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第6話 セルフ足裏マッサージですぞ!

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 突然、唸り声をあげて飛び掛かってきたケモミミ少女。

 キモヲタは、首を狙ってきた爪攻撃を、とっさに両腕でカバーして防ぎます。

「ぬぼあっ!」

 そのままケモミミ少女の体当たりを受けて、キモヲタはゴロゴロと川に向って転がっていきました。

「なっ、何をするでござる!?」

 立ち上がったキモヲタは、腕に強烈な痛みを感じました。見ると、ザックリと裂かれた腕の傷から大量の血が流れ出ています。

 思わず悲鳴をあげそうになるをキモヲタは必死にたえました。

「フーッ! フーッ!」

 何故なら、すぐ目の前ではケモミミ少女が血に染まった爪をこちらに向けて、今にも飛びかかろうとしていたからです。

(一瞬でも目をそらしたら、次は確実に殺されてしまうでござる!)

 そう思ったキモヲタは、ケモミミ少女から目を離すことができませんでした。

「ど、どうしてこんなことをするのでござるか? 我輩は少女氏の傷を治しただけでござるのに……」

 本当にキモヲタの言う通りなのですが、自分がオークに襲われていると勘違いしているケモミミ少女の耳には、その言い分が届くことはありませんでした。

「フーッ! フーッ! お、おまえは、ボクをけがした! フーッ! フーッ!」
 
 ケモミミ少女が憎々しげに発した言葉を受けて、キモヲタはハッとしました。

(ハッ!? 我輩が少女に草を掛ける際、ちゃっかり発達途上の張りのあるマシュマロと突起をチラ見したことがバレてる!? 毛が生えてないことをつい確認してしまったことがバレてござったか!?)

 キモヲタの動揺を見たケモミミ少女は、ますます誤解を深めてしまうのでした。

 当然ながら、ケモミミ少女はより一層ブチ切れてしまいます。

「おまえぇぇええええ!」

 キモヲタは、ケモミミ少女の目が光って、口から炎が吹き出るかのような幻影を見た気がしました。

 これは確実に処されてしまう!

 そう感じたキモヲタは、反射的にスキルを繰り出していました。

「【お尻かゆくな~る】! ハアァッ!」

 キモヲタが突き出した指の先にいたケモミミ少女に、突然異変が走ります。

「かっ!? かゆい!? お尻が痒い!」

 ズザザっと、ケモミミ少女はキモヲタから距離を取りました。

 いまキモヲタが何か魔法のようなものを放ったことは認識していていました。

「!!」

 ケモミミ少女は、キモヲタに何をされたのかは分かりませんでした。ただ今は、お尻が強烈に痒くなってきており、時間が過ぎる程にその痒みが増していくのを感じまています。

 ケモミミ少女は、ササッと周囲に目を走らせると川岸にある大きな岩に向って突進していきました。

 岩に辿り着くと、その角にお尻を擦り付け始めます。そうせずにはいられなかったのです。

 スリスリッ! スリスリッ! 

「ふはぁあぁああああ❤」

 岩にお尻を擦りつけることで痒みから解放されたケモミミ少女は、完全に雌の顔になっていました。

「い、今でござる! に、逃げるでござるよぉおお!」

 ここをチャンスとばかりに、キモヲタはケモミミ少女に背を向けて森の中へと飛び込んでいきました。

「ま、待てっ!」

 その後を追おうとして、ケモミミ少女は少し腰を浮かしますが、すぐに強烈なお尻の痒みに襲われ、再び岩にお尻を擦りつけざるを得ませんでした。

 スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ! 

 もはやケモミミ少女は、姿が見えなくなったキモヲタに向って、呪いの言葉を投げつけることしかできなくなりました。

「白いオーク! ボクは必ずお前を見つけ出して復讐する! 地の果てまで追いかけて、お前の臓腑ぞうふを地にバラまいてやるからな!」

 激しい勢いで叫んだため、一瞬、ケモミミ少女は岩から腰を浮かせてしまい、そのために再び強烈なお尻の痒みに襲われるのでした。

 スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ! 

 岩にお尻を擦りつける度、ケモミミ少女は痒みが解消される快感と、自分のみっともない姿に対する屈辱と、白いオークへの怒りで、頭も心もぐっちゃぐちゃになってしまうのでした。

「ふはぁあぁああああん❤」



~ 数時間後 ~

 ケモミミ少女から逃れたキモヲタは、深い森の中をひたすら走り続けました。

 フルチンで走り続けました。

 自分の変態スキル【お尻かゆくな~る】が、いつまでケモミミ少女に対して効果を発揮し続けるのかキモヲタには分かりません。
 
 なので、とにかく今は距離を稼ぐことしか考えられませんでした。

 クキッ!

「うぼあぁあ! 足をひねったでござるぅぅ!」

 しばらくは足を引きずりながら進んでいたものの、足の痛みがどんどん酷くなっていくばかり。

「デュフーッ、デュフーッ、も、もう歩けないでござる……デュフーッ」

 ついに地べたに座りこんでしまいました。

 足の痛みのせいですっかりと忘れていましたが、キモヲタは自分の両腕から血が流れ続けているのを見て、真っ青になります。

 何が潜んでいるのか分からない異世界の森のなかで、逃げることさえままならない自分がいかに危険な状況にあるのか、キモヲタは今さらながらに理解したのでした。

「こ、これは詰み……詰みでござるか……ハッ!? 自分に【足ツボ治癒】をかければワンチャンあるのでは!?」

 そう考えたキモヲタは、【足ツボ治癒】を発動して自分の足裏を揉みはじめます。

 グリグリッ!

「んひぃぃぃぃいいいいいいいいい❤」

 キモヲタの口から誰得だれとくかわからないあえぎ声が漏れ出て、それが森中に響き渡ります。

 ただ自分自身に対するスキルの発動は、治癒の効果が早かったようで、一回のツボ押しだけでキモヲタの足の痛みは消え、腕の傷も完治しておりました。

「ふむむ! なにやら疲れもとれた気がしますな!」

 キモヲタが自分の体を軽く揺らしてみると、確かに体力が回復しているのを感じました。

(これならケモミミ少女から逃げ切れる!)

 そう確信したキモヲタは、再び森のなかを進んで行くのでした。
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