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第59話 カレースープ作ってたら小人が釣れたでござる!?
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山賊を撃退したキモヲタ一行。相変わらず深い森の中に続く街道を進んでおりました。
相変わらず日中でも森の中は薄暗く、鳥や虫の声も聞こえず、動物の気配もありません。
「メェェェェェ!」
前方を行くユリウスたちのお尻を堪能をしながら、ロバのキンタを引いていたキモヲタ。キンタの鳴き声に足を止めます。
「ん? キンタ、どうしたでござる」
「メェェェェェ!」
キンタが鳴き声を上げつつ頭を振る方向に目を向けると、街道脇の少し奥まったところに野営の跡がありました。ずっと以前に使われていたと思われるその場所には、石で簡単に組んだ竈が残されています。
「おぉおい! 皆の衆! ここに野営の跡がござるよぉお!」
キモヲタの声が聞こえなかったのか、誰も立ち止まろうとはしません。
「ちっ! でござる」
キモヲタは舌打ちした後、再び大きな声で叫びました。
「おぉおい! 前を行く見目麗しい乙女四人衆! こっちに戻って欲しいですぞぉお」
まるでファッションショーのランウェイを歩くモデルよろしく、腰に手を当ててくるりと回れ右する乙女四人衆。
先ほどまでの彼女たちの会話が、女性冒険者ファッションについて盛り上がっていたこともあり、それぞれが自分の衣装とスタイルを見せつけるように道を戻ってきました。
またそれまで横並びで歩いていたくせに、一人ずつファッションモデルを気取って、いちいち腰をクィッ! クィッ! と捻りながら歩いてくるのが、より一層キモヲタを苛立たせるのでした。
(ぐぬぬ。しかし、ここでチャチャを入れてしまうと、またUターンして先に行ってしまうかもしれないでござる。ここは……ここは我慢のしどころですぞ!)
などと内心では悪態を吐きつつも、脳内盗撮はバッチリとRECしているキモヲタなのでした。
「どうしたのキモヲタ? また妄想してるの?」
一番、最後にやってきたキーラがキモヲタに声を掛けました。
「い、いやいや。実はこの脇道の先に野営の跡があるのを見つけましてな。あそこで休憩をとるのはいかがでござろうか?」
「チッ! 野営の跡に気づいちゃったか」※キーラ
「チッ! 気づかれましたか」※エルミアナ
「チッ! 気づいたんだ」※セリア
「あはは……気づいてしまわれましたか」※ユリアス
「ちょっ! みんな知ってて黙ってたでござるか!? 酷いでござるよ!」
キモヲタに休ませまいとして、わざと野営跡をスルーした四人。そのいずれの顔にも全く反省の色は見えませんでした。
どちらかというと、キモヲタの健康のためになるのだから、なんなら自分たちは良いことをしていたとでも言いたげな表情をしていました。
「キンタ! 我が友よ! お主は我輩のために休憩場所を見つけて知らせてくれたでござるな!」
「メェェェェェ!」
「ねぇ、エルミアナ……。ボクずっと不思議に思ってたんだけどロバってあんな鳴き声だっけ?」
「言われてみればそうですね。ロバの鳴き声というのはもっとこう、うめき声のような感じだったような……」
キーラとエルミアナから視線を向けられたキンタの顔にいかにも「マズイ」という表情が浮かびあがりました。
「ンモォオオオオ!」
「「えぇっ!?」」※エルミアナ、キーラ
驚愕する二人の前に、キモヲタがキンタをかばうように立ちはだかります。
「ちょっと、そこの女子! キンタくんをイジメないで! キンタくんはキンタくんなりに一生懸命に頑張ってるの! あんまりしつこくすると先生に言いつけちゃうでござるんだから!」
キモヲタが自分を守ってくれていると感じたのでしょうか。キンタはキモヲタのマントをむしゃむしゃと美味しそうに咀嚼し始めるのでした。
そんなこんなで結局、その日はこの野営跡で夜を過ごすことになりました。
鳴き声が怪しいキンタではありますが、その力は十分に頼りになっていました。キンタは全員の荷物だけでなく、食糧や水、鍋やテントまで背負ってくれているのでした。
なので、キモヲタに休憩を取らせるつもりは毛頭なかった四人も、キンタを労って休ませることについては、何の異論もなかったのです。
キモヲタは、キンタの背中から鍋を降ろすと、火を起こして調理の準備を始めます。
鍋に水を注ぎ煮たたせると、干した肉や野菜を投入しスープを作り始めました。その仕草は、普段のキモヲタのノロノロ面倒くさそうな所作とは打って変わって、テキパキかつキビキビとした動きを見せています。
「キモヲタ殿は、料理のときだけは機敏に動けるのだな」※エルミアナ
「エッチなことしようとするときは、もっと早く動くよ!」※キーラ
「キモイ……」※セリア
「料理に一生懸命なキモヲタ様、素敵❤」※ユリアス
四人の評価が耳に入らないほどに調理に集中していたキモヲタは、最後の仕上げに鍋にカレー袋の中身を投入し、スープカレーに仕上げました。
フアァァー。
たちまち周囲にカレーの香ばしい匂いが広がっていきます。
「ふぁー、いい匂い! ボク、カレーの匂い大好き!」※キーラ
「確かに、沢山のスパイスが複雑かつ芸術的に混ざった香りがたまりません!」※エルミアナ
「じゅるり……」※セリア
「あぁ、キモヲタ様が作ったカレーの香り……素敵です❤」
「おいしそな匂いー!」※ミミ
「早く食べたいぃぃ!」※ノノア
「でござろう! カレーはどう扱っても美味くなるのでござるよ! もう少しの辛抱でござ……」
違和感に気が付いたキモヲタは、カレースープを混ぜる手を止めました。
そんなキモヲタの様子に違和感を覚えた四人が、ようやく違和感の正体に気が付きました。
キモヲタが作っているカレースープの前に、二人の小人が立っていたのです。
「ねぇ、ねぇ、これ絶対おいしいよね?」※ミミ
「うん。この匂い。絶対おいしいに決まってるよ!」※ノノア
「「「「「誰?」」」」」
相変わらず日中でも森の中は薄暗く、鳥や虫の声も聞こえず、動物の気配もありません。
「メェェェェェ!」
前方を行くユリウスたちのお尻を堪能をしながら、ロバのキンタを引いていたキモヲタ。キンタの鳴き声に足を止めます。
「ん? キンタ、どうしたでござる」
「メェェェェェ!」
キンタが鳴き声を上げつつ頭を振る方向に目を向けると、街道脇の少し奥まったところに野営の跡がありました。ずっと以前に使われていたと思われるその場所には、石で簡単に組んだ竈が残されています。
「おぉおい! 皆の衆! ここに野営の跡がござるよぉお!」
キモヲタの声が聞こえなかったのか、誰も立ち止まろうとはしません。
「ちっ! でござる」
キモヲタは舌打ちした後、再び大きな声で叫びました。
「おぉおい! 前を行く見目麗しい乙女四人衆! こっちに戻って欲しいですぞぉお」
まるでファッションショーのランウェイを歩くモデルよろしく、腰に手を当ててくるりと回れ右する乙女四人衆。
先ほどまでの彼女たちの会話が、女性冒険者ファッションについて盛り上がっていたこともあり、それぞれが自分の衣装とスタイルを見せつけるように道を戻ってきました。
またそれまで横並びで歩いていたくせに、一人ずつファッションモデルを気取って、いちいち腰をクィッ! クィッ! と捻りながら歩いてくるのが、より一層キモヲタを苛立たせるのでした。
(ぐぬぬ。しかし、ここでチャチャを入れてしまうと、またUターンして先に行ってしまうかもしれないでござる。ここは……ここは我慢のしどころですぞ!)
などと内心では悪態を吐きつつも、脳内盗撮はバッチリとRECしているキモヲタなのでした。
「どうしたのキモヲタ? また妄想してるの?」
一番、最後にやってきたキーラがキモヲタに声を掛けました。
「い、いやいや。実はこの脇道の先に野営の跡があるのを見つけましてな。あそこで休憩をとるのはいかがでござろうか?」
「チッ! 野営の跡に気づいちゃったか」※キーラ
「チッ! 気づかれましたか」※エルミアナ
「チッ! 気づいたんだ」※セリア
「あはは……気づいてしまわれましたか」※ユリアス
「ちょっ! みんな知ってて黙ってたでござるか!? 酷いでござるよ!」
キモヲタに休ませまいとして、わざと野営跡をスルーした四人。そのいずれの顔にも全く反省の色は見えませんでした。
どちらかというと、キモヲタの健康のためになるのだから、なんなら自分たちは良いことをしていたとでも言いたげな表情をしていました。
「キンタ! 我が友よ! お主は我輩のために休憩場所を見つけて知らせてくれたでござるな!」
「メェェェェェ!」
「ねぇ、エルミアナ……。ボクずっと不思議に思ってたんだけどロバってあんな鳴き声だっけ?」
「言われてみればそうですね。ロバの鳴き声というのはもっとこう、うめき声のような感じだったような……」
キーラとエルミアナから視線を向けられたキンタの顔にいかにも「マズイ」という表情が浮かびあがりました。
「ンモォオオオオ!」
「「えぇっ!?」」※エルミアナ、キーラ
驚愕する二人の前に、キモヲタがキンタをかばうように立ちはだかります。
「ちょっと、そこの女子! キンタくんをイジメないで! キンタくんはキンタくんなりに一生懸命に頑張ってるの! あんまりしつこくすると先生に言いつけちゃうでござるんだから!」
キモヲタが自分を守ってくれていると感じたのでしょうか。キンタはキモヲタのマントをむしゃむしゃと美味しそうに咀嚼し始めるのでした。
そんなこんなで結局、その日はこの野営跡で夜を過ごすことになりました。
鳴き声が怪しいキンタではありますが、その力は十分に頼りになっていました。キンタは全員の荷物だけでなく、食糧や水、鍋やテントまで背負ってくれているのでした。
なので、キモヲタに休憩を取らせるつもりは毛頭なかった四人も、キンタを労って休ませることについては、何の異論もなかったのです。
キモヲタは、キンタの背中から鍋を降ろすと、火を起こして調理の準備を始めます。
鍋に水を注ぎ煮たたせると、干した肉や野菜を投入しスープを作り始めました。その仕草は、普段のキモヲタのノロノロ面倒くさそうな所作とは打って変わって、テキパキかつキビキビとした動きを見せています。
「キモヲタ殿は、料理のときだけは機敏に動けるのだな」※エルミアナ
「エッチなことしようとするときは、もっと早く動くよ!」※キーラ
「キモイ……」※セリア
「料理に一生懸命なキモヲタ様、素敵❤」※ユリアス
四人の評価が耳に入らないほどに調理に集中していたキモヲタは、最後の仕上げに鍋にカレー袋の中身を投入し、スープカレーに仕上げました。
フアァァー。
たちまち周囲にカレーの香ばしい匂いが広がっていきます。
「ふぁー、いい匂い! ボク、カレーの匂い大好き!」※キーラ
「確かに、沢山のスパイスが複雑かつ芸術的に混ざった香りがたまりません!」※エルミアナ
「じゅるり……」※セリア
「あぁ、キモヲタ様が作ったカレーの香り……素敵です❤」
「おいしそな匂いー!」※ミミ
「早く食べたいぃぃ!」※ノノア
「でござろう! カレーはどう扱っても美味くなるのでござるよ! もう少しの辛抱でござ……」
違和感に気が付いたキモヲタは、カレースープを混ぜる手を止めました。
そんなキモヲタの様子に違和感を覚えた四人が、ようやく違和感の正体に気が付きました。
キモヲタが作っているカレースープの前に、二人の小人が立っていたのです。
「ねぇ、ねぇ、これ絶対おいしいよね?」※ミミ
「うん。この匂い。絶対おいしいに決まってるよ!」※ノノア
「「「「「誰?」」」」」
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