うっかり女神の転生ミスで勇者になれなかったし、もうモブ転生でゴールしてもいいんだよね?

帝国妖異対策局

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第五章 悪魔勇者の出現

第91話 さす叔父!

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 勇者が現れて聖具を手に入れたと聞いて以降、勇者に関する情報がまったく表に出てこない。

 それどころか、大聖堂には再び聖具が置かれ、しかも、沢山の挑戦者が今でも聖具を動かそうと躍起になっている。

 どういうことだ?

 レイチェル嬢に尋ねてみても、彼女も勇者についての新しい情報は何も知らないという。

 アルテシア姫か宮廷魔術師長のマリーネさんに聞くことができれば、何か分かるかもしれないけれど、二人とも簡単に会えるような人たちではない。

 困り果てたぼくは、マーカス叔父さんに相談することにした。

「……というわけで、勇者が現れたという情報を聞いてから、その後、勇者がどうなったのかさっぱりわからないんです」
 
「ふむ。なるほどなぁ……」

 ぼくの話を聞いたマーカス叔父さんは、顎に手を当ててしばらく何やら考え込む。

「その勇者ってのは女ってことだが、もしかしてこれまでの勇者ってのは全て男だったりするか? 新しい勇者が女だったから何かしら問題になってるとか?」

「えっと……最後の勇者ナインは女性だったかもしれないとも言われてます。勇者が女性だという理由で問題になることはないと思います。たぶん」

「それじゃ、従者の魔族ってのが問題になってるとか?」

 その可能性は高い。とはいえ勇者の従者ともなれば、魔族と言っても、人間と見れば襲い掛かるような連中とは違うはずだ。

 それに――

「その可能性は高いかもしれません。とはいえ勇者ナインは鬼人族だったとも言われています」

「この大陸では鬼人族は、人族と魔族どっちになるんだ?」

「微妙なところです。どちらかと言うと魔族寄りと思われることが多いかな」

「ふむ。勇者が女で、従者に魔族を連れている。どちらも問題になる可能性はあっても、決定的な理由でもないと……」

「そうです」

「そうか……」

 マーカス叔父さんが、眉根を寄せて真剣な顔で何か考え込んでいる。

「……」※ぼく

「……」※マーカス叔父

「……」※ぼく

「わかった!」
 
 突然、マーカス叔父さんが大きな声を上げて、両手をパンッと打ち鳴らした。

「叔父さん、凄い! それで何がわかったんですか!?」

 キラキラ光る俺の瞳みて、マーカス叔父さんは大きく頷いた。

「俺にはわからんことがわかった!」
 
「えっ? えぇ……!?」

「だからサラディナに頼もう!」

 そう言ってマーカス叔父さんは、ぼくの背中を押しつつ、そのままサラディナさんのオフィスへ向った。



~ サラディナさん ~

「わかったわ。私に任せなさい」 

 魅惑のボディのサラディナさんは、ぼくの話を聞くと、すぐにそう言ってくれた。

 ちなみにサラディナさんは、今、マーカス叔父の膝の上に座っている。

「もしかして勇者についての情報をお持ちなんですか?」

「いいえ知らないわ。私が聞いたのは勇者が現れて聖具を動かしたって話だけ」 
 サラディナさんが、マーカス叔父の顎に白い手を当てて、二人で見つめ合っている。

 おい。未成年の前なんだが? 

 と、ツッコミは入れず、ぼくはサラディナさんの話を続けるのを大人しく待つ。

「勇者が現れたとなれば、私たちの商売にも大きな影響が出るわ。だから、勇者のことについてはずっと調べさせてるの」

 おぉ! さすがサラディナさん! 魅惑のボディを持っているだけではなく、できる美熟女だった!

「明日、最初の報告が入ってくるはずだから、その後にキースにも勇者の情報を教えてあげる。まぁ……話せることはね」

 サラディナさんが魅惑的な笑顔をぼくに向ける。 

「サラ……」

 そのサラディナさんの顎に手を当てて、彼女の顔を自分に向けるマーカス叔父さん。

「大事な甥っ子が本気で腹を括って俺に頼んで来たんだ。そう固い事は言わず、すべて話してやってくれないか」

「はぁ……アンタがそう言うのなら仕方ないねぇ。わかったよ。キースには全て話すことにするさ」

 単に行き詰っただけで、仕方ないからマーカス叔父さんに相談しただけなんだけどな。本気で腹を括ったとか意味がわからなかったけど、結果的にサラディナさんから全ての情報を貰えることになった。

 さすがマーカス叔父さん! さす叔父!

 サラディナさんにお礼を言ってから、オフィスを後にした。扉を閉める際、マーカス叔父さんにサムズアップしたけど、二人はもう見つめ合って二人の世界に入っていたので、叔父が気付いたかどうかは分からなかった。

 とにかく、サラディナ商会が動いているとなれば、アルテシア姫やマリーネさんほどではないにしろ、それなりに情報を集めることができるだろう。

 明日の報告が楽しみにしつつ、僕は自分の部屋へと戻った。

「坊ちゃま、おかえりなさい!」

「ただいまシーア!」

 ぼくは、一直線にシーアの懐にポフッと飛び込んだ。

「ふふ。ご機嫌なようですね。マーカス様へのご相談はうまく行ったのですか?」
 
「うん。明日には勇者について詳しい話を聞くことができそうだよ」

 今日は色々と疲れたし、このままシーアの香りに包まれて眠ろうかな……と思っていたら。

 バンッ!

 と音を立てて扉が開き、

「キース! 姉ちゃん! メシ喰いに行こうぜ!」

 と大声を上げながら、シーアの弟ヴィルフォランドールが飛び込んで来た。
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