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第180話 グレイベア村侵攻4
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上空を見上げると、ルカことレッドドラゴンが夜鬼たちを相手に苦戦していた。苦戦と言っても、空中を飛び回る夜鬼に攻撃がなかなかヒットしないので苛立っている感じだ。
これが数体の夜鬼相手なら、ルカは一瞬で葬り去っていただろう。だが何せ数が多いので、攻撃対象に狙いを定めた瞬間に、背後から別の夜鬼が襲ってきて邪魔している。
とはいえ夜鬼たちの槍攻撃では、レッドドラゴンにほとんどダメージを与えることができない。にもかかわらず、レッドドラゴンの周りをでブヨのように飛び回る夜鬼たちはどうして攻撃を続けているんだろう。
ルカの足止めかな?
と思った瞬間、ルカが夜鬼たちを振り切ろうと、急降下を始めた。
その時――
ザシュッ!
地上から巨大な槍が何本も伸びて来て、そのひとつがルカを貫いた。
ドラゴンの身体から激しい光が周囲に広がる。
「ルカァァァァッ!」
俺は喉が潰れるくらいの大声を上げた。
不安が俺の心臓を鷲掴みにする。
やがて光が消えると、
レッドドラゴンの姿も消えていた。
~ ドラゴン墜つ ~
ドラゴンを貫いたのはショゴタンの触手槍だった。
ショゴタンを乗せた5つの橇は、森の黒山羊たちによって様々な方向を向いていた。そのうち二つの橇は、森の黒山羊の太い触腕が橇を傾けて角度を付けている。
それを見て、俺はすぐに彼らの意図することがわかった。橇はショゴタンを運ぶだけのものではなかったのだ。
ショゴタンの触手槍攻撃は、実際に発動するまでに時間が掛る。しかも、最初に決めた目標の位置は変更できない。
そのため、開けた場所でショゴタンの触手攻撃を受けても、常に移動し続けていれば回避するのは簡単だ。
ましてや空中を飛び回るドラゴンに、ショゴタンの触手が命中することはまず
ないだろう。
そこで神聖帝国軍が考えたのは、ショゴタンから触手を出始めたら、ショゴタン自体を動かして触手の方向を敵に向けること。
橇に乗ったショゴタンの触手を、森の黒山羊が橇を動かして、攻撃位置を調整していたのだ。
そのことに気が付いて森の黒山羊を改めて見てみる。すると、その頭部に当たる部分に小さな台座が設置されていて、そこに魔族兵が乗っているのが見えた。
あの魔族兵が森の黒山羊に指示を出して、ショゴタンの橇を動かしているのだろう。
ショゴタンと森の黒山羊がドラゴン対策だったということか。
いや、そんなことよりルカは!?
おそらくさっきの光は賢者の石を使った変身だろう。
なら今はどこに……
そのとき、どこからかルカの声が聞こえた気がした。
「痛った……」
ビカッ!
強烈な光
そして――
「いじゃろうがぁあああああああ!」
レッドドラゴンが、敵陣の中央に姿を現した。
地表スレスレだったので、もしかするともう少しで幼女の姿のまま地面に激突するところだったのかもしれない。
バサッ! バサッ! バサッ!
飛翼を振るうごとに少しずつドラゴンの身体が上昇していく。
その足元には、例の腕の妖異「深淵の黒腕」がワラワラと集まって来ていた。
深淵の黒腕は、上空に飛び去ろうとするドラゴンに掴みかかろうと、長い胴体を持ち上げる。
見た目が前腕そのものの妖異が、芋虫のように状態を起こす様は、かなり正気度を削られそうな光景だった。
ガシッ!
深淵の黒腕がドラゴンの尻尾に掴みかかろうとしたところを、尻尾をくるっと丸めて回避。
ショゴタンの槍でルカを地面に落とした後は、奴らが群がって押さえる算段だったのかもしれない。
深淵の黒腕は、ちょうど人間の掌に当たる部分に巨大な口がついている。その悍ましい口が開かれると、ギザギザの牙がむき出しになった。
この妖異たちの中では、ショゴタンや森の仔山羊より、コイツが一番ヤバイ。
ショゴタンと森の仔山羊は、ルカとグレイちゃんで大丈夫だろう。
ルカは再び夜鬼との戦いに入っていたが、今度はグリフォンのグリッちが加勢に入ったので、少しずつではあるが夜鬼の数が削られ始めている。
ドシン、ドシンと山が歩いているかのような地響きが近づいてくる。
その間、俺は【索敵】マップの表示を確認して、奴らに【幼女化】が一発で効くことを確認。
地響きが止まったかと思うと、俺の身体が巨大な爪につままれて、巨大な熊の頭頂部に降ろされた。
「あの気持ち悪い手みたいな奴をやる! グレイちゃん!」
ルカを傷つけられてグレイちゃんの全身が怒りに震えていた。
「ぐるるるぅぅうううう!」
足元からグレイベアの唸り声が響き、俺の全身を震わせる。
「グレイちゃん、あの手の前に俺を運んでくれ! だがその前に……」
俺は息を肺一杯に吸った後、全身全霊で叫ぶ。
「薙ぎ払えぇぇぇ!」
グレイベアの巨体が、正面の森の黒山羊に向って突進を始める。
「ぐおぉおおおおおおおおおんん!」
グレイベアの巨大な爪が、同じくらい巨大な森の黒山羊を胴体から引き裂いた。グレイちゃんはそのまま止まることなく進み、今度はショゴタンを踏み付ける。普段のグレイちゃんならエンガチョ扱いの妖異が、ブシャッと音を立てて潰れる。
今の状態のショゴタンを踏み潰しても、また元に戻ってしまうのだろうが、そんなことおかまいなしにグレイちゃんは進みんだ。
ブチ切れていても、ちゃんと俺のお願いを最優先してくれている。
そしてグレイちゃんが腹の下で魔族兵を押しつぶしながら、前に倒れ込んだとき、
俺はグレイちゃんの頭に立っていて。
そのすぐ目の前には、深淵の黒腕たちがいた。
「【幼女化ビィィィィィム!】」
ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ!
その一瞬で5人の幼女が現れて、
ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ!
その一秒後には5体の深淵の黒腕が、瀕死の状態で地面でピクピクと身体を振るわせていた。
これが数体の夜鬼相手なら、ルカは一瞬で葬り去っていただろう。だが何せ数が多いので、攻撃対象に狙いを定めた瞬間に、背後から別の夜鬼が襲ってきて邪魔している。
とはいえ夜鬼たちの槍攻撃では、レッドドラゴンにほとんどダメージを与えることができない。にもかかわらず、レッドドラゴンの周りをでブヨのように飛び回る夜鬼たちはどうして攻撃を続けているんだろう。
ルカの足止めかな?
と思った瞬間、ルカが夜鬼たちを振り切ろうと、急降下を始めた。
その時――
ザシュッ!
地上から巨大な槍が何本も伸びて来て、そのひとつがルカを貫いた。
ドラゴンの身体から激しい光が周囲に広がる。
「ルカァァァァッ!」
俺は喉が潰れるくらいの大声を上げた。
不安が俺の心臓を鷲掴みにする。
やがて光が消えると、
レッドドラゴンの姿も消えていた。
~ ドラゴン墜つ ~
ドラゴンを貫いたのはショゴタンの触手槍だった。
ショゴタンを乗せた5つの橇は、森の黒山羊たちによって様々な方向を向いていた。そのうち二つの橇は、森の黒山羊の太い触腕が橇を傾けて角度を付けている。
それを見て、俺はすぐに彼らの意図することがわかった。橇はショゴタンを運ぶだけのものではなかったのだ。
ショゴタンの触手槍攻撃は、実際に発動するまでに時間が掛る。しかも、最初に決めた目標の位置は変更できない。
そのため、開けた場所でショゴタンの触手攻撃を受けても、常に移動し続けていれば回避するのは簡単だ。
ましてや空中を飛び回るドラゴンに、ショゴタンの触手が命中することはまず
ないだろう。
そこで神聖帝国軍が考えたのは、ショゴタンから触手を出始めたら、ショゴタン自体を動かして触手の方向を敵に向けること。
橇に乗ったショゴタンの触手を、森の黒山羊が橇を動かして、攻撃位置を調整していたのだ。
そのことに気が付いて森の黒山羊を改めて見てみる。すると、その頭部に当たる部分に小さな台座が設置されていて、そこに魔族兵が乗っているのが見えた。
あの魔族兵が森の黒山羊に指示を出して、ショゴタンの橇を動かしているのだろう。
ショゴタンと森の黒山羊がドラゴン対策だったということか。
いや、そんなことよりルカは!?
おそらくさっきの光は賢者の石を使った変身だろう。
なら今はどこに……
そのとき、どこからかルカの声が聞こえた気がした。
「痛った……」
ビカッ!
強烈な光
そして――
「いじゃろうがぁあああああああ!」
レッドドラゴンが、敵陣の中央に姿を現した。
地表スレスレだったので、もしかするともう少しで幼女の姿のまま地面に激突するところだったのかもしれない。
バサッ! バサッ! バサッ!
飛翼を振るうごとに少しずつドラゴンの身体が上昇していく。
その足元には、例の腕の妖異「深淵の黒腕」がワラワラと集まって来ていた。
深淵の黒腕は、上空に飛び去ろうとするドラゴンに掴みかかろうと、長い胴体を持ち上げる。
見た目が前腕そのものの妖異が、芋虫のように状態を起こす様は、かなり正気度を削られそうな光景だった。
ガシッ!
深淵の黒腕がドラゴンの尻尾に掴みかかろうとしたところを、尻尾をくるっと丸めて回避。
ショゴタンの槍でルカを地面に落とした後は、奴らが群がって押さえる算段だったのかもしれない。
深淵の黒腕は、ちょうど人間の掌に当たる部分に巨大な口がついている。その悍ましい口が開かれると、ギザギザの牙がむき出しになった。
この妖異たちの中では、ショゴタンや森の仔山羊より、コイツが一番ヤバイ。
ショゴタンと森の仔山羊は、ルカとグレイちゃんで大丈夫だろう。
ルカは再び夜鬼との戦いに入っていたが、今度はグリフォンのグリッちが加勢に入ったので、少しずつではあるが夜鬼の数が削られ始めている。
ドシン、ドシンと山が歩いているかのような地響きが近づいてくる。
その間、俺は【索敵】マップの表示を確認して、奴らに【幼女化】が一発で効くことを確認。
地響きが止まったかと思うと、俺の身体が巨大な爪につままれて、巨大な熊の頭頂部に降ろされた。
「あの気持ち悪い手みたいな奴をやる! グレイちゃん!」
ルカを傷つけられてグレイちゃんの全身が怒りに震えていた。
「ぐるるるぅぅうううう!」
足元からグレイベアの唸り声が響き、俺の全身を震わせる。
「グレイちゃん、あの手の前に俺を運んでくれ! だがその前に……」
俺は息を肺一杯に吸った後、全身全霊で叫ぶ。
「薙ぎ払えぇぇぇ!」
グレイベアの巨体が、正面の森の黒山羊に向って突進を始める。
「ぐおぉおおおおおおおおおんん!」
グレイベアの巨大な爪が、同じくらい巨大な森の黒山羊を胴体から引き裂いた。グレイちゃんはそのまま止まることなく進み、今度はショゴタンを踏み付ける。普段のグレイちゃんならエンガチョ扱いの妖異が、ブシャッと音を立てて潰れる。
今の状態のショゴタンを踏み潰しても、また元に戻ってしまうのだろうが、そんなことおかまいなしにグレイちゃんは進みんだ。
ブチ切れていても、ちゃんと俺のお願いを最優先してくれている。
そしてグレイちゃんが腹の下で魔族兵を押しつぶしながら、前に倒れ込んだとき、
俺はグレイちゃんの頭に立っていて。
そのすぐ目の前には、深淵の黒腕たちがいた。
「【幼女化ビィィィィィム!】」
ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ!
その一瞬で5人の幼女が現れて、
ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ!
その一秒後には5体の深淵の黒腕が、瀕死の状態で地面でピクピクと身体を振るわせていた。
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