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第182話 消えた奴隷
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グレイベア村に連れ帰った43人の奴隷は、幼女状態のまま地下帝国へ移送。その後、幼女化解除の時間を見計らって、地下三階層の広場に集められた。
彼らがここから出て行くことを望んだ場合、なるべくグレイベア村の位置は知られたくない。そのため地下帝国で一時的に保護して、出て行ってもらうときは再び幼女化した上で、リーコス村かミチノエキ村まで送り届けることにした。
「あと2分か……」
俺は視界に表示されているコンソール情報を見ながら、幼女たちを広場に並ばせていた。
「「「わー-い!」」」
「「「キャッ! キャッ!」」」
「「「あの子がわたしのこと叩いた!」」」
「「「ギャぁぁー!」」」
「「「うえぇぇぇええん!」」」
まぁ、当然ながら幼女たちはこちらの言うことを聞いてくれないし、並んでくれない。
「はーい! みんなー! ライラお姉ちゃんに注目ー!」
俺は手を叩いて幼女たちの注目を集め、ライラに隣に立ってもらった。ライラは沢山のお菓子が山積みになったカゴを腕に抱えている。
ライラの持っているお菓子の山に気が付いた幼女たちは、期待に目をキラキラと輝かせる。
「このすっごく甘いお菓子が貰えるのは、ちゃんと並んだ子だけだよー! 足元の線に並んでねー!」
「「「お菓子ぃぃぃ!」」」
「「「あれ、凄く甘いやつだぁぁ!」」」
「「「食べたいぃぃい!」」」
「「「並ぶ! 並ぼー!」」」
お菓子で幼女たちを釣る俺の姿を見て、フワデラさんとステファンが苦笑いを浮かべていた。
いやいや、お前らも手伝えよ!
とは思うのだが、そういう俺も実際には二人の手を借りようとは思わない。
この二人のように付き合いが長い者は、どうも幼女の世話をするのは俺であるのが当然という固定観念が出来上がってしまっているので、余程のことがない限り自主的に手を貸してくれない。
二人のように、幼女の扱いに慣れてない者から手を借りてしまうと、幼女たちを怯えさせてしまうか、逆に大はしゃぎさせて、結局、収集がつかなくなってしまうのが目に見えている。
「はーい! みんながちゃんと並んだら、お菓子は配るからねー!」
俺は心で盛大なため息を吐きながら、幼女たちを並ばせた。
ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ!
ちょうど全員が並び終わったタイミングで幼女化が解除され、俺の目の前には43人の奴隷が現れた。
「「「!?」」」
「「「こ、ここは……」」」
「「「助かったのか?」」」
「「「どうしてこんなところに!?」」」
「「「く、喰われるのは嫌だ! 助けてくれ!」」」
元の姿に戻ったら戻ったで、それぞれが好き勝手に騒ぎ始めた。
そんな慌てたり、喚いたり、泣いたりしている奴隷たちの間を、ライラはお菓子を配って廻った。
「「「!?」」」」
彼らに掛けた【幼女化】は完全幼女化だったので、元に戻った彼らには幼女だった間の記憶はない。いきなりお菓子を渡された奴隷たちは、ポカンとした表情で突っ立っているだけだった。
だが一人がお菓子を口にして「うまい!」と叫んだ瞬間、全員が一斉にお菓子を口にした。俺は、全員がお菓子を食べ終わるのを待ってから話し掛ける。
「コホンッ!」
奴隷たちの視線が俺に集まった。
「地下帝国へようこそ! 俺は地下帝国で皇帝をしているタヌァカと申します。俺の左にいるのがマイスイートハニーのライラで、右隣にいるのがドラゴンのルカです」
「だ、第一皇妃のライラです」
「わらわが第二皇妃のルカじゃ!」
俺たちの自己紹介を聞いた奴隷たちが戸惑いの表情を浮かべる。
「ドラゴン? あの子供が?」
「地下帝国なんて聞いたことないわ」
「皇帝!? 皇帝というのはセイジュウ皇帝のことじゃないのか?」
混乱する奴隷たちに俺は再び咳払いをして注目を集めた。
「えーっ、よくは知りませんが、俺はそのセイジューなんちゃらより、エライ皇帝です。地下帝国も神聖プークスクス帝国よりも凄い帝国です」
奴隷の皆さんは、訝し気な表情でお互いの顔を見合わせていた。
「えーっ、その証拠が皆さん自身です。つい先日、俺たちは神聖プークスクス帝国軍を撃退し、皆さんを救出したわけですね」
奴隷の中には「救出」という言葉に反応するものが少なからずいた。口元に手を当てて、涙を浮かべている者たちもいる。
「皆さんはもう自由の身です。故郷に戻りたいという方は、ここから近い村までお送りします。もしここの住人になりたいということであれば、俺たちは受け入れようと思います」
自由になれると聞いた奴隷たちが一斉に喜びの声を上げた。その場に泣き崩れる者たちもいる。
妖異の食糧になるところだったところから、降って湧いたような自由の身なのだ。想像するのはちょっと難しいけれど、そりゃ喜びも半端じゃないだろうということは分かる。
その後、奴隷ひとり一人の希望をフワデラさんやステファンが確認している間、俺は奴隷の中にいた一人の女性に意識を向けていた。
その若い女性は、金髪金眼が印象的な美人さん。
ライラがお菓子を渡したとき、彼女は見て目を大きく見開いて驚いていた。それから俺の顔を見て、また驚いたような表情を浮かべた。
その表情がなんとも可愛くて印象に残っていたのだ。
「その右目……」
彼女が驚いたのはライラの顔の傷のことなのだろうか。傷に関する話題に俺はちょっとヒヤリとしたが、ライラの方は特に気にする様子もなく普通に答えていた。
「これは義眼なんです。奴隷だったときに戦闘で失ってしまって……」
「ご、ごめんなさい! 私ったら、なんて失礼なことを……」
彼女は顔を真っ青にして、何度も何度もライラに頭を下げていた。
なんか良い人みたいだな。
できれば彼女には地下帝国に残って欲しい。
と思っていたのだが……。
~ 後日 ~
「金眼の女性? 何人かいたとは思いますけど……」
故郷に戻ることを希望した奴隷は、地下帝国で幼女化した後、リーコス村かミチノエキ村で幼女化が解けるまで保護した。
その報告に戻ったフワデラさんとステファンに、俺は金髪金眼の彼女のことを聞いてみた。
「えっと、美人でさ、顔がシュっとしてて、目つきがちょっとジト目で……おっぱいはこれくらい!」
俺は手でおっぱいの大きさを表現してみせた。両手をワキワキと動かす俺に、二人が憐みの目線を向けてくる。
自分の語彙力の低さには絶望するしかない。
それはともかく……
地下帝国の残存組に彼女の姿はなかった。
ということであれば故郷へ戻る帰郷組の中にいたということになる。だが出発前の【幼女化】のときに彼女の姿を見た記憶がない。
あの美人を俺が目で追わないはずがないと思うのだが……。
結局、彼女のことは分からず仕舞いだった。
彼らがここから出て行くことを望んだ場合、なるべくグレイベア村の位置は知られたくない。そのため地下帝国で一時的に保護して、出て行ってもらうときは再び幼女化した上で、リーコス村かミチノエキ村まで送り届けることにした。
「あと2分か……」
俺は視界に表示されているコンソール情報を見ながら、幼女たちを広場に並ばせていた。
「「「わー-い!」」」
「「「キャッ! キャッ!」」」
「「「あの子がわたしのこと叩いた!」」」
「「「ギャぁぁー!」」」
「「「うえぇぇぇええん!」」」
まぁ、当然ながら幼女たちはこちらの言うことを聞いてくれないし、並んでくれない。
「はーい! みんなー! ライラお姉ちゃんに注目ー!」
俺は手を叩いて幼女たちの注目を集め、ライラに隣に立ってもらった。ライラは沢山のお菓子が山積みになったカゴを腕に抱えている。
ライラの持っているお菓子の山に気が付いた幼女たちは、期待に目をキラキラと輝かせる。
「このすっごく甘いお菓子が貰えるのは、ちゃんと並んだ子だけだよー! 足元の線に並んでねー!」
「「「お菓子ぃぃぃ!」」」
「「「あれ、凄く甘いやつだぁぁ!」」」
「「「食べたいぃぃい!」」」
「「「並ぶ! 並ぼー!」」」
お菓子で幼女たちを釣る俺の姿を見て、フワデラさんとステファンが苦笑いを浮かべていた。
いやいや、お前らも手伝えよ!
とは思うのだが、そういう俺も実際には二人の手を借りようとは思わない。
この二人のように付き合いが長い者は、どうも幼女の世話をするのは俺であるのが当然という固定観念が出来上がってしまっているので、余程のことがない限り自主的に手を貸してくれない。
二人のように、幼女の扱いに慣れてない者から手を借りてしまうと、幼女たちを怯えさせてしまうか、逆に大はしゃぎさせて、結局、収集がつかなくなってしまうのが目に見えている。
「はーい! みんながちゃんと並んだら、お菓子は配るからねー!」
俺は心で盛大なため息を吐きながら、幼女たちを並ばせた。
ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ!
ちょうど全員が並び終わったタイミングで幼女化が解除され、俺の目の前には43人の奴隷が現れた。
「「「!?」」」
「「「こ、ここは……」」」
「「「助かったのか?」」」
「「「どうしてこんなところに!?」」」
「「「く、喰われるのは嫌だ! 助けてくれ!」」」
元の姿に戻ったら戻ったで、それぞれが好き勝手に騒ぎ始めた。
そんな慌てたり、喚いたり、泣いたりしている奴隷たちの間を、ライラはお菓子を配って廻った。
「「「!?」」」」
彼らに掛けた【幼女化】は完全幼女化だったので、元に戻った彼らには幼女だった間の記憶はない。いきなりお菓子を渡された奴隷たちは、ポカンとした表情で突っ立っているだけだった。
だが一人がお菓子を口にして「うまい!」と叫んだ瞬間、全員が一斉にお菓子を口にした。俺は、全員がお菓子を食べ終わるのを待ってから話し掛ける。
「コホンッ!」
奴隷たちの視線が俺に集まった。
「地下帝国へようこそ! 俺は地下帝国で皇帝をしているタヌァカと申します。俺の左にいるのがマイスイートハニーのライラで、右隣にいるのがドラゴンのルカです」
「だ、第一皇妃のライラです」
「わらわが第二皇妃のルカじゃ!」
俺たちの自己紹介を聞いた奴隷たちが戸惑いの表情を浮かべる。
「ドラゴン? あの子供が?」
「地下帝国なんて聞いたことないわ」
「皇帝!? 皇帝というのはセイジュウ皇帝のことじゃないのか?」
混乱する奴隷たちに俺は再び咳払いをして注目を集めた。
「えーっ、よくは知りませんが、俺はそのセイジューなんちゃらより、エライ皇帝です。地下帝国も神聖プークスクス帝国よりも凄い帝国です」
奴隷の皆さんは、訝し気な表情でお互いの顔を見合わせていた。
「えーっ、その証拠が皆さん自身です。つい先日、俺たちは神聖プークスクス帝国軍を撃退し、皆さんを救出したわけですね」
奴隷の中には「救出」という言葉に反応するものが少なからずいた。口元に手を当てて、涙を浮かべている者たちもいる。
「皆さんはもう自由の身です。故郷に戻りたいという方は、ここから近い村までお送りします。もしここの住人になりたいということであれば、俺たちは受け入れようと思います」
自由になれると聞いた奴隷たちが一斉に喜びの声を上げた。その場に泣き崩れる者たちもいる。
妖異の食糧になるところだったところから、降って湧いたような自由の身なのだ。想像するのはちょっと難しいけれど、そりゃ喜びも半端じゃないだろうということは分かる。
その後、奴隷ひとり一人の希望をフワデラさんやステファンが確認している間、俺は奴隷の中にいた一人の女性に意識を向けていた。
その若い女性は、金髪金眼が印象的な美人さん。
ライラがお菓子を渡したとき、彼女は見て目を大きく見開いて驚いていた。それから俺の顔を見て、また驚いたような表情を浮かべた。
その表情がなんとも可愛くて印象に残っていたのだ。
「その右目……」
彼女が驚いたのはライラの顔の傷のことなのだろうか。傷に関する話題に俺はちょっとヒヤリとしたが、ライラの方は特に気にする様子もなく普通に答えていた。
「これは義眼なんです。奴隷だったときに戦闘で失ってしまって……」
「ご、ごめんなさい! 私ったら、なんて失礼なことを……」
彼女は顔を真っ青にして、何度も何度もライラに頭を下げていた。
なんか良い人みたいだな。
できれば彼女には地下帝国に残って欲しい。
と思っていたのだが……。
~ 後日 ~
「金眼の女性? 何人かいたとは思いますけど……」
故郷に戻ることを希望した奴隷は、地下帝国で幼女化した後、リーコス村かミチノエキ村で幼女化が解けるまで保護した。
その報告に戻ったフワデラさんとステファンに、俺は金髪金眼の彼女のことを聞いてみた。
「えっと、美人でさ、顔がシュっとしてて、目つきがちょっとジト目で……おっぱいはこれくらい!」
俺は手でおっぱいの大きさを表現してみせた。両手をワキワキと動かす俺に、二人が憐みの目線を向けてくる。
自分の語彙力の低さには絶望するしかない。
それはともかく……
地下帝国の残存組に彼女の姿はなかった。
ということであれば故郷へ戻る帰郷組の中にいたということになる。だが出発前の【幼女化】のときに彼女の姿を見た記憶がない。
あの美人を俺が目で追わないはずがないと思うのだが……。
結局、彼女のことは分からず仕舞いだった。
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