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本編
その後・・・
しおりを挟む王城裏門から王城の間を、オレの右腕を縄代わりに綱引き状態!
「マテ、まて、待てってばっ!
チョット落ち着けって!」
右腕を捕まれ、引きずられていくのを必死で抵抗する。
「オレ、出てくんだってば!
出て行けって言われたのっ!
話が通ってないのかもしれないケド、城に戻る訳にはいかないんだよっ!」
未だ引っ張られている右腕を、引きちぎるように取り返す!
「アンタを含めて色々と良くしてくれた人たちには悪いけど、これ以上お荷物にはなりたくないんだよっ!」
オレはドッカリとその場に胡坐をかいて座り込み、腕組みをして抵抗の意志を示す。
判ってくれと、引き留めてくれるなという思いを込めているオレに対して、
深く、深~くため息を吐かれた。
判ってくれたか、諦めてくれたかと思ったら
半眼状態の顔、低くて暗~い底冷えする声で
「何を勘違いしているのか解りませんが、取り敢えず引っ越しだけは終わらせてくれませんかね・・・」
と、言われた。
「・・・ハイ、リョウカイイタシマシタ・・・」
・・・こっ、怖~っ!
連れて来られたのは、王城にある続き部屋の一室。
「此処が、新しい執務室になります。
扉の向こうは、新しい第二王女執務室になります。
私室の方はご結婚されるまでの半年しか使用しませんので、細かい物は此方の部屋に置いておいた方が良いでしょう。
ご結婚が整いましたらお互いに立場は変わりますが、立ち位置は変わりません。
私は引き続きお仕えさせて頂きますが、教育係から第一秘書官に役職名は変わりますのでご注意下さい。」
先ほどの剣幕は何処吹く風、いつも通り淡々と仕事をこなしていく彼の姿はいつもと変わら無い。
此処はオレの執務室で、隣は彼女の執務室?
半年後に結婚?
第一秘書官?
ここ半年近く、イヤ半年以上!
オレはずっと勘違いしたままだった?
勘違いしたまま突っ走っていたのだろうかと、期待してしまう。
ぬか喜びは御免だ!
慎重に、慎重に、現状を把握しよう。
「私物はこれだけだし、魔道具課の研究室も引き払ってきた。
少し、話を・・・色々と確認をしたい。
座ってくれないか・・・?」
此処にも置いてある、高級そうな応接セット。
1人掛けの椅子が2つ、3人掛けが1つ。
扉に近い1人掛けに座ろうとしたら、怒られた。
「アンタはこっち!」
3人掛けの方に放り投れられた・・・
「・・・何でオレの方が上座?」
平民だし、生徒であるオレの方が立場が下だろ?
「あと半年で王族になる伯爵様の方が上座に決まっているでしょうがっっっ!!!」
何だってぇぇぇっっっ?!
「ちょっと待てっ!
何故、オレが伯爵様?」
「そっちこそ何、言ってるんですかっ!
祝賀会で伯爵位を授かっだでしょっ!
二の姫様の御婚約者様として紹介されたし、1年後に御結婚だって発表されたじゃないですか!」
「いや、オレ、平民だぞっ!」
「何言ってるんですかっ!
城に来た時から、子爵令息の扱いですよ!」
「待て待てっ!何で子爵令息?
父さんは平民だし、母さんだって出奔したが男爵令嬢だったんだぞ?!
出奔した男爵令嬢の息子がいきなり伯爵様なんておかしいだろっ!?」
「まったく、祝賀会の時は何を聞いていたのやら・・・
何処から話せば理解して下さるのでしょうね。
私が知っている事なら話せますけど、大したことは知りませんからね!?
まず、いくら王族の婚約者だからって、爵位無しが一気に伯爵になれる訳ありません。
良家の血筋と現在の爵位に加え、国への貢献度が認められて、正当に与えられた爵位です!
御生母様が男爵令嬢だったのはご存知ですね。
お母上のご生家は爵位こそ男爵位ですが、かなり歴史のある古いお家との事です。
つまり、血筋はかなり良いものをお持ちなんですよ。
そして、お父上は現在、子爵家に婿入りしているそうです。
婿入りした当時は、貴方はまだ未成年でしたから籍は子爵家にあります。
つまりは貴方が王城に来た時点で、歴史ある男爵家の母君を持つ子爵家子息という肩書です。
此処までは良いですか?
では、次っ!
貴方は城に来る前から、腕の良い魔道具職人として有名だったみたいですね。
魔道具課長が貴方の滞在を知り、なんとか教えを請いたいと色々手を尽くしたらしいです。
私も少々相談を受けましたが、臨時職員としてなら許可すると認めさせたそうです。
しかし矜持が高く頭が固い部下達は、魔道具職人を見下す始末。
彼らを認めさせるために、大橋の書類と図面を渡したらしいですが覚えがありますか?
王城に来て半年くらい経った頃の事です。
あれ、工事着工目前の提出用だったらしいですよ?
色々と手を加えませんでしたか?
緊急会議が開かれて、貴方が書き加えた書類や図面を土台として書き直したらしいです。
お陰で最先端の技術を使用した、大国に相応しい物が出来上がったと魔道具課長は喜んでいましたよ!
それの功績も、かなり加味されていますが、主軸は社会貢献度です!
王城をあちこち歩き廻って、色々弄った覚えがありますよね!
その書類を元に魔道具課長が公共工事の見直しや改良をしていったんです。
街灯の光量が上がって長持ちするようになり、防犯率が上がりました。
王都以外でも利用できるもの、例えば害獣除け等をは誰でも利用できるように情報公開しました。
そういった、我が国の発展に貢献したって事での伯爵位なんですよ。
理解できましたか?!」
「・・・はい、申し訳ございませんでした。」
「ホントに理解できたんでしょうね?!」
「はい、つまり・・・
彼女との結婚を求められていた伯爵様とやらはオレ、・・・俺の事です。」
☆教育係☆
もう、いい加減に堪忍袋の緒が切れたっ!
自分が伯爵家当主でっ、将来は王配の可能性が高いっていう自覚あんのかよっ!
拝領した伯爵領を視察もせずっ!
仕事は二の姫に手伝ってもらってっ!
好きな魔道具作りに没頭するってっ!
どういう了見なんだよっ!
ちっとは、王族の自覚を持ちやがれっっっ!!
☆王太子☆
いや、確かに「嫁にはやれん!」と言ったが・・・
だって、婚約してるんだぞ?
婿に来てくれって意味、判るだろ?
何時までも魔道省に在籍されても困るんだ。
伯爵としての仕事に支障が出てるだろうが。
それにな、いい加減に朝食会議には出てくれんかのっ!
効率が悪くて叶わん。
あのな、午前中の書類仕事な。
娘の仕事を手伝ってるんじゃなく、娘が仕事を手伝ってるんだって気が付いているのか?
☆彼女☆
もう、もう、もうっ!
出ていくなら何で誘ってくれないんですかっ!
楽しそうに魔道具作っているから、実家に居ただけなんですからねっ!
置いて行こうとするなんてっ!
抜け出す時は何時もちゃんと言っていってくれるから許可したんですからねっ!
絶対、ぜ~ったい、置いてっちゃ嫌ですからね!
今度やったら、指名手配しますからねっ!!
==========
2018年9月16日
アルファポリス投稿
もっちり道明寺♪作
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