45 / 189
第44話 内緒でもないプレゼント
しおりを挟む
ステファンが資材を仕入れるためにバーグの街に出向くというので、俺は同行させてもらうことにした。
「ちょっと作ってもらいたいものがあってね。少々複雑な構造なんで、腕の良い鍛冶屋か細工職人がいるお店に連れてって欲しいんだ」
「わかりました。えーっと、ドワーフがやってる鍛冶屋ならひとつ良いところを知ってるのでご案内しますよ」
「えっ、ドワーフ!それはいいね!」
まぁ、エルフがいるんだからドワーフだっているよな。
「それじゃ出発!……ってマーカスがいないな。一緒に行くって言ってたのに」
俺が空っぽの御者台を見てステファンに声を掛ける。荷馬車に腰かけているステファンが首を振る。
ん、マーカスのやつ遅刻なのか?と俺が首を傾げていると、背後からトトトッと音がして、トンッという音と同時に御者台にライラの姿があった。
「ライラ!?」
「マーカスさんはお腹が痛いということで、急遽わたしが御者を務めさせていただくことになりました」
「そ、そうなの?」
「そうなんです。さぁシンイチ様、出発しますよ。お隣へどうぞ」
俺がよいこらしょと御者台に昇っているとき、ライラとステファンがお互いに親指をグッと立てているのが見えたような気がしたが、気のせいだろう。
御者台に腰かけた俺が出発を告げるとライラが馬車を進め始めた。
俺は視界の端でガタガタと馬車が揺れ動く度に、微かにフルフルと揺れるライラの健康的な太ももを捉えていた。
あれに挟まれてみてぇなぁ~。なんてことを考えていると、自分がガン見していることに気が付いて視線を上げる。
ライラと目が合った。
口角の片方を上げた憎たらしい程のドヤ顔だった。
くっ!
悔しい! でも、めっちゃ可愛い。
「まっ、まぁ? ライラならマーカス程ではないけど、腕っぷしは強いから用心棒にはなるかー。頼りにしてるよー」
照れ隠しで俺は適当な言葉を並べた。
「ふふふ。ありがとうございます。なんでしたら用心棒だけでなく、シンイチ様の寝所をお温めいたしますが?」
「それは遠慮しとく。我慢できなくて襲っちゃいそうだから」
「襲っていいんですよ?」
「よくないかなー」
相変わらずライラとのコミュニケーションは下半身によくないが、最近はそれはそれとして彼女との会話を楽しむことができる余裕が俺にも出てきた。
俺は自分の下半身への血流増加がバレないように腰をもぞもぞしつつ、ステファンにこれから向かう鍛冶屋についての話を聞く。
「やっぱりドワーフの鍛冶屋っていうと、頑固一徹の職人って感じの髭もじゃ親父なの?」
「確かにドワーフの職人と言えばそういうタイプが多いですね。でもタンドルフは全然違いますよ。当世風といいますか、気さくな人柄で髭も生やしてはいませんね」
「そうなの?」
「ええ。だけど腕は確かですよ。売り出し中ということもあって、どんな依頼でもこなしているようなので、シンイチ殿の依頼も恐らく受けると思います」
「シンイチ様、ドワーフに何を作ってもらうんですか?」
ライラが聞いてきた。俺が荷物袋からスケッチブックを取り出し始めたので、ライラは俺が御者台から落ちないように馬を止める。
「まぁ黙って作ってプレゼントってわけにはいかないものだし、隠す必要もないか」
二人がキョトンとした顔をこちらに向けている。俺はスケッチブックを開いてライラとステファンに見えるように向ける。
「これだ!」
「「えっ!」」
スケッチブックには義手のざっくりとした図面が描かれていた。俺は二人が内容を理解したと判断したタイミングで紙を捲ると義眼のイメージ図が描かれたページが開かれる。
「ステファンの義手とライラの義眼だよ。さすがにこれはマーカスもネフューも、もちろん俺も作れないから、腕の良い職人さんに依頼しようと思ってね」
「シンイチ殿……そんな、俺なんかの為に……いえ、わたしたちの為にそんな……」
バッ!
ライラが俺に飛び着いてきた。俺の頭を自分の胸の中に力一杯抱きしめる。俺にとっては前世から今までで初めての顔面おっぱいであり、赤飯を炊いてもおかしくない程の慶事だったが、彼女の力が強すぎて頭が痛いのと息ができないのとで正直死にかけた。
彼女の腕を死ぬほどタップしてようやく解放されたとき、俺は酸素のありがたみに感謝することしかできなかった。
そしてライラの両腕が俺の両腕をガッシリと掴んで押さえながら叫ぶ。
「シンイチ様! わたしと結婚してください! いま! ここで!」
「ステファンとしなさい!」
「もうここで子どもを作りましょう! いま! ここで!」
「ステファンと作って!」
茶番が終わったにも関わらず、彼女は俺の手を放そうとしない。俺の手を握ったままそれを自分の方に引き寄せて頬ずりしている。
荷台のステファンが涙顔でお礼を繰り返す。
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとう、ありがとう……」
「ま、まぁ、そういうことだから。早く街へ行こうよ! ねっ!」
ライラが名残惜しそうに俺の手を放す。
「はい! 参りましょう!」
こうして俺たちはバーグの街へと馬車を進めて行った。
「ちょっと作ってもらいたいものがあってね。少々複雑な構造なんで、腕の良い鍛冶屋か細工職人がいるお店に連れてって欲しいんだ」
「わかりました。えーっと、ドワーフがやってる鍛冶屋ならひとつ良いところを知ってるのでご案内しますよ」
「えっ、ドワーフ!それはいいね!」
まぁ、エルフがいるんだからドワーフだっているよな。
「それじゃ出発!……ってマーカスがいないな。一緒に行くって言ってたのに」
俺が空っぽの御者台を見てステファンに声を掛ける。荷馬車に腰かけているステファンが首を振る。
ん、マーカスのやつ遅刻なのか?と俺が首を傾げていると、背後からトトトッと音がして、トンッという音と同時に御者台にライラの姿があった。
「ライラ!?」
「マーカスさんはお腹が痛いということで、急遽わたしが御者を務めさせていただくことになりました」
「そ、そうなの?」
「そうなんです。さぁシンイチ様、出発しますよ。お隣へどうぞ」
俺がよいこらしょと御者台に昇っているとき、ライラとステファンがお互いに親指をグッと立てているのが見えたような気がしたが、気のせいだろう。
御者台に腰かけた俺が出発を告げるとライラが馬車を進め始めた。
俺は視界の端でガタガタと馬車が揺れ動く度に、微かにフルフルと揺れるライラの健康的な太ももを捉えていた。
あれに挟まれてみてぇなぁ~。なんてことを考えていると、自分がガン見していることに気が付いて視線を上げる。
ライラと目が合った。
口角の片方を上げた憎たらしい程のドヤ顔だった。
くっ!
悔しい! でも、めっちゃ可愛い。
「まっ、まぁ? ライラならマーカス程ではないけど、腕っぷしは強いから用心棒にはなるかー。頼りにしてるよー」
照れ隠しで俺は適当な言葉を並べた。
「ふふふ。ありがとうございます。なんでしたら用心棒だけでなく、シンイチ様の寝所をお温めいたしますが?」
「それは遠慮しとく。我慢できなくて襲っちゃいそうだから」
「襲っていいんですよ?」
「よくないかなー」
相変わらずライラとのコミュニケーションは下半身によくないが、最近はそれはそれとして彼女との会話を楽しむことができる余裕が俺にも出てきた。
俺は自分の下半身への血流増加がバレないように腰をもぞもぞしつつ、ステファンにこれから向かう鍛冶屋についての話を聞く。
「やっぱりドワーフの鍛冶屋っていうと、頑固一徹の職人って感じの髭もじゃ親父なの?」
「確かにドワーフの職人と言えばそういうタイプが多いですね。でもタンドルフは全然違いますよ。当世風といいますか、気さくな人柄で髭も生やしてはいませんね」
「そうなの?」
「ええ。だけど腕は確かですよ。売り出し中ということもあって、どんな依頼でもこなしているようなので、シンイチ殿の依頼も恐らく受けると思います」
「シンイチ様、ドワーフに何を作ってもらうんですか?」
ライラが聞いてきた。俺が荷物袋からスケッチブックを取り出し始めたので、ライラは俺が御者台から落ちないように馬を止める。
「まぁ黙って作ってプレゼントってわけにはいかないものだし、隠す必要もないか」
二人がキョトンとした顔をこちらに向けている。俺はスケッチブックを開いてライラとステファンに見えるように向ける。
「これだ!」
「「えっ!」」
スケッチブックには義手のざっくりとした図面が描かれていた。俺は二人が内容を理解したと判断したタイミングで紙を捲ると義眼のイメージ図が描かれたページが開かれる。
「ステファンの義手とライラの義眼だよ。さすがにこれはマーカスもネフューも、もちろん俺も作れないから、腕の良い職人さんに依頼しようと思ってね」
「シンイチ殿……そんな、俺なんかの為に……いえ、わたしたちの為にそんな……」
バッ!
ライラが俺に飛び着いてきた。俺の頭を自分の胸の中に力一杯抱きしめる。俺にとっては前世から今までで初めての顔面おっぱいであり、赤飯を炊いてもおかしくない程の慶事だったが、彼女の力が強すぎて頭が痛いのと息ができないのとで正直死にかけた。
彼女の腕を死ぬほどタップしてようやく解放されたとき、俺は酸素のありがたみに感謝することしかできなかった。
そしてライラの両腕が俺の両腕をガッシリと掴んで押さえながら叫ぶ。
「シンイチ様! わたしと結婚してください! いま! ここで!」
「ステファンとしなさい!」
「もうここで子どもを作りましょう! いま! ここで!」
「ステファンと作って!」
茶番が終わったにも関わらず、彼女は俺の手を放そうとしない。俺の手を握ったままそれを自分の方に引き寄せて頬ずりしている。
荷台のステファンが涙顔でお礼を繰り返す。
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとう、ありがとう……」
「ま、まぁ、そういうことだから。早く街へ行こうよ! ねっ!」
ライラが名残惜しそうに俺の手を放す。
「はい! 参りましょう!」
こうして俺たちはバーグの街へと馬車を進めて行った。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚
ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。
しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。
なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!
このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。
なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。
自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!
本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。
しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。
本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。
本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。
思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!
ざまぁフラグなんて知りません!
これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。
・本来の主人公は荷物持ち
・主人公は追放する側の勇者に転生
・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です
・パーティー追放ものの逆側の話
※カクヨム、ハーメルンにて掲載
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる