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第120話 地下帝国と地獄の穴
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温泉で疲れを取り除いた翌朝、目を覚ました俺は一瞬、自分がどこにいるのか分からず混乱してしまった。
窓から差し込む日差しに照らされたのは、畳の上に敷かれた布団。部屋の片隅にある低いテーブルの上には、保温ポットが置かれていて、浴衣姿のライラがお茶を入れている。
「んっ……ここはどこだ? ライラと旅行してたんだっけ? 温泉……入ったよな……熱海? 草津?」
段々と頭がハッキリとしてきた。
「……別府……いやいやいやグレイベア村だ!」
バッと起き上がった俺を見て、ライラがニッコリと微笑みかけてくれる。
「おはようございます、シンイチさま。お茶はいかがですか?」
「ありがとう、いただくよ」
ライラの淹れてくれたお茶を呑んで、混乱する気持ちを落ち着けることにした。
この村長宅(兼旅館)の中は、まるで日本そのものだ。
廊下を忙しそうに行き来するケモミミ獣人やラミアのスタッフがいなければ、ここが異世界なんて気付くことはできないだろう。
「どうされました? もしかして体調がすぐれないとか?」
「んっ。いや、身体の方は大丈夫だよ。ただ、ここが故郷とそっくり過ぎて、混乱しちゃってね」
俺はライラを引き寄せて、浴衣から露わになったライラの白い胸に手を伸ばす。
ライラの柔らかく手に吸いつくような胸を揉みしだきながら、俺は瞑想して心を落ち着けることにした。
もみもみ。もみもみ。もみもみ。
はぁ……落ち着くぅ……。
もみもみ。むくむく。もみもみ。むくむく。もみもみ。
ハァ、ハァ、お、落ち着く……い、いや落ち着きたい!
もみもみ。むくむく。もみもみ。むくむく。むくむく。
なんだか超落ち着きたくて超興奮してきた!
「シ、シンイチさま……は、鼻息が耳に当たってくすぐったいです……」
「ハァハァ、ラ、ライラ、ライラァァァァァ!」
ガバッ!
「きゃっ❤」
落ち着きを取り戻そうと瞑想を始めた俺が落ち着いたのは、それから6時間後のことだった。
~ 待ち合わせ ~
「……それで? 確か、お昼に待ち合わせしておったはずじゃが?」
「す、すみませんでした」
俺は今日もまたいつものように、流華の間で正座させられていた。
「地下ダンジョンの視察に行きたいと言ったのは、お主じゃったような気がするのじゃが?」
「は、はい。ルカ様のおっしゃる通りでございます。ルカ様が直々にご案内くださるということで、本当に楽しみにしておりました」
「嘘を吐くな! 視察より、ライラとの交尾の方が良かったから遅れたということじゃろうが!」
「はい! ライラとのエッチは何よりも代え難く……最高です!」
俺の所信表明を聞いたルカちゃんがガクリと首を垂れた。
「はぁぁぁ。もうよいわ。ほれ、さっさと地下に行くぞ! ずっと皆を待たせておるのじゃ、急げ」
「ハハァ!」
俺は深く頭を下げた後、地下ダンジョンへ向かうルカの後を追った。
皆を待たせてるって……ステファンとかフワデラさんかな?
地下ダンジョンは、地下1階でタナァカ式人外脳育成カリキュラムを行なうときか、地下15階にある拠点を利用するときにしか訪れたことはない。
現在では地下15階へ直行する階段が作られているので、他の階層が現在どのようになっているのか俺はほとんど知らなかった。
ただルカを頼ってグレイベア村にやってくる魔族の多くが、この地下ダンジョンで暮らしているとは聞いていた。
またダンジョンオーナーである俺は、このダンジョン内に発生する魔物を指定することができる。時々、ステファンやルカに依頼されて、拠点から地下ダンジョンに発生する魔物の設定作業を依頼されることはあった。
ダンジョンマスターの権限を持つ、ルカやフワデラさんは、ダンジョン内の魔物を自由に使役することができる。それで魔物たちの力を使って、ダンジョンの開発を進めているという話は聞いていた。
そう。
地下ダンジョンの開発を進めているのは聞いていたのだ。
だが、その開発がトンデモナイことになっていることを、俺は実際に目にするまで全く知らなかった。
ルカに先導されて訪れた地下三階層。
そこには、東京ドームほどありそうな巨大な空間が広がっていた。
階層の中央には直径30mくらいの巨大な穴があり、上は吹き抜けて空が見えている。下はちょっと目算では距離が分からないくらい深かった。まるで地獄に続く穴のようにも思える。
ただこの穴があるおかげで、上空からは日光が差し込むため、階層全体は普通に歩けるくらいの明るさがあった。
「なななな、なんじゃこりゃぁぁぁ!」
俺が腰を抜かさんばかりに驚くのを見て、ルカがいかにも「してやったり!」というドヤ顔になる。
「ようこそシンイチ! シンイチ地下帝国へようこそなのじゃ!」
ちょ! やめて!
地下帝国とか、そんな頭の悪そうな名称に、勝手に人の名前を被せるのやめてぇぇぇ!
中央の穴より手前には、何かの式典でも行なわれるのか、大きなステージが設置されており、その手前の広場には、数百人とも見える人間や魔族たちが集まっていた。
「さぁ、シンイチ! 皆、お前が来るのをずっと待っておったのじゃ。しっかりと務めを果たすのじゃぞ!?」
務め? 何の務め? というか何の話!?
俺はルカに尋ねるが、ルカは俺の質問を無視して、広場に向かって大声で叫ぶ。
「シンイチ地下帝国の王! シンイチ・タヌァカの到着じゃぁぁぁ!」
「「「うおぉぉぉぉぉ!」」」
数百人による盛大な歓声と拍手の音が階層中に響き渡る。
「ほわぁぁぁぁぁ!?」
その様子を見た俺は思わずチビりそうになっていた。
というか、ちょっとチビッた。
偶々、ダンジョンに降りる直前にトイレを済ませていたので、ちょびっとで済んだのだ。
そうでなければドバーッとかなってたかもしれない。
俺は、事前にトイレに行かせておいてくれ神々の配慮に対し、心の中で感謝の五体投地を捧げた。
窓から差し込む日差しに照らされたのは、畳の上に敷かれた布団。部屋の片隅にある低いテーブルの上には、保温ポットが置かれていて、浴衣姿のライラがお茶を入れている。
「んっ……ここはどこだ? ライラと旅行してたんだっけ? 温泉……入ったよな……熱海? 草津?」
段々と頭がハッキリとしてきた。
「……別府……いやいやいやグレイベア村だ!」
バッと起き上がった俺を見て、ライラがニッコリと微笑みかけてくれる。
「おはようございます、シンイチさま。お茶はいかがですか?」
「ありがとう、いただくよ」
ライラの淹れてくれたお茶を呑んで、混乱する気持ちを落ち着けることにした。
この村長宅(兼旅館)の中は、まるで日本そのものだ。
廊下を忙しそうに行き来するケモミミ獣人やラミアのスタッフがいなければ、ここが異世界なんて気付くことはできないだろう。
「どうされました? もしかして体調がすぐれないとか?」
「んっ。いや、身体の方は大丈夫だよ。ただ、ここが故郷とそっくり過ぎて、混乱しちゃってね」
俺はライラを引き寄せて、浴衣から露わになったライラの白い胸に手を伸ばす。
ライラの柔らかく手に吸いつくような胸を揉みしだきながら、俺は瞑想して心を落ち着けることにした。
もみもみ。もみもみ。もみもみ。
はぁ……落ち着くぅ……。
もみもみ。むくむく。もみもみ。むくむく。もみもみ。
ハァ、ハァ、お、落ち着く……い、いや落ち着きたい!
もみもみ。むくむく。もみもみ。むくむく。むくむく。
なんだか超落ち着きたくて超興奮してきた!
「シ、シンイチさま……は、鼻息が耳に当たってくすぐったいです……」
「ハァハァ、ラ、ライラ、ライラァァァァァ!」
ガバッ!
「きゃっ❤」
落ち着きを取り戻そうと瞑想を始めた俺が落ち着いたのは、それから6時間後のことだった。
~ 待ち合わせ ~
「……それで? 確か、お昼に待ち合わせしておったはずじゃが?」
「す、すみませんでした」
俺は今日もまたいつものように、流華の間で正座させられていた。
「地下ダンジョンの視察に行きたいと言ったのは、お主じゃったような気がするのじゃが?」
「は、はい。ルカ様のおっしゃる通りでございます。ルカ様が直々にご案内くださるということで、本当に楽しみにしておりました」
「嘘を吐くな! 視察より、ライラとの交尾の方が良かったから遅れたということじゃろうが!」
「はい! ライラとのエッチは何よりも代え難く……最高です!」
俺の所信表明を聞いたルカちゃんがガクリと首を垂れた。
「はぁぁぁ。もうよいわ。ほれ、さっさと地下に行くぞ! ずっと皆を待たせておるのじゃ、急げ」
「ハハァ!」
俺は深く頭を下げた後、地下ダンジョンへ向かうルカの後を追った。
皆を待たせてるって……ステファンとかフワデラさんかな?
地下ダンジョンは、地下1階でタナァカ式人外脳育成カリキュラムを行なうときか、地下15階にある拠点を利用するときにしか訪れたことはない。
現在では地下15階へ直行する階段が作られているので、他の階層が現在どのようになっているのか俺はほとんど知らなかった。
ただルカを頼ってグレイベア村にやってくる魔族の多くが、この地下ダンジョンで暮らしているとは聞いていた。
またダンジョンオーナーである俺は、このダンジョン内に発生する魔物を指定することができる。時々、ステファンやルカに依頼されて、拠点から地下ダンジョンに発生する魔物の設定作業を依頼されることはあった。
ダンジョンマスターの権限を持つ、ルカやフワデラさんは、ダンジョン内の魔物を自由に使役することができる。それで魔物たちの力を使って、ダンジョンの開発を進めているという話は聞いていた。
そう。
地下ダンジョンの開発を進めているのは聞いていたのだ。
だが、その開発がトンデモナイことになっていることを、俺は実際に目にするまで全く知らなかった。
ルカに先導されて訪れた地下三階層。
そこには、東京ドームほどありそうな巨大な空間が広がっていた。
階層の中央には直径30mくらいの巨大な穴があり、上は吹き抜けて空が見えている。下はちょっと目算では距離が分からないくらい深かった。まるで地獄に続く穴のようにも思える。
ただこの穴があるおかげで、上空からは日光が差し込むため、階層全体は普通に歩けるくらいの明るさがあった。
「なななな、なんじゃこりゃぁぁぁ!」
俺が腰を抜かさんばかりに驚くのを見て、ルカがいかにも「してやったり!」というドヤ顔になる。
「ようこそシンイチ! シンイチ地下帝国へようこそなのじゃ!」
ちょ! やめて!
地下帝国とか、そんな頭の悪そうな名称に、勝手に人の名前を被せるのやめてぇぇぇ!
中央の穴より手前には、何かの式典でも行なわれるのか、大きなステージが設置されており、その手前の広場には、数百人とも見える人間や魔族たちが集まっていた。
「さぁ、シンイチ! 皆、お前が来るのをずっと待っておったのじゃ。しっかりと務めを果たすのじゃぞ!?」
務め? 何の務め? というか何の話!?
俺はルカに尋ねるが、ルカは俺の質問を無視して、広場に向かって大声で叫ぶ。
「シンイチ地下帝国の王! シンイチ・タヌァカの到着じゃぁぁぁ!」
「「「うおぉぉぉぉぉ!」」」
数百人による盛大な歓声と拍手の音が階層中に響き渡る。
「ほわぁぁぁぁぁ!?」
その様子を見た俺は思わずチビりそうになっていた。
というか、ちょっとチビッた。
偶々、ダンジョンに降りる直前にトイレを済ませていたので、ちょびっとで済んだのだ。
そうでなければドバーッとかなってたかもしれない。
俺は、事前にトイレに行かせておいてくれ神々の配慮に対し、心の中で感謝の五体投地を捧げた。
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