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第88話 カレーとスプーンと子供たち
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カザン王国を目の前にしたキモヲタ一行。国境の検問所で、足止めを喰らってしまいます。
入国許可証が発行されるまで一週間はかかることが分かったキモヲタたちは、とりあえず腹ごしらえでもしようと、「牛肉ゴロゴロ高級野菜が溶け込んだ男のブラックカレー(マカ増量)」を食べることにしたのでした。
「ジィイイイイ……」
キモヲタが暖めたカレーをご飯パックに掛け始めると、香ばしい香りが周辺に広がっていきました。
周囲にいる大人たちは、カレーの匂いにお腹を鳴らしながらも、キモヲタたち冒険者一行を遠巻きに眺めるだけで近寄ってくるようなことはありません。
大柄なユリアスの背中にあるクレイモアや、セリアの下げている刀、エルミアナが持っているレイピアは、近づくのをためらうのに十分な理由になっていたのです。
「ジィイイイイ……」
しかし、子供たちは違いました。キモヲタたちを恐れることなく、カレーの匂いにつられて集まってきたのです。
「ジィイイイイ……」
「もぐもぐ……(汗)」※ユリアス
「……ぱくっ」※エルミアナ
「パクパクッ! うーん、美味しい! お肉が大きいのが良いですよね」※セリア
「もぐもぐ……むっ! 上げないよ!」※キーラ
「……(汗)」※キモヲタ
冒険者一行の中で、一番、気が弱そうなキモヲタのところに三人の子供が集まりました。
「「「ジィイイイイ……」」」
「えっ……と……」※キモヲタ
子供たちの視線とキモヲタの視線が、ちょいちょいとぶつかります。
「「「ジィイイイイ……」」」
ここで視線を切って食べることに集中できるような鈍感力があれば、キモヲタは前世でプロのニートなどしていたはずがありません。
「た、食べるでござる?」
「「「いいの!?」」」
たちまち子供たちがキモヲタの周りに集まってきました。その中で一番小さな女の子は、いつの間にかキモヲタの膝の上にのって、キモヲタの持っているカレーに目をランランと輝かせています。
キモヲタは、カレーとご飯を適量に掬って、女の子の口元に運びます。
「我輩の食べ差しでよければ……キモイかもでござるが……」
パクッ!
一瞬で、スプーンは空になりました。膝の上に座っている女の子が感激の声を上げます。
「美味しい! すっごく美味しい!」
「ぼ、ぼくも……」
「私も!」
他の子供たちがキモヲタに詰め寄ってきたので、キモヲタは慌ててカレーを掬って、次々と子供たちの口に運び続けました。
あっと言う間になくなってしまったカレー。もちろん、キモヲタのお腹は全く満たされていません。
もちろん、それは子供たちも同じでした。
そんなキモヲタと子供たちの様子を見ていたセリアが、キモヲタに声を掛けます。
「こうなったら作っちゃいなよ! カレーのおかわり」
こうなったらも何も、ただ自分がおかわりしたかっただけのセリアでしたが、その言葉にキモヲタは腹を括りました。
「よし、カレーのお代わりを作るでござる!」
スプーンを握りしめて立ち上がったキモヲタを、子供たちが純粋な期待目線で見つめていました。
「ううっ……」
ここで子供たちに断れるようであれば、キモヲタは前世でプロのコミュ障などしているはずがありませんでした。
「皆の分も作るでござるから、自分たちのスプーンを持ってくるでござる!」
「本当!?」
「やった!」
「ありがとう! すぐ取って来る!」
子供たちが親のところに戻っていくのを見送りながら、キモヲタは再びカレーを作り始めました。
そんなキモヲタに、仲間たちが優しく声を掛けます。
「さすがはキモヲタ様、優しい心をお持ちですわ。素敵❤」※ユリアス
「キモヲタ殿は、よい決断をされたと思いますよ」※エルミアナ
「ちょっとキモヲタ! ボクのカレーは確保しておいてよ! 絶対に絶対だからね! もしボクの分が足りなくなったら、お腹噛むから!」※キーラ
「私の分が減るようなことがあればマジ殺します」※セリア
優しさ率50%、脅し率50%で、なんとか気を取り直したキモヲタ。いつもは脅し率100%なので、これは好成績なのでした。
そんな茶番を繰り広げつつ、カレーを作っていると――
「これ、すぷーん!」
「オークの兄ちゃん! スプーン持ってきたよー!」
「私も持ってきた!」
子供たちが、スプーンを持って戻ってきました。
「ほいほい、丁度、温まったところでござるよー……って、えっとお子様方、後ろの方々は……」
「お父ちゃんとお母ちゃん!」
「親父とお袋と兄貴と妹!」
「父さんと母さんとお婆ちゃんとお爺ちゃん、それとお隣のおばさん!」
大人たちもそれぞれが手にスプーンを持ち、子供たちの後ろに立っていました。
「こ、こちらで配給が頂けると聞いて……」
「ずっとここで待たされ続けて、食べ物も残り少なくなってきまして……」
「ここ数日、何にも食べておらんかったでのぉ……」
「お……なか……すい……た……」
もし、キモヲタがここできっぱりと断れるような性格をしていたら、前世でプロのぼっち飯ッターなどしているはずがありません。
「アハハ……こうなったら、皆さんにもご馳走するでござるよ!」
「「「わぁ!」」」
「「「おぉ!」」」
そして、キモヲタは全員分のカレーを作るのでした。ただし、ここ数日、何も食べてなかったお爺さんだけは、おかゆにしたキモヲタでした。
「胃がびっくりするとイカンでござるからな……」
入国許可証が発行されるまで一週間はかかることが分かったキモヲタたちは、とりあえず腹ごしらえでもしようと、「牛肉ゴロゴロ高級野菜が溶け込んだ男のブラックカレー(マカ増量)」を食べることにしたのでした。
「ジィイイイイ……」
キモヲタが暖めたカレーをご飯パックに掛け始めると、香ばしい香りが周辺に広がっていきました。
周囲にいる大人たちは、カレーの匂いにお腹を鳴らしながらも、キモヲタたち冒険者一行を遠巻きに眺めるだけで近寄ってくるようなことはありません。
大柄なユリアスの背中にあるクレイモアや、セリアの下げている刀、エルミアナが持っているレイピアは、近づくのをためらうのに十分な理由になっていたのです。
「ジィイイイイ……」
しかし、子供たちは違いました。キモヲタたちを恐れることなく、カレーの匂いにつられて集まってきたのです。
「ジィイイイイ……」
「もぐもぐ……(汗)」※ユリアス
「……ぱくっ」※エルミアナ
「パクパクッ! うーん、美味しい! お肉が大きいのが良いですよね」※セリア
「もぐもぐ……むっ! 上げないよ!」※キーラ
「……(汗)」※キモヲタ
冒険者一行の中で、一番、気が弱そうなキモヲタのところに三人の子供が集まりました。
「「「ジィイイイイ……」」」
「えっ……と……」※キモヲタ
子供たちの視線とキモヲタの視線が、ちょいちょいとぶつかります。
「「「ジィイイイイ……」」」
ここで視線を切って食べることに集中できるような鈍感力があれば、キモヲタは前世でプロのニートなどしていたはずがありません。
「た、食べるでござる?」
「「「いいの!?」」」
たちまち子供たちがキモヲタの周りに集まってきました。その中で一番小さな女の子は、いつの間にかキモヲタの膝の上にのって、キモヲタの持っているカレーに目をランランと輝かせています。
キモヲタは、カレーとご飯を適量に掬って、女の子の口元に運びます。
「我輩の食べ差しでよければ……キモイかもでござるが……」
パクッ!
一瞬で、スプーンは空になりました。膝の上に座っている女の子が感激の声を上げます。
「美味しい! すっごく美味しい!」
「ぼ、ぼくも……」
「私も!」
他の子供たちがキモヲタに詰め寄ってきたので、キモヲタは慌ててカレーを掬って、次々と子供たちの口に運び続けました。
あっと言う間になくなってしまったカレー。もちろん、キモヲタのお腹は全く満たされていません。
もちろん、それは子供たちも同じでした。
そんなキモヲタと子供たちの様子を見ていたセリアが、キモヲタに声を掛けます。
「こうなったら作っちゃいなよ! カレーのおかわり」
こうなったらも何も、ただ自分がおかわりしたかっただけのセリアでしたが、その言葉にキモヲタは腹を括りました。
「よし、カレーのお代わりを作るでござる!」
スプーンを握りしめて立ち上がったキモヲタを、子供たちが純粋な期待目線で見つめていました。
「ううっ……」
ここで子供たちに断れるようであれば、キモヲタは前世でプロのコミュ障などしているはずがありませんでした。
「皆の分も作るでござるから、自分たちのスプーンを持ってくるでござる!」
「本当!?」
「やった!」
「ありがとう! すぐ取って来る!」
子供たちが親のところに戻っていくのを見送りながら、キモヲタは再びカレーを作り始めました。
そんなキモヲタに、仲間たちが優しく声を掛けます。
「さすがはキモヲタ様、優しい心をお持ちですわ。素敵❤」※ユリアス
「キモヲタ殿は、よい決断をされたと思いますよ」※エルミアナ
「ちょっとキモヲタ! ボクのカレーは確保しておいてよ! 絶対に絶対だからね! もしボクの分が足りなくなったら、お腹噛むから!」※キーラ
「私の分が減るようなことがあればマジ殺します」※セリア
優しさ率50%、脅し率50%で、なんとか気を取り直したキモヲタ。いつもは脅し率100%なので、これは好成績なのでした。
そんな茶番を繰り広げつつ、カレーを作っていると――
「これ、すぷーん!」
「オークの兄ちゃん! スプーン持ってきたよー!」
「私も持ってきた!」
子供たちが、スプーンを持って戻ってきました。
「ほいほい、丁度、温まったところでござるよー……って、えっとお子様方、後ろの方々は……」
「お父ちゃんとお母ちゃん!」
「親父とお袋と兄貴と妹!」
「父さんと母さんとお婆ちゃんとお爺ちゃん、それとお隣のおばさん!」
大人たちもそれぞれが手にスプーンを持ち、子供たちの後ろに立っていました。
「こ、こちらで配給が頂けると聞いて……」
「ずっとここで待たされ続けて、食べ物も残り少なくなってきまして……」
「ここ数日、何にも食べておらんかったでのぉ……」
「お……なか……すい……た……」
もし、キモヲタがここできっぱりと断れるような性格をしていたら、前世でプロのぼっち飯ッターなどしているはずがありません。
「アハハ……こうなったら、皆さんにもご馳走するでござるよ!」
「「「わぁ!」」」
「「「おぉ!」」」
そして、キモヲタは全員分のカレーを作るのでした。ただし、ここ数日、何も食べてなかったお爺さんだけは、おかゆにしたキモヲタでした。
「胃がびっくりするとイカンでござるからな……」
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