31 / 92
第三章 勇者支援学校編 ー 基礎課程 ー
第30話 学校暮らし
しおりを挟む
王都の城西地区に勇者支援者育成学校エ・ダジーマはある。
王都の中心部に近い場所にありながら広大な敷地を有し、その中には校舎や寮以外にも様々な施設が存在する。
学校内には小規模な商店や鍛冶屋等もあり、それらは学生自治によって管理されていた。
いわばミニチュアの国家を模した運営がなされている。
「キース様、ただいま戻りましたー!」
「坊ちゃ……キースさま。貴族寮のお部屋を確認してまいりました」
ノーラとシーアが学校から戻ってきた。入学式にはまだ一週間あるけれど、お世話係の二人は先に貴族寮に出入りして色々と準備を進めている。
「お部屋自体は手狭ではありますけど、調度品はおしゃれっぽくて良いでしたね。寮全体も綺麗に整頓されてましたし――ヴィルもすぐ慣れて自由に歩けると思いますよ」
ノーラの言葉にシーアが頷いて同意した。
エ・ダジーマには貴族寮と一般寮、公設寮があり、それぞれが学校の三方を囲むようにして建てられている。
貴族寮は一人部屋で、お世話係を二人置くことができる。一般寮は、貴族以外のお金持ちのための二人部屋で、お世話人を一人ずつおくことができる。
いわゆる庶民が入るのが四人部屋の公設寮で、ぼくは当初はそこに入る予定だった。
「うふふ。それにしても……」
突然、ノーラが不敵に笑った。もしかして何かやらかしたのか。ぼくの不安そうな視線を受けてノーラがその理由を説明する。
「銀髪巨乳で盲目の亜人と黒髪黒目の神秘的な雰囲気をまとった美少女をお世話係にしてるのって、王国全土でもキース様しかいらっしゃいませんし……」
「おい。シーアのことは同意だけど、もう一人って誰のことだよ!」
「うふふ。お世話係の間ではわたしたちのことはすでに噂になってるはずですよ」
「うーん。そうか……それはそうだろうな」
「当然、それを主人に話すお世話係も多いことでしょうね。入学前からちょっとした有名人ですよ、キース様」
「そ、そうなのかぁ……」
ぼくは椅子の背もたれに体をあずけ、天井を見上げようと頭を後ろへ反す。
でも天井が見えることなく、いつの間にかぼくの背後に立っていたシーアの大きな双丘が視界いっぱいに広がっていた。
「あまり噂になるようなことは避けたいんだよね」
ぼくはすっと立ち上がって、シーアを椅子に座らせて、その膝の上にちょこんと座って、いつものように後頭部でシーアのふわふわをぽんぽんしてその感触を楽しむ。
「あまり目立ちたくないんだよなー」
「そういうとこですよ!」
何がそういうとこなのか、ノーラが何にツッコミを入れたのかよくわからなかった。
えっ、もしかしてこの「後頭部で楽しむシーアのおっぱい枕」のこと? いやいやさすがに他人の前でこれはしませんよ。それくらいの常識はわきまえてますから。
おっぱい枕で悪目立ちなんて、いくらなんでもそんなバカなマネはしませんって。
まったく心配性だなぁ――という視線を送るぼくにノーラは大きなため息をついて首を左右に振った。
――――――
―――
―
エ・ダジーマ入学式
ぼくとしては生まれて始めて見る校内だったが、前世のウルス王時代は何度も視察に訪れている。
それどころか学校設立についてはあれこれとかなり口を出しており、ウルス王としての自分がつけた爪痕があちらこちらに残されていた。例えば校長の挨拶。
「わしがエ・ダジーマ校長、オーノス・スレンギーンである!!」
入学式における校長の挨拶はこの一喝だけで終了。
ポカンと口を開けて固まっている新入生をそのまま放置したまま、次に教頭によるまともな祝辞が述べられる。これはウルス王時代のぼくが悪ノリして決めたことだ。今は猛烈に反省している。
そしてこの出来事が引き金になって、前世でこの学校を設立する際にやらかしてしまった様々な記憶が次々と思い出されてきた。その中には著作権的にアウトなことも随分やらかしている。
この学校の宣伝のためにと作った演劇「ラヴェンナ様が見てる」の脚本なんて、舞台を変えただけでアニメのもろパクリだし……まぁ、この世界ではウルス王が最初に発表したものばかりだけど、もし作者が転生とかしてきたらどうしよう……。
うん! 悪いのはウルス王だし! ぼくは関係ないし!
そのように自分自身を納得させ、ぼくは気持ちを切り替えて無事に入学式を終えた。
――――――
―――
―
入学してから半年間は基礎課程で、この間に各自の適性や希望を見極めてその後の進路を決定する。この半年の間は学校外へ出ることは許されず、通学者も期間中は寮で生活することになる。
さらにこの間はクラス分けが行われる。ひとクラスは大体15人前後。身分も種族も混在しているけれど、年齢については人間換算で15歳の成年を基準にして分けられている。
基本的に成人の数は少ないため、成人は1クラスにまとめられることが多い。
一般的なクラスは、貴族寮から2人、一般寮から4人、公設寮から8~10人で構成されてる。基礎課程の間は、クラス単位で評価が行われる訓練等もあり、修了時には優秀なクラスに対して栄誉が与えられる。
身分も種族も年齢も異なる生徒が、勇者への支援とラヴェンナ神への信仰という共通した土台の上に立って、協力・連携する方法を学ぶのがこの基礎課程だ。
これから半年間を共に過ごす学友は、いったいどんな人たちなのだろうか。そんな期待と不安を胸に、ぼくは自分の教室へと歩みを進めた。
王都の中心部に近い場所にありながら広大な敷地を有し、その中には校舎や寮以外にも様々な施設が存在する。
学校内には小規模な商店や鍛冶屋等もあり、それらは学生自治によって管理されていた。
いわばミニチュアの国家を模した運営がなされている。
「キース様、ただいま戻りましたー!」
「坊ちゃ……キースさま。貴族寮のお部屋を確認してまいりました」
ノーラとシーアが学校から戻ってきた。入学式にはまだ一週間あるけれど、お世話係の二人は先に貴族寮に出入りして色々と準備を進めている。
「お部屋自体は手狭ではありますけど、調度品はおしゃれっぽくて良いでしたね。寮全体も綺麗に整頓されてましたし――ヴィルもすぐ慣れて自由に歩けると思いますよ」
ノーラの言葉にシーアが頷いて同意した。
エ・ダジーマには貴族寮と一般寮、公設寮があり、それぞれが学校の三方を囲むようにして建てられている。
貴族寮は一人部屋で、お世話係を二人置くことができる。一般寮は、貴族以外のお金持ちのための二人部屋で、お世話人を一人ずつおくことができる。
いわゆる庶民が入るのが四人部屋の公設寮で、ぼくは当初はそこに入る予定だった。
「うふふ。それにしても……」
突然、ノーラが不敵に笑った。もしかして何かやらかしたのか。ぼくの不安そうな視線を受けてノーラがその理由を説明する。
「銀髪巨乳で盲目の亜人と黒髪黒目の神秘的な雰囲気をまとった美少女をお世話係にしてるのって、王国全土でもキース様しかいらっしゃいませんし……」
「おい。シーアのことは同意だけど、もう一人って誰のことだよ!」
「うふふ。お世話係の間ではわたしたちのことはすでに噂になってるはずですよ」
「うーん。そうか……それはそうだろうな」
「当然、それを主人に話すお世話係も多いことでしょうね。入学前からちょっとした有名人ですよ、キース様」
「そ、そうなのかぁ……」
ぼくは椅子の背もたれに体をあずけ、天井を見上げようと頭を後ろへ反す。
でも天井が見えることなく、いつの間にかぼくの背後に立っていたシーアの大きな双丘が視界いっぱいに広がっていた。
「あまり噂になるようなことは避けたいんだよね」
ぼくはすっと立ち上がって、シーアを椅子に座らせて、その膝の上にちょこんと座って、いつものように後頭部でシーアのふわふわをぽんぽんしてその感触を楽しむ。
「あまり目立ちたくないんだよなー」
「そういうとこですよ!」
何がそういうとこなのか、ノーラが何にツッコミを入れたのかよくわからなかった。
えっ、もしかしてこの「後頭部で楽しむシーアのおっぱい枕」のこと? いやいやさすがに他人の前でこれはしませんよ。それくらいの常識はわきまえてますから。
おっぱい枕で悪目立ちなんて、いくらなんでもそんなバカなマネはしませんって。
まったく心配性だなぁ――という視線を送るぼくにノーラは大きなため息をついて首を左右に振った。
――――――
―――
―
エ・ダジーマ入学式
ぼくとしては生まれて始めて見る校内だったが、前世のウルス王時代は何度も視察に訪れている。
それどころか学校設立についてはあれこれとかなり口を出しており、ウルス王としての自分がつけた爪痕があちらこちらに残されていた。例えば校長の挨拶。
「わしがエ・ダジーマ校長、オーノス・スレンギーンである!!」
入学式における校長の挨拶はこの一喝だけで終了。
ポカンと口を開けて固まっている新入生をそのまま放置したまま、次に教頭によるまともな祝辞が述べられる。これはウルス王時代のぼくが悪ノリして決めたことだ。今は猛烈に反省している。
そしてこの出来事が引き金になって、前世でこの学校を設立する際にやらかしてしまった様々な記憶が次々と思い出されてきた。その中には著作権的にアウトなことも随分やらかしている。
この学校の宣伝のためにと作った演劇「ラヴェンナ様が見てる」の脚本なんて、舞台を変えただけでアニメのもろパクリだし……まぁ、この世界ではウルス王が最初に発表したものばかりだけど、もし作者が転生とかしてきたらどうしよう……。
うん! 悪いのはウルス王だし! ぼくは関係ないし!
そのように自分自身を納得させ、ぼくは気持ちを切り替えて無事に入学式を終えた。
――――――
―――
―
入学してから半年間は基礎課程で、この間に各自の適性や希望を見極めてその後の進路を決定する。この半年の間は学校外へ出ることは許されず、通学者も期間中は寮で生活することになる。
さらにこの間はクラス分けが行われる。ひとクラスは大体15人前後。身分も種族も混在しているけれど、年齢については人間換算で15歳の成年を基準にして分けられている。
基本的に成人の数は少ないため、成人は1クラスにまとめられることが多い。
一般的なクラスは、貴族寮から2人、一般寮から4人、公設寮から8~10人で構成されてる。基礎課程の間は、クラス単位で評価が行われる訓練等もあり、修了時には優秀なクラスに対して栄誉が与えられる。
身分も種族も年齢も異なる生徒が、勇者への支援とラヴェンナ神への信仰という共通した土台の上に立って、協力・連携する方法を学ぶのがこの基礎課程だ。
これから半年間を共に過ごす学友は、いったいどんな人たちなのだろうか。そんな期待と不安を胸に、ぼくは自分の教室へと歩みを進めた。
0
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆*:.。. o(≧▽≦)o
【 関連話 】
異世界転生ハーレムプラン ~ 最強のスキルが【幼女化】ってマジですか?~
うっかり女神の転生ミス……って今度は護衛艦ですか? しかも艦長が幼女とか、もういい加減にしろ!
終わりの国のコメディアン
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。
もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです!
そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、
精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です!
更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります!
主人公の種族が変わったもしります。
他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので
そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。
面白さや文章の良さに等について気になる方は
第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
転生王子はダラけたい
朝比奈 和
ファンタジー
大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。
束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!
と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!
ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!
ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり!
※2016年11月。第1巻
2017年 4月。第2巻
2017年 9月。第3巻
2017年12月。第4巻
2018年 3月。第5巻
2018年 8月。第6巻
2018年12月。第7巻
2019年 5月。第8巻
2019年10月。第9巻
2020年 6月。第10巻
2020年12月。第11巻 出版しました。
PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。
投稿継続中です。よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる