96 / 189
第95話 フワデラさんの新婚旅行
しおりを挟む
「シンイチ様、ただいま戻りました」
深夜、コボルト村の洞窟前広場でのんびり月見酒をしていたとき、突然目の前に白いイルカのような姿の精霊が現れた。
ルカがぼくの護衛にと付けてくれていた風の精霊ウィンが使いから戻ってきたのだ。
相変わらずイケてる親父の渋いボイスだった。以前は、ウィンの声を聞くたびに前世の取引先の社長さんを思い出して体が緊張したものだ。だが今は超有能な執事さんという認識なので、声を聴くとかえってホッとする。
「おかえりー! ネフューとフィーネさんは元気だった?」
「ええ、お二人ともお元気でした」
「結構、時間が掛ったね? ネフューの村まではかなり遠いの?」
コボルト村を出るとき、ネフューは故郷の村までの道中、精霊たちだけが認識できる印が刻まれた小さな塚を設置していた。
そのためウィンは迷うこともなくネフューの村まで辿りつくことができたはずなのだ。
「いえ、その……お二人がとても良くしてくださったもので、ついつい長逗留してしまい……」
ウィンがヒレで頭をポリポリと掻いた。カワイイなこのおっさんイルカ。
「そっか! それだけ居心地の良い村ってことなんだね」
つまりネフューの村の再建が順調だということなんだろう。
「はい。まだエルフの数は少ないですが、村の復興にみなが一生懸命で、誰もが目を輝かせていましたよ」
「おお、いいじゃん、いいじゃん! それで……」
「ええ、いつでもお越しくださいとネフュー様から伝言をお預かりしております」
「おっしゃ!」
というわけで俺はライラを連れてネフューの村へ旅行することにした。
子供を失ってしまった悲しみから徐々に回復しつつあるライラだったが、それでも時折ふさぎ込んでしまうことがある。
ライラを何とか元気にできないかと考えに考えて思いついたのが、ネフューたちに会いに行くということだった。
懐かしい顔を見れば気持ちも安らぐだろうし、俺たちよりずっと長命のエルフなら年寄りの知恵で、ライラを癒す方法を知っているかもしれない。
「よっし! ネフューたちに会いに行くぜ!」
「わらわも行くのじゃー!」
「うっ! うっ! うー!」
突然、俺の背後にルカとグレイちゃんが現れた。
「へっ!?」
「わらわたちも、ネフューの村に行きたい! 行きたい!」
「うーっ! うっ、うっ、うーっ!」
「ちょっ、ライラと二人だけのイチャラブ旅行なんだけど!?」
ライラ以外の連れがいたら、好きな時に好きなところでライラとくんずほぐれつできないじゃないか! 俺はさっと練乳チューブを二本取り出して二人の買収を試みた。
「行きたい! 行きたい! 行きたい! 行きたいのじゃー!」
「うっ、うっ、うーっ! うっ、うっ、うーっ!」
ルカとグレイちゃんは、俺の手からサッと練乳チューブを奪うと、再び駄々をこね始めた。しかも今度は地面を激しくゴロゴロしながらだ。
「わ、わかった、わかったよ」
「何がわかったのじゃ? わらわたちを連れていくのか?」
「うっ! うっ!?」
仕方ない。この二人であればライラとメイクラブするときも気を遣うことはないだろう。しばらく離れておくように言う手間が増えるだけだ。
「つ、連れていく……連れていくから」
「やったのじゃー!」
「うっ、ううっー!」
喜びのあまり、先ほどより激しく地面をゴロゴロする二人を残して、ぼくはライラに旅行の話を伝えるべく奥部屋へと戻っていった。
ライラに話したらすごく喜んでくれた。
~ グレイベア村 ~
「そういうことでしたら、お二人の護衛のため、わたしも同行するといたしましょう」
グレイベア村でルカとグレイちゃんの旅行準備を進めていると、フワデラさんが俺に声を掛けてきた。フワデラさんの右腕には相変わらずシュモネーがくっついている。
「うふふ。新婚旅行ですね。ダーリン!」
「えっ、いやっ、ハニー、その、そうではなく、ご、護衛……」
ダーリンとかハニーとか抜かしたかこのバカップル。
「ダーリンと新婚旅行……行きたいな!」
瞳をうるうるさせてシュモネーがフワデラさんを見つめる。それを受けてフワデラさんがオロオロし、ついに助けを求めるかのように俺の方を見た。
「ま、まぁ、新婚旅行大事! 大事ですよ! お二人も一緒に行きましょうよ!」
俺はウィンを呼び出し、ネフューに六人でお邪魔する旨を伝えるよう使いに出した。
ライラと二人っきりのはずが……R18旅行のはずが……子守とバカップルの面倒を見ることになろうとは……。
(ココロ:お猿さん、お猿さん)
(はい。ライラといっぱいイタシたいだけのお猿さんです。どうぞ)
(ココロ:ただいま神スパの3Fフロアで夏休み向け商品セールが開催されています)
(はぁ……それが何か?)
(シリル:テントも取り扱っているようですので、これを3つ揃えれば道中、それなりのプライベート空間を構築できると思いますが)
(そ、それだぁぁ!)
(ココロ:よかったですね。お猿さん)
(ココロチン! ココロチンは旅行の目的を誤解しているようだけど、あくまでネフュー達との再会とライラの慰安旅行であってだな……)
(シリル:ではテントは不要と……)
(3つ注文します!)
テントは大きいため3回に分けて注文しました。
ぐふふ。これで狭いテントの中でライラと二人っきり……。
俺は旅行への期待に胸を膨らませていた。
いや、正直に言おう。
俺は旅行への期待に股間も膨らませていた。
深夜、コボルト村の洞窟前広場でのんびり月見酒をしていたとき、突然目の前に白いイルカのような姿の精霊が現れた。
ルカがぼくの護衛にと付けてくれていた風の精霊ウィンが使いから戻ってきたのだ。
相変わらずイケてる親父の渋いボイスだった。以前は、ウィンの声を聞くたびに前世の取引先の社長さんを思い出して体が緊張したものだ。だが今は超有能な執事さんという認識なので、声を聴くとかえってホッとする。
「おかえりー! ネフューとフィーネさんは元気だった?」
「ええ、お二人ともお元気でした」
「結構、時間が掛ったね? ネフューの村まではかなり遠いの?」
コボルト村を出るとき、ネフューは故郷の村までの道中、精霊たちだけが認識できる印が刻まれた小さな塚を設置していた。
そのためウィンは迷うこともなくネフューの村まで辿りつくことができたはずなのだ。
「いえ、その……お二人がとても良くしてくださったもので、ついつい長逗留してしまい……」
ウィンがヒレで頭をポリポリと掻いた。カワイイなこのおっさんイルカ。
「そっか! それだけ居心地の良い村ってことなんだね」
つまりネフューの村の再建が順調だということなんだろう。
「はい。まだエルフの数は少ないですが、村の復興にみなが一生懸命で、誰もが目を輝かせていましたよ」
「おお、いいじゃん、いいじゃん! それで……」
「ええ、いつでもお越しくださいとネフュー様から伝言をお預かりしております」
「おっしゃ!」
というわけで俺はライラを連れてネフューの村へ旅行することにした。
子供を失ってしまった悲しみから徐々に回復しつつあるライラだったが、それでも時折ふさぎ込んでしまうことがある。
ライラを何とか元気にできないかと考えに考えて思いついたのが、ネフューたちに会いに行くということだった。
懐かしい顔を見れば気持ちも安らぐだろうし、俺たちよりずっと長命のエルフなら年寄りの知恵で、ライラを癒す方法を知っているかもしれない。
「よっし! ネフューたちに会いに行くぜ!」
「わらわも行くのじゃー!」
「うっ! うっ! うー!」
突然、俺の背後にルカとグレイちゃんが現れた。
「へっ!?」
「わらわたちも、ネフューの村に行きたい! 行きたい!」
「うーっ! うっ、うっ、うーっ!」
「ちょっ、ライラと二人だけのイチャラブ旅行なんだけど!?」
ライラ以外の連れがいたら、好きな時に好きなところでライラとくんずほぐれつできないじゃないか! 俺はさっと練乳チューブを二本取り出して二人の買収を試みた。
「行きたい! 行きたい! 行きたい! 行きたいのじゃー!」
「うっ、うっ、うーっ! うっ、うっ、うーっ!」
ルカとグレイちゃんは、俺の手からサッと練乳チューブを奪うと、再び駄々をこね始めた。しかも今度は地面を激しくゴロゴロしながらだ。
「わ、わかった、わかったよ」
「何がわかったのじゃ? わらわたちを連れていくのか?」
「うっ! うっ!?」
仕方ない。この二人であればライラとメイクラブするときも気を遣うことはないだろう。しばらく離れておくように言う手間が増えるだけだ。
「つ、連れていく……連れていくから」
「やったのじゃー!」
「うっ、ううっー!」
喜びのあまり、先ほどより激しく地面をゴロゴロする二人を残して、ぼくはライラに旅行の話を伝えるべく奥部屋へと戻っていった。
ライラに話したらすごく喜んでくれた。
~ グレイベア村 ~
「そういうことでしたら、お二人の護衛のため、わたしも同行するといたしましょう」
グレイベア村でルカとグレイちゃんの旅行準備を進めていると、フワデラさんが俺に声を掛けてきた。フワデラさんの右腕には相変わらずシュモネーがくっついている。
「うふふ。新婚旅行ですね。ダーリン!」
「えっ、いやっ、ハニー、その、そうではなく、ご、護衛……」
ダーリンとかハニーとか抜かしたかこのバカップル。
「ダーリンと新婚旅行……行きたいな!」
瞳をうるうるさせてシュモネーがフワデラさんを見つめる。それを受けてフワデラさんがオロオロし、ついに助けを求めるかのように俺の方を見た。
「ま、まぁ、新婚旅行大事! 大事ですよ! お二人も一緒に行きましょうよ!」
俺はウィンを呼び出し、ネフューに六人でお邪魔する旨を伝えるよう使いに出した。
ライラと二人っきりのはずが……R18旅行のはずが……子守とバカップルの面倒を見ることになろうとは……。
(ココロ:お猿さん、お猿さん)
(はい。ライラといっぱいイタシたいだけのお猿さんです。どうぞ)
(ココロ:ただいま神スパの3Fフロアで夏休み向け商品セールが開催されています)
(はぁ……それが何か?)
(シリル:テントも取り扱っているようですので、これを3つ揃えれば道中、それなりのプライベート空間を構築できると思いますが)
(そ、それだぁぁ!)
(ココロ:よかったですね。お猿さん)
(ココロチン! ココロチンは旅行の目的を誤解しているようだけど、あくまでネフュー達との再会とライラの慰安旅行であってだな……)
(シリル:ではテントは不要と……)
(3つ注文します!)
テントは大きいため3回に分けて注文しました。
ぐふふ。これで狭いテントの中でライラと二人っきり……。
俺は旅行への期待に胸を膨らませていた。
いや、正直に言おう。
俺は旅行への期待に股間も膨らませていた。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる