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第24話 休息(フルチン)
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死んだ犠牲者たちの無惨な状態については多くを語りたくない。散々、嘔吐したし、たぶん俺の一生のトラウマになるだろう。
ハーレムパーティーの女戦士と女僧侶と女魔術師が亡くなっていた。
生き残った捕虜はハーレムパーティの二人と、他に男一人と女が三人。男の方はもう心が壊れてしまっていた。女たちも適切なケアがなければ同じ運命を辿ることになるだろうと、ネフューが言っていた。
生き残った者たちを、女コボルトと子コボルトが一生懸命に介抱している。ハーレムパーティーのリーダーだった男も、獣人を死ぬほど毛嫌いしていたにも関わらず、今は彼らの為すがままにさせていた。
女拳闘士も生き残っていて、いまはコボルトたちに混ざって作業を手伝っていた。元気そうに動き回っているが、彼女は右目を失っていた。
一応包帯を巻いて手当はしていたが、目を失ったばかりであれほど動けるなんて何というタフネス。あの娘には絶対に逆らわないようにしよう。
「坊主、この近くに小川があるからヴィルとロコを連れて水を汲んできてくれ。ゆっくりでいい。水浴びでもして、ズボンも洗って一休みしてから戻ってこい」
「あ、ああ、わかった……」
そういやズボンがまだ濡れてて気持ち悪い。今更ながらそのことに気が付いた。ヴィルが水筒と革袋を積んだ馬を引いてやってきた。
「兄ちゃん、水浴びしに行こうぜ!」
「みず、くむ、いく」
「ああ行こうか」
洞窟からさほど遠くない場所に川が流れていた。小さい川だったが流れが速く水も澄んでいる。
俺たちは身体と服を洗い、服が乾くまでおやつの木の実を食べながら日向ぼっこをしていた。
「探知」
なんかいいもの落ちてないかなぁと思ってつぶやくと、視界の中にマーカーが表示される。
▼イワナカナ(川魚 DHA+2)
▼イワナカナ(川魚 DHA+2)
▼イワナカナ(川魚 DHA+2)
▼イワナカナ(川魚 DHA+2)
▼ わさび草(毒消し+1)
▼ わさび草(毒消し+1)
▼トリュフ(魔力回復+2)
「ワサビ!? トリュフ!?」
俺は思わず大声を出し、フルチンのまま立ち上がる。
「兄ちゃん、どうした!?」
「なに、あった!?」
同じくフルチンで日向ぼっこしていたヴィルとロコが俺の方を見た。
「食べもん見つけた!」
「おっ、イワナカナがいる。昼飯にしよう!」
「さかな、うまい!」
ヴィルが狙いを澄まし、バッと川の中に飛び込むと、その手には川魚が握られていた。
「ヴィル凄いな!」
「えへへ、もっと捕まえて兄ちゃんに食わせてやるよ!」
「おれ、さかな、とる!」
「おっし二人ともがんばれ、俺は火を起こすぜ」
俺は焚き木を集めた。そのとき川辺に30cmほどの長さの平べったい石を見つけたので、これで魚を石焼にすることにした。
(ココロチン、このワサビ草って俺の知ってるワサビと同じ味がしたりするの?)
(肯定。すり潰して使えばほぼワサビと同じです)
(うっし!)
俺はいそいそと簡易な竈を作って石の下で火を焚き始める。別の石の上でワサビ草をすり潰し、また別の石の上でトリュフを短剣を使ってスライスした。
しばらくするとヴィルとロコがイワナカナ5匹を持って戻ってきた。俺は火の管理を二人に任せて、イワナカナを川で処理する。表面を川石の表面でゴシゴシ洗い、短剣で丁寧に内臓を取り除く。
塩が欲しかったが空腹の今なら何でもおいしく食べられそうだった。それにワサビもトリュフもあるからな。
俺が処理を終えたイワナカナを持って戻ると、二人は俺が何をするのかとジーっと眺めていた。
石の表面が十分に焼けていることを確認し、その上にイワナカナを二匹乗せる。
ジュゥゥゥ!
いい音がして周囲に焼けた魚の香りが広がった。
「うぉぉぉ!」
「おおお!」
二人のテンションが一気に上がる。十分な時間を掛けて焼きあがったイワナカナにすり潰したワサビ草をパラパラッと振って、採集していた大きな葉っぱの上に乗せて二人に差し出した。
「二人とも喰らうがよい!」
二人が一斉にイワナカナにかぶりつく。
「あちちち!」
「あふ、あふ」
「なんだこりゃ辛いぃ! でも美味ぇ!」
「うふぉ、ふぉぉぉ」
俺は次のイワナカナを焼け石の上に装てんする。今度はスライスしたトリュフを乗せて焼いた。
「おぉ、すげぇいい匂いがするぅ。そして美味ぇ!」
「うふぉ、ふぉぉぉ」
トリュフも好評のようだった。俺は最後の二匹を焼き上げる。
「……」
「……」
二人の視線が痛い。
「ほら、二人とも食べなよ」
俺は魚を諦める。また今度だな。
「で、でも、兄ちゃんの分が……」
「シンイチ、たべる、たべる」
ヴィル、お前ヨダレが出てるからな。
「俺は木の実で腹一杯だから、二人で食べなよ」
「そ、そうか! それだったら仕方ないよな!」
「さかな、たべる!」
二人がイワナカナに喰らいついたとき、ココロチンのメッセージ音声が聞こえてきた。
(ぴろろん! 【料理】スキルを獲得しました。 EONポイントを10獲得しました)
(これってどういうスキルなの?)
(料理の腕があがります)
(はぁ……そうですか。ところでさぁ、ずっと気にはなっていたんだけどぉ、EONポイントって何?)
(EONポイントは、敵を倒したり、スキルを発動することによって経験値とは別に付与されるものです)
(それって何かに使えたりするの?)
(EONポイントを10ポイント消費することで魔力1、100ポイント消費で1HPを回復することができます。ただしHP0からの回復はできません)
(まぁHP0じゃ死んでるわけだしなぁ)
(また神ネットスーパーでのお買い物に利用することも可能です)
(……はい?)
(また神ネットスーパーでのお買い物に利用することも可能です)
「お買い物だとぅ!?」
俺が思わず大声を上げながらフルチンのまま立ち上がる。俺の股間のそれがフルンと一回りした。
(毎週、木曜日にはポイント還元セールが開催されているのでお買い得です)
ハーレムパーティーの女戦士と女僧侶と女魔術師が亡くなっていた。
生き残った捕虜はハーレムパーティの二人と、他に男一人と女が三人。男の方はもう心が壊れてしまっていた。女たちも適切なケアがなければ同じ運命を辿ることになるだろうと、ネフューが言っていた。
生き残った者たちを、女コボルトと子コボルトが一生懸命に介抱している。ハーレムパーティーのリーダーだった男も、獣人を死ぬほど毛嫌いしていたにも関わらず、今は彼らの為すがままにさせていた。
女拳闘士も生き残っていて、いまはコボルトたちに混ざって作業を手伝っていた。元気そうに動き回っているが、彼女は右目を失っていた。
一応包帯を巻いて手当はしていたが、目を失ったばかりであれほど動けるなんて何というタフネス。あの娘には絶対に逆らわないようにしよう。
「坊主、この近くに小川があるからヴィルとロコを連れて水を汲んできてくれ。ゆっくりでいい。水浴びでもして、ズボンも洗って一休みしてから戻ってこい」
「あ、ああ、わかった……」
そういやズボンがまだ濡れてて気持ち悪い。今更ながらそのことに気が付いた。ヴィルが水筒と革袋を積んだ馬を引いてやってきた。
「兄ちゃん、水浴びしに行こうぜ!」
「みず、くむ、いく」
「ああ行こうか」
洞窟からさほど遠くない場所に川が流れていた。小さい川だったが流れが速く水も澄んでいる。
俺たちは身体と服を洗い、服が乾くまでおやつの木の実を食べながら日向ぼっこをしていた。
「探知」
なんかいいもの落ちてないかなぁと思ってつぶやくと、視界の中にマーカーが表示される。
▼イワナカナ(川魚 DHA+2)
▼イワナカナ(川魚 DHA+2)
▼イワナカナ(川魚 DHA+2)
▼イワナカナ(川魚 DHA+2)
▼ わさび草(毒消し+1)
▼ わさび草(毒消し+1)
▼トリュフ(魔力回復+2)
「ワサビ!? トリュフ!?」
俺は思わず大声を出し、フルチンのまま立ち上がる。
「兄ちゃん、どうした!?」
「なに、あった!?」
同じくフルチンで日向ぼっこしていたヴィルとロコが俺の方を見た。
「食べもん見つけた!」
「おっ、イワナカナがいる。昼飯にしよう!」
「さかな、うまい!」
ヴィルが狙いを澄まし、バッと川の中に飛び込むと、その手には川魚が握られていた。
「ヴィル凄いな!」
「えへへ、もっと捕まえて兄ちゃんに食わせてやるよ!」
「おれ、さかな、とる!」
「おっし二人ともがんばれ、俺は火を起こすぜ」
俺は焚き木を集めた。そのとき川辺に30cmほどの長さの平べったい石を見つけたので、これで魚を石焼にすることにした。
(ココロチン、このワサビ草って俺の知ってるワサビと同じ味がしたりするの?)
(肯定。すり潰して使えばほぼワサビと同じです)
(うっし!)
俺はいそいそと簡易な竈を作って石の下で火を焚き始める。別の石の上でワサビ草をすり潰し、また別の石の上でトリュフを短剣を使ってスライスした。
しばらくするとヴィルとロコがイワナカナ5匹を持って戻ってきた。俺は火の管理を二人に任せて、イワナカナを川で処理する。表面を川石の表面でゴシゴシ洗い、短剣で丁寧に内臓を取り除く。
塩が欲しかったが空腹の今なら何でもおいしく食べられそうだった。それにワサビもトリュフもあるからな。
俺が処理を終えたイワナカナを持って戻ると、二人は俺が何をするのかとジーっと眺めていた。
石の表面が十分に焼けていることを確認し、その上にイワナカナを二匹乗せる。
ジュゥゥゥ!
いい音がして周囲に焼けた魚の香りが広がった。
「うぉぉぉ!」
「おおお!」
二人のテンションが一気に上がる。十分な時間を掛けて焼きあがったイワナカナにすり潰したワサビ草をパラパラッと振って、採集していた大きな葉っぱの上に乗せて二人に差し出した。
「二人とも喰らうがよい!」
二人が一斉にイワナカナにかぶりつく。
「あちちち!」
「あふ、あふ」
「なんだこりゃ辛いぃ! でも美味ぇ!」
「うふぉ、ふぉぉぉ」
俺は次のイワナカナを焼け石の上に装てんする。今度はスライスしたトリュフを乗せて焼いた。
「おぉ、すげぇいい匂いがするぅ。そして美味ぇ!」
「うふぉ、ふぉぉぉ」
トリュフも好評のようだった。俺は最後の二匹を焼き上げる。
「……」
「……」
二人の視線が痛い。
「ほら、二人とも食べなよ」
俺は魚を諦める。また今度だな。
「で、でも、兄ちゃんの分が……」
「シンイチ、たべる、たべる」
ヴィル、お前ヨダレが出てるからな。
「俺は木の実で腹一杯だから、二人で食べなよ」
「そ、そうか! それだったら仕方ないよな!」
「さかな、たべる!」
二人がイワナカナに喰らいついたとき、ココロチンのメッセージ音声が聞こえてきた。
(ぴろろん! 【料理】スキルを獲得しました。 EONポイントを10獲得しました)
(これってどういうスキルなの?)
(料理の腕があがります)
(はぁ……そうですか。ところでさぁ、ずっと気にはなっていたんだけどぉ、EONポイントって何?)
(EONポイントは、敵を倒したり、スキルを発動することによって経験値とは別に付与されるものです)
(それって何かに使えたりするの?)
(EONポイントを10ポイント消費することで魔力1、100ポイント消費で1HPを回復することができます。ただしHP0からの回復はできません)
(まぁHP0じゃ死んでるわけだしなぁ)
(また神ネットスーパーでのお買い物に利用することも可能です)
(……はい?)
(また神ネットスーパーでのお買い物に利用することも可能です)
「お買い物だとぅ!?」
俺が思わず大声を上げながらフルチンのまま立ち上がる。俺の股間のそれがフルンと一回りした。
(毎週、木曜日にはポイント還元セールが開催されているのでお買い得です)
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