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第167話 クリプティクス・シャドウ Side:妖異
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セイジュウ神聖帝国東方攻略軍を率いるイゴローナックル将軍は、アシハブア王国の攻略に向けて、着々と準備を整えていた。
現在は、アシハブア王国の北にあるドラン公国の内戦に乗じて、その領土を次々と占領しつつあった。
だがドラン公国を救うべく人類軍も既に動き出しており、大軍を派遣するための編成が始まっている。数十万もの兵が集結しつつあるという情報もあり、それほど遠くないうちに、大規模な大きな衝突がドラン公国で起こると将軍は予測していた。
その戦いは、恐らく神聖帝国が大陸の覇権を握る天王山となるだろう。皇帝セイジュウも、この戦いにおいては自らも出陣の意志を示していた。
イゴローナックル将軍としては、ドラン公国での戦いをより有利なものとするため、アシハブア王国への対応を急ぐ必要があった。
とはいえアシハブア王国の攻略自体は、ドランにおける決戦の後になるだろう。それまでに、王国の兵力を弱体化させることが将軍の当面の目的であった。
東方攻略軍が徐々にドラン公国を制圧していく中、イゴローナックル将軍は、妖異を使ってアシハブア王国内の攪乱を勧めていた。
ショゴタンや森の仔山羊のような大型妖異から人型の妖異まで、様々な妖異を使って、アシハブア王国の各地で混乱を引き起こしていた。
クリプティクス・シャドウも、そうした妖異の一体である。
この妖異は人型をしており、肌は濡れた海藻が貼り付いているかのように、黒く湿っており、滑りやすい表面を持ってる。
長い腕は触手のように曲がりくねり、その指先には鋭い爪がついていて、その目は深海魚のように暗闇で輝き、虚ろな表情をしていた。
伝説が伝えるところでは、この妖異は次元の狭間を彷徨し、新月の日にその姿を顕現すると信じられている。
実際は、この妖異が有する対象の死角に入り込む能力によって、その姿を隠しているだけのことである。
だがそれは、襲撃者としてはまさにチートと言える能力であった。
アシハブア王国の北に解き放たれたクリプティクス・シャドウは、イゴローナックル将軍の期待に応える働きを続けて来た。
妖異は、東へ東へと進みながら、通りがかった村や野営地をことごとく襲撃していった。
妖異は夜の暗闇に潜み、人々が眠りについた頃に襲い掛かる。
一度に全滅させることはない。ひとりずつ、じっくりと恐怖によって甚振りながら殺していく。
海辺の村を襲ったときは、最初の犠牲者を海に引きずり込んで溺死させ、その死体を村の中心に置いておいた。
次の日、その死体が発見されて村中が大騒ぎとなった。犯人捜しが始まり、山狩りが始まった。
クリプティクス・シャドウは、その様子を村の中で堂々と見物していたが、誰一人、その存在に気が付くことはなかった。
その夜は、村人をさらに八人殺した。殺した遺体に奇妙なポーズを付けて並べた。それ自体には何の意味もなかったが、それを見て村人が狂乱することを妖異はこれまでの殺戮経験から知っていた。
翌朝、死体を発見した村人たちは大混乱に陥った。村から逃げ出そうとするものも現れた。
クリプティクス・シャドウは、その村人を一人ずつ殺していった。
村人からすれば、逃げ出そうとした者の首から突然血が噴き出し、そのまま倒れているように見えたことだろう。
まるで見えない何モノかに襲われたかのように。
狂乱する村人も、家に隠れて震える者たちも、逃げ出そうとした者も、すべてがクリプティクス・シャドウの餌食となった。
ただ一人、馬に乗って逃亡した男は仕留め損ねてしまった。
そして、海辺の村に生きている人間は誰一人いなくなった。
クリプティクス・シャドウは、村人たちの遺体にまた奇妙なポーズを付けて、村の中心に並べた後、
男が逃げ去った方向へ歩き始めた。
現在は、アシハブア王国の北にあるドラン公国の内戦に乗じて、その領土を次々と占領しつつあった。
だがドラン公国を救うべく人類軍も既に動き出しており、大軍を派遣するための編成が始まっている。数十万もの兵が集結しつつあるという情報もあり、それほど遠くないうちに、大規模な大きな衝突がドラン公国で起こると将軍は予測していた。
その戦いは、恐らく神聖帝国が大陸の覇権を握る天王山となるだろう。皇帝セイジュウも、この戦いにおいては自らも出陣の意志を示していた。
イゴローナックル将軍としては、ドラン公国での戦いをより有利なものとするため、アシハブア王国への対応を急ぐ必要があった。
とはいえアシハブア王国の攻略自体は、ドランにおける決戦の後になるだろう。それまでに、王国の兵力を弱体化させることが将軍の当面の目的であった。
東方攻略軍が徐々にドラン公国を制圧していく中、イゴローナックル将軍は、妖異を使ってアシハブア王国内の攪乱を勧めていた。
ショゴタンや森の仔山羊のような大型妖異から人型の妖異まで、様々な妖異を使って、アシハブア王国の各地で混乱を引き起こしていた。
クリプティクス・シャドウも、そうした妖異の一体である。
この妖異は人型をしており、肌は濡れた海藻が貼り付いているかのように、黒く湿っており、滑りやすい表面を持ってる。
長い腕は触手のように曲がりくねり、その指先には鋭い爪がついていて、その目は深海魚のように暗闇で輝き、虚ろな表情をしていた。
伝説が伝えるところでは、この妖異は次元の狭間を彷徨し、新月の日にその姿を顕現すると信じられている。
実際は、この妖異が有する対象の死角に入り込む能力によって、その姿を隠しているだけのことである。
だがそれは、襲撃者としてはまさにチートと言える能力であった。
アシハブア王国の北に解き放たれたクリプティクス・シャドウは、イゴローナックル将軍の期待に応える働きを続けて来た。
妖異は、東へ東へと進みながら、通りがかった村や野営地をことごとく襲撃していった。
妖異は夜の暗闇に潜み、人々が眠りについた頃に襲い掛かる。
一度に全滅させることはない。ひとりずつ、じっくりと恐怖によって甚振りながら殺していく。
海辺の村を襲ったときは、最初の犠牲者を海に引きずり込んで溺死させ、その死体を村の中心に置いておいた。
次の日、その死体が発見されて村中が大騒ぎとなった。犯人捜しが始まり、山狩りが始まった。
クリプティクス・シャドウは、その様子を村の中で堂々と見物していたが、誰一人、その存在に気が付くことはなかった。
その夜は、村人をさらに八人殺した。殺した遺体に奇妙なポーズを付けて並べた。それ自体には何の意味もなかったが、それを見て村人が狂乱することを妖異はこれまでの殺戮経験から知っていた。
翌朝、死体を発見した村人たちは大混乱に陥った。村から逃げ出そうとするものも現れた。
クリプティクス・シャドウは、その村人を一人ずつ殺していった。
村人からすれば、逃げ出そうとした者の首から突然血が噴き出し、そのまま倒れているように見えたことだろう。
まるで見えない何モノかに襲われたかのように。
狂乱する村人も、家に隠れて震える者たちも、逃げ出そうとした者も、すべてがクリプティクス・シャドウの餌食となった。
ただ一人、馬に乗って逃亡した男は仕留め損ねてしまった。
そして、海辺の村に生きている人間は誰一人いなくなった。
クリプティクス・シャドウは、村人たちの遺体にまた奇妙なポーズを付けて、村の中心に並べた後、
男が逃げ去った方向へ歩き始めた。
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