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第84話 キモヲタの検問突破作戦! でござる
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人類軍兵士による検問を突破するために、キモヲタはエルミアナたちが病気に感染するという嘘を吐くことにしました。
キモヲタが何か企んでいることは察しているものの、女性陣は後でキモヲタを木に吊るし上げて下から火で炙ってやろうと固く決意していました。
しかし確かにキモヲタの作戦は功を奏し、人類軍兵士たちの間に動揺が張ります。
「へっ! どうせ女たちを守るために嘘を吐いているんだろ!」
一人の兵士がそう言って、エルミアナに近づいてその手を掴もうとしました。
「アーッ! 兵士殿! それ以上近づくのはマズイでござる!」
このときキモヲタが叫んだ「アーッ!」は、【お尻かゆくな~る】発動の気合でした。しかし、キモヲタの胸倉を掴んでいる兵士は、キモヲタがエルミアナに近づく兵士を止めようとしているように見えました。
エルミアナの手を掴もうとしていた兵士は、突然、伸ばしていた手を自分のお尻へ持って行きました。
「あっ!? えっ!? ヤバっ!?」
兵士は自分のお尻を掻き始めますが、このスキルの痒みは、自分の手では一切解消できません。
「えっ、マジ!? 痒い! お尻がヤバ……」
兵士は一目散に近くの木に駆け寄ると、自分のお尻を必死で擦り付け始めました。
スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!
「はふぅううう❤」
必死で木に尻を擦り付ける兵士を、全員が呆気にとられた顔で見つめています。
ここぞとばかりにキモヲタはこの病気について、適当なことをでっち上げました。
「彼女たちに触れたり、近づき過ぎると、あのように猛烈なお尻の痒みに襲われてしまうのでござる」
「ほ、本当に病気持ちだったのか……って、お前は大丈夫なのかよ!? ずっと女どもと一緒に旅をしてきたんだろ?」
胸倉を掴んでいた兵士は手を放してキモヲタを解放します。そしてキモヲタに、疑い半分、何か対応策があるのではという期待半分の視線を向けてきました。
そんな兵士の目を見返しながら、キモヲタは渋い表情を作って答えました。
「我輩はもう耐性ができておりますからな。それまでは木に必死でお尻を擦り付けている兵士殿と同じような苦しみを何度も何度も味わいました。あの痒みは正に……地獄でござる」
「じ、地獄……」
兵士がゴクリとツバを呑み込みます。
キモヲタは、兵士を安心させるような柔らかい表情を作って、続けました。
「安心してくだされ。先ほども言いましたが、この病は病人に触れたり、近づき過ぎたりしなければ感染することはござらん。それにあの兵士のように、お尻が痒くなってしまった者から感染が広がることもないのでござる」
キモヲタの言葉に、兵士たちの間に安堵の息が漏れました。
空気が緩んだところで、キモヲタはドスの効いた声で言いました。
「この病の治療法の研究のため、我々は急ぎ王都に向っている最中なのでござる。ここを通していただいてもよろしいでござるかな?」
脅しにも聞こえるキモヲタの低い声に、兵士たちの間に沈黙が広がりました。
スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!
「あひぃぃぃん❤ お尻気持ちひぃい❤ スリスリ止まらないぃぃ❤」
沈黙のせいで、木の幹にお尻を擦り付ける兵士の声が、一際大きく響き渡りました。
「わ、わかった! ここを通ってもいいぞ! なっ! みんな!」
「お、おう! 早く治療法が出来るといいな」
「そ、そうだ! 病の克服は人類軍にとっても重要なことだしな」
「うん、さっさと行って。ぼくにうつったら大変だし」
こうして――
キモヲタたち一行は、人類軍兵士に遠巻きに見送られながら、無事に橋を渡ることができたのでした。
それからしばらく歩いて、街道は再び森の中へと入ります。そして深い森の中、誰一人としてスレ違う人がいなくなりました。
そして、その日の野営場所が決まり、無事に食事を終えた後のこと。
「いやぁ、それにしても我輩の機転は大したものでござるなぁ! いやはや自画自賛のようで、恥ずかしいでござるが」
「……」※キーラ
「……」※エルミアナ
「……」※セリア
「……」※ユリアス
誰一人として、キモヲタの声に反応する者はいませんでした。
「特に戦闘になることもなく、誰一人としてけがもなかったでござるよね! いやぁ、良かったでござる」
誰一人として、キモヲタの声に反応する者はいませんでした。
「皆様方も、兵士に触られたりせずに済んだではござらんか!? 考えうる最高に平和的な方法でトラブルを回避した我輩に一体、何の怨みがあるというのでござるかぁあぁ!」
そう言って泣き叫ぶキモヲタ。
その身体はロープで縛られて木の上で吊るされており、いくら暴れたところでプランプランと揺れることしかできませんでした。
「キモヲタはそこで反省して!」※キーラ
「いったい何が悪かったのか理解した上で、正しい謝罪が聞けるまでそのままですから」※エルミアナ
「もし私たちにスキルつかったら、そのまま置いていくからそのつもりで」※セリア
「ごめんなさいキモヲタ様、これは皆で決めたことですので……」※ユリアス
中に吊るされたキモヲタが、大勢の前で病気持ち呼ばわりされた彼女たちの怒りにようやく気が付いたのは、ちょうど日付が変わった深夜のことでした。
キモヲタが何か企んでいることは察しているものの、女性陣は後でキモヲタを木に吊るし上げて下から火で炙ってやろうと固く決意していました。
しかし確かにキモヲタの作戦は功を奏し、人類軍兵士たちの間に動揺が張ります。
「へっ! どうせ女たちを守るために嘘を吐いているんだろ!」
一人の兵士がそう言って、エルミアナに近づいてその手を掴もうとしました。
「アーッ! 兵士殿! それ以上近づくのはマズイでござる!」
このときキモヲタが叫んだ「アーッ!」は、【お尻かゆくな~る】発動の気合でした。しかし、キモヲタの胸倉を掴んでいる兵士は、キモヲタがエルミアナに近づく兵士を止めようとしているように見えました。
エルミアナの手を掴もうとしていた兵士は、突然、伸ばしていた手を自分のお尻へ持って行きました。
「あっ!? えっ!? ヤバっ!?」
兵士は自分のお尻を掻き始めますが、このスキルの痒みは、自分の手では一切解消できません。
「えっ、マジ!? 痒い! お尻がヤバ……」
兵士は一目散に近くの木に駆け寄ると、自分のお尻を必死で擦り付け始めました。
スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!
「はふぅううう❤」
必死で木に尻を擦り付ける兵士を、全員が呆気にとられた顔で見つめています。
ここぞとばかりにキモヲタはこの病気について、適当なことをでっち上げました。
「彼女たちに触れたり、近づき過ぎると、あのように猛烈なお尻の痒みに襲われてしまうのでござる」
「ほ、本当に病気持ちだったのか……って、お前は大丈夫なのかよ!? ずっと女どもと一緒に旅をしてきたんだろ?」
胸倉を掴んでいた兵士は手を放してキモヲタを解放します。そしてキモヲタに、疑い半分、何か対応策があるのではという期待半分の視線を向けてきました。
そんな兵士の目を見返しながら、キモヲタは渋い表情を作って答えました。
「我輩はもう耐性ができておりますからな。それまでは木に必死でお尻を擦り付けている兵士殿と同じような苦しみを何度も何度も味わいました。あの痒みは正に……地獄でござる」
「じ、地獄……」
兵士がゴクリとツバを呑み込みます。
キモヲタは、兵士を安心させるような柔らかい表情を作って、続けました。
「安心してくだされ。先ほども言いましたが、この病は病人に触れたり、近づき過ぎたりしなければ感染することはござらん。それにあの兵士のように、お尻が痒くなってしまった者から感染が広がることもないのでござる」
キモヲタの言葉に、兵士たちの間に安堵の息が漏れました。
空気が緩んだところで、キモヲタはドスの効いた声で言いました。
「この病の治療法の研究のため、我々は急ぎ王都に向っている最中なのでござる。ここを通していただいてもよろしいでござるかな?」
脅しにも聞こえるキモヲタの低い声に、兵士たちの間に沈黙が広がりました。
スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!
「あひぃぃぃん❤ お尻気持ちひぃい❤ スリスリ止まらないぃぃ❤」
沈黙のせいで、木の幹にお尻を擦り付ける兵士の声が、一際大きく響き渡りました。
「わ、わかった! ここを通ってもいいぞ! なっ! みんな!」
「お、おう! 早く治療法が出来るといいな」
「そ、そうだ! 病の克服は人類軍にとっても重要なことだしな」
「うん、さっさと行って。ぼくにうつったら大変だし」
こうして――
キモヲタたち一行は、人類軍兵士に遠巻きに見送られながら、無事に橋を渡ることができたのでした。
それからしばらく歩いて、街道は再び森の中へと入ります。そして深い森の中、誰一人としてスレ違う人がいなくなりました。
そして、その日の野営場所が決まり、無事に食事を終えた後のこと。
「いやぁ、それにしても我輩の機転は大したものでござるなぁ! いやはや自画自賛のようで、恥ずかしいでござるが」
「……」※キーラ
「……」※エルミアナ
「……」※セリア
「……」※ユリアス
誰一人として、キモヲタの声に反応する者はいませんでした。
「特に戦闘になることもなく、誰一人としてけがもなかったでござるよね! いやぁ、良かったでござる」
誰一人として、キモヲタの声に反応する者はいませんでした。
「皆様方も、兵士に触られたりせずに済んだではござらんか!? 考えうる最高に平和的な方法でトラブルを回避した我輩に一体、何の怨みがあるというのでござるかぁあぁ!」
そう言って泣き叫ぶキモヲタ。
その身体はロープで縛られて木の上で吊るされており、いくら暴れたところでプランプランと揺れることしかできませんでした。
「キモヲタはそこで反省して!」※キーラ
「いったい何が悪かったのか理解した上で、正しい謝罪が聞けるまでそのままですから」※エルミアナ
「もし私たちにスキルつかったら、そのまま置いていくからそのつもりで」※セリア
「ごめんなさいキモヲタ様、これは皆で決めたことですので……」※ユリアス
中に吊るされたキモヲタが、大勢の前で病気持ち呼ばわりされた彼女たちの怒りにようやく気が付いたのは、ちょうど日付が変わった深夜のことでした。
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