌日にはフワーデがドローンを飛ばして港湾都市ローエンからマルラナ山脈の麓にあるイザラス村までのマップを作成。
「マルラナ山は吹雪が凄くてドローンじゃ無理!」
フワーデが大きな声を出しながら両手をバツにする。
「グローバルホークがあればな。言っても仕方ないが……」
思わず私がつぶやくと山形砲雷科長がパッと顔を輝かせて、
「艦長、フワーデちゃんの力でこっちに帝国の兵器を送り込むことはできないもんですかね?」
「どうなんだフワーデ?」
「ん-っ? 魔力転換できるもの一覧の中には、今のところ燃料と飲料系……あと電力しかないから無理かなぁ」
「そっか……A-10は無理かぁ」
山形砲雷長が落ち込んだ。
お前……米空軍の攻撃機で暴れたいだけだろ!
「なんとか神ネット業務スーパーで、ギリMG338とか行けませんかね? スナイパーライフルの威力でフルオート弾幕張れるんですよ」
「何がギリなのか全くわからん」
私のツッコミに砲雷長が眉を逆立てて反論してきた。
「帝国じゃ訓練でも実弾を撃てなかったんですよ!」
「お、おう……それはそうだな……」
山形砲雷科長の逆切れに一瞬たじろぐ。まぁ、その不満はわからないわけではない。
帝国では万年予算不足のせいで、銃火器の訓練では目標を狙って引き金に手を掛けるまでしか許されていなかったからだ。
「だがさすがに業務スーパーで銃や弾薬は扱ってない……よな? フワーデ?」
何でもありの異世界。しかも、帝国の業務スーパーで異世界のオンライン注文ができるという状況。
もしかするとスーパーで銃火器が購入できるのかもしれない。そもそも元の世界でも米国なら普通にスーパーで買えるだろう。
「んー、商品一覧になければ無理じゃないかなー」
「ですよねー」
んっ? ここで今更、補給についての疑問が私の頭をよぎる。フワーデの魔力転換炉で、てっきり大丈夫だと思い込んでいたが……。
「フワーデ、弾薬は魔力転換炉で補給できるんだよな? あと魚雷とか」
「んー、メニューにないから無理だよー」
「なんだ……と……」
この場にいる全員の顔が青ざめた。
「フワーデ! 神様とやらに至急電文だ! 弾薬の補給を何としても許可してもらってくれ! 兵器もだ! 弾がなくては戦えないとBotで10秒毎に電文を発信してくれ! 今すぐに!」
「わかったー! でもきっと補給のときには魔力かEONポイントは必要になると思うよ」
「それは……承知している。もちろん対価は払うので供給は確約してもらってくれ」
「うん! 頑張る!」
フワーデが目を閉じ頭に手を当ててうんうん唸り始める。目眉を寄せてしかめっ面になったり、ニッコリしたりと表情がコロコロと変わる。
「大丈夫かフワーデ?」
ずっとフワーデが唸っているので、心配になって声を掛けた。
「うーん……相変わらず天上界はてんてこ舞いみたいで、なかなか返事がこないの。だからDDOS攻撃してるところよ。今は2000個のBotからタカツの電文を送ってる」
「それって、お前が天上界をてんてこ舞いさせてるんじゃないのか!?」
「頑張る!」
「ま、まぁ頼んだぞ」
再びフワーデが目を閉じてうんうん唸り始めた。
~ 天上界からの電文 ~
それから一時間後、フワーデに天上界からの短い電文が届いた。
『異世界ニ転移シタ兵装ノ複製ヲ許可。Botハ止メテ』
「「「やった!」」」
フワーデが電文を読み上げると、私たち全員が歓喜の声を上げた。
「タカツ! 魔力転換炉に兵装メニューが追加されたよ!」
「よくやったフワーデ! エライぞ!」
「後、業務スーパーの受注画面にも兵装メニュー追加してくれたって!」
「マジカ……」
「マジダヨ!」
確認のためノートパソコンでビックマートのオンライン注文画面を開くと、お客様メニューの中に『兵装のご注文』が表示されていた。
「弾薬はもちろん、魚雷やミサイルまであるぞ……」
「割高ですね」
山形砲雷長がいつの間にか私の隣に並んで注文画面を覗き込んでいた。
「まさか帝国でもこれと同じような注文が可能なのでしょうか」
平野副長が恐ろしい発言をする。
「さすがにそれはないだろ……ないよね?」
副長にツッコミを入れようとしたが、途中で心配になってきた。
「ととと、とにかくこれで弾薬の問題はクリアだ。あとはマルラナの古代神殿を破壊するクエストを達成するだけだな」
とりあえず私は目の前の問題に集中することにする。他の皆も同じように思ったようで、話題がマルラナ攻略へと戻った。
「今回は妖異ミ=ゴの狩猟と基地破壊のクエストを受注した。フワーデによると狩猟というのはミ=ゴを殺傷すると考えて良いらしい」
そこまで言って私が平野副長に顔を向けると、そこからは彼女が説明を継いだ。
「基地の破壊に当たっては、実行前に同施設の調査を行って魔鉱石の発見および鉱脈の存在を確認します」
モニタにフワーデが作成したマルラナ山脈までのマップが表示された。
「おそらく古代神殿に至るまでに、このミ=ゴと呼ばれる敵との遭遇が予想されます。同地域は非常に風が強いため、ヘリや飛行ドローンによる支援はできません。そこで……」
平野副長がフワーデに目線を送ると、モニタの映像が切り替る。
「古代神殿には、この新型の犬型ドローン『ティンダロス』を同行させます」
モニタには機銃に脚を付けた四足歩行型のロボットが表示されていた。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました
Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。
実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。
何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・
何故か神獣に転生していた!
始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。
更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。
人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m
なるべく返信できるように努力します。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
処刑された人質王女は、自分を殺した国に転生して家族に溺愛される
葵 すみれ
恋愛
人質として嫁がされ、故国が裏切ったことによって処刑された王女ニーナ。
彼女は転生して、今は国王となった、かつての婚約者コーネリアスの娘ロゼッタとなる。
ところが、ロゼッタは側妃の娘で、母は父に相手にされていない。
父の気を引くこともできない役立たずと、ロゼッタは実の母に虐待されている。
あるとき、母から解放されるものの、前世で冷たかったコーネリアスが父なのだ。
この先もずっと自分は愛されないのだと絶望するロゼッタだったが、何故か父も腹違いの兄も溺愛してくる。
さらには正妃からも可愛がられ、やがて前世の真実を知ることになる。
そしてロゼッタは、自分が家族の架け橋となることを決意して──。
愛を求めた少女が愛を得て、やがて愛することを知る物語。
※小説家になろうにも掲載しています
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる