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第165話 嫁にしたいと思わんか?
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大好評のうちに終わったこども市。
そのおかげなのだろうか、翌日の会談は、あっさりとお互いの合意に達することができた。
リーコス村を訪れる商人は、ドラン公国へと向う北街道と、西方のドルネア公爵領に向かう西街道の二つの道を行き来している。
話し合いの結果、北街道の商人からは主に穀物を、西街道の商人からは調味料や野菜を、リーコス村が購入し、それをグレイベア村に卸してもらうことになった。
さらにリーコス村からも少ない量ではあるものの、牧畜による肉や乳製品、小麦等を購入することができるようになった。
これで食糧面でのグレイベア村と地下帝国の不安は大きく軽減されることになった。余裕があるうちに農業生産に力を入れて、食糧自給率を上げていくことにしよう。
また続く戦乱と増え続ける妖異の脅威に対抗するために、お互いに協力することでも合意している。
強力な妖異については、俺の【幼女化】やルカ、グレイちゃんたちが対処することになるだろう。だが、今やリーコス村の安全は、俺たちにとっても重要なものとなった。協力を惜しむつもりはない。
こうして、リーコス村との交渉は無事に終了した。
「シンイチ殿! 呑んでおられるか!」
会談が終わったその夜の酒宴では、いまやすっかりと打ち解けたヴィルフォファング村長が、俺の肩に手を廻して酒を勧めてくる。
「はっ、はい。いただいております。リーコス村の乳酒、う、うまいっすね!」
だが村長がいくら打ち解けようとも、俺のキョドリ具合に変化はない。
「おっ、なんだもう杯が空ではないか! おーい! アーシェ、シンイチ殿にお酒を!」
「はーい!」
酒宴の間で忙しく給仕していたヴィルミアーシェさんが、俺の前にやってきて、酒を注いでくれた。
はわぁ……。
なんだろうヴィルミアーシェさんから、凄くいい匂いがする。
思わず俺は鼻で大きく息を吸い込んでしまった。
「うぐっ!」
首に回っていた村長の腕がギュッと俺を締め付ける。
「シンイチ殿、うちの娘は美しかろう? どうだ嫁にしたいと思わんか?」
村長が俺の耳元で囁いた。
ラッシャァァァァァァァァァ!
俺の全身全霊が歓喜に打ち震える。
「もちろん、いただきま……」
村長に思わず返事しかけた瞬間、何故かシュモネー夫人の視線がこちらに向けられている事に気が付いてしまった。
シュモネー夫人の顔は笑顔ではあったが、その目の奥には笑えるような要素が一切見られない。というか視線で刺されて出血しそうだった。
「お、お父さまったら! いくらお酒が入ってるからって、シンイチ様にご迷惑でしょ!」
ヴィルミアーシェさんが村長を叱りつける。
「ご、ごめんなさいね。シンイチ様、お父さまは酔っ払うと、お気に入りの殿方を掴まえては、私を嫁にやろうとするの」
そう言って、ヴィルミアーシェさんが俺に頭を下げた瞬間、俺はその場の異様な空気に気が付いた。
酒宴にいる白狼族の若者たちから笑顔が消えていることを。
彼らの敵意のこもった視線が俺に注がれていることを。
その視線の意味が俺にはわかる。
つまり、ヴィルミアーシェさんを嫁にするなら、俺を倒してからにしろとかそんな感じだろう。
というかヴィルフォラッシュ……お前もか。
黒毛の狼族らしき女性が俺の前に進み出てきて、ヴィルミアーシェさんを庇うようにしながら言った。
「ア、アーシェはわ、わたしのヨメ! つ、妻にするなら、わ、わたしを倒してから!」
俺は首に廻された村長の腕を丁寧に外し、その場にいる全員に聞こえるように大声で言った。
「た、大変ありがたい話だとは思うのですが、ぼ、ぼくには愛する妻がしゅでに居りますので……」
ホッという空気が流れた。
「ふむ。ならば第二夫人ということか……」
ピキッ! という音がして再び空気が凍る。
「あっ、あの、その、一応、名目上ではあるのですが、第二夫人も既に居りまして……」
再び、ホッという空気が……今度はあんまり流れなかった。
「第二夫人だと……」
「うらやまけしからん」
「処すか」
なんだか物騒な声がチラホラ聞こえてくる。
「うーむ、第三夫人かぁ。どうしたものかのぉ」
空気を一切読まないヴィルフォファング村長がそんなことを言い始める。
このままでは、もしかすると白狼族の若者に刺されかねん!
そんな危惧を抱いて震え始めた俺を、シュモネー夫人が救ってくれた。
「タヌァカ様の第二夫人は、ドラゴンのルカ様です。今やタナァカ様はドラゴンの婿として、多くの魔族を率いられている身。第三夫人を迎えられるにあたっては、ライラ皇后陛下とルカ皇妃陛下の同意を得る必要があります」
「皇后陛下?」
「そういやタヌァカ殿って皇帝なんだってよ」
「つっても自称だろ?」
「いやいや、そもそもドラゴンの婿だし」
「もし皇帝をやっちまったらドラゴンが復讐に来るってこと?」
「逆にライラ様とルカ様に報告してしまえば、アーシェさんを守れるはず」
白狼族……怖い。
というか、ヴィルフォラッシュはライラとルカに報告しようとするの止めて。
「ドラゴンの婿か……うぅむ」
第二夫人がドラゴンと聞いては、さすがのヴィルフォファング村長も考え込んでしまい、それ以上、娘を推してくることはなくなった。
ふと、ヴィルミアーシェさんと目が合う。
はにかみながらも、ニコッと笑顔を返してくれるヴィルミアーシェさんは、とても可愛かった。
(ココロ:ちょっと残念とか思ってます?)
(おおおおもおも思ってなんかないんだからね!)
ココロチンへの返事が謎のツンデレ口調になってしまった。
そのおかげなのだろうか、翌日の会談は、あっさりとお互いの合意に達することができた。
リーコス村を訪れる商人は、ドラン公国へと向う北街道と、西方のドルネア公爵領に向かう西街道の二つの道を行き来している。
話し合いの結果、北街道の商人からは主に穀物を、西街道の商人からは調味料や野菜を、リーコス村が購入し、それをグレイベア村に卸してもらうことになった。
さらにリーコス村からも少ない量ではあるものの、牧畜による肉や乳製品、小麦等を購入することができるようになった。
これで食糧面でのグレイベア村と地下帝国の不安は大きく軽減されることになった。余裕があるうちに農業生産に力を入れて、食糧自給率を上げていくことにしよう。
また続く戦乱と増え続ける妖異の脅威に対抗するために、お互いに協力することでも合意している。
強力な妖異については、俺の【幼女化】やルカ、グレイちゃんたちが対処することになるだろう。だが、今やリーコス村の安全は、俺たちにとっても重要なものとなった。協力を惜しむつもりはない。
こうして、リーコス村との交渉は無事に終了した。
「シンイチ殿! 呑んでおられるか!」
会談が終わったその夜の酒宴では、いまやすっかりと打ち解けたヴィルフォファング村長が、俺の肩に手を廻して酒を勧めてくる。
「はっ、はい。いただいております。リーコス村の乳酒、う、うまいっすね!」
だが村長がいくら打ち解けようとも、俺のキョドリ具合に変化はない。
「おっ、なんだもう杯が空ではないか! おーい! アーシェ、シンイチ殿にお酒を!」
「はーい!」
酒宴の間で忙しく給仕していたヴィルミアーシェさんが、俺の前にやってきて、酒を注いでくれた。
はわぁ……。
なんだろうヴィルミアーシェさんから、凄くいい匂いがする。
思わず俺は鼻で大きく息を吸い込んでしまった。
「うぐっ!」
首に回っていた村長の腕がギュッと俺を締め付ける。
「シンイチ殿、うちの娘は美しかろう? どうだ嫁にしたいと思わんか?」
村長が俺の耳元で囁いた。
ラッシャァァァァァァァァァ!
俺の全身全霊が歓喜に打ち震える。
「もちろん、いただきま……」
村長に思わず返事しかけた瞬間、何故かシュモネー夫人の視線がこちらに向けられている事に気が付いてしまった。
シュモネー夫人の顔は笑顔ではあったが、その目の奥には笑えるような要素が一切見られない。というか視線で刺されて出血しそうだった。
「お、お父さまったら! いくらお酒が入ってるからって、シンイチ様にご迷惑でしょ!」
ヴィルミアーシェさんが村長を叱りつける。
「ご、ごめんなさいね。シンイチ様、お父さまは酔っ払うと、お気に入りの殿方を掴まえては、私を嫁にやろうとするの」
そう言って、ヴィルミアーシェさんが俺に頭を下げた瞬間、俺はその場の異様な空気に気が付いた。
酒宴にいる白狼族の若者たちから笑顔が消えていることを。
彼らの敵意のこもった視線が俺に注がれていることを。
その視線の意味が俺にはわかる。
つまり、ヴィルミアーシェさんを嫁にするなら、俺を倒してからにしろとかそんな感じだろう。
というかヴィルフォラッシュ……お前もか。
黒毛の狼族らしき女性が俺の前に進み出てきて、ヴィルミアーシェさんを庇うようにしながら言った。
「ア、アーシェはわ、わたしのヨメ! つ、妻にするなら、わ、わたしを倒してから!」
俺は首に廻された村長の腕を丁寧に外し、その場にいる全員に聞こえるように大声で言った。
「た、大変ありがたい話だとは思うのですが、ぼ、ぼくには愛する妻がしゅでに居りますので……」
ホッという空気が流れた。
「ふむ。ならば第二夫人ということか……」
ピキッ! という音がして再び空気が凍る。
「あっ、あの、その、一応、名目上ではあるのですが、第二夫人も既に居りまして……」
再び、ホッという空気が……今度はあんまり流れなかった。
「第二夫人だと……」
「うらやまけしからん」
「処すか」
なんだか物騒な声がチラホラ聞こえてくる。
「うーむ、第三夫人かぁ。どうしたものかのぉ」
空気を一切読まないヴィルフォファング村長がそんなことを言い始める。
このままでは、もしかすると白狼族の若者に刺されかねん!
そんな危惧を抱いて震え始めた俺を、シュモネー夫人が救ってくれた。
「タヌァカ様の第二夫人は、ドラゴンのルカ様です。今やタナァカ様はドラゴンの婿として、多くの魔族を率いられている身。第三夫人を迎えられるにあたっては、ライラ皇后陛下とルカ皇妃陛下の同意を得る必要があります」
「皇后陛下?」
「そういやタヌァカ殿って皇帝なんだってよ」
「つっても自称だろ?」
「いやいや、そもそもドラゴンの婿だし」
「もし皇帝をやっちまったらドラゴンが復讐に来るってこと?」
「逆にライラ様とルカ様に報告してしまえば、アーシェさんを守れるはず」
白狼族……怖い。
というか、ヴィルフォラッシュはライラとルカに報告しようとするの止めて。
「ドラゴンの婿か……うぅむ」
第二夫人がドラゴンと聞いては、さすがのヴィルフォファング村長も考え込んでしまい、それ以上、娘を推してくることはなくなった。
ふと、ヴィルミアーシェさんと目が合う。
はにかみながらも、ニコッと笑顔を返してくれるヴィルミアーシェさんは、とても可愛かった。
(ココロ:ちょっと残念とか思ってます?)
(おおおおもおも思ってなんかないんだからね!)
ココロチンへの返事が謎のツンデレ口調になってしまった。
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