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第39話 新たな家族

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 ステファンとライラの話は結婚の報告ではなかった。このコボルト村に不足している資材についての相談だった。

 よかった。最近の俺はすぐブチ切れる、抜身のナイフ(自称)のように危険な男だからな。イチャラブ系の話題だったら危ないところだった。

「それで、今後のこともありますし、街で荷馬車を調達してこようと思うのです」

「確かに馬車がいるってマーカスたちも言ってたな」

「はい。それで以前、荷馬車を売った商人のところに行ってみようかと」

「わかった。ちょっと待ってて」

 俺は一度、奥部屋に戻って金貨を袋に入れ、ステファンのとこに再び戻った。

「はい。これで足りる?」

 ステファンは受け取った袋の中身を見て驚く。

「大金貨を3枚も!? こんなには必要ありません。1枚でもお釣りがきますよ」

「なら、余ったお金はこの村に必要な資材の購入に充てといてよ」

「わ、わかりました。マーカスさんとネフューさんに必要になる資材を相談してみます」

「よろしく」

 そこから先は三人のささやかな酒宴になった。途中、酒が切れそうになったので、俺は奥部屋から黒ラベルのテネシーウィスキー1750mlを持ってきた。

「シンイチ殿、これはとても美味いですね! 今まで飲んだことがありません」

「すごく美味しいです」

 どうやら二人には好評のようで良かった。

「キャラメルのような色合いと口当たり、そしてこの甘い香り……さぞ高級な名酒なのでしょうね。どんな貴族の秘蔵品にもこんなお酒はありませんよ」

「わたしも色々とお酒を運んだことがありますが、こんな綺麗な色と香りのお酒はみたことがありません」

 スーパーで買っただけなんだけどね。いや、まぁ名酒であることは間違いないけどな。

 おいしいお酒が俺たちの口を軽くした。ステファンは亡くなった仲間の為に涙を流し、片腕を失ったことで、何度も死のうと思ったことがあり、今でも思うことがあると泣き崩れた。ライラも泣いた。

 ライラがステファンの背中をやさしくさするのをみながら、俺はステファンを励ますために話をした。

「お前なぁ、片腕失って人生終わったら丸損だよ? 俺の故郷の英雄なんざ、全身46だったか8だったか身体を削られて、腕も足も眼も失って義手と義足に剣を仕込んで魔物たちと戦って身体を取り戻したやつだっているんだぜ」

 アニメの話である。が、どうせ真実なんて知りようがないのでこのまま推して参る。

 ビクッとステファンの身体が反応した。俺は覚えている限り、アニメ版のエピソードを色々脚色あるいは省略して語り続けた。

「その男を最後まで支えていた男の子……だと思ってたのが、実は女の子でさぁ……」

 いつの間にかステファンとライラは俺の話を目をキラキラさせて聞いていた。

「それだけじゃねーぞ、ステファン! お前と同じように左手を失い、それどころか片目を失い、魔物たちに愛するものを奪われながらも、決して屈することなく強大な魔物や魔神に大剣で立ち向かった男がいてだなぁ」

 ステファンの目に恐らくもう消えることのない生気が宿るのを見た俺は、思いっきり調子にのって語り続けた。

「なるほど、左腕に矢の発射装置を付けて……しかしわたしの腕力では厳しいかな」

「まぁ、そいつと同じ方法である必要ないから。お前はお前に相応しいやり方があるって! それを一緒に見つけようぜ!」

「は、はい! シンイチ殿! わたしは、わたしは貴方に会えて本当によかった! 本当に」

「泣くな! もう面倒だから! ここは一緒に未来を祝う場面だから」

「そ、そうですね」

「ほら、飲めぇぇ! ライラも飲めぇぇ!」

「いたらきまふ」

 ライラはかなり酔っぱらっていた。火照った顔が色っぽく、布一枚の服から覗く胸の谷間がエロっぽい。俺は思わずツバを呑み込んだ。

 ライラと目が合う。おうふ。胸をガン見してたのがバレてしまった。

「シンイチ様、もしシンイチ様がお望みであれば、わたしが夜のお相手を……」

「ちょと待て! そんなことをDTに言うんじゃない! しかも恋人の前で!」

「シンイチ殿、ライラはわたしの恋人ではありません。か、身体は……その……奪ってはしまいましたが。確かにラ
イラはこれまでわたしに付き添ってくれました。でも彼女にはいつでもわたしを殺して良いと言っているんですよ」

「何それ!?どういう関係!?」

「シンイチ様、もしステファンがわたしの想い人であったとしても、わたしはシンイチ様がこの身体で癒されるのであれば、喜んで寝床を共にさせていただきたいと思います。もし、わたしに恩返しの機会をお与えいただけるなら……一生懸命に尽くします」

 ゴクリ! 
 
 ライラの潤んだ瞳と濡れた唇にどうしても視線が行ってしまうのを俺は止められなかった。なまめかしい身体のラインと先程よりあらわになった胸の谷間を脳が自動で録画を始めた。これで賞味期限1年のおかずをゲット……

 じゃねぇよ俺! 畜生、息子が反応するのを止められない。もう! どうしてくれんのさコレ! 

 でもな、でもな、ライラがずっとステファンを支えているのを見ちゃってるんだよ俺は。
 
 この村に戻ってきたとき、ライラが同じような提案をしたときにステファンが止めたろ? そのときのステファンの中に女に惚れてる男の苦悩が走るのが見えたんだよ。

 それは一瞬だけだったけど、DTの俺には、いやDTだからこそ分かっちゃったんだよ。

 それに、ライラがそのときに言った「わたしの覚悟です」ってのもな、ライラには自覚無いのかもしれんが、自分の身体を俺に投げ出してまでステファンを守ろうとしてんじゃん。

 どんだけ好きやねん! お前らどんだけ愛し合ってるのさ!

 ……ということを脳内で語っていたつもりが、思いっきり口にして二人を怒鳴りつけていた。

「恩返しでエッチしてもらってもまったくもってこれっぽっちも嬉しくないわ! いや嬉しいけどさ! 正直言うとエッチしたい! ライラのおっぱいエロいし! 揉みたい! めっちゃ揉みしだきたい! あぁ何言ってんだおれ、あぁ、もう、つまり、お前らはもう俺の家族なの! それが父親か母親か兄か弟か姉か妹かどういう関係か分からんけど他の連中と同じく家族認定しちゃってんの! 家族と家族でエッチする? しないだろ!? そういうことなんだよ! ちくしょう!」
 
 後日、この酒宴のことを思い出す度に俺は身悶えすることになる。

「シンイチ殿……家族、わたしとライラを家族として受け入れてくれるのですか」
「もうそうしてる」
「「!」」

 ステファンは右腕を目に当てて男泣きし、ライラは両手を口元に当てて涙を流していた。

「シンイチ様の温かくどこまでも深い恩情に感謝します。家族として受け入れてくださって……嬉しいです。でもわたしには何もお返しすることができません、せめて……」

 ライラはすくっと立ち上がってその服を脱ぎ捨てた。

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