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第三章 勇者支援学校編 ー 基礎課程 ー
第30話 学校暮らし
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王都の城西地区に勇者支援者育成学校エ・ダジーマはある。
王都の中心部に近い場所にありながら広大な敷地を有し、その中には校舎や寮以外にも様々な施設が存在する。
学校内には小規模な商店や鍛冶屋等もあり、それらは学生自治によって管理されていた。
いわばミニチュアの国家を模した運営がなされている。
「キース様、ただいま戻りましたー!」
「坊ちゃ……キースさま。貴族寮のお部屋を確認してまいりました」
ノーラとシーアが学校から戻ってきた。入学式にはまだ一週間あるけれど、お世話係の二人は先に貴族寮に出入りして色々と準備を進めている。
「お部屋自体は手狭ではありますけど、調度品はおしゃれっぽくて良いでしたね。寮全体も綺麗に整頓されてましたし――ヴィルもすぐ慣れて自由に歩けると思いますよ」
ノーラの言葉にシーアが頷いて同意した。
エ・ダジーマには貴族寮と一般寮、公設寮があり、それぞれが学校の三方を囲むようにして建てられている。
貴族寮は一人部屋で、お世話係を二人置くことができる。一般寮は、貴族以外のお金持ちのための二人部屋で、お世話人を一人ずつおくことができる。
いわゆる庶民が入るのが四人部屋の公設寮で、ぼくは当初はそこに入る予定だった。
「うふふ。それにしても……」
突然、ノーラが不敵に笑った。もしかして何かやらかしたのか。ぼくの不安そうな視線を受けてノーラがその理由を説明する。
「銀髪巨乳で盲目の亜人と黒髪黒目の神秘的な雰囲気をまとった美少女をお世話係にしてるのって、王国全土でもキース様しかいらっしゃいませんし……」
「おい。シーアのことは同意だけど、もう一人って誰のことだよ!」
「うふふ。お世話係の間ではわたしたちのことはすでに噂になってるはずですよ」
「うーん。そうか……それはそうだろうな」
「当然、それを主人に話すお世話係も多いことでしょうね。入学前からちょっとした有名人ですよ、キース様」
「そ、そうなのかぁ……」
ぼくは椅子の背もたれに体をあずけ、天井を見上げようと頭を後ろへ反す。
でも天井が見えることなく、いつの間にかぼくの背後に立っていたシーアの大きな双丘が視界いっぱいに広がっていた。
「あまり噂になるようなことは避けたいんだよね」
ぼくはすっと立ち上がって、シーアを椅子に座らせて、その膝の上にちょこんと座って、いつものように後頭部でシーアのふわふわをぽんぽんしてその感触を楽しむ。
「あまり目立ちたくないんだよなー」
「そういうとこですよ!」
何がそういうとこなのか、ノーラが何にツッコミを入れたのかよくわからなかった。
えっ、もしかしてこの「後頭部で楽しむシーアのおっぱい枕」のこと? いやいやさすがに他人の前でこれはしませんよ。それくらいの常識はわきまえてますから。
おっぱい枕で悪目立ちなんて、いくらなんでもそんなバカなマネはしませんって。
まったく心配性だなぁ――という視線を送るぼくにノーラは大きなため息をついて首を左右に振った。
――――――
―――
―
エ・ダジーマ入学式
ぼくとしては生まれて始めて見る校内だったが、前世のウルス王時代は何度も視察に訪れている。
それどころか学校設立についてはあれこれとかなり口を出しており、ウルス王としての自分がつけた爪痕があちらこちらに残されていた。例えば校長の挨拶。
「わしがエ・ダジーマ校長、オーノス・スレンギーンである!!」
入学式における校長の挨拶はこの一喝だけで終了。
ポカンと口を開けて固まっている新入生をそのまま放置したまま、次に教頭によるまともな祝辞が述べられる。これはウルス王時代のぼくが悪ノリして決めたことだ。今は猛烈に反省している。
そしてこの出来事が引き金になって、前世でこの学校を設立する際にやらかしてしまった様々な記憶が次々と思い出されてきた。その中には著作権的にアウトなことも随分やらかしている。
この学校の宣伝のためにと作った演劇「ラヴェンナ様が見てる」の脚本なんて、舞台を変えただけでアニメのもろパクリだし……まぁ、この世界ではウルス王が最初に発表したものばかりだけど、もし作者が転生とかしてきたらどうしよう……。
うん! 悪いのはウルス王だし! ぼくは関係ないし!
そのように自分自身を納得させ、ぼくは気持ちを切り替えて無事に入学式を終えた。
――――――
―――
―
入学してから半年間は基礎課程で、この間に各自の適性や希望を見極めてその後の進路を決定する。この半年の間は学校外へ出ることは許されず、通学者も期間中は寮で生活することになる。
さらにこの間はクラス分けが行われる。ひとクラスは大体15人前後。身分も種族も混在しているけれど、年齢については人間換算で15歳の成年を基準にして分けられている。
基本的に成人の数は少ないため、成人は1クラスにまとめられることが多い。
一般的なクラスは、貴族寮から2人、一般寮から4人、公設寮から8~10人で構成されてる。基礎課程の間は、クラス単位で評価が行われる訓練等もあり、修了時には優秀なクラスに対して栄誉が与えられる。
身分も種族も年齢も異なる生徒が、勇者への支援とラヴェンナ神への信仰という共通した土台の上に立って、協力・連携する方法を学ぶのがこの基礎課程だ。
これから半年間を共に過ごす学友は、いったいどんな人たちなのだろうか。そんな期待と不安を胸に、ぼくは自分の教室へと歩みを進めた。
王都の中心部に近い場所にありながら広大な敷地を有し、その中には校舎や寮以外にも様々な施設が存在する。
学校内には小規模な商店や鍛冶屋等もあり、それらは学生自治によって管理されていた。
いわばミニチュアの国家を模した運営がなされている。
「キース様、ただいま戻りましたー!」
「坊ちゃ……キースさま。貴族寮のお部屋を確認してまいりました」
ノーラとシーアが学校から戻ってきた。入学式にはまだ一週間あるけれど、お世話係の二人は先に貴族寮に出入りして色々と準備を進めている。
「お部屋自体は手狭ではありますけど、調度品はおしゃれっぽくて良いでしたね。寮全体も綺麗に整頓されてましたし――ヴィルもすぐ慣れて自由に歩けると思いますよ」
ノーラの言葉にシーアが頷いて同意した。
エ・ダジーマには貴族寮と一般寮、公設寮があり、それぞれが学校の三方を囲むようにして建てられている。
貴族寮は一人部屋で、お世話係を二人置くことができる。一般寮は、貴族以外のお金持ちのための二人部屋で、お世話人を一人ずつおくことができる。
いわゆる庶民が入るのが四人部屋の公設寮で、ぼくは当初はそこに入る予定だった。
「うふふ。それにしても……」
突然、ノーラが不敵に笑った。もしかして何かやらかしたのか。ぼくの不安そうな視線を受けてノーラがその理由を説明する。
「銀髪巨乳で盲目の亜人と黒髪黒目の神秘的な雰囲気をまとった美少女をお世話係にしてるのって、王国全土でもキース様しかいらっしゃいませんし……」
「おい。シーアのことは同意だけど、もう一人って誰のことだよ!」
「うふふ。お世話係の間ではわたしたちのことはすでに噂になってるはずですよ」
「うーん。そうか……それはそうだろうな」
「当然、それを主人に話すお世話係も多いことでしょうね。入学前からちょっとした有名人ですよ、キース様」
「そ、そうなのかぁ……」
ぼくは椅子の背もたれに体をあずけ、天井を見上げようと頭を後ろへ反す。
でも天井が見えることなく、いつの間にかぼくの背後に立っていたシーアの大きな双丘が視界いっぱいに広がっていた。
「あまり噂になるようなことは避けたいんだよね」
ぼくはすっと立ち上がって、シーアを椅子に座らせて、その膝の上にちょこんと座って、いつものように後頭部でシーアのふわふわをぽんぽんしてその感触を楽しむ。
「あまり目立ちたくないんだよなー」
「そういうとこですよ!」
何がそういうとこなのか、ノーラが何にツッコミを入れたのかよくわからなかった。
えっ、もしかしてこの「後頭部で楽しむシーアのおっぱい枕」のこと? いやいやさすがに他人の前でこれはしませんよ。それくらいの常識はわきまえてますから。
おっぱい枕で悪目立ちなんて、いくらなんでもそんなバカなマネはしませんって。
まったく心配性だなぁ――という視線を送るぼくにノーラは大きなため息をついて首を左右に振った。
――――――
―――
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エ・ダジーマ入学式
ぼくとしては生まれて始めて見る校内だったが、前世のウルス王時代は何度も視察に訪れている。
それどころか学校設立についてはあれこれとかなり口を出しており、ウルス王としての自分がつけた爪痕があちらこちらに残されていた。例えば校長の挨拶。
「わしがエ・ダジーマ校長、オーノス・スレンギーンである!!」
入学式における校長の挨拶はこの一喝だけで終了。
ポカンと口を開けて固まっている新入生をそのまま放置したまま、次に教頭によるまともな祝辞が述べられる。これはウルス王時代のぼくが悪ノリして決めたことだ。今は猛烈に反省している。
そしてこの出来事が引き金になって、前世でこの学校を設立する際にやらかしてしまった様々な記憶が次々と思い出されてきた。その中には著作権的にアウトなことも随分やらかしている。
この学校の宣伝のためにと作った演劇「ラヴェンナ様が見てる」の脚本なんて、舞台を変えただけでアニメのもろパクリだし……まぁ、この世界ではウルス王が最初に発表したものばかりだけど、もし作者が転生とかしてきたらどうしよう……。
うん! 悪いのはウルス王だし! ぼくは関係ないし!
そのように自分自身を納得させ、ぼくは気持ちを切り替えて無事に入学式を終えた。
――――――
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入学してから半年間は基礎課程で、この間に各自の適性や希望を見極めてその後の進路を決定する。この半年の間は学校外へ出ることは許されず、通学者も期間中は寮で生活することになる。
さらにこの間はクラス分けが行われる。ひとクラスは大体15人前後。身分も種族も混在しているけれど、年齢については人間換算で15歳の成年を基準にして分けられている。
基本的に成人の数は少ないため、成人は1クラスにまとめられることが多い。
一般的なクラスは、貴族寮から2人、一般寮から4人、公設寮から8~10人で構成されてる。基礎課程の間は、クラス単位で評価が行われる訓練等もあり、修了時には優秀なクラスに対して栄誉が与えられる。
身分も種族も年齢も異なる生徒が、勇者への支援とラヴェンナ神への信仰という共通した土台の上に立って、協力・連携する方法を学ぶのがこの基礎課程だ。
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