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第150話 戦乱の影響

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「【幼女化ビィィィィム!】」

 十字に交差させた俺の腕から、光線が真っ直ぐに伸びていく。

 グレイベア村から北に十五キロほど離れた草原で、俺はショゴタン二体を同時に相手していた。

 ボンッ! ボンッ!

 二体のショゴタンは一瞬で幼女と化した。

 幼女化されたショゴタンは、その全身に目と口の紋様が浮かんでは消えるのを繰り返している。もう何度も見てきたショゴタンの幼女姿ではあるのだが、未だに慣れることはない。

「ぐぅぉぉぉーっ! ぐぅぉぉぉっー!」

 グレイちゃんが本来の巨大なグレイベアの姿で勝どきを上げる。ショゴタン退治で口を出すだけのルカと違い、グレイちゃんは俺たちを背中に乗せてグレイベア村からここまで運んでくれた。

 大事なことなので繰り返すが、ルカは口を出すだけで何もしていない。

「ふはは。わらわもグレイちゃんも、ショゴタンにはちょっとしたトラウマがあるでの。シンイチが倒してくれて助かったわ」

 現在のルカとグレイちゃんは、本来のドラゴンとグレイベアの力を有した状態で幼女に変化している。なので、ショゴタンに遭遇しても狂気に襲われることはないはずだ。

 だが、二人が始めてショゴタンと遭遇したときは、俺の【幼女化】による幼女状態だったため、普通に恐慌状態に陥っていた。

 その当時の記憶が残っているので、ショゴタンについてはどうも苦手意識を持ってしまったらしい。

「おっ、ショゴタン幼女が二人とも消えおったぞ!?」

「ちょうど今、妖異回収班の皆さんが妖異二体を持って帰ってくれたところだよ」
 
 女神クエストに出されるような強力な妖異については、討伐だけでなく捕獲するという選択肢もある。捕獲を選択した場合に、倒した妖異の回収に来てくれるのが妖異回収班の皆さん。

 彼らの存在は俺にしか見えないので、ルカやグレイちゃんからすれば、二体の妖異が忽然として消えてしまったように見えるのだ。

「とりあえず無事に妖異退治も済んだことだし、そろそろお昼にしようか」

「おぉ! そうじゃの! それではグレイちゃんを元の姿に戻すとするか」

 巨大なグレイベアを、いつもの可愛いグレイちゃんの姿に戻すということなのだろう。とはいえ、

「えっと……元の姿に戻すって今の姿の方が元だよね?」

「いちいちうるさい奴じゃのう。どっちでもええじゃろが」

「確かに」

 なんてことを話ながら、俺とルカはグレイちゃんの背中から降りた。

 ルカが巨大なグレイベアの鼻先に立つ。

「それじゃ始めるとするか。ほれっ、グレイベアよ、幼女になーれ!」

 ルカが首元に下げているペンダントを握り締めると、そこに嵌められている賢者の意志から青い光が放たれる。

 ボンッ!

 グレイベアの全身を覆うような白い煙が立ち上る。白い煙は直ぐに消えてしまったが、そこにはいつものグレイちゃんの姿があった。

 ちょうどグレイちゃんが幼女になったタイミングで、俺の背後から声が掛かる。

「チーッス! 田中さん、注文のお品になります!」

 振り向くと、円形の黒い空間から、神ネコ配送の佐藤さんが上半身を乗り出して、俺の方に大きなビニール袋を差し出していた。

 俺がそのビニール袋を受け取ると、佐藤さんは「毎度ありッス!」と言ってすぐに黒い空間に引っ込んでしまった。

 さすがに外では、ゆっくりと話をするなんてことはできないらしい。

「おっ! シンイチの手からおいしそうな臭いがするぞ!」
「うーっ! うーっ! ビッグかつ丼弁当! 大好き! うーっ!」

 ルカとグレイちゃんが、俺の手からビニール袋を奪い取っていった。

 ちなみに二人には佐藤さんの姿は見えていないし、声も聞こえていない。なので、二人から見れば、俺の手に突然ビニール袋が出現したように見えたはずだ。

「おぉ! ちゃんと練乳も買ってくれたのじゃな! さすがシンイチじゃ!」
「うーっ! うーっ! 練乳うーっ!」

 練乳チューブを持って喜びの舞を踊る二人を見ながら、俺はビックかつ丼弁当に手を伸ばした。



~ 昼食タイム ~

 俺たちは正午の強い日差しを避け、森近くの木陰に座って昼食を取っていた。

「それにしても、最近はやたらと妖異退治の女神クエストが増えて来たよね」

「確かにの。ここから北のドラン公国に対して、セイジューなんちゃらが侵略に乗り出したからだと、ステファンが言っておったが……そうなのかの?」

「うーっ、うーっ?」

「もともとドラン公国って内乱状態にあったみたいだし、どうなんだろうね」

 今は幼女となって地下帝国の幼女強制収容所に入っているセレーナが、前にそんなことを言っていた気がする。

「そのセイジューなんちゃらは、破竹の勢いで数多くの国を落しているらしいが、もしかすると背後に妖異の影があるやもしれん」

「そうなのかなぁ」

 ルカの言葉に対して、俺は頭上に晴れ渡る青天を眺めながら、適当に返事をする。

「まぁ、そうなのかもねぇ……」

 実際のところは、早く帰ってライラとイチャイチャしたいなんてことを考えていた。

 だが、そんな俺の願いは、この後の出来事によって、一蹴されることになる。

「まぁ、弁当食べ終わったら、さっさと村に帰ろ……!?」

 ガサッ!

 背後の茂みから音がしたので、俺は慌てて振り向くと……

 そこに三人のラミアが立っていた。

 
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