107 / 123
第107話 廃城アベルハーストの罠
しおりを挟む
廃城アベルハーストに忍び込んだ調査団とユリアスたち。
警戒のためにクレイモアを構えるユリアス。レイピアを抜き放ったエルミアナ。セリアは刀の柄に手をかけ、キーラは二本のナイフを逆手に持って警戒していました。
ところがボルギナンドと調査団の男たちは、武器を構えることなく散歩でもするかのような気楽さで、城の入り口に向って歩いていきます。
「警戒しないの?」
怪しんだセリアがそう声を掛けると、ボルギナンドは笑顔で答えました。
「えっ? あぁ、ボクたちの役割は、魔物を引きつけるておくことだからね。吸血鬼が出たら逃げ回るから、その間に調査の方よろしく頼むよ」
「なるほど、了解しました」
ユリアスが返事をしました。
セリアといえばボルギナンドの声に軽薄さを感じ、柳眉を逆立てて抗議しようとしたものの、途中で思いとどまりました。
(吸血鬼なのかはわからないけれど、ここに何かいるのは間違いなさそうね)
セリアは、城内に微かな妖気を感じた気がしました。それは直感に過ぎませんでした。しかし、セリアはこれまでの経験から、こうした直感に素直に従う方が、生き残れる確率がより高くなることを知っていました。
そしてユリアスたちは城内の入り口へ到着しました。
「それじゃ、俺たちはここで魔物の注意を引いておくから、お嬢様方は城内に!」
「わかりました。中の安全が確認できたら声を掛けます」
そしてボルギナンドの指示に従い、ユリアスたちは城内へと入っていきました。
暗い広間に入ったユリウスたちは、手にしていたカンテラを掲げて周囲の様子を確認しました。
正面にある大きな扉とその脇にある小さな扉、部屋の左右にある扉、そのいずれもが閉じられていました。単に閉じられているだけではなく、厚い木の板が打ち付けられて開くことができないようになっていました。
「なんだこれは……」
ユリアスがつぶやきます。エルミアナが近くの扉に近づいて、扉が頑丈に閉じられていることを確認しました。
「まるで、この広間に何かを閉じ込めようとしていたかのようですね」
エルミアナの言葉を聞いて、ハッとしたセリアが入り口を振り返ります。
バタンッ!
それは城内への入り口の扉が閉じられた音でした。
パタンッ!
それはキーラが床に崩れ落ちた音でした。
「キーラ殿! えっ……」
パタンッ!
キーラに駆け寄ろうとしたエルミアナが途中で足をもつれさせ、床に転げ落ちました。
キーラもエルミアナも、ユリアスやセリアに口を動かして何かを訴えかけようとしています。しかし、声は出てきませんでした。
「隊長! これは罠です! 私たちは毒を……」
セリアが床に崩れ落ちました。
「セリア! エルミアナ! キーラ!」
ユリアスはセリアの下に駆け寄ると、彼女を引き起こそうとしました。
「なっ……身体が痺れて……」
しかし、途中でユリアスもその場に崩れ落ちてしまうのでした。
それからしばらくして、入り口の扉を外から叩く音が聞こえてきました。
ドンドン! ドンドン!
「もしもーし! どなたかいらっしゃいますかー! 俺様がいらっしゃいましたがー?」
ボルギナンドの声に続いて、ギャハハと下品と笑う男たちの声が響いてきました。
ガタガタッ! ドンッ!
入り口の扉が開かれ、広間にボルギナンドと彼の仲間たちが入ってきた。彼らは、地面に倒れているユリアスたちを広間の中央に集めると、縄を使って拘束します。
「その黒髪とエルフは魔法を使うらしいから、口もふさいでおけ」
ボルギナンドが命じると、仲間たちはユリアスとエルミアナに猿ぐつわをしました。
「「!!」」
ユリアスとキーラが怒りの声をあげようとしましたが、口が小さく動くだけで声はまったく出ませんでした。
ボルギナンドがニヤニヤ笑いを浮かべながら、セリアの前に立って彼女を見下ろしました。
「色々と聞きたいことはあるだろうが……。そうだな、まずお前たちが痺れて動けなくなったのは、果実ジュースに痺れ薬を混ぜていたからだな。ゆっくりと効いてくるやつだ」
ユリアスたちの目が大きく見開かれました。ボルギナンドはその場にしゃがみ込むと、セリアの顔を覗き込みました。
「あぁ、お前に最初に渡した杯には薬は入ってなかったよ。薬が入ったのは後から注いだ方だ、ほら見てみろよ」
ボルギナンドは果実ジュースが入った水筒を取り出し、セリアに見せました。それを見たセリアの目が一瞬大きく開かれ、その後、憎々し気にボルギナンドを睨みつけるのでした。
水筒の口を見ると真ん中に仕切りがありました。
「この水筒には普通のジュースと薬入りの両方が入っているんだよ。どちらを上にするかで、注ぐものを変えられるってことさ」
ボルギナンドは水筒を投げ捨てると、片手でセリアの胸を乱暴に揉みしだきながら、醜く歪んだ笑みを浮かべます。
「これから俺たちが、お前らをどうするのかについては、説明なんていらないよなぁ? まぁ細かく説明してやってもいいけどぉ?」
「「ギャハハハハ!」」
廃城の広間に、男たちがゴブリンのような哄笑が響き渡るのでした。
警戒のためにクレイモアを構えるユリアス。レイピアを抜き放ったエルミアナ。セリアは刀の柄に手をかけ、キーラは二本のナイフを逆手に持って警戒していました。
ところがボルギナンドと調査団の男たちは、武器を構えることなく散歩でもするかのような気楽さで、城の入り口に向って歩いていきます。
「警戒しないの?」
怪しんだセリアがそう声を掛けると、ボルギナンドは笑顔で答えました。
「えっ? あぁ、ボクたちの役割は、魔物を引きつけるておくことだからね。吸血鬼が出たら逃げ回るから、その間に調査の方よろしく頼むよ」
「なるほど、了解しました」
ユリアスが返事をしました。
セリアといえばボルギナンドの声に軽薄さを感じ、柳眉を逆立てて抗議しようとしたものの、途中で思いとどまりました。
(吸血鬼なのかはわからないけれど、ここに何かいるのは間違いなさそうね)
セリアは、城内に微かな妖気を感じた気がしました。それは直感に過ぎませんでした。しかし、セリアはこれまでの経験から、こうした直感に素直に従う方が、生き残れる確率がより高くなることを知っていました。
そしてユリアスたちは城内の入り口へ到着しました。
「それじゃ、俺たちはここで魔物の注意を引いておくから、お嬢様方は城内に!」
「わかりました。中の安全が確認できたら声を掛けます」
そしてボルギナンドの指示に従い、ユリアスたちは城内へと入っていきました。
暗い広間に入ったユリウスたちは、手にしていたカンテラを掲げて周囲の様子を確認しました。
正面にある大きな扉とその脇にある小さな扉、部屋の左右にある扉、そのいずれもが閉じられていました。単に閉じられているだけではなく、厚い木の板が打ち付けられて開くことができないようになっていました。
「なんだこれは……」
ユリアスがつぶやきます。エルミアナが近くの扉に近づいて、扉が頑丈に閉じられていることを確認しました。
「まるで、この広間に何かを閉じ込めようとしていたかのようですね」
エルミアナの言葉を聞いて、ハッとしたセリアが入り口を振り返ります。
バタンッ!
それは城内への入り口の扉が閉じられた音でした。
パタンッ!
それはキーラが床に崩れ落ちた音でした。
「キーラ殿! えっ……」
パタンッ!
キーラに駆け寄ろうとしたエルミアナが途中で足をもつれさせ、床に転げ落ちました。
キーラもエルミアナも、ユリアスやセリアに口を動かして何かを訴えかけようとしています。しかし、声は出てきませんでした。
「隊長! これは罠です! 私たちは毒を……」
セリアが床に崩れ落ちました。
「セリア! エルミアナ! キーラ!」
ユリアスはセリアの下に駆け寄ると、彼女を引き起こそうとしました。
「なっ……身体が痺れて……」
しかし、途中でユリアスもその場に崩れ落ちてしまうのでした。
それからしばらくして、入り口の扉を外から叩く音が聞こえてきました。
ドンドン! ドンドン!
「もしもーし! どなたかいらっしゃいますかー! 俺様がいらっしゃいましたがー?」
ボルギナンドの声に続いて、ギャハハと下品と笑う男たちの声が響いてきました。
ガタガタッ! ドンッ!
入り口の扉が開かれ、広間にボルギナンドと彼の仲間たちが入ってきた。彼らは、地面に倒れているユリアスたちを広間の中央に集めると、縄を使って拘束します。
「その黒髪とエルフは魔法を使うらしいから、口もふさいでおけ」
ボルギナンドが命じると、仲間たちはユリアスとエルミアナに猿ぐつわをしました。
「「!!」」
ユリアスとキーラが怒りの声をあげようとしましたが、口が小さく動くだけで声はまったく出ませんでした。
ボルギナンドがニヤニヤ笑いを浮かべながら、セリアの前に立って彼女を見下ろしました。
「色々と聞きたいことはあるだろうが……。そうだな、まずお前たちが痺れて動けなくなったのは、果実ジュースに痺れ薬を混ぜていたからだな。ゆっくりと効いてくるやつだ」
ユリアスたちの目が大きく見開かれました。ボルギナンドはその場にしゃがみ込むと、セリアの顔を覗き込みました。
「あぁ、お前に最初に渡した杯には薬は入ってなかったよ。薬が入ったのは後から注いだ方だ、ほら見てみろよ」
ボルギナンドは果実ジュースが入った水筒を取り出し、セリアに見せました。それを見たセリアの目が一瞬大きく開かれ、その後、憎々し気にボルギナンドを睨みつけるのでした。
水筒の口を見ると真ん中に仕切りがありました。
「この水筒には普通のジュースと薬入りの両方が入っているんだよ。どちらを上にするかで、注ぐものを変えられるってことさ」
ボルギナンドは水筒を投げ捨てると、片手でセリアの胸を乱暴に揉みしだきながら、醜く歪んだ笑みを浮かべます。
「これから俺たちが、お前らをどうするのかについては、説明なんていらないよなぁ? まぁ細かく説明してやってもいいけどぉ?」
「「ギャハハハハ!」」
廃城の広間に、男たちがゴブリンのような哄笑が響き渡るのでした。
1
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
欲しいのならば、全部あげましょう
杜野秋人
ファンタジー
「お姉様!わたしに頂戴!」
今日も妹はわたくしの私物を強請って持ち去ります。
「この空色のドレス素敵!ねえわたしに頂戴!」
それは今月末のわたくしの誕生日パーティーのためにお祖父様が仕立てて下さったドレスなのだけど?
「いいじゃないか、妹のお願いくらい聞いてあげなさい」
とお父様。
「誕生日のドレスくらいなんですか。また仕立てればいいでしょう?」
とお義母様。
「ワガママを言って、『妹を虐めている』と噂になって困るのはお嬢様ですよ?」
と専属侍女。
この邸にはわたくしの味方などひとりもおりません。
挙げ句の果てに。
「お姉様!貴女の素敵な婚約者さまが欲しいの!頂戴!」
妹はそう言って、わたくしの婚約者までも奪いさりました。
そうですか。
欲しいのならば、あげましょう。
ですがもう、こちらも遠慮しませんよ?
◆例によって設定ほぼ無しなので固有名詞はほとんど出ません。
「欲しがる」妹に「あげる」だけの単純な話。
恋愛要素がないのでジャンルはファンタジーで。
一発ネタですが後悔はありません。
テンプレ詰め合わせですがよろしければ。
◆全4話+補足。この話は小説家になろうでも公開します。あちらは短編で一気読みできます。
カクヨムでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる