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第74話 別れ、そして新しい入居者
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グレイベア村の建設は思ったよりも早く完了した。ルカの眷属たちは新しい住居を得て非常に満足しているようだ。巣穴の中も、コボルト村の洞窟内と変わらぬくらい快適なものに仕上がっていた。
「シンイチ! ありがとうなのじゃ! わらわはシンイチが必ず素晴らしい村とわらわの寝床を作ってくれると信じておったぞ!」
「気に入って貰えたようでよかったよ! ところで余った金貨については……」
「もちろん全てお主にくれてやる! 好きに使うと良い!」
「ありがとね!」
村の建設に当たってはかなりのお金を使ったにも関わらず、まだ金貨の山はまったく減っていなかった。
俺は今後の村の運営のために半分だけ残し、残りを当初の約束通りマーカスとネフュー、ヴィル、ステファンに渡すことにした。
「面倒くさいことになると嫌だから四等分な!」
四人を前に俺がそう言うと、
「五等分だな。お前もちゃんと働いた。報酬はきっちり受け取れって教えたろ?」
マーカスが俺を嗜《たしな》めるように返してきた。
「そうだった。では五等分ということで受け取って欲しい」
~ ヴィル ~
「兄ちゃん……俺、姉ちゃんを探しにいくよ」
ヴィルが俺と二人っきりで話をしたいというので、村はずれの丘に登って二人で草の上に寝っ転がった。その後の第一声が先程のヴィルの言葉だった。
「そうか……」
ヴィルには金貨を手に入れたら何をしたいかということを聞いていたので、ヴィルの答えはある程度予想していた。
「マーカスがヴィルについて行くってさ。ヴィル一人じゃ心配だからって」
「おっちゃんが!?」
「ああ」
マーカスとは少し前にヴィルの姉探しについての話をしていた。マーカスはヴィルが姉を探す旅に出るときは、姉の居所について確かな目途が付くまでは自分がついていくつもりだと言っていた。
「二人が村からいなくなると寂しくなるなぁ。いや六人か……」
「あっ、うーん、やっぱりミッシールとミモザは付いて来るって言うだろうと思う。もし説得できてここに残ることになったら……」
「安心しろ、お前が姉ちゃんを連れて戻ってくるまで俺が二人を守ってみせるよ」
「ありがと、さすが兄ちゃんだぜ」
でも俺はハーレムメンバーたちも二人に付いていくのだろうと思っていた。
そして次の日、俺はマーカスとヴィル、そしてハーレムメンバーの四人の出発をコボルト村から見送る。
「まぁ坊主、そうしけた顔するな! ヴィルが姉ちゃんを見つけたら帰ってくるからよ」
「そうだぜ兄ちゃん、すぐに飛んで帰ってくるからな! ここが俺たちの家なんだからさ!」
「お、おう……グズ。その時は寄り道しないで真っすぐ村に戻ってこいよ! ……グズ」
俺は涙と鼻水を止めることができなかった。
馬車に乗った6人が見えなくなるまで、俺はずっと村の入り口に立って手を振り続けた。
~ ネフュー ~
「シンイチ、実は相談が……」
ネフューとフィーネが真面目な顔をして俺に話しかけてきた。
まさかとは思ったけど、ネフューの願い事も前に聞いていたから大体の予想はついていた。
「故郷の森に戻って村を再興するんだろ?」
二人のエルフは静かに頷いた。
「コボルト村もミチノエキ村もかなり発展してきた。グレイベア村にはドラゴンの眷属たちがいる。戦争でも起きない限り、彼らだけでも十分な村の守りができるだろう」
「そだね」
「今のタイミングを逃すと、ぼくはこの村やシンイチたちの暖かさから離れられなくなってしまう。だから……」
「わかってる。それに応援だってするし、そのうち遊びにいくから」
「あぁ、待ってるよ」
その日、俺は二度目の見送りをした。二人の乗った馬車が見えなくなるまで、俺はずっと手を振り続けた。
二人の姿が遠くに消えてしまうと、俺はライラのところへ駆け寄って、
「うわぁぁぁん、ライラァァー、ライラァァー」
ライラの胸に顔を埋めて泣き喚いた。涙と鼻水でぐちゃぐちゃだったにも関わらず、ライラは俺の頭を胸の中にやさしく抱き入れてくれた。
「ライラはどこかへ行ったりしないよね! ねっ! ねっ!」
「わたしはシンイチさまのお傍にいないと死んでしまいますから。絶対に離れたりしません」
「ライラァァー、死んじゃやだぁぁー、ぐえぇぇぇ」
俺の泣き声を聞いてやってきた子コボルトたち全員がもらい泣きして大騒動になるまで、俺はライラの胸で泣き続けた。
この世界に飛ばされて、最初に出会ったマーカス、ネフュー、ヴィルの三人は俺にとっては本当の家族、いやそれ以上のものだったのだ。そのことを俺は今更ながらに理解した。
「まさかステファンまでどこかへ行ったりしないよな?」
「わたしの生きる目的はここにあり、ここにしかありません。女神様に生きることを許された残りの命、すべてシンイチ殿に捧げております故」
俺はステファンの手を固く固く握った。お互いに顔をぐしゃぐしゃに濡らしながら。
~ イリアくん ~
「あの、今日からこちらでお世話になりますイリアです! よ、よろしくお願いします!」
ネフューたちが使っていた部屋に新しい住人が入ることになった。一人は、男の娘……げふんげふん……男友達のイリアくんだ。そして、
「弟のついでにお世話になります。イリアーヌです! サキュバスです! 夜のお世話はお任せください!」
イリアくんを巨乳にしただけの超絶エロいお姉さんが洞窟に住むことになった。
ゴゴゴゴゴゴゴ!
俺は背後から来る恐ろしい闘気に足を振るわせていた。闘気の塊は俺の右腕を取ると、これまで聞いたことのない怒気を含んだ恐ろしい声を放った。
「シンイチ様のツガイのライラです。夜露死苦」
挨拶が漢字で見えた気がした。
「シンイチ! ありがとうなのじゃ! わらわはシンイチが必ず素晴らしい村とわらわの寝床を作ってくれると信じておったぞ!」
「気に入って貰えたようでよかったよ! ところで余った金貨については……」
「もちろん全てお主にくれてやる! 好きに使うと良い!」
「ありがとね!」
村の建設に当たってはかなりのお金を使ったにも関わらず、まだ金貨の山はまったく減っていなかった。
俺は今後の村の運営のために半分だけ残し、残りを当初の約束通りマーカスとネフュー、ヴィル、ステファンに渡すことにした。
「面倒くさいことになると嫌だから四等分な!」
四人を前に俺がそう言うと、
「五等分だな。お前もちゃんと働いた。報酬はきっちり受け取れって教えたろ?」
マーカスが俺を嗜《たしな》めるように返してきた。
「そうだった。では五等分ということで受け取って欲しい」
~ ヴィル ~
「兄ちゃん……俺、姉ちゃんを探しにいくよ」
ヴィルが俺と二人っきりで話をしたいというので、村はずれの丘に登って二人で草の上に寝っ転がった。その後の第一声が先程のヴィルの言葉だった。
「そうか……」
ヴィルには金貨を手に入れたら何をしたいかということを聞いていたので、ヴィルの答えはある程度予想していた。
「マーカスがヴィルについて行くってさ。ヴィル一人じゃ心配だからって」
「おっちゃんが!?」
「ああ」
マーカスとは少し前にヴィルの姉探しについての話をしていた。マーカスはヴィルが姉を探す旅に出るときは、姉の居所について確かな目途が付くまでは自分がついていくつもりだと言っていた。
「二人が村からいなくなると寂しくなるなぁ。いや六人か……」
「あっ、うーん、やっぱりミッシールとミモザは付いて来るって言うだろうと思う。もし説得できてここに残ることになったら……」
「安心しろ、お前が姉ちゃんを連れて戻ってくるまで俺が二人を守ってみせるよ」
「ありがと、さすが兄ちゃんだぜ」
でも俺はハーレムメンバーたちも二人に付いていくのだろうと思っていた。
そして次の日、俺はマーカスとヴィル、そしてハーレムメンバーの四人の出発をコボルト村から見送る。
「まぁ坊主、そうしけた顔するな! ヴィルが姉ちゃんを見つけたら帰ってくるからよ」
「そうだぜ兄ちゃん、すぐに飛んで帰ってくるからな! ここが俺たちの家なんだからさ!」
「お、おう……グズ。その時は寄り道しないで真っすぐ村に戻ってこいよ! ……グズ」
俺は涙と鼻水を止めることができなかった。
馬車に乗った6人が見えなくなるまで、俺はずっと村の入り口に立って手を振り続けた。
~ ネフュー ~
「シンイチ、実は相談が……」
ネフューとフィーネが真面目な顔をして俺に話しかけてきた。
まさかとは思ったけど、ネフューの願い事も前に聞いていたから大体の予想はついていた。
「故郷の森に戻って村を再興するんだろ?」
二人のエルフは静かに頷いた。
「コボルト村もミチノエキ村もかなり発展してきた。グレイベア村にはドラゴンの眷属たちがいる。戦争でも起きない限り、彼らだけでも十分な村の守りができるだろう」
「そだね」
「今のタイミングを逃すと、ぼくはこの村やシンイチたちの暖かさから離れられなくなってしまう。だから……」
「わかってる。それに応援だってするし、そのうち遊びにいくから」
「あぁ、待ってるよ」
その日、俺は二度目の見送りをした。二人の乗った馬車が見えなくなるまで、俺はずっと手を振り続けた。
二人の姿が遠くに消えてしまうと、俺はライラのところへ駆け寄って、
「うわぁぁぁん、ライラァァー、ライラァァー」
ライラの胸に顔を埋めて泣き喚いた。涙と鼻水でぐちゃぐちゃだったにも関わらず、ライラは俺の頭を胸の中にやさしく抱き入れてくれた。
「ライラはどこかへ行ったりしないよね! ねっ! ねっ!」
「わたしはシンイチさまのお傍にいないと死んでしまいますから。絶対に離れたりしません」
「ライラァァー、死んじゃやだぁぁー、ぐえぇぇぇ」
俺の泣き声を聞いてやってきた子コボルトたち全員がもらい泣きして大騒動になるまで、俺はライラの胸で泣き続けた。
この世界に飛ばされて、最初に出会ったマーカス、ネフュー、ヴィルの三人は俺にとっては本当の家族、いやそれ以上のものだったのだ。そのことを俺は今更ながらに理解した。
「まさかステファンまでどこかへ行ったりしないよな?」
「わたしの生きる目的はここにあり、ここにしかありません。女神様に生きることを許された残りの命、すべてシンイチ殿に捧げております故」
俺はステファンの手を固く固く握った。お互いに顔をぐしゃぐしゃに濡らしながら。
~ イリアくん ~
「あの、今日からこちらでお世話になりますイリアです! よ、よろしくお願いします!」
ネフューたちが使っていた部屋に新しい住人が入ることになった。一人は、男の娘……げふんげふん……男友達のイリアくんだ。そして、
「弟のついでにお世話になります。イリアーヌです! サキュバスです! 夜のお世話はお任せください!」
イリアくんを巨乳にしただけの超絶エロいお姉さんが洞窟に住むことになった。
ゴゴゴゴゴゴゴ!
俺は背後から来る恐ろしい闘気に足を振るわせていた。闘気の塊は俺の右腕を取ると、これまで聞いたことのない怒気を含んだ恐ろしい声を放った。
「シンイチ様のツガイのライラです。夜露死苦」
挨拶が漢字で見えた気がした。
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