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第2章 異世界攻略編
第24話 転生者は殺される。
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「クレアと言います。よろしくです!」
お~と乾いた拍手が響く迷宮内部。一階層を抜けそろそろ二階層に向かう直前の会議にて、クレアは自己紹介を終える。「元気だね~」と屈託のない笑みと賛辞を贈るシャルロットは、やはりよく出来た子である。他のメンバーの反応は……言わずとも知れている。
さてと。
「『鑑定』」
【ステータス】
名前:クレア
称号:【鍛冶見習い】
ギルド:無所属
ユニークスキル:【獅子奮迅】
スキル:『鍛冶』S『目利き』S『受け流し』F『槍術』C『槌術』B『豪脚』C『硬化』D
強っ!? 俺は勿論ルナより強そうだぞ……!
それに好感度は……25?
「待て待て」
「はいです?」
おかしい、何故俺はスキルを手に入れていないんだ。
好感度が25あるなら、全て貰えるはずなのに。
いや、まず好感度が25もある事自体意味不明だけど。
スキルを貰う条件が他にある……そういう事なのか?
「なあルナ。スキルって何だと思う?」
「突然ですね。神から受ける恩恵的とかじゃないですか?」
「違う違う。才能を神様から認められた証だよ」
シャルロットが間を割って話す。
「それ、本当か?」
「だから協会の信者は日々鍛錬を怠らないんだよ。昔私も冒険に行き詰まった時に、協会に通ってたから知ってるけどさ、凄いんだよ。皆ムキムキで。たはは」
そうか……順番が逆だったのか。
スキルは無条件では獲得できない。
ある程度の技術があってようやく得られる。
俺のスキルは、そういった条件をすっ飛ばして習得出来るのが強みだった訳だ。だったら尚更、クレアのスキルを習得出来ないのは他の要因があるはずだ。
「へえ、初めて知りました。凄いです」
「ルナちゃんに褒められた~」
そうそう、仲睦まじい絵が見れて俺は一安心だよ。
俺の考えは一度置いておく。
今は検証している時間がないからな。
さてと、第二層。
俺の為に金貨を沢山落として貰おうか。
「ふははははっ!」
だが俺はこの時気付いていなかった。
この世界がどれだけ残酷で非情であるかを。
俺の想像の上を行く世界。
俺の安寧を脅かす世界。
それは全て、ある一つの規則に基づいている。
それを俺は、知らない。
「皆、どこだ……?」
□■□
王女が勢揃いした異様の場から何とか抜け出せたが、あの場で笑ってしまったのは少々失態だっただろう。
裏路地に入り、人目がない事を確認してからイレイスは己の失態を悔やんだ。とはいえ例の攻略騒動にレイが絡んでいる事は殆ど決定的だ。無論、まさかあそこまで大々的にデビューするとは思わなかったが。
裏路地に侵入する足音。
イレイスは僅かに警戒し、息を殺した。
「オレだ、殺そうとすんなよ」
「グライか。なんだ脅かすんじゃないよ」
イレイスは影に向かって話しかける。
夕日だけが差し込み、長い影がお互いの傍に落ちる。
「例の新人冒険者。"転生者"なんだろ?」
「さあね。僕からは何とも言えないさ」
「いや、言わなくても分かるぜ。あんなの、自分が"転生者"だって事を自己紹介しているようなもんだ」
そう、それが一番気がかりだった……最初に会った時とも照らし合わせても、レイの行動は極めて妙だ。
「殺されに行ってるみたいによ」
既に、誰かは仕掛けている。
迷宮で起きた不審な事件の噂も、イレイスは耳にしていた。
『異世界には日本の法律が通用しない。弱肉強食の世界だ。力ある者が正義の国で悠長に事を構えていたら、自分の大切な物まで失ってしまうかもしれない』
あの時のアドバイスはちゃんと行き届いただろうか。
今頃、再び罠に嵌められている頃かもしれない。
それでも、アイツならきっと───。
「オレは干渉するつもりはねぇさ」
「まだ僕は何も言っていないだろう?」
「おっかなくて近づきたくないね」
ヒラヒラと手を振って去る影。
相変わらずみたいだね、とイレイスは優しく笑う。
転生者は殺される。
レイ、君はこの世界で生き残れるかい?
お~と乾いた拍手が響く迷宮内部。一階層を抜けそろそろ二階層に向かう直前の会議にて、クレアは自己紹介を終える。「元気だね~」と屈託のない笑みと賛辞を贈るシャルロットは、やはりよく出来た子である。他のメンバーの反応は……言わずとも知れている。
さてと。
「『鑑定』」
【ステータス】
名前:クレア
称号:【鍛冶見習い】
ギルド:無所属
ユニークスキル:【獅子奮迅】
スキル:『鍛冶』S『目利き』S『受け流し』F『槍術』C『槌術』B『豪脚』C『硬化』D
強っ!? 俺は勿論ルナより強そうだぞ……!
それに好感度は……25?
「待て待て」
「はいです?」
おかしい、何故俺はスキルを手に入れていないんだ。
好感度が25あるなら、全て貰えるはずなのに。
いや、まず好感度が25もある事自体意味不明だけど。
スキルを貰う条件が他にある……そういう事なのか?
「なあルナ。スキルって何だと思う?」
「突然ですね。神から受ける恩恵的とかじゃないですか?」
「違う違う。才能を神様から認められた証だよ」
シャルロットが間を割って話す。
「それ、本当か?」
「だから協会の信者は日々鍛錬を怠らないんだよ。昔私も冒険に行き詰まった時に、協会に通ってたから知ってるけどさ、凄いんだよ。皆ムキムキで。たはは」
そうか……順番が逆だったのか。
スキルは無条件では獲得できない。
ある程度の技術があってようやく得られる。
俺のスキルは、そういった条件をすっ飛ばして習得出来るのが強みだった訳だ。だったら尚更、クレアのスキルを習得出来ないのは他の要因があるはずだ。
「へえ、初めて知りました。凄いです」
「ルナちゃんに褒められた~」
そうそう、仲睦まじい絵が見れて俺は一安心だよ。
俺の考えは一度置いておく。
今は検証している時間がないからな。
さてと、第二層。
俺の為に金貨を沢山落として貰おうか。
「ふははははっ!」
だが俺はこの時気付いていなかった。
この世界がどれだけ残酷で非情であるかを。
俺の想像の上を行く世界。
俺の安寧を脅かす世界。
それは全て、ある一つの規則に基づいている。
それを俺は、知らない。
「皆、どこだ……?」
□■□
王女が勢揃いした異様の場から何とか抜け出せたが、あの場で笑ってしまったのは少々失態だっただろう。
裏路地に入り、人目がない事を確認してからイレイスは己の失態を悔やんだ。とはいえ例の攻略騒動にレイが絡んでいる事は殆ど決定的だ。無論、まさかあそこまで大々的にデビューするとは思わなかったが。
裏路地に侵入する足音。
イレイスは僅かに警戒し、息を殺した。
「オレだ、殺そうとすんなよ」
「グライか。なんだ脅かすんじゃないよ」
イレイスは影に向かって話しかける。
夕日だけが差し込み、長い影がお互いの傍に落ちる。
「例の新人冒険者。"転生者"なんだろ?」
「さあね。僕からは何とも言えないさ」
「いや、言わなくても分かるぜ。あんなの、自分が"転生者"だって事を自己紹介しているようなもんだ」
そう、それが一番気がかりだった……最初に会った時とも照らし合わせても、レイの行動は極めて妙だ。
「殺されに行ってるみたいによ」
既に、誰かは仕掛けている。
迷宮で起きた不審な事件の噂も、イレイスは耳にしていた。
『異世界には日本の法律が通用しない。弱肉強食の世界だ。力ある者が正義の国で悠長に事を構えていたら、自分の大切な物まで失ってしまうかもしれない』
あの時のアドバイスはちゃんと行き届いただろうか。
今頃、再び罠に嵌められている頃かもしれない。
それでも、アイツならきっと───。
「オレは干渉するつもりはねぇさ」
「まだ僕は何も言っていないだろう?」
「おっかなくて近づきたくないね」
ヒラヒラと手を振って去る影。
相変わらずみたいだね、とイレイスは優しく笑う。
転生者は殺される。
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