84 / 130
第84話 キモヲタの検問突破作戦! でござる
しおりを挟む
人類軍兵士による検問を突破するために、キモヲタはエルミアナたちが病気に感染するという嘘を吐くことにしました。
キモヲタが何か企んでいることは察しているものの、女性陣は後でキモヲタを木に吊るし上げて下から火で炙ってやろうと固く決意していました。
しかし確かにキモヲタの作戦は功を奏し、人類軍兵士たちの間に動揺が張ります。
「へっ! どうせ女たちを守るために嘘を吐いているんだろ!」
一人の兵士がそう言って、エルミアナに近づいてその手を掴もうとしました。
「アーッ! 兵士殿! それ以上近づくのはマズイでござる!」
このときキモヲタが叫んだ「アーッ!」は、【お尻かゆくな~る】発動の気合でした。しかし、キモヲタの胸倉を掴んでいる兵士は、キモヲタがエルミアナに近づく兵士を止めようとしているように見えました。
エルミアナの手を掴もうとしていた兵士は、突然、伸ばしていた手を自分のお尻へ持って行きました。
「あっ!? えっ!? ヤバっ!?」
兵士は自分のお尻を掻き始めますが、このスキルの痒みは、自分の手では一切解消できません。
「えっ、マジ!? 痒い! お尻がヤバ……」
兵士は一目散に近くの木に駆け寄ると、自分のお尻を必死で擦り付け始めました。
スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!
「はふぅううう❤」
必死で木に尻を擦り付ける兵士を、全員が呆気にとられた顔で見つめています。
ここぞとばかりにキモヲタはこの病気について、適当なことをでっち上げました。
「彼女たちに触れたり、近づき過ぎると、あのように猛烈なお尻の痒みに襲われてしまうのでござる」
「ほ、本当に病気持ちだったのか……って、お前は大丈夫なのかよ!? ずっと女どもと一緒に旅をしてきたんだろ?」
胸倉を掴んでいた兵士は手を放してキモヲタを解放します。そしてキモヲタに、疑い半分、何か対応策があるのではという期待半分の視線を向けてきました。
そんな兵士の目を見返しながら、キモヲタは渋い表情を作って答えました。
「我輩はもう耐性ができておりますからな。それまでは木に必死でお尻を擦り付けている兵士殿と同じような苦しみを何度も何度も味わいました。あの痒みは正に……地獄でござる」
「じ、地獄……」
兵士がゴクリとツバを呑み込みます。
キモヲタは、兵士を安心させるような柔らかい表情を作って、続けました。
「安心してくだされ。先ほども言いましたが、この病は病人に触れたり、近づき過ぎたりしなければ感染することはござらん。それにあの兵士のように、お尻が痒くなってしまった者から感染が広がることもないのでござる」
キモヲタの言葉に、兵士たちの間に安堵の息が漏れました。
空気が緩んだところで、キモヲタはドスの効いた声で言いました。
「この病の治療法の研究のため、我々は急ぎ王都に向っている最中なのでござる。ここを通していただいてもよろしいでござるかな?」
脅しにも聞こえるキモヲタの低い声に、兵士たちの間に沈黙が広がりました。
スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!
「あひぃぃぃん❤ お尻気持ちひぃい❤ スリスリ止まらないぃぃ❤」
沈黙のせいで、木の幹にお尻を擦り付ける兵士の声が、一際大きく響き渡りました。
「わ、わかった! ここを通ってもいいぞ! なっ! みんな!」
「お、おう! 早く治療法が出来るといいな」
「そ、そうだ! 病の克服は人類軍にとっても重要なことだしな」
「うん、さっさと行って。ぼくにうつったら大変だし」
こうして――
キモヲタたち一行は、人類軍兵士に遠巻きに見送られながら、無事に橋を渡ることができたのでした。
それからしばらく歩いて、街道は再び森の中へと入ります。そして深い森の中、誰一人としてスレ違う人がいなくなりました。
そして、その日の野営場所が決まり、無事に食事を終えた後のこと。
「いやぁ、それにしても我輩の機転は大したものでござるなぁ! いやはや自画自賛のようで、恥ずかしいでござるが」
「……」※キーラ
「……」※エルミアナ
「……」※セリア
「……」※ユリアス
誰一人として、キモヲタの声に反応する者はいませんでした。
「特に戦闘になることもなく、誰一人としてけがもなかったでござるよね! いやぁ、良かったでござる」
誰一人として、キモヲタの声に反応する者はいませんでした。
「皆様方も、兵士に触られたりせずに済んだではござらんか!? 考えうる最高に平和的な方法でトラブルを回避した我輩に一体、何の怨みがあるというのでござるかぁあぁ!」
そう言って泣き叫ぶキモヲタ。
その身体はロープで縛られて木の上で吊るされており、いくら暴れたところでプランプランと揺れることしかできませんでした。
「キモヲタはそこで反省して!」※キーラ
「いったい何が悪かったのか理解した上で、正しい謝罪が聞けるまでそのままですから」※エルミアナ
「もし私たちにスキルつかったら、そのまま置いていくからそのつもりで」※セリア
「ごめんなさいキモヲタ様、これは皆で決めたことですので……」※ユリアス
中に吊るされたキモヲタが、大勢の前で病気持ち呼ばわりされた彼女たちの怒りにようやく気が付いたのは、ちょうど日付が変わった深夜のことでした。
キモヲタが何か企んでいることは察しているものの、女性陣は後でキモヲタを木に吊るし上げて下から火で炙ってやろうと固く決意していました。
しかし確かにキモヲタの作戦は功を奏し、人類軍兵士たちの間に動揺が張ります。
「へっ! どうせ女たちを守るために嘘を吐いているんだろ!」
一人の兵士がそう言って、エルミアナに近づいてその手を掴もうとしました。
「アーッ! 兵士殿! それ以上近づくのはマズイでござる!」
このときキモヲタが叫んだ「アーッ!」は、【お尻かゆくな~る】発動の気合でした。しかし、キモヲタの胸倉を掴んでいる兵士は、キモヲタがエルミアナに近づく兵士を止めようとしているように見えました。
エルミアナの手を掴もうとしていた兵士は、突然、伸ばしていた手を自分のお尻へ持って行きました。
「あっ!? えっ!? ヤバっ!?」
兵士は自分のお尻を掻き始めますが、このスキルの痒みは、自分の手では一切解消できません。
「えっ、マジ!? 痒い! お尻がヤバ……」
兵士は一目散に近くの木に駆け寄ると、自分のお尻を必死で擦り付け始めました。
スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!
「はふぅううう❤」
必死で木に尻を擦り付ける兵士を、全員が呆気にとられた顔で見つめています。
ここぞとばかりにキモヲタはこの病気について、適当なことをでっち上げました。
「彼女たちに触れたり、近づき過ぎると、あのように猛烈なお尻の痒みに襲われてしまうのでござる」
「ほ、本当に病気持ちだったのか……って、お前は大丈夫なのかよ!? ずっと女どもと一緒に旅をしてきたんだろ?」
胸倉を掴んでいた兵士は手を放してキモヲタを解放します。そしてキモヲタに、疑い半分、何か対応策があるのではという期待半分の視線を向けてきました。
そんな兵士の目を見返しながら、キモヲタは渋い表情を作って答えました。
「我輩はもう耐性ができておりますからな。それまでは木に必死でお尻を擦り付けている兵士殿と同じような苦しみを何度も何度も味わいました。あの痒みは正に……地獄でござる」
「じ、地獄……」
兵士がゴクリとツバを呑み込みます。
キモヲタは、兵士を安心させるような柔らかい表情を作って、続けました。
「安心してくだされ。先ほども言いましたが、この病は病人に触れたり、近づき過ぎたりしなければ感染することはござらん。それにあの兵士のように、お尻が痒くなってしまった者から感染が広がることもないのでござる」
キモヲタの言葉に、兵士たちの間に安堵の息が漏れました。
空気が緩んだところで、キモヲタはドスの効いた声で言いました。
「この病の治療法の研究のため、我々は急ぎ王都に向っている最中なのでござる。ここを通していただいてもよろしいでござるかな?」
脅しにも聞こえるキモヲタの低い声に、兵士たちの間に沈黙が広がりました。
スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!
「あひぃぃぃん❤ お尻気持ちひぃい❤ スリスリ止まらないぃぃ❤」
沈黙のせいで、木の幹にお尻を擦り付ける兵士の声が、一際大きく響き渡りました。
「わ、わかった! ここを通ってもいいぞ! なっ! みんな!」
「お、おう! 早く治療法が出来るといいな」
「そ、そうだ! 病の克服は人類軍にとっても重要なことだしな」
「うん、さっさと行って。ぼくにうつったら大変だし」
こうして――
キモヲタたち一行は、人類軍兵士に遠巻きに見送られながら、無事に橋を渡ることができたのでした。
それからしばらく歩いて、街道は再び森の中へと入ります。そして深い森の中、誰一人としてスレ違う人がいなくなりました。
そして、その日の野営場所が決まり、無事に食事を終えた後のこと。
「いやぁ、それにしても我輩の機転は大したものでござるなぁ! いやはや自画自賛のようで、恥ずかしいでござるが」
「……」※キーラ
「……」※エルミアナ
「……」※セリア
「……」※ユリアス
誰一人として、キモヲタの声に反応する者はいませんでした。
「特に戦闘になることもなく、誰一人としてけがもなかったでござるよね! いやぁ、良かったでござる」
誰一人として、キモヲタの声に反応する者はいませんでした。
「皆様方も、兵士に触られたりせずに済んだではござらんか!? 考えうる最高に平和的な方法でトラブルを回避した我輩に一体、何の怨みがあるというのでござるかぁあぁ!」
そう言って泣き叫ぶキモヲタ。
その身体はロープで縛られて木の上で吊るされており、いくら暴れたところでプランプランと揺れることしかできませんでした。
「キモヲタはそこで反省して!」※キーラ
「いったい何が悪かったのか理解した上で、正しい謝罪が聞けるまでそのままですから」※エルミアナ
「もし私たちにスキルつかったら、そのまま置いていくからそのつもりで」※セリア
「ごめんなさいキモヲタ様、これは皆で決めたことですので……」※ユリアス
中に吊るされたキモヲタが、大勢の前で病気持ち呼ばわりされた彼女たちの怒りにようやく気が付いたのは、ちょうど日付が変わった深夜のことでした。
1
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
転生弁護士のクエスト同行記 ~冒険者用の契約書を作ることにしたらクエストの成功率が爆上がりしました~
昼から山猫
ファンタジー
異世界に降り立った元日本の弁護士が、冒険者ギルドの依頼で「クエスト契約書」を作成することに。出発前に役割分担を明文化し、報酬の配分や責任範囲を細かく決めると、パーティ同士の内輪揉めは激減し、クエスト成功率が劇的に上がる。そんな噂が広がり、冒険者は誰もが法律事務所に相談してから旅立つように。魔王討伐の最強パーティにも声をかけられ、彼の“契約書”は世界の運命を左右する重要要素となっていく。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる