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第155話 魔族の葬送
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野営の準備が終わって日も傾き始めてきた頃、赤髪碧眼Dカップラミアのノルフィンさんが亡くなった仲間たちを弔いたいというので、俺はショゴタンの犠牲となった魔族の遺体回収を手伝った。
既にショゴタンに取り込まれてしまった遺体は、もうどうしようもない。
結局、発見することができたのは4人だけで、しかもそのうちの二人は正視して見ることができないほどの状態だった。
ほんと申し訳なかったけど、俺にはその遺体の運搬を手伝うことはできなかった。
森の木に手をつき、散々吐いた後、ノルフィンさんたちのところに戻ると、地面に5つの遺体が並んで横たえられていた。
生き残っている魔族たちが全員集まって、遺体の周りを取り囲んでいる。
黙って、ただただ、遺体を見つめていた。
「あれが魔族のやり方なのじゃ」
それは俺も知っている。
コボルト村やグレイベア村で何度か見たことがあるから。
魔族の中には、死者は聖樹の元へ還ると考えるものもいる。
他にも魔神の楽園へ誘われるとか色々バリエーションはあるみたいだけど、
基本的に「死んでしまったら、ただ土へと還るだけ」
というのが、多くの魔族の根底に持っている考え方のようだった。
それを否定するつもりはない。
変えようとは思わない。
だから、これは俺の問題でしかないし、魔族たちにとってとても失礼なことに当たるかもしれない。
けど、
「ノルフィンさん。俺も死者を見送らせてもらっていいですか?」
「えっ!? えぇ、もちろんいいけど」
ノルフィンさんが驚いたのは、俺の突然の申し出というよりも、手に持っている野草の花束を見てのことだろう。
俺は一人の遺体の前に膝をつくと、花を数本つかみ取って遺体の胸元に置いた。
「貴方がみんなを守ってくれたおかげで、ここにいる人が助かりました。貴方の信じる神様から最高のご褒美が貴方に与えられますように。あなたの眠るこの場所が美しい花で満たされますように」
「「「「……」」」」
完全な沈黙が広がる。森からは風の音さえ聞こえない。
ひとり一人に同じことを俺は繰り返した。
「ぐす……」
「うっ……サマリンド……うっ……」
「……あなた……」
「ぐすっ……ぐすっ」
魔族の中から嗚咽が上がる。
最後に俺は、並ぶ遺体の中央に残った花束を置いて、遺体さえ残らなかった魔族たちの安寧を祈った。
俺が祈りを終えると、ノルフィンさんが音もなく近づいてきて、そっと俺を抱き締めた。
「私たちの仲間のために、ありがとう」
「いや、これは俺のためにやったことなんだ。もし失礼があったら、申し訳いことをしたよ。ごめんね」
そう。これは俺のワガママだ。魔族たちの都合なんて一切考えていない。ただ、自分のためにやったことでしかない。
「そう……。それでも、ありがとう」
そう言ってノルフィンさんは、俺の背中を優しく撫でた後、俺から離れた。
~ 宴会 ~
死者への葬儀を終えて、全員が野営場所に戻った頃には、辺りはすっかりと暗くなっていた。
魔族たちのために、特別な夕食を提供しようと、俺はココロチンとシリルっちに脳内土下座して、もう一度ネットスーパーの買い出しをお願いした。
(ココロチン:了解です)
(シリル:了解)
(二人ともありがとう!)
(ココロチン:特別ボーナスとして私たちもご相伴に与らせてもらいますからね)
(もちろん! 好きなもの頼んでよ!)
こうして神ネコ配送の佐藤さんが到着するのを待っていると……。
ドシンドシンドシン!
ドシンドシンドシン!
ドシンドシンドシン!
巨大な地響きがだんだんと野営地の方に近づいてきた。
「……さまー」
暗闇の中からライラの声が聞こえた気がする。
ドシンドシンドシン!
ドシンッ!
地響きが止まったとき、俺たちの目の前には巨大なグレイベアと、その背中に乗ったライラがいた。
「ライラ!」
「シンイチ様!」
俺はグレイベアの足元に駆け寄ると、ライラが俺の腕に飛び込んできた。
俺はライラの首元に顔を埋めて、ライラ成分を燃料タンク一杯に補充する。
一呼吸する度に、ライラ補給ゲージがどんどん上がっていくのがわかった。
おっと、充填し過ぎて下半身にエナジーが回ってしまうところだったぜ。
「皆さんのお食事と他に必要になりそうなものを持ってまいりました」
「さすがライラ! ありがとうね!」
そう言って俺は、再びライラを抱き寄せる。
「うーっ! グレイも頑張った! うーっ! 褒めて! うーっ!」
ルカによって幼女に戻ったグレイちゃんが、そう言って俺の太ももに噛り付いてきた。
「グレイちゃんも、往復大変だったね。ありがとうね」
そう言ってグレイちゃんの頭を撫でると、グレイちゃんは幸せそうな表情を浮かべて、俺の太ももを涎で濡らした。
その夜は、ココロチンたちがネットスーパーで買い出しをしてくれた食材と、ライラが運んできた食糧とで、大宴会が催された。
みんなが盛り上がってる中、俺は子供たちと一緒に、ライラが運んできてくれたテントを組み立てていた。
さすがにラミアやミノタウロスは入れないだろうが、ゴブリンやオーク族にとっては休める空間になるはずだ。
ぐふふ。もちろん俺とライラのテントもあるわけで。
さすがに今夜はハッスルはできないがイチャイチャは出来るな!
「シンイチー! あっという間に家ができたよ! すごい!」
「そうだろ? みんなの分の家も作ろうな!」
「「「わーい!」」」
全員分のテントが出来がった後は、子供たちをたくさんのお菓子とジュースで労った。
炭酸飲料に大はしゃぎしている子供たちを余所にして、俺はといえば、エプロン姿で魔族たちに給仕するライラの姿を、エロい目で見守っていた。
ぐふふ。早く就寝タイムにならないかなぁ。
そして……その夜。
俺はテントの中で、ライラを隣にして――
ゴブリンとハーピーの子供たちと一緒に寝ることになった。
既にショゴタンに取り込まれてしまった遺体は、もうどうしようもない。
結局、発見することができたのは4人だけで、しかもそのうちの二人は正視して見ることができないほどの状態だった。
ほんと申し訳なかったけど、俺にはその遺体の運搬を手伝うことはできなかった。
森の木に手をつき、散々吐いた後、ノルフィンさんたちのところに戻ると、地面に5つの遺体が並んで横たえられていた。
生き残っている魔族たちが全員集まって、遺体の周りを取り囲んでいる。
黙って、ただただ、遺体を見つめていた。
「あれが魔族のやり方なのじゃ」
それは俺も知っている。
コボルト村やグレイベア村で何度か見たことがあるから。
魔族の中には、死者は聖樹の元へ還ると考えるものもいる。
他にも魔神の楽園へ誘われるとか色々バリエーションはあるみたいだけど、
基本的に「死んでしまったら、ただ土へと還るだけ」
というのが、多くの魔族の根底に持っている考え方のようだった。
それを否定するつもりはない。
変えようとは思わない。
だから、これは俺の問題でしかないし、魔族たちにとってとても失礼なことに当たるかもしれない。
けど、
「ノルフィンさん。俺も死者を見送らせてもらっていいですか?」
「えっ!? えぇ、もちろんいいけど」
ノルフィンさんが驚いたのは、俺の突然の申し出というよりも、手に持っている野草の花束を見てのことだろう。
俺は一人の遺体の前に膝をつくと、花を数本つかみ取って遺体の胸元に置いた。
「貴方がみんなを守ってくれたおかげで、ここにいる人が助かりました。貴方の信じる神様から最高のご褒美が貴方に与えられますように。あなたの眠るこの場所が美しい花で満たされますように」
「「「「……」」」」
完全な沈黙が広がる。森からは風の音さえ聞こえない。
ひとり一人に同じことを俺は繰り返した。
「ぐす……」
「うっ……サマリンド……うっ……」
「……あなた……」
「ぐすっ……ぐすっ」
魔族の中から嗚咽が上がる。
最後に俺は、並ぶ遺体の中央に残った花束を置いて、遺体さえ残らなかった魔族たちの安寧を祈った。
俺が祈りを終えると、ノルフィンさんが音もなく近づいてきて、そっと俺を抱き締めた。
「私たちの仲間のために、ありがとう」
「いや、これは俺のためにやったことなんだ。もし失礼があったら、申し訳いことをしたよ。ごめんね」
そう。これは俺のワガママだ。魔族たちの都合なんて一切考えていない。ただ、自分のためにやったことでしかない。
「そう……。それでも、ありがとう」
そう言ってノルフィンさんは、俺の背中を優しく撫でた後、俺から離れた。
~ 宴会 ~
死者への葬儀を終えて、全員が野営場所に戻った頃には、辺りはすっかりと暗くなっていた。
魔族たちのために、特別な夕食を提供しようと、俺はココロチンとシリルっちに脳内土下座して、もう一度ネットスーパーの買い出しをお願いした。
(ココロチン:了解です)
(シリル:了解)
(二人ともありがとう!)
(ココロチン:特別ボーナスとして私たちもご相伴に与らせてもらいますからね)
(もちろん! 好きなもの頼んでよ!)
こうして神ネコ配送の佐藤さんが到着するのを待っていると……。
ドシンドシンドシン!
ドシンドシンドシン!
ドシンドシンドシン!
巨大な地響きがだんだんと野営地の方に近づいてきた。
「……さまー」
暗闇の中からライラの声が聞こえた気がする。
ドシンドシンドシン!
ドシンッ!
地響きが止まったとき、俺たちの目の前には巨大なグレイベアと、その背中に乗ったライラがいた。
「ライラ!」
「シンイチ様!」
俺はグレイベアの足元に駆け寄ると、ライラが俺の腕に飛び込んできた。
俺はライラの首元に顔を埋めて、ライラ成分を燃料タンク一杯に補充する。
一呼吸する度に、ライラ補給ゲージがどんどん上がっていくのがわかった。
おっと、充填し過ぎて下半身にエナジーが回ってしまうところだったぜ。
「皆さんのお食事と他に必要になりそうなものを持ってまいりました」
「さすがライラ! ありがとうね!」
そう言って俺は、再びライラを抱き寄せる。
「うーっ! グレイも頑張った! うーっ! 褒めて! うーっ!」
ルカによって幼女に戻ったグレイちゃんが、そう言って俺の太ももに噛り付いてきた。
「グレイちゃんも、往復大変だったね。ありがとうね」
そう言ってグレイちゃんの頭を撫でると、グレイちゃんは幸せそうな表情を浮かべて、俺の太ももを涎で濡らした。
その夜は、ココロチンたちがネットスーパーで買い出しをしてくれた食材と、ライラが運んできた食糧とで、大宴会が催された。
みんなが盛り上がってる中、俺は子供たちと一緒に、ライラが運んできてくれたテントを組み立てていた。
さすがにラミアやミノタウロスは入れないだろうが、ゴブリンやオーク族にとっては休める空間になるはずだ。
ぐふふ。もちろん俺とライラのテントもあるわけで。
さすがに今夜はハッスルはできないがイチャイチャは出来るな!
「シンイチー! あっという間に家ができたよ! すごい!」
「そうだろ? みんなの分の家も作ろうな!」
「「「わーい!」」」
全員分のテントが出来がった後は、子供たちをたくさんのお菓子とジュースで労った。
炭酸飲料に大はしゃぎしている子供たちを余所にして、俺はといえば、エプロン姿で魔族たちに給仕するライラの姿を、エロい目で見守っていた。
ぐふふ。早く就寝タイムにならないかなぁ。
そして……その夜。
俺はテントの中で、ライラを隣にして――
ゴブリンとハーピーの子供たちと一緒に寝ることになった。
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