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第四章 勇者支援学校編 ー 冒険者への道 ー
第54話 クラウスくん
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シュモネー先生に連れられてぼくたちはギルドに向かった。
シーアはもちろんだけど、シュモネー先生も美人だし、クラウスくんは美少女(仮)だし、つまり傍目から見たらぼくはハーレム状態なんじゃね?
ぼくの前を歩くシュモネー先生の抜群のスタイルとクラウスくんの可愛さを堪能しながら、ぼくはシーアとこの二人があられもない姿でしなだれ掛かってくる様子を妄想していた。もう年頃だし仕方ないよね。ね?
いろいろ想像して鼻の下を伸ばしていると、ぼくの左手が突然キュッと強く握られた。
ハッとしてシーアを見上げると、いつもの優しい笑顔がそこにはなくて、代わりに緊張した硬い表情がそこにあった。
もしかして妄想がバレた?
しまった。妄想するときはシーアの手を放しておくべきだった。普段、手の握り具合でコミュニケーションを取っているくらいだから、ぼくの感情なんて完全に筒抜けだからだ。
ぼくは慌ててシーアの手をニギニギして言い訳する。しかし、シーアの表情はどんどんと険しいものとなっていくばかりだ。
そんなに怒らないでよ――
とうとう立ち止まって動かなくなってしまったシーアの手を引こうとしたとき、
「!?」
ぼくは、そこでようやくシーアがぼくの妄想に怒っているのではなく、シーアが動くことができないほどの恐怖を感じていることに気が付いた。
手のコミュニケーションを言葉に変換すれば「怖い!」とシーアは伝えているのだ。
「どうしたのシーア。何が怖いの?」
「……」
シーアが答えることはなく、ただぼくの手を痛いほど強く握り返してくるだけだった。
ぼくは剣の柄に手をかけて身構える。シーアのこの怯え方は尋常じゃない。ぼくは周囲に素早く目を走らせた。街中だと油断して弓を持って来なかったことがいまさらながら悔やまれる。
「ふ、二人ともどうしたの?」
クラウスくんがぼくたちの異変に気がついて慌てだした。
「どうかしたのですか?」
シュモネー先生もぼくたちの緊迫した様子に何事かと駆け寄ってくる。
そのとき――
一台の馬車がぼくたちの後ろから近づいて来た。
シーアの震えが激しくなる。冒険者たちでさえ一目置かざる得ないほど強いシーアが恐怖に震えている。
どれほどの恐怖がここにあるというのだろう。彼女が怯えるほどの相手なのだとしたら、ぼくには到底勝ち目なんてないはず。
しかし、シーアが強く握るぼくの手の痛みが、彼女の震えが、ぼくを奮い立たせていた。
相手が何であろうと、シーアをここまで怯えさせるものはぼくが倒すべき敵なんだ。
貴族のものらしきその馬車がぼくたちの横を通り過ぎる。
馬車の中には高貴な身分らしき女性が乗っていて、その女性が何気なくぼくたちに顔を向けた。
「!」
ぼくはその瞳を見た。
女性の瞳には青い炎が揺らめいていた。
ぼくはとっさに剣を抜いて叫ぶ。
「ヴィドゴニアァァ!」
シーアの手を振り解き、ぼくが馬車を追って駆出したその瞬間――
天地がひっくり返って、ぼくは地べたに強く叩きつけられた。
「こんな街中でいきなり剣を抜くなんて何事ですか」
我に返ったぼくはシュモネー先生の顔を見上げていた。右手首を掴まれたままぼくは地面に寝っ転がっていた。
シュモネー先生が掴んでいるぼくの手を軽くひねると、右手に激痛が走って思わず剣を落としてしまう。
そのまますべてがフリーズして誰も動かないまま沈黙の時が流れる。
「えっ……と」
「坊ちゃま!」
最初に動いたのはシーアだった。ぼくの傍にしゃがみ込み、ぼくを探して手を伸ばす。シュモネー先生が、シーアの手をとりぼくの右手を握らせてくれた。
「シュモネー様、坊ちゃまは何も悪くありません。坊ちゃまはわたしのことを守ろうとしてくださっただけなのです。悪いのはわたしなんです。お叱りはどうかわたしに……」
寡黙なシーアが一生懸命ぼくのために弁明をしてくれる。
周囲に人が集まり始めている。シュモネー先生はため息をついて、
「とりあえず、今は落ち着いていますかキーストンさん?」
「はい。もう大丈夫です。正直に言えば心中穏やかならざる状態ですが、むやみに抜剣するようなことはありません。次に抜くときは、先生にも同意いただける状況であるはずです」
本当は今すぐ馬車の後を追いかけたいところだ。けれど、貴族の馬車に乗っているヴィドゴニアなんてそうそういるはずもなく、必ずヤツに辿り着くことができると自分に言い聞かせた。
「わかりました」
シュモネー先生はぼくの目をしばらくじっと見つめた後、またため息をついて、
「それでは皆さんは先に宿に戻ってください。わたしもギルドの用事を済ませたらすぐに戻ります。それから詳しい話を伺うことにしますね。よろしいですか?」
「はい」
地元ギルドの見学は中止となり、ぼくたちは素直に宿へと引き返した。
「ごめんね、クラウスくん。ぼくの暴走でこんなことになっちゃって」
「う、うん。全然構わないよ。何か事情があるということだけはわかってるから。君が言いたくなければ理由も聞かない」
ほんま、ええ(男の)娘や。
違った。良い友だ。
「クラウス様、ありがとうございます。」
シーアがぺこりと頭を下げた。
「う、ううん! ヴィルフェリーシアさんこそ、大丈夫?」
クラウスくんがシーアを心配そうな顔で見つめる。心配顔のクラウスくん、かわいい。
シーアの手を握ることによる暗号通信を使って、ぼくはシーアに「クラウスくんと結婚したい。許可願う」と打電すると、
(許可する)
ただちにシーアから返電が届いた。
うーん。
沈黙するぼくとシーアを、クラウスくんは不思議そうな顔(かわいい)で見ていた。
シーアはもちろんだけど、シュモネー先生も美人だし、クラウスくんは美少女(仮)だし、つまり傍目から見たらぼくはハーレム状態なんじゃね?
ぼくの前を歩くシュモネー先生の抜群のスタイルとクラウスくんの可愛さを堪能しながら、ぼくはシーアとこの二人があられもない姿でしなだれ掛かってくる様子を妄想していた。もう年頃だし仕方ないよね。ね?
いろいろ想像して鼻の下を伸ばしていると、ぼくの左手が突然キュッと強く握られた。
ハッとしてシーアを見上げると、いつもの優しい笑顔がそこにはなくて、代わりに緊張した硬い表情がそこにあった。
もしかして妄想がバレた?
しまった。妄想するときはシーアの手を放しておくべきだった。普段、手の握り具合でコミュニケーションを取っているくらいだから、ぼくの感情なんて完全に筒抜けだからだ。
ぼくは慌ててシーアの手をニギニギして言い訳する。しかし、シーアの表情はどんどんと険しいものとなっていくばかりだ。
そんなに怒らないでよ――
とうとう立ち止まって動かなくなってしまったシーアの手を引こうとしたとき、
「!?」
ぼくは、そこでようやくシーアがぼくの妄想に怒っているのではなく、シーアが動くことができないほどの恐怖を感じていることに気が付いた。
手のコミュニケーションを言葉に変換すれば「怖い!」とシーアは伝えているのだ。
「どうしたのシーア。何が怖いの?」
「……」
シーアが答えることはなく、ただぼくの手を痛いほど強く握り返してくるだけだった。
ぼくは剣の柄に手をかけて身構える。シーアのこの怯え方は尋常じゃない。ぼくは周囲に素早く目を走らせた。街中だと油断して弓を持って来なかったことがいまさらながら悔やまれる。
「ふ、二人ともどうしたの?」
クラウスくんがぼくたちの異変に気がついて慌てだした。
「どうかしたのですか?」
シュモネー先生もぼくたちの緊迫した様子に何事かと駆け寄ってくる。
そのとき――
一台の馬車がぼくたちの後ろから近づいて来た。
シーアの震えが激しくなる。冒険者たちでさえ一目置かざる得ないほど強いシーアが恐怖に震えている。
どれほどの恐怖がここにあるというのだろう。彼女が怯えるほどの相手なのだとしたら、ぼくには到底勝ち目なんてないはず。
しかし、シーアが強く握るぼくの手の痛みが、彼女の震えが、ぼくを奮い立たせていた。
相手が何であろうと、シーアをここまで怯えさせるものはぼくが倒すべき敵なんだ。
貴族のものらしきその馬車がぼくたちの横を通り過ぎる。
馬車の中には高貴な身分らしき女性が乗っていて、その女性が何気なくぼくたちに顔を向けた。
「!」
ぼくはその瞳を見た。
女性の瞳には青い炎が揺らめいていた。
ぼくはとっさに剣を抜いて叫ぶ。
「ヴィドゴニアァァ!」
シーアの手を振り解き、ぼくが馬車を追って駆出したその瞬間――
天地がひっくり返って、ぼくは地べたに強く叩きつけられた。
「こんな街中でいきなり剣を抜くなんて何事ですか」
我に返ったぼくはシュモネー先生の顔を見上げていた。右手首を掴まれたままぼくは地面に寝っ転がっていた。
シュモネー先生が掴んでいるぼくの手を軽くひねると、右手に激痛が走って思わず剣を落としてしまう。
そのまますべてがフリーズして誰も動かないまま沈黙の時が流れる。
「えっ……と」
「坊ちゃま!」
最初に動いたのはシーアだった。ぼくの傍にしゃがみ込み、ぼくを探して手を伸ばす。シュモネー先生が、シーアの手をとりぼくの右手を握らせてくれた。
「シュモネー様、坊ちゃまは何も悪くありません。坊ちゃまはわたしのことを守ろうとしてくださっただけなのです。悪いのはわたしなんです。お叱りはどうかわたしに……」
寡黙なシーアが一生懸命ぼくのために弁明をしてくれる。
周囲に人が集まり始めている。シュモネー先生はため息をついて、
「とりあえず、今は落ち着いていますかキーストンさん?」
「はい。もう大丈夫です。正直に言えば心中穏やかならざる状態ですが、むやみに抜剣するようなことはありません。次に抜くときは、先生にも同意いただける状況であるはずです」
本当は今すぐ馬車の後を追いかけたいところだ。けれど、貴族の馬車に乗っているヴィドゴニアなんてそうそういるはずもなく、必ずヤツに辿り着くことができると自分に言い聞かせた。
「わかりました」
シュモネー先生はぼくの目をしばらくじっと見つめた後、またため息をついて、
「それでは皆さんは先に宿に戻ってください。わたしもギルドの用事を済ませたらすぐに戻ります。それから詳しい話を伺うことにしますね。よろしいですか?」
「はい」
地元ギルドの見学は中止となり、ぼくたちは素直に宿へと引き返した。
「ごめんね、クラウスくん。ぼくの暴走でこんなことになっちゃって」
「う、うん。全然構わないよ。何か事情があるということだけはわかってるから。君が言いたくなければ理由も聞かない」
ほんま、ええ(男の)娘や。
違った。良い友だ。
「クラウス様、ありがとうございます。」
シーアがぺこりと頭を下げた。
「う、ううん! ヴィルフェリーシアさんこそ、大丈夫?」
クラウスくんがシーアを心配そうな顔で見つめる。心配顔のクラウスくん、かわいい。
シーアの手を握ることによる暗号通信を使って、ぼくはシーアに「クラウスくんと結婚したい。許可願う」と打電すると、
(許可する)
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