144 / 189
第143話 エルフのお茶処
しおりを挟む俺とライラとは、ミチノエキ村への出入りを自粛することになったので、村の様子については統括責任者であるステファンからの報告を受けて知ることが多い。
ミリアが暗殺者ギルドの招致に成功した以降、ミチノエキ村にどのような変化が生じたのか気になるところだ。だがステファンが見る限りにおいては、表立って変ったところはないとのことだった。
「唯一変わったと言えば『エルフのお茶処』というエルフのメイド喫茶が出来たことでしょうか」
「何それ行きたい! でも行けない!」
「ミリア殿が店長を務めている、表側はどうみても普通のお茶処です」
な、なるほど……ドラゴンシスターズのフロント企業ならぬフロント茶処だったか。
となると従業員のエルフメイドも、ドラゴンシスターズの構成員ということか。
ちょっと怖いかも……いや、俺たちにとっては頼もしい存在ではあるんだけど。
「タクス殿のアイデアでメイドの衣装にゼッタイリョーイキ?というのを取り入れたことで人気が出たらしく、現在ではバークの街から数日かけて訪れる人までいるようです」
「何それ! 超行ってみたい! ……ぐぬぬ、だけど行けないぃぃぃ! ぐぬぬ! ぐぬぬ! ぐぬぬぅ!」
無意識のうちに、俺はめっちゃ歯ぎしりしていた。
「ステファン! お願いがある!」
俺の勢いに呑まれたステファンが思わず気を付けの姿勢を取る。
「は、はい! なんでしょうか!?」
緊張からかステファンの額に汗が滲み始めていた。
「エルフのお茶処の制服を一着用意してもらいたい!」
「えっ!? はっ!? あっ? あ~~!」
俺の凄まじい勢いで放たれた要求を受けて、ステファンはパニックに……はなることもなく、逆にホッとした顔つきになった。
「あっ、そのことですか! それでしたら恐らくシンイチ殿から要望が出るはずだからとミリア殿から一式持たされております。あと一応、ルカ殿とグレイ殿の分もございます」
さすがミリア! 超有能な出来るダークエルフ!
「あっ、それなら、今度ミリアさんが帰ってくるとき……」
「駄目です」
「はわ!?」
「ミリア殿によると、おそらくシンイチ殿は、ミリア殿のメイド服姿を要望されるだろうからお断りしておいてくれと言われております」
ミリア……超先読みが出来るダークエルフだった。
~ ミチノエキ村 ~
ステファンから改めてミチノエキ村の状況について話を聞いた。
ミチノエキ村は住人のほとんどが人間で、亜人は少数派だ。獣人や魔族に到っては、奴隷商が宿泊したときに見かける、鎖で繋がれている奴隷しか見ることはない。
村の北には、街道へ抜ける街道がある。しかしここを通と、街道まで遠回りになる上、道の状態も悪く、魔物が出る森も近い。しかも民家の裏庭を通らなければならず、普通の人なら誰もが通ろうと思わない。
これがコボルト村へと続く道であることを知るのは、村の中でも極一部の者に限られている。
「ミリア殿の言われた通り、ここに民家を立てたのは正解でした。現在はエルフのお茶処のスタッフ寮として使っています。これで裏道を通ろうとする人を自然に監視することもできるようになりました」
ミチノエキ村に出入りする人のほとんどは、王国の街道を通ってくる人たちだ。ここから最も近いバーグの街から来る人が最も多いけど、最近は王都ハルバラルトから来る人や、北方のドラン公国から王都を目指す商隊が宿泊・補給地として利用するようになってきている。
ちょっとした交易の要所になりつつあるミチノエキ村だった。
~ コボルト村 ~
ステファンの次ぎは、ロコにコボルト村の状況について話を聞いた。
大陸共通語が苦手なロコの希望で、秘書としてイリアくんが一緒に来ている。
なぜだろう。なんだかうらやましい。
そしてなぜだろう。イリアくんは、綺麗な銀髪をポニーテイルにまとめ上げて、真っ白なうなじを晒している。銀縁眼鏡を掛けているのは、きっと秘書のコスプレだな。いやコスプレじゃなく秘書だけど。
だがなぜだろう。なぜメイド服なんだ? いや、それはいつものことか。だがどうして眩しいくらいに白い絶対領域を完成させているんだ? どうしていつもそんなに可愛いんだ?
ジィィィっとイリアくんの絶対領域に意識をダイブインしていると、白いふとももがもじもじと内側へ動き始めた。
「こ、これ……ミリアさんのお店の制服なんだよ」
そういって俺を上目遣いに身ながら頬を染めるイリアくんは、めちゃくちゃ美少女だった。
「ど、どうかな……」
そう言ってイリアくんはスカートの裾をつまんで、少し引き上げた。
絶対領域の幅が広がり、さらにその上の夢のY字空間が見えそうになる。
ゴクリ。
「シ、シンイチ、イリアにハツジョウ? ロコ、少し出て行く? ホウがヨイ?」
ハッ!?
「あっ、いや、どうして? 発情なんてしなてないよ? まさか俺が? そんなわけないじゃん! アハハー」
そう言って、俺が乾いた笑い声を上げると、イリアくんの表情がシュンと哀し気なものに変わった。
「あっ! いや、そのイリアくんは魅力的だよ! メイド服凄く似合ってるし、イリアーズ絶対領域サイコー! ハスハスしてみたいなー! だけどほら、今はお仕事、お仕事中だから発情なんてしてない、しちゃだめじゃない? 駄目だよね! だから発情するのは我慢! そう我慢してるの!」
「そ、そうなんだ……」
イリアくんの顔に笑顔が戻ったので、俺はホッと一安心する。
「あの、シンイチくん……その、ライラさんがお疲れの時とか、妊娠されている間は、ぼ、ぼくが代わりに……その……いいからね? 前みたいに」
「えっ!? いやいや、あははは、ま、まぁ、うん、その……あはは」
何と答えるべきか分からず、結局、曖昧にして誤魔化してしまったが、少し引っ掛かる言葉がイリアくんの口から出ていたような。
前みたいに?
前ってなんだろう? えっ!? 何かあったっけ!? 何もないよね?
何もない! うん、何もないはず! 何もないんだってば!
俺が知らないところで、俺とイリアくんに一体何があったのか考えていると、頭がフットーしそうになってきたので、俺はそれ以上考えることを止めた。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる