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第五章 悪魔勇者の出現
第85話 生きていた叔父さん
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サラディナ商会に住むことになってから、ぼくは毎日のようにシーアと一緒に通学していた。
早朝からサラディナ商会を出で、朝のラ・ジーオタイッソに妹と一緒に参加している。
最近のラ・ジーオタイッソはレイチェル嬢とクラウスくんが継続して出席していることから「朝から美少女づくし」という噂を聞きつけ、貴族寮の男子生徒のほぼ全員が参加するようになってきた。
クラウスくんが美少女に分類されるかどうかは、生徒によって判断が違ってくるようだが、分類するなら美少女に決まってるだろ!
運動の後は、妹と一緒に朝食を済ませてからラヴェンナ像に詣でる。この時間帯になると登校してくる生徒や寮生たちが像の前に集まり、姉妹によるタイガ・マガーテイテヨの儀式が始まる。
そこかしこで繰り広げられる百合百合しい空気を肺一杯に吸い込み、脳を活性化してから授業に出席。
放課後、シーアがレイチェル嬢主催の女子会やダンスサロンに狩り出されているときは、ぼくはサラディナ商会に戻ってピュリフィンシートの開発に勤しむ。そうでないときは、シーアと一緒に学校や街を散策する。
そんな日常が繰り返されていたある日のこと。
学校から戻ったぼくとシーアがサラディナ商会に入ると、受付嬢がぼくを呼び止めた。
「ロイド様、ご実家の方からお手紙が届いております」
受付嬢から差し出された封筒を受け取り、お礼を言った後、部屋に戻って手紙を開封する。
手紙は父上からのものだった。
【キース。私の弟マーカスがお前たちに会うために王都に向っている。マーカス叔父さんは、とてつもないプレゼントを携えているのだが、内容は口留めされているのでここには書かない。プレゼントを受け取ったら、なるべく早いうちに、皆を連れて家に戻って欲しい。父より】
「マーカス叔父さんって、ぼくが生まれる前に行方不明になっていたような……。シーアは叔父さんに会ったことある?」
「いいえ。私がロイド家に来た時にはもういらっしゃいませんでした。マーカス様のことは、お噂でしか聞いたことがありません。お話で聞く限り、とても……その……自由な方だったようです」
「自由人ねぇ……」
叔父さんのことは、母上が「アンゴールへ武者修行に行った」とか「別大陸に渡った」とか言っていたのを覚えている。だけどそれって「叔父さんは、遠いお星さまになったのよ」って意味かと思ってた。
しっかり生きてたんだ。ちょっと会ってみたいかも。
「それにしても、とてつもないプレゼントってなんだろうね」
「きっと坊ちゃまがビックリするような、とても良いものに違いないです!」
どんなプレゼントなのだろうかと、シーアの巨乳を眺めつつ考えてみた。
「うーん。とても良くてビックリするもの……シーアをもう一人とか?」
ぼくの言葉を聞いたシーアがパッと笑顔になったものの、すぐに柳眉を寄せて悩ましい表情を浮かべる。
「それは……とても嬉しいのですが……。でも、それだと私が坊ちゃまを独り占めできなくなるので駄目です」
「ぼくとしては、シーアがたくさんいてもいいんだけどなぁ」
「駄目!」
そう言ってシーアは、ぼくの頭を胸の中に抱きかかえる。窒息しかけてタップするまで、ぼくはシーアの胸の中で天国時間を過ごした。
「プッハァ! 幸せ過ぎて本当に天国に行くところだった」
「ご、ごめんなさい」
シーアはぼくの頭を撫でながら、申し訳なさそうに謝った。
「コホンッ!」
先程からぼくたちを見ていた受付嬢が、わざと咳払いをする。彼女の冷めた視線がチクチクとぼくの頬を刺した。
「こ、この手紙の内容だと、王都についた叔父さんがここに来るのか、学校の方に来るのかわからないから、とりあえずミーナにも知らせておこう。うん、そうしよう!」
ぼくは受付嬢の視線を避けるように、くるりと身体を回し、シーアと共にサラディナ商会を出た。そしてミーナに手紙の内容を伝えるために、再び学校に引き返す。
貴族寮にあるミーナの部屋に到着すると、ぼくはミーナに父上からの手紙を見せて、行方不明の叔父が会いに来ることを伝えた。
妹は予想外に大きな反応を示した。
「マーカス叔父さんが生きていたなんて! ほんとにびっくり! ……ですわ!」
未だ見ぬ叔父との再会に、ミーナは期待で目をキラキラさせていた。
どうやらミーナは、母上から聞いた叔父の話を、その言葉通りに受け取っていたようだ。妹の脳内では、マーカス叔父はものすっごい冒険者という設定になっているらしい。
まぁ、期待に胸を膨らませる妹に冷や水を掛けるのも気が引けるので、ぼくは何も言わなかった。
ぼく自身は叔父のことをどういう風に考えているのか……
うん。
プレゼント次第だな。
早朝からサラディナ商会を出で、朝のラ・ジーオタイッソに妹と一緒に参加している。
最近のラ・ジーオタイッソはレイチェル嬢とクラウスくんが継続して出席していることから「朝から美少女づくし」という噂を聞きつけ、貴族寮の男子生徒のほぼ全員が参加するようになってきた。
クラウスくんが美少女に分類されるかどうかは、生徒によって判断が違ってくるようだが、分類するなら美少女に決まってるだろ!
運動の後は、妹と一緒に朝食を済ませてからラヴェンナ像に詣でる。この時間帯になると登校してくる生徒や寮生たちが像の前に集まり、姉妹によるタイガ・マガーテイテヨの儀式が始まる。
そこかしこで繰り広げられる百合百合しい空気を肺一杯に吸い込み、脳を活性化してから授業に出席。
放課後、シーアがレイチェル嬢主催の女子会やダンスサロンに狩り出されているときは、ぼくはサラディナ商会に戻ってピュリフィンシートの開発に勤しむ。そうでないときは、シーアと一緒に学校や街を散策する。
そんな日常が繰り返されていたある日のこと。
学校から戻ったぼくとシーアがサラディナ商会に入ると、受付嬢がぼくを呼び止めた。
「ロイド様、ご実家の方からお手紙が届いております」
受付嬢から差し出された封筒を受け取り、お礼を言った後、部屋に戻って手紙を開封する。
手紙は父上からのものだった。
【キース。私の弟マーカスがお前たちに会うために王都に向っている。マーカス叔父さんは、とてつもないプレゼントを携えているのだが、内容は口留めされているのでここには書かない。プレゼントを受け取ったら、なるべく早いうちに、皆を連れて家に戻って欲しい。父より】
「マーカス叔父さんって、ぼくが生まれる前に行方不明になっていたような……。シーアは叔父さんに会ったことある?」
「いいえ。私がロイド家に来た時にはもういらっしゃいませんでした。マーカス様のことは、お噂でしか聞いたことがありません。お話で聞く限り、とても……その……自由な方だったようです」
「自由人ねぇ……」
叔父さんのことは、母上が「アンゴールへ武者修行に行った」とか「別大陸に渡った」とか言っていたのを覚えている。だけどそれって「叔父さんは、遠いお星さまになったのよ」って意味かと思ってた。
しっかり生きてたんだ。ちょっと会ってみたいかも。
「それにしても、とてつもないプレゼントってなんだろうね」
「きっと坊ちゃまがビックリするような、とても良いものに違いないです!」
どんなプレゼントなのだろうかと、シーアの巨乳を眺めつつ考えてみた。
「うーん。とても良くてビックリするもの……シーアをもう一人とか?」
ぼくの言葉を聞いたシーアがパッと笑顔になったものの、すぐに柳眉を寄せて悩ましい表情を浮かべる。
「それは……とても嬉しいのですが……。でも、それだと私が坊ちゃまを独り占めできなくなるので駄目です」
「ぼくとしては、シーアがたくさんいてもいいんだけどなぁ」
「駄目!」
そう言ってシーアは、ぼくの頭を胸の中に抱きかかえる。窒息しかけてタップするまで、ぼくはシーアの胸の中で天国時間を過ごした。
「プッハァ! 幸せ過ぎて本当に天国に行くところだった」
「ご、ごめんなさい」
シーアはぼくの頭を撫でながら、申し訳なさそうに謝った。
「コホンッ!」
先程からぼくたちを見ていた受付嬢が、わざと咳払いをする。彼女の冷めた視線がチクチクとぼくの頬を刺した。
「こ、この手紙の内容だと、王都についた叔父さんがここに来るのか、学校の方に来るのかわからないから、とりあえずミーナにも知らせておこう。うん、そうしよう!」
ぼくは受付嬢の視線を避けるように、くるりと身体を回し、シーアと共にサラディナ商会を出た。そしてミーナに手紙の内容を伝えるために、再び学校に引き返す。
貴族寮にあるミーナの部屋に到着すると、ぼくはミーナに父上からの手紙を見せて、行方不明の叔父が会いに来ることを伝えた。
妹は予想外に大きな反応を示した。
「マーカス叔父さんが生きていたなんて! ほんとにびっくり! ……ですわ!」
未だ見ぬ叔父との再会に、ミーナは期待で目をキラキラさせていた。
どうやらミーナは、母上から聞いた叔父の話を、その言葉通りに受け取っていたようだ。妹の脳内では、マーカス叔父はものすっごい冒険者という設定になっているらしい。
まぁ、期待に胸を膨らませる妹に冷や水を掛けるのも気が引けるので、ぼくは何も言わなかった。
ぼく自身は叔父のことをどういう風に考えているのか……
うん。
プレゼント次第だな。
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