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第4章 ラブコメディ。
第29話 修羅場になる未来?
しおりを挟む予知夢を見た。最近はくだらない夢が多い。
未来視というのはここぞという時に発動するものであって、勝手に見てしまう未来というのはどうしてもあまり気分がいいものではない。
ただ、今日この日はこの予知夢に感謝した。
なんでも、結愛と麗奈が大喧嘩し、何故かぼくが巻き添えを食らう夢だった。どうやら場所はショッピングモールらしいが、何故そんな事が起きるのだ。
偶然三人が一同に会するという事か?
ならぼくが行かなければいい話ではないか。
勝ったな、やはりぼくの未来視は最強だった。
目が覚めた。
翌日携帯を開くと、メールが入っていた。
結愛からだ。件名は「協力せよ」である。
嫌な予感がした。汗が全身から噴き出ている。
いやいやいや、怖すぎるだろ。
ぼくは震える指先で何とかそのメールをクリックした!
『ケーキバイキングの件。忘れてない?』
ぼくは部屋中に服を散らかしながら、急いで外出の支度をした。命の恩人、結愛様からの緊急招集に応じる為にぼくはいそいそと準備を始め、玄関から飛び出した!
そして今に至る。
デートプランを考える為に、恋人紛いの行動をし、それをノートに纏めるらしい。結愛のスタンスとしてはデート経験がないぼくの為にわざわざ気を利かせてくれたらしい。余計なお世話だ、と言ってしまいたくもなるが、これが無ければデートのアドバイスなんて出来るはずもない。
しかし、注意しなくてはならない。
最悪の未来を回避して、何とか結愛と麗奈が出会わないように仕向けなければいけないのだ。夢通りに進めば、まず間違いなくそれは起きる。
故に、どこかで回避するような選択を取る時が出てくる。それがいつ、どこで起こる事態なのかはまず分からない。そして、結愛の好意を無下にして、デートをすっぽかすという展開も避けなくてはならない。やれるのか、いややれるはずだ。
安藤くんの自殺を止め、通り魔事件の犯人すら仕留めたぼくなら。
「そろそろ出よっか」
良い感じに腹が膨れたので、一緒に出る事に。
「ぼくが払うよ」
「ううん、割り勘で」
「なんで? これはお礼なんだから」
「いいから。意外と高いんだから、ここ」
結愛はプライドが高いから、ぼくに奢られるというのが気に食わなかったのかもしれない。まあ、結愛が払いたいって言うならそれでいいか。
デートはまだ続く。
ぼくの服を見繕いたいというので、服屋さんに行った。ブランド物もいいけれど、学生がそう高い服を買える程の金銭を蓄えている訳もなく、自然と安値で買える方に。
「悠斗は……暖色系より寒色系の方が似合うかな? オーバーサイズのカジュアルな服よりはどっちかっていうとフォーマルのをぴっちり着こなしてた方が、うーん」
ぼくはその間マネキンである。
服をいちいち手に取ってぼくの身体に合わせる。
「こっちの方が私好み……あ、これもいいかも」
あれ。おかしいな。
何故か結愛の好みに合わせられていく。
これってぼくの服だよね。なのに、何故ぼくに対して意見を求める事が無いんだろう。デートってこんな一方的なベクトルで良いんだっけ。
「うん、まあこんなもんかな。あんまり買っちゃうと荷物多くなるし……まあ、残りは次来た時に買えばいいしね」
次が何故か予定されている。
「靴も見とく?」
「お願いします」
もういいや。全部任せちゃえ。
「おっけ。任せて」
結愛はご機嫌である。
さっきのケーキバイキングがそんなに良かったのか。
と、その瞬間脳が揺れた。
心がざわめく。
既視感だ、ぼくはこの光景を一度見ている。
嗚呼そうだ、未来視だ。
ショッピングモール、洋服や靴を買いに来たぼくらが麗奈に出くわす十五秒前。最悪の未来を回避するのはこの瞬間しかない!
「結愛、その前に休憩しない?」
目の前にはトイレがある。
ここに逃げ込めばぼくらの勝ちだ!
トゥルルル。電話? このタイミングで?
「そうね。じゃあ先行ってるから」
結愛がトイレへと向かった。
急いでいたぼくはすぐに電話を取る。
「え」
『え』
電話と実際の声がリンクする。
背後から聞こえた。
「れ、麗奈!?」
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