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第三章 勇者支援学校編 ー 基礎課程 ー
第37話 貴族の授業は優雅
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魔力というのはこの世界の人間であれば大なり小なり誰もが持っている。
ただそれを魔法のような形で扱えるようになるためには、かなりの努力と才能、そして強い意志が必要となってくる。
これは元の世界で言えば銃器を持って生まれてくるようなものだ。銃と違って魔法の場合はトリガーを指ではなく意志の力だけで引くという違いがある。
取り扱いについては銃よりも遥かに慎重でないと悲惨な事故につながりかねない。そのため王国の貴族は、赤ん坊の頃から魔力の扱い方についての教育を施される。
その教育は魔法の授業だけでなく、礼儀作法や芸術、武術といった貴族としての嗜みの中にも組み込まれている。そのためこの国の貴族は基本的に魔法と魔力の扱い方を心得ている。
庶民の中でも生まれ持って魔力が大きいものや才能に恵まれたものは、教会や寺院で教育を施され、神官や僧侶、魔術士として育てられる。また選択のひとつとしてエ・ダジーマに入学するという場合も少なくない。
エ・ダジーマにおける魔法の授業は、貴族と庶民は別の教室に分かれて行われる。
「んっ。魔法を扱うにもっとも大切なこととは何でしょうか?」
貴族に魔法を教えているのはザッカー・ハラスメンズ先生。元王宮魔術師だそうだ。先生が王宮魔術師だったのは、ぼくがウルス王だった時期と重なるが、まったく覚えがない。まぁ王宮魔術師は沢山いたし、全員と直接会ったわけでもないので仕方がない。
「んっ。それではペシェさん」
ハラスメンズ先生は、最前列に座っている薄紫色の綺麗な髪をした幼女を指さした。
幼女の名前はペシェ・トレント。トレント侯爵家の令嬢で確かぼくと同じ年齢のはずだ。印象はウサギ。つまり可愛い。
先生に突然指名され、さきほどまでうつらうつらと揺らいでいた幼女の後頭部が、一瞬びくっと動いた。
「んはっ!?」
「んっ。ペシェさん、お昼寝の時間にはまだ早いですよ」
「ご、ごめんなさいと反省しますのです」
「んっ。それでは代わりに、キースくん。答えてください」
先生の目がこちらに向けられる。むっ。もしかして、ぼくがずっと幼女の頭に気を取られていたことがバレていたのかな。
「はい! ラヴェンナ神への祈りと貴族としての誇りを常に心に留め置くことです!」
「んっ。よろしい」
ハラスメンズ先生は教壇の椅子に腰かけて、手を大振りに動かして顎の下に持ってくる。いちいち動きが大袈裟な先生だ。
「わたしたち貴族が扱う魔法は、みなさんのご先祖を始めとする先人たちの絶え間ない研鑽が積み上げられてきた結果の上にあるのです。その尊い血肉の上にわたしたちが立っていることを忘れないようにしてください」
先生が教壇のテーブルに置かれていたお茶を一口飲んだ後、教室の隅に控えていた奴隷少女に声をかける。
「んっ。ミリス、生徒たちにお茶とお菓子を。ペシェさんには熱めのものを。これで眠気が少しは飛んでいくことでしょう」
「はわっ。あ、ありがとうございますと感謝しますのです」
ペシェたんが耳を真っ赤にして先生にお礼を言う。可愛い。
ミリスと呼ばれた奴隷処女は、しずしずと生徒にお茶とお菓子を運ぶ。
「んっ。少し休憩を入れましょう。このお菓子は先生がノストロア産チーズで作ったケーキを燻製にしたものです。前回の授業の応用で皆さんにも同じものが作れるはずですよ」
お菓子を口にした生徒から感嘆の声が上がる。その声に煽られてぼくもケーキを口に運んだ。
う、うまい! チーズケーキだけでも十分おいしいだろうけど、燻製によって味に深みが幾段も増している。
まるで美女の豊満なおっぱいが口の中いっぱいにひろがっていくような……これは……これはチーズのおっぱい革命や!
もしかして美女の豊満なおっぱいを口に含むと、このチーズケーキのような芳醇な香りが広がるのだろうか。シーアにお願いしてみようか。
いやシーアなら本当にやってくれそうだけど、いろいろと後戻りできない事態になってしまうな。うん、それは止めておこう。
ぼく自身も歯止めがきかなくなりそうだし、|そういうの・・・・・はシーアの【見る】を取り戻してからと決めているので、ここはぐっとおっぱい枕までで我慢することにする。
なんて妄想していると、ふとハラスメンズ先生と目が合ったので、慌てて目を伏せてしまった。
しまった! この反応では自ら恥ずかしいことを考えていることを告白してしまったようなものだ。
「い、いやぁ。このケーキは本当においしいなぁ。は、母上の作ってくれたお菓子を思い出しますね」
「わたくしも同じですわ。先生、わたくしもラヴェンナ神への祝詞をいろいろと工夫して燻製のお菓子を研究しておりますの。ぜひこのレシピを教えていただきたいですわ」
レイチェル嬢が良いタイミングで合いの手を入れてくれた。
「んっ。では後で祝詞とレシピを書いてあげましょう。では授業に戻りましょうか。このまま終わってしまうと、わたしの講義が魔法ではなくお菓子教室になってしまいますからね」
クスクスと生徒たちの間からお上品な笑い声が響く。こんな優雅でゆったりとした感じで貴族クラスの魔法授業が続けられていく。
一方その頃、庶民クラスの魔法授業では……
「おらおらおらおらぁー、お前らの根性はその程度かぁ! その程度で魔法を扱おうなんざ百年早いわ!」
全員が横並びで空気椅子をさせられていた。
ただそれを魔法のような形で扱えるようになるためには、かなりの努力と才能、そして強い意志が必要となってくる。
これは元の世界で言えば銃器を持って生まれてくるようなものだ。銃と違って魔法の場合はトリガーを指ではなく意志の力だけで引くという違いがある。
取り扱いについては銃よりも遥かに慎重でないと悲惨な事故につながりかねない。そのため王国の貴族は、赤ん坊の頃から魔力の扱い方についての教育を施される。
その教育は魔法の授業だけでなく、礼儀作法や芸術、武術といった貴族としての嗜みの中にも組み込まれている。そのためこの国の貴族は基本的に魔法と魔力の扱い方を心得ている。
庶民の中でも生まれ持って魔力が大きいものや才能に恵まれたものは、教会や寺院で教育を施され、神官や僧侶、魔術士として育てられる。また選択のひとつとしてエ・ダジーマに入学するという場合も少なくない。
エ・ダジーマにおける魔法の授業は、貴族と庶民は別の教室に分かれて行われる。
「んっ。魔法を扱うにもっとも大切なこととは何でしょうか?」
貴族に魔法を教えているのはザッカー・ハラスメンズ先生。元王宮魔術師だそうだ。先生が王宮魔術師だったのは、ぼくがウルス王だった時期と重なるが、まったく覚えがない。まぁ王宮魔術師は沢山いたし、全員と直接会ったわけでもないので仕方がない。
「んっ。それではペシェさん」
ハラスメンズ先生は、最前列に座っている薄紫色の綺麗な髪をした幼女を指さした。
幼女の名前はペシェ・トレント。トレント侯爵家の令嬢で確かぼくと同じ年齢のはずだ。印象はウサギ。つまり可愛い。
先生に突然指名され、さきほどまでうつらうつらと揺らいでいた幼女の後頭部が、一瞬びくっと動いた。
「んはっ!?」
「んっ。ペシェさん、お昼寝の時間にはまだ早いですよ」
「ご、ごめんなさいと反省しますのです」
「んっ。それでは代わりに、キースくん。答えてください」
先生の目がこちらに向けられる。むっ。もしかして、ぼくがずっと幼女の頭に気を取られていたことがバレていたのかな。
「はい! ラヴェンナ神への祈りと貴族としての誇りを常に心に留め置くことです!」
「んっ。よろしい」
ハラスメンズ先生は教壇の椅子に腰かけて、手を大振りに動かして顎の下に持ってくる。いちいち動きが大袈裟な先生だ。
「わたしたち貴族が扱う魔法は、みなさんのご先祖を始めとする先人たちの絶え間ない研鑽が積み上げられてきた結果の上にあるのです。その尊い血肉の上にわたしたちが立っていることを忘れないようにしてください」
先生が教壇のテーブルに置かれていたお茶を一口飲んだ後、教室の隅に控えていた奴隷少女に声をかける。
「んっ。ミリス、生徒たちにお茶とお菓子を。ペシェさんには熱めのものを。これで眠気が少しは飛んでいくことでしょう」
「はわっ。あ、ありがとうございますと感謝しますのです」
ペシェたんが耳を真っ赤にして先生にお礼を言う。可愛い。
ミリスと呼ばれた奴隷処女は、しずしずと生徒にお茶とお菓子を運ぶ。
「んっ。少し休憩を入れましょう。このお菓子は先生がノストロア産チーズで作ったケーキを燻製にしたものです。前回の授業の応用で皆さんにも同じものが作れるはずですよ」
お菓子を口にした生徒から感嘆の声が上がる。その声に煽られてぼくもケーキを口に運んだ。
う、うまい! チーズケーキだけでも十分おいしいだろうけど、燻製によって味に深みが幾段も増している。
まるで美女の豊満なおっぱいが口の中いっぱいにひろがっていくような……これは……これはチーズのおっぱい革命や!
もしかして美女の豊満なおっぱいを口に含むと、このチーズケーキのような芳醇な香りが広がるのだろうか。シーアにお願いしてみようか。
いやシーアなら本当にやってくれそうだけど、いろいろと後戻りできない事態になってしまうな。うん、それは止めておこう。
ぼく自身も歯止めがきかなくなりそうだし、|そういうの・・・・・はシーアの【見る】を取り戻してからと決めているので、ここはぐっとおっぱい枕までで我慢することにする。
なんて妄想していると、ふとハラスメンズ先生と目が合ったので、慌てて目を伏せてしまった。
しまった! この反応では自ら恥ずかしいことを考えていることを告白してしまったようなものだ。
「い、いやぁ。このケーキは本当においしいなぁ。は、母上の作ってくれたお菓子を思い出しますね」
「わたくしも同じですわ。先生、わたくしもラヴェンナ神への祝詞をいろいろと工夫して燻製のお菓子を研究しておりますの。ぜひこのレシピを教えていただきたいですわ」
レイチェル嬢が良いタイミングで合いの手を入れてくれた。
「んっ。では後で祝詞とレシピを書いてあげましょう。では授業に戻りましょうか。このまま終わってしまうと、わたしの講義が魔法ではなくお菓子教室になってしまいますからね」
クスクスと生徒たちの間からお上品な笑い声が響く。こんな優雅でゆったりとした感じで貴族クラスの魔法授業が続けられていく。
一方その頃、庶民クラスの魔法授業では……
「おらおらおらおらぁー、お前らの根性はその程度かぁ! その程度で魔法を扱おうなんざ百年早いわ!」
全員が横並びで空気椅子をさせられていた。
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