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第72話 ハーピー? かつては胸さえあればいいと思ってたでござる
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峡谷の入り口で襲ってきた山賊をあっさりと征伐したキモヲタたち。峡谷の中に続く街道を、カザン王国目指して進み続けます。
「それにしても、キモヲタ様の【お尻かゆくな~る】があれば、どんな強敵も畏れるに足りませんね。あれだけ沢山いた山賊たちでさえ、簡単に撃退することができました」
ユリアスは、美しい金髪をポニーテイルに結びあげ、その美しい碧眼を向けながら、キモヲタを褒め上げます。
下半身にさえ目を瞑れば、キモヲタが憧れるくっころ姫騎士にしか見えないユリアスに褒められて、思わずキモヲタは顔を赤らめてしまいました。
「姫隊長は受け専……」
「ちょっ、や、やかましいのでござるよ……」
キモヲタの耳元で、そっと囁くセリアに反論するキモヲタの声は、少しキョドってしまいました。
そんなキモヲタの様子を見てニヤリと笑みを浮かべたセリア。白バラ騎士団の姫隊長にもそっと囁きます。
「あのキモヲタの反応、見ましたか? あれは姫隊長にも脈はありとみました」
「そ、そうかな❤」
このままでは話が危険な方向に進みそうな予感がしたキモヲタ。何か話題を変えようと焦るキモヲタを見て、エルミアナが助け舟を出しました。
「しかし、私に言わせて貰えば、キモヲタ殿の【お尻かゆくな~る】にも弱点はあると思います」
ユリアスと反対にポニーテイルを解いて、美しい金髪をなびかせて歩くエルミアナに、キモヲタは感謝の目線を返します。
かつて自分を殺そうとしていたときには、恐ろしく見えたエメラルド色の瞳は、最近ではただ綺麗だなとしか思えなくなってきたキモヲタなのでした。
(エルミアナ殿! 感謝でござるよ!)
「ほ、ほほう! 我輩の【お尻かゆくな~る】に弱点があると? それは一体どのようなものでござるかな、エルミアナ殿」
「それは私も知りたい」
エルミアナの話に、セリアが喰いついてきました。
(作戦成功でござる!)
キモヲタの視線を受けて、エルミアナが微笑みました。その笑顔があまりにも神々しく見えたキモヲタは思わず、
(そのエルフ耳を口に入れて一杯レロレロしたいでござる!)
と、恩知らずな妄想を始めていました。そんなキモヲタの内心も露知らず、エルミアナは話を続けます。
「キモヲタ殿の【お尻かゆくな~る】は、スキルが発動してから、お尻が痒くなるまでに、僅かではあるのですが時間が掛かります。さらに痒みの限界に達するまで猶予がありますよね」
そう言ってエルミアナに視線を向けられたセリアは首を傾げました。
「私はそのスキルを受けたことがないので正確にはわからないけど、確かに【お尻かゆくな~る】を受けた者は、少々狼狽えてからお尻を擦りつけていたわ。なるほど、そのわずかな隙間に……」
「そう。そして近接での戦いであれば、その一瞬で十分です。もし私のようにスキルを受けるのが二度目である場合、狼狽する時間をキモヲタ殿を仕留めるために使うでしょう」
そう言ってチラリつ向けられたエルミアナの緑の瞳を、キモヲタはちょっと怖いと思ってしまうのでした。
エルミアナの説明にセリアが頷きます。
「なるほど、ということは死に物狂いで一直線に向ってくる敵も同じか。要は痒みが出るまでにキモヲタを仕留めればいいんだよね」
「な、何が『よくわかりました』でござるか!? それではなんだかセリア殿が我輩を仕留めようとしているようではござらんか!」
「……」
「何か言って欲しいのでござるが!?」
「殺す。マジ殺す……これででいい?」
セリアの青い瞳の焔が揺らめきました。
「のぉおおお! セリア殿の目が本気かどうかわからんでござるぅ!」
「わたしはいつだって本気よ」
セリアの青い瞳の焔がゆらゆらと揺らめきました。
「ひぃぃいい! キーラ殿、助けてくだされぇ!」
キーラは、しがみついてこようとするキモヲタをさっと躱して言いました。
「あっ! そういえば、キモヲタ! さっきはよくもボクを山賊のお嫁さんに差し出そうとしてくれたね?」
「えっ!? あれは山賊の頭領にスルーされたキーラたんが可哀そうだったから、言っただけのことでござってですな……」
「それはわかってる! そこはありがとね! でもそれはそれ、これはこれ、ボクを山賊に売ろうとした罰はしっかりと受けて貰わないと!」
ガブッ!
そう言うやいなや、キーラは服の上からキモヲタのお腹に噛みつきました。
「痛ったぁぁああいでござるぅ!」
峡谷中に、キモヲタの悲鳴が響き渡ります。
すると突然、キンタが大きな声で鳴き声を上げました。
「ンメェェェエエ!」
バサッ!
キモヲタたちの頭上を、何かが素早く飛んで行きました。
頭上を飛んでいるものの正体に、真っ先に気が付いたのはエルミアナでした。
「あれはハーピーよ! みんな気を付けて!」
ハーピー!
と聞いて、目をキラキラと輝かせたるキモヲタ。
身体を伏せつつも、ハーピーの姿をしっかりと観察します。
女性の顔と胸の他は、大きな鳥そのものでした。
(よっし、胸があるならOkでござるぅ!)
何がOkなのか、キモヲタは心の中でガッツポーズを作ります。
そんなキモヲタの視線を感じたのか、ハーピーはキモヲタに向って一直線に向ってきました。
憎悪と残虐な性質が凝縮したハーピーの顔には、極端に釣り上がった目があり、その瞳には殺意と狂気が宿っていました。耳まで裂けた口からは悍ましい鳴き声が響いてきます。
「キィイイィギャァアアア!」
襲ってくるハーピーを、横に転がって回避したキモヲタ。
(昔はおっぱいさえあればそれで全ておkと思っていた時期がありましたが、さすがにあれは無理でござる!)
キモヲタは、再び降下のタイミングを狙ってくるハーピーを、しっかりと見据えます。
(しかし、それにしてもあのおっぱいだけは惜しい……)
ある意味、勇者なキモヲタは、命を狙われながらもそんなことを考えていました。
「それにしても、キモヲタ様の【お尻かゆくな~る】があれば、どんな強敵も畏れるに足りませんね。あれだけ沢山いた山賊たちでさえ、簡単に撃退することができました」
ユリアスは、美しい金髪をポニーテイルに結びあげ、その美しい碧眼を向けながら、キモヲタを褒め上げます。
下半身にさえ目を瞑れば、キモヲタが憧れるくっころ姫騎士にしか見えないユリアスに褒められて、思わずキモヲタは顔を赤らめてしまいました。
「姫隊長は受け専……」
「ちょっ、や、やかましいのでござるよ……」
キモヲタの耳元で、そっと囁くセリアに反論するキモヲタの声は、少しキョドってしまいました。
そんなキモヲタの様子を見てニヤリと笑みを浮かべたセリア。白バラ騎士団の姫隊長にもそっと囁きます。
「あのキモヲタの反応、見ましたか? あれは姫隊長にも脈はありとみました」
「そ、そうかな❤」
このままでは話が危険な方向に進みそうな予感がしたキモヲタ。何か話題を変えようと焦るキモヲタを見て、エルミアナが助け舟を出しました。
「しかし、私に言わせて貰えば、キモヲタ殿の【お尻かゆくな~る】にも弱点はあると思います」
ユリアスと反対にポニーテイルを解いて、美しい金髪をなびかせて歩くエルミアナに、キモヲタは感謝の目線を返します。
かつて自分を殺そうとしていたときには、恐ろしく見えたエメラルド色の瞳は、最近ではただ綺麗だなとしか思えなくなってきたキモヲタなのでした。
(エルミアナ殿! 感謝でござるよ!)
「ほ、ほほう! 我輩の【お尻かゆくな~る】に弱点があると? それは一体どのようなものでござるかな、エルミアナ殿」
「それは私も知りたい」
エルミアナの話に、セリアが喰いついてきました。
(作戦成功でござる!)
キモヲタの視線を受けて、エルミアナが微笑みました。その笑顔があまりにも神々しく見えたキモヲタは思わず、
(そのエルフ耳を口に入れて一杯レロレロしたいでござる!)
と、恩知らずな妄想を始めていました。そんなキモヲタの内心も露知らず、エルミアナは話を続けます。
「キモヲタ殿の【お尻かゆくな~る】は、スキルが発動してから、お尻が痒くなるまでに、僅かではあるのですが時間が掛かります。さらに痒みの限界に達するまで猶予がありますよね」
そう言ってエルミアナに視線を向けられたセリアは首を傾げました。
「私はそのスキルを受けたことがないので正確にはわからないけど、確かに【お尻かゆくな~る】を受けた者は、少々狼狽えてからお尻を擦りつけていたわ。なるほど、そのわずかな隙間に……」
「そう。そして近接での戦いであれば、その一瞬で十分です。もし私のようにスキルを受けるのが二度目である場合、狼狽する時間をキモヲタ殿を仕留めるために使うでしょう」
そう言ってチラリつ向けられたエルミアナの緑の瞳を、キモヲタはちょっと怖いと思ってしまうのでした。
エルミアナの説明にセリアが頷きます。
「なるほど、ということは死に物狂いで一直線に向ってくる敵も同じか。要は痒みが出るまでにキモヲタを仕留めればいいんだよね」
「な、何が『よくわかりました』でござるか!? それではなんだかセリア殿が我輩を仕留めようとしているようではござらんか!」
「……」
「何か言って欲しいのでござるが!?」
「殺す。マジ殺す……これででいい?」
セリアの青い瞳の焔が揺らめきました。
「のぉおおお! セリア殿の目が本気かどうかわからんでござるぅ!」
「わたしはいつだって本気よ」
セリアの青い瞳の焔がゆらゆらと揺らめきました。
「ひぃぃいい! キーラ殿、助けてくだされぇ!」
キーラは、しがみついてこようとするキモヲタをさっと躱して言いました。
「あっ! そういえば、キモヲタ! さっきはよくもボクを山賊のお嫁さんに差し出そうとしてくれたね?」
「えっ!? あれは山賊の頭領にスルーされたキーラたんが可哀そうだったから、言っただけのことでござってですな……」
「それはわかってる! そこはありがとね! でもそれはそれ、これはこれ、ボクを山賊に売ろうとした罰はしっかりと受けて貰わないと!」
ガブッ!
そう言うやいなや、キーラは服の上からキモヲタのお腹に噛みつきました。
「痛ったぁぁああいでござるぅ!」
峡谷中に、キモヲタの悲鳴が響き渡ります。
すると突然、キンタが大きな声で鳴き声を上げました。
「ンメェェェエエ!」
バサッ!
キモヲタたちの頭上を、何かが素早く飛んで行きました。
頭上を飛んでいるものの正体に、真っ先に気が付いたのはエルミアナでした。
「あれはハーピーよ! みんな気を付けて!」
ハーピー!
と聞いて、目をキラキラと輝かせたるキモヲタ。
身体を伏せつつも、ハーピーの姿をしっかりと観察します。
女性の顔と胸の他は、大きな鳥そのものでした。
(よっし、胸があるならOkでござるぅ!)
何がOkなのか、キモヲタは心の中でガッツポーズを作ります。
そんなキモヲタの視線を感じたのか、ハーピーはキモヲタに向って一直線に向ってきました。
憎悪と残虐な性質が凝縮したハーピーの顔には、極端に釣り上がった目があり、その瞳には殺意と狂気が宿っていました。耳まで裂けた口からは悍ましい鳴き声が響いてきます。
「キィイイィギャァアアア!」
襲ってくるハーピーを、横に転がって回避したキモヲタ。
(昔はおっぱいさえあればそれで全ておkと思っていた時期がありましたが、さすがにあれは無理でござる!)
キモヲタは、再び降下のタイミングを狙ってくるハーピーを、しっかりと見据えます。
(しかし、それにしてもあのおっぱいだけは惜しい……)
ある意味、勇者なキモヲタは、命を狙われながらもそんなことを考えていました。
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