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第87話 背中に感じる胸の感触と男のブラックカレー(マカ増量)
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賢者の石の探索クエストで、他の探索チームとの情報交換のためにカザン王国へと向かうキモヲタ一行。
とうとう国境に辿り着くことと相成りました。
国境の検問所には、魔族軍や人類軍の戦闘に巻き込まれて住む家を失った人々が、王国への入国を求めて押し寄せていました。
この国境には、入国許可証を手に入れるため、何日も、何週間も、自分の番が来るをの待っている人々で溢れかえっていました。
あちこちで、順番を巡っての喧嘩や、辛いテント生活に疲れて泣き叫ぶ子供たちの声が聞こえてきます。
その最後尾に並んだキモヲタたちは、自分たちが国境を越えるのはいつになることやらと深いため息を吐くのでした。
「それにしても、人が多いでござるな。これではかなり待たされることになりそうでござる。はぁ……」
疲れ切ったキモヲタの言葉に、ユリアスが励ますように声を掛けます。
「確かにその通りですが、ここさえ越えることができたら、王都までは一週間も掛かりません。もうちょっとだけ頑張りましょう、キモヲタ様」
ユリアスの言葉に頷き返しながらも、疲れがピークに達したキモヲタはその場に座り込んでしまいました。【足ツボ治癒】(セルフ)を使いたいところですが、さすがにこの人ごみの中では避けたいところ。
どうしようか思案しているところへ、入国許可証の順番待ちの札を受け取りに行っていたエルミアナとキーラが戻ってきました。
「ユリアス! 順番札を貰ってきたよ! って、キモヲタもう疲れちゃったの!?」
キーラは、地面にへたり込んでいるキモヲタを見て呆れかえっていました。久々の人込みに入ったことでキーラは楽しくて仕方がないようでした。その尻尾も、フルフルと揺れています。
エルミアナは、キーラが手に持っている順番札を指差しながらいいました。
「受け取った順番からすると、どうやらここで一週間は待たされることになりそうです」
「「えぇ!」」
キモヲタだけではなくセリアも一緒に絶望に満ちた声を上げました。
「セリアまで、そんなに悲しそうな顔をしないの。キモヲタ様も、ほら、一週間の休みができたと思ってください。ねっ?」
ユリアスは何とか二人を元気づけようとしますが、セリアまで地面に座り込んで、キモヲタに背中を預けてしまいました。
「セリア……ほら、立って! キモヲタ様が昨日、出してくださった新しいカレーがゆっくり食べられるんだから。セリアはアレを凄く気に入ってたでしょ!?」
ユリアスの言う新しいカレーというのは、ネットショップ「ナイトタイムラバー」の店長が、また「誤発注した」という、「牛肉ゴロゴロ高級野菜が溶け込んだ男のブラックカレー(マカ増量)」のこと。
誤発注カレーの売れ行きに調子に乗った店長が、これまでの倍の値段がするこのカレーを仕入れていたのでした。当然、商品がネットショップに掲載されたその日のうちに、キモヲタは全て買い上げてしまったのです。
そして、その高級カレーを食べたセリアは、その美味しさにドハマリしてしまい、以来、ずっとキモヲタのことを高級カレー自動販売機(無料)として、比較的優しく扱うようになっていたのでした。
「おぉ! あのカレー食べたい! ねぇ、ねぇ、キモヲタ、あのカレーが食べたいぃ! 今すぐ作って食べさせて!」
そう言ってセリアは、背中をグイグイとキモヲタに押し付けてきます。
「あーっ、うっとしい! 我輩、今はすごく疲れているのでござる!」
セリアが以前よりは優しくなってきているのを感じていたキモヲタではありますが、それ以上に今は疲れているので、セリアの接触も面倒にしか感じません。
「なんでですかー! 一緒にカレーを食べてお互い幸せ! それでいいじゃないですかー!」
そう言ってセリアがキモヲタにより体重を掛けてきます。
「えぇい! 分からん奴でござるな! 我輩は疲れているのでござる! そんな我輩に今からカレーを作れと!? いくら背中で押されたところでヤル気はおきんでござるよ!」
「なら……」
セリアは、身体の向きを変えて、キモヲタの背中に伸し掛かり、グイッと胸を押し付けながら、キモヲタの耳元でささやきました。
「ねぇ❤ これでいい?」
突然の耳元囁きR15ボイスに、キモヲタのエロエンジンに火が入りました。
「カレー、作って❤」
「ふぉおおおお! 世界一美味しいカレーを作るでござるよぉお!」
さっきまでの疲れはどこへやら、キモヲタはキビキビと動いて、石で竈を作り火を起こし、鍋を掛けてお湯を沸かし、カレーとご飯パックを暖め始めたのでした。
ちなみにご飯パックも、ナイトタイムラバー店長の誤発注品です。店長は、誤発注品の注文者が異世界転移者であることは知りません。ですが、キモヲタがネットショップを利用するようになってから、色々と誤発注品を試して見た結果、どんな商品に需要があるのか、かなり正確に把握し始めていたのでした。
「ん-っ! やっぱりこのカレーが一番美味しいわ!」
そう言って「牛肉ゴロゴロ高級野菜が溶け込んだ男のブラックカレー(マカ増量)」に舌鼓を打つセリア。
その後、セリアからの「ご褒美の胸押し付け」を期待したキモヲタでしたが、そんなものはありませんでした。
とうとう国境に辿り着くことと相成りました。
国境の検問所には、魔族軍や人類軍の戦闘に巻き込まれて住む家を失った人々が、王国への入国を求めて押し寄せていました。
この国境には、入国許可証を手に入れるため、何日も、何週間も、自分の番が来るをの待っている人々で溢れかえっていました。
あちこちで、順番を巡っての喧嘩や、辛いテント生活に疲れて泣き叫ぶ子供たちの声が聞こえてきます。
その最後尾に並んだキモヲタたちは、自分たちが国境を越えるのはいつになることやらと深いため息を吐くのでした。
「それにしても、人が多いでござるな。これではかなり待たされることになりそうでござる。はぁ……」
疲れ切ったキモヲタの言葉に、ユリアスが励ますように声を掛けます。
「確かにその通りですが、ここさえ越えることができたら、王都までは一週間も掛かりません。もうちょっとだけ頑張りましょう、キモヲタ様」
ユリアスの言葉に頷き返しながらも、疲れがピークに達したキモヲタはその場に座り込んでしまいました。【足ツボ治癒】(セルフ)を使いたいところですが、さすがにこの人ごみの中では避けたいところ。
どうしようか思案しているところへ、入国許可証の順番待ちの札を受け取りに行っていたエルミアナとキーラが戻ってきました。
「ユリアス! 順番札を貰ってきたよ! って、キモヲタもう疲れちゃったの!?」
キーラは、地面にへたり込んでいるキモヲタを見て呆れかえっていました。久々の人込みに入ったことでキーラは楽しくて仕方がないようでした。その尻尾も、フルフルと揺れています。
エルミアナは、キーラが手に持っている順番札を指差しながらいいました。
「受け取った順番からすると、どうやらここで一週間は待たされることになりそうです」
「「えぇ!」」
キモヲタだけではなくセリアも一緒に絶望に満ちた声を上げました。
「セリアまで、そんなに悲しそうな顔をしないの。キモヲタ様も、ほら、一週間の休みができたと思ってください。ねっ?」
ユリアスは何とか二人を元気づけようとしますが、セリアまで地面に座り込んで、キモヲタに背中を預けてしまいました。
「セリア……ほら、立って! キモヲタ様が昨日、出してくださった新しいカレーがゆっくり食べられるんだから。セリアはアレを凄く気に入ってたでしょ!?」
ユリアスの言う新しいカレーというのは、ネットショップ「ナイトタイムラバー」の店長が、また「誤発注した」という、「牛肉ゴロゴロ高級野菜が溶け込んだ男のブラックカレー(マカ増量)」のこと。
誤発注カレーの売れ行きに調子に乗った店長が、これまでの倍の値段がするこのカレーを仕入れていたのでした。当然、商品がネットショップに掲載されたその日のうちに、キモヲタは全て買い上げてしまったのです。
そして、その高級カレーを食べたセリアは、その美味しさにドハマリしてしまい、以来、ずっとキモヲタのことを高級カレー自動販売機(無料)として、比較的優しく扱うようになっていたのでした。
「おぉ! あのカレー食べたい! ねぇ、ねぇ、キモヲタ、あのカレーが食べたいぃ! 今すぐ作って食べさせて!」
そう言ってセリアは、背中をグイグイとキモヲタに押し付けてきます。
「あーっ、うっとしい! 我輩、今はすごく疲れているのでござる!」
セリアが以前よりは優しくなってきているのを感じていたキモヲタではありますが、それ以上に今は疲れているので、セリアの接触も面倒にしか感じません。
「なんでですかー! 一緒にカレーを食べてお互い幸せ! それでいいじゃないですかー!」
そう言ってセリアがキモヲタにより体重を掛けてきます。
「えぇい! 分からん奴でござるな! 我輩は疲れているのでござる! そんな我輩に今からカレーを作れと!? いくら背中で押されたところでヤル気はおきんでござるよ!」
「なら……」
セリアは、身体の向きを変えて、キモヲタの背中に伸し掛かり、グイッと胸を押し付けながら、キモヲタの耳元でささやきました。
「ねぇ❤ これでいい?」
突然の耳元囁きR15ボイスに、キモヲタのエロエンジンに火が入りました。
「カレー、作って❤」
「ふぉおおおお! 世界一美味しいカレーを作るでござるよぉお!」
さっきまでの疲れはどこへやら、キモヲタはキビキビと動いて、石で竈を作り火を起こし、鍋を掛けてお湯を沸かし、カレーとご飯パックを暖め始めたのでした。
ちなみにご飯パックも、ナイトタイムラバー店長の誤発注品です。店長は、誤発注品の注文者が異世界転移者であることは知りません。ですが、キモヲタがネットショップを利用するようになってから、色々と誤発注品を試して見た結果、どんな商品に需要があるのか、かなり正確に把握し始めていたのでした。
「ん-っ! やっぱりこのカレーが一番美味しいわ!」
そう言って「牛肉ゴロゴロ高級野菜が溶け込んだ男のブラックカレー(マカ増量)」に舌鼓を打つセリア。
その後、セリアからの「ご褒美の胸押し付け」を期待したキモヲタでしたが、そんなものはありませんでした。
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