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第178話 グレイベア村侵攻2
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グレイベア村の村長は、神聖帝国軍がグレイベア村に向っているという情報を、北街道を行く商人から得ていた。
その商人は、ルートリア連邦に滞在中、神聖帝国軍が大量の奴隷を購入しているのを目撃する。
奴隷の購入に当たっては、複数の奴隷商に声が掛けられていたのだが、その中のひとつが、その商人の知り合いだった。
その奴隷商によると、神聖帝国軍は悪しきドラゴンを討伐するために遠征軍を派兵するのだと吹聴していたという。
その話を聞いた村長は、神聖帝国軍がグレイベア村を襲うのではないかと危惧し、情報の真偽を確かめるために、村にいる冒険者に調査を依頼した。
白狼族でも珍しい黒毛の女冒険者は、早速、ルートリア連邦に渡って、そこから神聖帝国軍を追跡し、そのルートから神聖帝国軍がグレイベア村方面に向かっていることを確信するに至る。
女冒険者の報告で、イゴーロナックル将軍率いる神聖帝国軍の編成が判明した。
大将:イゴーロナックル将軍
妖異:深淵の黒い腕5体、森の黒山羊10体、ショゴタン5体、夜鬼80体
魔族兵:1200名
岩トロル:10体
奴隷:200名
報告を聞いた、その日のうちにヴィルフォファング村長は居てもたってもいられず、グレイベア村に飛んできたのだった。
「奴らの進軍は想像するよりずっと早い! あと数日もしないうちに、神聖帝国軍はグレイベア村にやってくるぞ!」
俺は何度もショゴタンと戦っているので、その移動速度の遅さを知っている。その経験から推測すると、もし直線距離だとしてもショゴタンを50キロを移動させるにはかなりの時間が必要になるはずだ。
下手すると、ひと月くらい掛かるかもしれない。
俺の説明を聞いたヴィルフォファング村長は首を激しく左右に振った。
「奴らは、ほぼ真っ直ぐにグレイベア村に向っている。奴隷を食糧にしているので、進路近くに村があっても略奪せず通り過ぎている。しかも岩トロルに、進路上の障害物を取り除かせ、でっかいスライムは大きな木ぞりに乗せて、黒くて巨大な悪魔に引っ張らせてるんだ」
ショゴタンを木ぞりに載せて? 森の黒山羊に木ぞりを曳かせているってことか!?
ヤバイ……ヤバイぞ……かなりヤバイ。
その場にいる全員が、俺と同じような焦りを感じているのだろう、その顔は真っ青になっていた。
「フワデラさん、ステファン、すぐに戦える人たちを集めて貰える? 作戦は集集まりの様子を見てから考えよう」
二人は俺の言葉に頷くと、すぐに王の間を出ていった。
「青さん、グリッち、グレイベア村の住人を地下帝国で匿いたい。準備をお願い」
「「わかりました」」
青さんとグリッチが俺の言葉に頷いて、王の間を出ていった。
「シュモネーさん、俺のダンジョンオーナー権限で、地下ダンジョンの設定を委任させてもらっていい? もし神聖帝国軍が地下帝国に侵入したときには、最大の力で撃退するよう召喚魔を設定して欲しいんだ」
「お任せください」
シュモネー夫人が俺の言葉に頷いて、地下15階層にある拠点に向った。
「さてと俺たちはみんなが戻ってくるまでに、敵の陣形について確認しておこうか」
俺は黒毛女冒険者が描いたという敵陣の図面をテーブルに広げる。
「おいシンイチ! お主は本当にシンイチなのか!?」
気付くとルカが俺の顔を、驚きの表情で見上げていた。
「えっ!? 何、何の話!? 俺がシンイチじゃなければ、他に誰がいるのさ!」
「先程までのお主の振る舞い。フワデラやステファンたちにテキパキと指示を出しておったが、あんな頼もしい行動は、わらわの知っているシンイチにはないものじゃ。さてはお主、偽物じゃな!?」
「なんでだよ!」
とツッコんでみたものの、思い返してみればルカの言う通り、普段の俺らしくない行動だったかもしれない。単に、皆とこの村を守りたい一心だった。それだけなんだけどな。
そういうことをいちいち口にするのも面倒だったので、俺は玉座に座っている自分の太ももをパシンと叩き、
「ライラ! 来て!」
と声を上げた。
「はい」
と返事をして、ライラはトコトコと玉座まで来ると、そのままチョコンと俺の膝の上に腰かけた。
目の前のライラ超可愛い!ライラのお尻が柔らかくて暖かい。ライラの髪から良い匂い!
ライラチェックが終わった俺は、ルカちゃんにドヤ顔を向けた。
「どうよ!」
「なにがじゃ!? ……って、確かにライラがシンイチ以外の膝に乗るはずはないのぉ」
どうやらルカの疑いは晴れたようだった。
「シンイチ殿! しっかりするんだ! 遊んでいる暇などないぞ!」
ヴィルフォファング村長に叱られてしまった。
俺は村長に謝罪した後、テーブルに広げられた敵陣の図面に目を向ける。
陣形は大きく三段に区分することができた。
陣の最奥部はイゴーロナックル将軍の乗る要塞馬車だ。その四方を200名ずつの魔族兵が輪形陣で固めている。
陣の中央部は大型妖異で固められている。深淵の黒い腕5体が一列に横並び、手前には、犬ぞりに載せられたショゴタンと、その犬ぞりを曳く森の黒山羊10体がいる。
陣の先頭、最前線には左右に魔族兵200名ずつが展開。中央には夜鬼80体が集まっていた。
最後に、この陣全体の前後を岩戸トロルが5体ずつで固めていた。
「まさに鉄壁って感じの布陣だな」
俺の言葉を聞いたヴィルフォファング村長が、ゆっくりと頷いた。
さて、こいつらとどう戦うか……。
その商人は、ルートリア連邦に滞在中、神聖帝国軍が大量の奴隷を購入しているのを目撃する。
奴隷の購入に当たっては、複数の奴隷商に声が掛けられていたのだが、その中のひとつが、その商人の知り合いだった。
その奴隷商によると、神聖帝国軍は悪しきドラゴンを討伐するために遠征軍を派兵するのだと吹聴していたという。
その話を聞いた村長は、神聖帝国軍がグレイベア村を襲うのではないかと危惧し、情報の真偽を確かめるために、村にいる冒険者に調査を依頼した。
白狼族でも珍しい黒毛の女冒険者は、早速、ルートリア連邦に渡って、そこから神聖帝国軍を追跡し、そのルートから神聖帝国軍がグレイベア村方面に向かっていることを確信するに至る。
女冒険者の報告で、イゴーロナックル将軍率いる神聖帝国軍の編成が判明した。
大将:イゴーロナックル将軍
妖異:深淵の黒い腕5体、森の黒山羊10体、ショゴタン5体、夜鬼80体
魔族兵:1200名
岩トロル:10体
奴隷:200名
報告を聞いた、その日のうちにヴィルフォファング村長は居てもたってもいられず、グレイベア村に飛んできたのだった。
「奴らの進軍は想像するよりずっと早い! あと数日もしないうちに、神聖帝国軍はグレイベア村にやってくるぞ!」
俺は何度もショゴタンと戦っているので、その移動速度の遅さを知っている。その経験から推測すると、もし直線距離だとしてもショゴタンを50キロを移動させるにはかなりの時間が必要になるはずだ。
下手すると、ひと月くらい掛かるかもしれない。
俺の説明を聞いたヴィルフォファング村長は首を激しく左右に振った。
「奴らは、ほぼ真っ直ぐにグレイベア村に向っている。奴隷を食糧にしているので、進路近くに村があっても略奪せず通り過ぎている。しかも岩トロルに、進路上の障害物を取り除かせ、でっかいスライムは大きな木ぞりに乗せて、黒くて巨大な悪魔に引っ張らせてるんだ」
ショゴタンを木ぞりに載せて? 森の黒山羊に木ぞりを曳かせているってことか!?
ヤバイ……ヤバイぞ……かなりヤバイ。
その場にいる全員が、俺と同じような焦りを感じているのだろう、その顔は真っ青になっていた。
「フワデラさん、ステファン、すぐに戦える人たちを集めて貰える? 作戦は集集まりの様子を見てから考えよう」
二人は俺の言葉に頷くと、すぐに王の間を出ていった。
「青さん、グリッち、グレイベア村の住人を地下帝国で匿いたい。準備をお願い」
「「わかりました」」
青さんとグリッチが俺の言葉に頷いて、王の間を出ていった。
「シュモネーさん、俺のダンジョンオーナー権限で、地下ダンジョンの設定を委任させてもらっていい? もし神聖帝国軍が地下帝国に侵入したときには、最大の力で撃退するよう召喚魔を設定して欲しいんだ」
「お任せください」
シュモネー夫人が俺の言葉に頷いて、地下15階層にある拠点に向った。
「さてと俺たちはみんなが戻ってくるまでに、敵の陣形について確認しておこうか」
俺は黒毛女冒険者が描いたという敵陣の図面をテーブルに広げる。
「おいシンイチ! お主は本当にシンイチなのか!?」
気付くとルカが俺の顔を、驚きの表情で見上げていた。
「えっ!? 何、何の話!? 俺がシンイチじゃなければ、他に誰がいるのさ!」
「先程までのお主の振る舞い。フワデラやステファンたちにテキパキと指示を出しておったが、あんな頼もしい行動は、わらわの知っているシンイチにはないものじゃ。さてはお主、偽物じゃな!?」
「なんでだよ!」
とツッコんでみたものの、思い返してみればルカの言う通り、普段の俺らしくない行動だったかもしれない。単に、皆とこの村を守りたい一心だった。それだけなんだけどな。
そういうことをいちいち口にするのも面倒だったので、俺は玉座に座っている自分の太ももをパシンと叩き、
「ライラ! 来て!」
と声を上げた。
「はい」
と返事をして、ライラはトコトコと玉座まで来ると、そのままチョコンと俺の膝の上に腰かけた。
目の前のライラ超可愛い!ライラのお尻が柔らかくて暖かい。ライラの髪から良い匂い!
ライラチェックが終わった俺は、ルカちゃんにドヤ顔を向けた。
「どうよ!」
「なにがじゃ!? ……って、確かにライラがシンイチ以外の膝に乗るはずはないのぉ」
どうやらルカの疑いは晴れたようだった。
「シンイチ殿! しっかりするんだ! 遊んでいる暇などないぞ!」
ヴィルフォファング村長に叱られてしまった。
俺は村長に謝罪した後、テーブルに広げられた敵陣の図面に目を向ける。
陣形は大きく三段に区分することができた。
陣の最奥部はイゴーロナックル将軍の乗る要塞馬車だ。その四方を200名ずつの魔族兵が輪形陣で固めている。
陣の中央部は大型妖異で固められている。深淵の黒い腕5体が一列に横並び、手前には、犬ぞりに載せられたショゴタンと、その犬ぞりを曳く森の黒山羊10体がいる。
陣の先頭、最前線には左右に魔族兵200名ずつが展開。中央には夜鬼80体が集まっていた。
最後に、この陣全体の前後を岩戸トロルが5体ずつで固めていた。
「まさに鉄壁って感じの布陣だな」
俺の言葉を聞いたヴィルフォファング村長が、ゆっくりと頷いた。
さて、こいつらとどう戦うか……。
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