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第103話 おいしいクエスト、但し女性限定……怪し過ぎるでござろうが!

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 ギルドのクエストで道中の路銀を稼ごうと考えたキモヲタ一行。

 クエスト掲示板の前に立って、何かめぼしいものがないかと、貼り付けられているクエスト依頼書に目を通していました。

 受注できるのは中級以下のクエスト、文字のインクが青か緑のものに限られています。青インクは初級クエストで、その内容は薬草採集や近隣の街へのお使いクエストがほとんどで、報酬も少ないものばかり。

 中級の緑クエストは、もっとも数が多く、その内容も報酬もさまざまです。

・アース村周辺に出現する影狼の群れを討伐。報酬:金貨3枚
・森の奥深くにあるポイズンスパイダーの巣の壊滅。報酬:金貨4枚
・商隊の護衛。報酬:金貨3枚
 などなど……。

 キモヲタとキーラが掲示板に張り付くように近づいて、あれこれクエストを見ていました。

「うーん、いっぱいあるねー。どれがいいかなー。ボク、できれば肉が食べられるクエストがいいなー」

「我輩は、美少女救出クエストがいいでござるかなー。ピンチの美少女を助けて『キモヲタさま、ス・テ・キ』と抱きついてもらうでござるよ」

「アハハー、キモヲタは相変わらずキモイこと考えるね!」

「そういうキーラたんこそ、みごとな食いしん坊ぶりでござる!」

「むー! キモヲタのお腹の肉を食べてあげれたらいいんだけどね!」

 キーラがキモヲタのお腹をツンツンしていると、エルミアナがあるクエストを指差しました。

「このクエスト、内容の割に報酬が良いですね」

 探索クエスト:廃城の調査(調査隊への参加)
 内容:アベルハースト城跡に潜む魔物調査にご協力ください。
 報酬:一人金貨2枚
 備考:女性冒険者限定

 ユリアスがクエスト依頼書を取り上げると、他の全員が取り囲んで検討を始めました。

「女性冒険者限定ということは、キモヲタ様が参加できないですね」

 ため息をつくユリアスに「お前もな」などとツッコム野暮な仲間はいませんでした。白バラ騎士団でも、ユリアスは完全に女性扱いであり、セリア曰く、

「着替えも入浴も、姫隊長は私たちと一緒よ。確かに身体は男なんだけど、そのことを忘れさせるほど動きが女性そのものなのよ。それで一番大事なことは、姫隊長は受け専よ」

 ということのようでした。それはこのパーティー内でも同じことで、ユリアスはセリアやエルミアナと一緒に着替えたり、入浴したりしています。

 いまではキモヲタも、そのことに慣れてしまっていました。なので自然な流れで、このクエストの条件で除外されるのは、自分だけだと思っていたのでした。

「なんと我輩だけ仲間外れ!? なんてダダをこねたりはしないでござるよ。どうぞみんなで行ってきてくだされ。我輩は宿でのんびり休ませてもらうでござる。デュフコポー」

「あー、キモヲタだけ楽しようとしてる! ズルイー!」

「ぐふふ。条件がそうなってるので、仕方ないのでござる。別にサボろうとしてるわけではござらんよ。フォカヌポー」

 キーラとキモヲタがじゃれ合っている横で、エレナがユリアスに言いました。

「この条件だとアタシも参加できないよ。そもそも冒険者じゃないし」

「そうでしたか。旅慣れているご様子でしたので、てっきり冒険者なのかと。あっ、先ほどの冒険者パーティー登録でエレナも一緒に申請してしまいました。申し訳ありません」

 ユリアスがエレナに向って頭を深く下げました。

 エレナは手をひらひらとさせながら、

「別にかまわないけど、アタシに冒険者の経験も知識もないから、戦力にはなれないと思うわ」

「キモヲタ様とエレナ殿には残っていただいて、私を含めて四人でクエストを受けるとなると金貨8枚ですか」

「十分ね。詳しい話を聞いてみましょう」

 セリアがユリアスを促すと、ユリアスはクエスト依頼書を持って、ギルドの受付に向かいました。

 受付の説明によるとこのクエストは、廃城に吸血鬼ストリゴイカが住み着いているという噂の真偽を調査するというもの。

 その噂は、廃城を訪れた者や旅人が行方不明になるというものでした。最近になって、近くにある村の住人が惨殺死体が発見され、その遺体に吸血の痕が残されていたことから、ギルドに調査依頼が出されたのでした。

「ストリゴイカは男性に怨みを持って亡くなった女性が呪いによって復活した吸血鬼。主に男性を襲うとされていることから、女性冒険者に限定しての調査となっているようです」

 受付から戻ってきたユリアスがクエストの詳細を話すのを聞いていたキモヲタ。

(女性の吸血鬼……ちょっと見てみたい気がするでござるな。美少女吸血鬼などは、ぜひ我輩のハーレムに一人加えたいところでござる)

 キモヲタの表情を見たエルミアナが、キモヲタが不埒なことを考えていることを見抜いて言いました。

「大抵の吸血鬼は、悍ましい化け物の姿をしているものです。私も何度か遭遇したことがありますが、その全部が人間サイズの蝙蝠でした。美しい女性が迫ってくるなどとは妄想しない方がいいですよ。キモヲタ殿」

 一同がキモヲタにジト目を向ける中、セリアだけは何か物思いにふけっているようでした。

「怨みを持って亡くなった女の吸血鬼ね……」

 吸血鬼ストリゴイカの話が出たとき、セリアの瞳に燃える青い焔が強く揺らめいたことには、誰一人として気づくことはありませんでした。
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