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第8話 旅の仲間3

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「あの子たちを檻に閉じ込めたまま置いて行くのか?」

「彼女たちを置いてはいけない」

「兄ちゃん、さすがにそれはないよ」

 うん。やっぱり面倒くさい。

 俺はおっさんに手招きする。

「んっ、どうした?」

 おっさんが近づいてきたところで、その手を掴み【幼女化】スキルを発動。

「イェスロリータ!」

 ボンっという音と共に煙がおっさんを包み込む。煙が晴れるとそこには幼女がぽかんとした顔で立ち尽くしていた。

「なっ!?」

「なんだこれすげぇー!」

 エルフ男とケモミミ少年が驚く。

(魔力デポジットが不足しています。リセットまであと49分48秒)

 おっと、そういえばついさっき4人を幼女化してたんだっけ。リキャストタイムは50分。

 しばらく幼女化が使えない。

 こういうこともあるのか。ちゃんと使い時を考えないと危険だな。

「どど、どいうことだ?」

 エルフ男が硬直から立ち直って俺に問いただす。

「まぁ、そういう魔法だよ。俺は相手を幼女化することができるんだ」

 触れることが条件のひとつであることは黙っておこう。

「つ、つまり、この男を子供にしたように、檻の中の子供達も……」

「そういうこと。まぁ3時間たったら元に戻るけどね」

「そ、そうか、戻るのか。よかった……。ところで檻の中の一人は奴隷商人だと思うのだが、他の三人は何に戻るんだ?」

「山賊。俺を襲ってきた連中だ」

「兄ちゃん、山賊をやっつけたのか! 俺と同じくらいの年なのにすげぇ!」

 やっつけた……というより面倒みてたと言った方が正解に近い気がしたが黙っておく。もっと褒めて褒めて。

「つまり三時間後には、あの檻の中は奴隷商人と三人の山賊が収まっているということか」

「そだね。連れて行く必要ある?」

「うーん……ない……かな」

 エルフ男はまだ呑み込めないところがあるようだったが、とりあえず現状を受け入れることにしたようだった。

「まっ、そういことで街に行くとしますか」

 そう言って俺が幼女(おっさん)を馬に乗せようとすると、

「兄ちゃん、馬連れていこうよ! オレ馬乗れるよ!」
 
 ケモミミ少年が言った。なるほど荷馬車の馬がいたな。俺がエルフ男に顔を向けると、彼はうなずいて荷馬車から馬をはずす。

 そして、俺がケモミミ少年の後ろに乗り、エルフ男が幼女(おっさん)を抱えて馬に乗り、最後の一頭はエルフ男がロープで引いて行くこととなった。



 ~ 三時間後 ~

 おっさんの幼女化が解けて、今はエルフ男が引いていた馬に乗っている。

「うーん。どうにも信じがたいが本当のようだな」

「やっぱり実演してみせようか?」

 俺がエルフ男に視線を向けると、エルフ男がビクッとなって首を振る。

「いやいや、本当に本当だ。そもそも思い出してくれ、ぼくたちが外に出たときには彼と子供しかいなかった。奴隷商人はどこへ行ったんだ? 直前までやつとこの少年の会話が聞こえていたじゃないか。突然、蒸発したとでも言うのか」

「いや、どちらかというと蒸発したって方が子供になったというのよりは信じられるんだが……まぁ、わかったよ。それで納得するさ」

「匂いはわかんなかったけど、あのDちゃんって子の目と髪の色は奴隷商人と同じだったよ」

「そうだったかな」

「そうだ! 確かにあの子供の目と髪は奴隷商のものだった!」

 おっさんが疑問を差し挟むとエルフ男が慌ててフォローを入れた。それほど幼女化されるのが怖いのだろうか。

 俺が再びエルフ男に視線を送ると、彼は目を背けて馬を少し後退させた。ぐふふ。イケメンをイジメるのは楽しいなぁ。

 俺は懐に収めた金貨の袋を確認する。これは奴隷商人から譲ってもらったもので、決して奪ったわけではない。

 これはDちゃんに甘いマウンテンベリーと交換して受け取ったものだ。うん。正当な取引だった。

 俺はほくほく顔で街へと向かったのであった。



 ~ 奴隷商会 ~

「確かに奴隷証文を確認しました。奴隷契約の解除ということでよろしいですね」

「はい」

 奴隷商会の受付嬢は大変綺麗なお姉さんだった。しかし、奴隷商会って……まぁこの世界の常識がどうなってるのかしらないけど、現時点ではどうにも受け入れられそうにない。

「それではマーカス・ロイドさん、奴隷契約解除となります。後ろを向いてください」

 おっさんが受付嬢に背中を向けると、彼女は魔法陣が彫られた銀製のスタンプのようなものを首に押し当てた。

 銀のスタンプが離れたときには、さっきまでおっさんの首にあった奇妙な紋様が綺麗さっぱりなくなっていた。

「次はネフュー・シンダリンさん、どうぞ」

 エルフ男にも同じようにして首から紋様を消す。

「では白狼族のヴィルフォランドールさん」

 犬耳少年の紋様もめでたく綺麗に消去された。それにしても長い名前だな。

「それではタヌァカ様。こちらが預かり保証金となりますので、お受け取りください。また奴隷契約をご利用の際にはぜひ当商会をよろしくお願い致します」

 受付嬢が俺に深々と頭を下げた。そのとき胸がチラっと見えたのを俺は見逃さなかった。

 見逃さなかったがそのまま視線を外すことができなかったので、再び頭を上げた受付嬢にニヤリという感じのニコッとした笑顔を向けられた。

 やべ、童貞だってバレちゃったかな。

 いや今の俺ならそれが普通か。

「またのお越しをお待ちしております」

 俺たちは奴隷商会を後にした。



 ~ 十分後 ~

 奴隷商会から戻ってきた保証金は、マーカスのおっさんとエルフ男ネフューとヴィルフォランドールにそのまま手渡した。

「いいのか?」

「当面のやりくりするお金が必要でしょ。まぁ、俺は奴隷商人にたくさん交換・・してもらったから大丈夫」

「そ、そうか。坊主にはまた借りが出来ちまったな」

「ありがとう。助かるよ」

「兄ちゃん、太っ腹だ! ありがとな!」

「いいってことよ!」
 
 ガハハハと芝居がかった大笑いをしながら、俺がヴィルフォランドールの頭をなでなですると、よほど嬉しかったのか尻尾をバタバタと激しく動かしていた。

「それで、おっさんたちには早速恩返しをしてもらいたいんだけど」

「おう。何でも言ってくれ」

「出来る限りのことはしよう」

「なになに? 俺なんだってするよ!」

 今何でもすると言ったか? あっ、エルフ男は言ってないか。さかしいやつだ。これだからイケメンは。ケッ。

「詳しい話は全て省略して、端的に言うと、俺はこの世界のことをほとんど知らない。とりあえず今のところお金もあるし、できれば今日からは屋根の下で眠りたい。できれば仕事して金も稼げるようになりたい。既に知っての通り、俺は多少の魔法が使えるから冒険で稼げたらなお嬉しい」

「はぁ……坊主、しっかりしてんなぁ。よし、そんなことでいいんなら俺は力を貸すぜ」

「わたしは冒険者をしている。手伝えることはたくさんあるだろう」

「やっぱ、すげぇ兄ちゃんだったんだな! 俺は兄ちゃんに付いてくぜ! 姉ちゃんの手がかりがつかめるまでだけどな!」

 こうして俺はこの世界で初めての旅の仲間を得ることができたのだった。




φ(・ω・ )φ(・ω・ )φ(・ω・ )
【シンイチノート】
・マーカスとネフューとヴィルが仲間になった!
・受付嬢のお姉さんは口元にエロぼくろが……エロい。
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