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第119話 さよなら、我が愛しの『黒髪委員長の穴(製品名)』
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フィオナを連れてパーティーを抜けると言い出したセリアに、驚くキモヲタ一同。
「復讐って……フィオナ殿を殺した輩は、フィオナ殿ご自身で始末したのではなかったでござるか? それで今の人の姿にもどられたのでは?」
キモヲタの疑問に、セリアはゆっくりと首を横に振りました。
「彼女の復讐は完全に果たされてはいないわ。そうなのよねフィオナ……」
セリアに見つめられたフィオナは、小さく頷きました。全員から視線を向けられていることに気付いたフィオナは、目を伏せながら言いました。
「私は、私は……」
フィオナの手をセリアがそっと握りしめ、もう片方の手でフィオナの肩を抱き寄せます。美しい黒髪のセリアと白銀の髪のフィオナが身を寄せる姿は、夜の女神と月の女神が同時に顕現したかのように美しいものでした。
「いいのよ、フィオナ。私が話すから、あなたは私の声だけ聴いてて。いい?」
こくりと頷くフィオナの肩を、セリアが優しく撫ぜました。
「彼女の復讐は、自分を殺した者たちの命だけでは足りない。仲間の仇を討つまで終わらないわ。そうなのよね、フィオナ?」
フィオナが頷くのを見てから、セリアが話し続けます。
「私のように……」
セリアの青い焔を宿した瞳が、キモヲタを見据えます。
「私のように、安定して人の姿を保ち続けられるようになるには、復讐を果たすことが必要なの。他にも方法があるのかもしれないけど、それが一番、確実だし……私がそうだった」
ゆらり……とセリアの瞳の焔が揺れました。キモヲタにはそれがセリアの心の中の葛藤を表しているように見えました。しかし、その葛藤がどのようなものであるかは、キモヲタには想像することもできませんでした。
「これは感情の問題で、彼女の想いが満たされることが大事なの。復讐が果たされれば、フィオナの心は激しい憎しみから解放される。そうなってしまえば、彼女はもうずっと人の姿のままでいられるわ」
「逆に、想いが満たされない限り、いつまた恐ろしい悪霊に戻ってしまうかわからないということでござるな」
「そうよ」
「とはいえ、実際にはどうするつもりでござるか? 連れ帰ったボルギナンドとお仲間二人を殺すとでも? それならどうして廃城で……」
殺しておけば良かった……と言うのを、キモヲタもためらってしまいました。
「殺すわ。それが必要なら。ただ奴らの悪事が暴かれて、正当に裁かれるのを見れば、それでフィオナの想いが満たされるかもしれない。殺すって言ったけど、なるべくなら殺さないにこしたことはないでしょ?」
それはセリアの道徳心から出た言葉ではありませんでした。
いくら自分に正当な理由があって復讐を果たしたとしても、殺した相手の仲間や家族といった者たちから、新たな復讐の刃を向けられるようになることを、セリアは身をもって知っていたのです。
それまで黙っていたユリアスが、セリアの言葉に反応しました。
「セリアたちは街に戻るのか? なら私たちも一緒に……」
「駄目よ、隊長。……ユリアス、これは私が勝手にすることで任務とは全く関係がないことだし、それに今のフィオナは、いつどんな切っ掛けでヴィドゴニアの『奪う』を始めるかわからないの。そのときに、ここにいる誰からも何ひとつ奪われて欲しくない。フィオナにも奪わせたくない。みんな大事な……」
セリアは、キモヲタを含め、その場にいるひとり一人に目を合わせてから言いました。
「大事な仲間だから」
~ 別れ ~
翌朝、セリアとフィオナはパーティーを抜けて、ボルギノールの街へ引き返していきました。
別れる際、エレナは自分の馬を二人に譲ることにしました。フィオナの身の上に起きたことに同情したというのが、大きな理由でした。命までは奪われなかったものの、エレナ自身もフィオナと似たような経験をしていたからです。
「しかしエレナ殿が二人に馬を贈るとは、意外に太っ腹なのでござるな」
「ふふ。馬車はキンタが曳いてくれるからね。それに馬代くらい、王都で軽く稼いでみせるわ。あのヘラクレス、私に扱わせてもらえるわよね?」
「そういえば、電動ヘラクレスを売るなんて話もありましたな。まぁ、エレナ殿がお金に換えてくれるなら、いくらでも提供いたしますぞ。……って、今のところ手元にないでござるが」
「えっ!? どうしたの!?」
「それはもちろん、我輩からのプレゼンとということで、ちゃんとセリア殿の荷物の中に入れておいたでござるよ。仲良く二人で使ってもらえると嬉しいでござる。デュフフフ」
キモヲタとエレナの会話を聞いていたユリアスが、大笑いをはじめました。
「アハハ、セリアが気がついたときにはきっとこう言いますね……」
「「「キモヲタ殺す! マジ殺す!」」」
全員の声が重なり合い、大笑いが広がりました。
セリアと別れてから、ずっと落ち込んでいたユリアスの笑顔を見て、ほっと安心するキモヲタなのでした。
安心するや否や――
(さらばセリア殿、貴殿のことはピンクのふにふに『セリアたん(元製品名:『黒髪委員長の穴』)を通じて絶対に忘れないでござるよ。そしてフィオナたん、昨晩のうちに新しいピンクのふにふに『フィオナたん』(元製品名:『銀髪巨乳美人』)を購入済みでござる。今晩からよろしくでござるよ)
などと最低なことを考えているキモヲタなのでした。
「復讐って……フィオナ殿を殺した輩は、フィオナ殿ご自身で始末したのではなかったでござるか? それで今の人の姿にもどられたのでは?」
キモヲタの疑問に、セリアはゆっくりと首を横に振りました。
「彼女の復讐は完全に果たされてはいないわ。そうなのよねフィオナ……」
セリアに見つめられたフィオナは、小さく頷きました。全員から視線を向けられていることに気付いたフィオナは、目を伏せながら言いました。
「私は、私は……」
フィオナの手をセリアがそっと握りしめ、もう片方の手でフィオナの肩を抱き寄せます。美しい黒髪のセリアと白銀の髪のフィオナが身を寄せる姿は、夜の女神と月の女神が同時に顕現したかのように美しいものでした。
「いいのよ、フィオナ。私が話すから、あなたは私の声だけ聴いてて。いい?」
こくりと頷くフィオナの肩を、セリアが優しく撫ぜました。
「彼女の復讐は、自分を殺した者たちの命だけでは足りない。仲間の仇を討つまで終わらないわ。そうなのよね、フィオナ?」
フィオナが頷くのを見てから、セリアが話し続けます。
「私のように……」
セリアの青い焔を宿した瞳が、キモヲタを見据えます。
「私のように、安定して人の姿を保ち続けられるようになるには、復讐を果たすことが必要なの。他にも方法があるのかもしれないけど、それが一番、確実だし……私がそうだった」
ゆらり……とセリアの瞳の焔が揺れました。キモヲタにはそれがセリアの心の中の葛藤を表しているように見えました。しかし、その葛藤がどのようなものであるかは、キモヲタには想像することもできませんでした。
「これは感情の問題で、彼女の想いが満たされることが大事なの。復讐が果たされれば、フィオナの心は激しい憎しみから解放される。そうなってしまえば、彼女はもうずっと人の姿のままでいられるわ」
「逆に、想いが満たされない限り、いつまた恐ろしい悪霊に戻ってしまうかわからないということでござるな」
「そうよ」
「とはいえ、実際にはどうするつもりでござるか? 連れ帰ったボルギナンドとお仲間二人を殺すとでも? それならどうして廃城で……」
殺しておけば良かった……と言うのを、キモヲタもためらってしまいました。
「殺すわ。それが必要なら。ただ奴らの悪事が暴かれて、正当に裁かれるのを見れば、それでフィオナの想いが満たされるかもしれない。殺すって言ったけど、なるべくなら殺さないにこしたことはないでしょ?」
それはセリアの道徳心から出た言葉ではありませんでした。
いくら自分に正当な理由があって復讐を果たしたとしても、殺した相手の仲間や家族といった者たちから、新たな復讐の刃を向けられるようになることを、セリアは身をもって知っていたのです。
それまで黙っていたユリアスが、セリアの言葉に反応しました。
「セリアたちは街に戻るのか? なら私たちも一緒に……」
「駄目よ、隊長。……ユリアス、これは私が勝手にすることで任務とは全く関係がないことだし、それに今のフィオナは、いつどんな切っ掛けでヴィドゴニアの『奪う』を始めるかわからないの。そのときに、ここにいる誰からも何ひとつ奪われて欲しくない。フィオナにも奪わせたくない。みんな大事な……」
セリアは、キモヲタを含め、その場にいるひとり一人に目を合わせてから言いました。
「大事な仲間だから」
~ 別れ ~
翌朝、セリアとフィオナはパーティーを抜けて、ボルギノールの街へ引き返していきました。
別れる際、エレナは自分の馬を二人に譲ることにしました。フィオナの身の上に起きたことに同情したというのが、大きな理由でした。命までは奪われなかったものの、エレナ自身もフィオナと似たような経験をしていたからです。
「しかしエレナ殿が二人に馬を贈るとは、意外に太っ腹なのでござるな」
「ふふ。馬車はキンタが曳いてくれるからね。それに馬代くらい、王都で軽く稼いでみせるわ。あのヘラクレス、私に扱わせてもらえるわよね?」
「そういえば、電動ヘラクレスを売るなんて話もありましたな。まぁ、エレナ殿がお金に換えてくれるなら、いくらでも提供いたしますぞ。……って、今のところ手元にないでござるが」
「えっ!? どうしたの!?」
「それはもちろん、我輩からのプレゼンとということで、ちゃんとセリア殿の荷物の中に入れておいたでござるよ。仲良く二人で使ってもらえると嬉しいでござる。デュフフフ」
キモヲタとエレナの会話を聞いていたユリアスが、大笑いをはじめました。
「アハハ、セリアが気がついたときにはきっとこう言いますね……」
「「「キモヲタ殺す! マジ殺す!」」」
全員の声が重なり合い、大笑いが広がりました。
セリアと別れてから、ずっと落ち込んでいたユリアスの笑顔を見て、ほっと安心するキモヲタなのでした。
安心するや否や――
(さらばセリア殿、貴殿のことはピンクのふにふに『セリアたん(元製品名:『黒髪委員長の穴』)を通じて絶対に忘れないでござるよ。そしてフィオナたん、昨晩のうちに新しいピンクのふにふに『フィオナたん』(元製品名:『銀髪巨乳美人』)を購入済みでござる。今晩からよろしくでござるよ)
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