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第2章 いじめ問題。
第11話 未来視が生んだ結末。
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目覚めは最悪だった。
どうしてあんな夢を見たのだろう。
まるで祟りのようだった。
ぼくのせいで安藤くんが死ぬって言うのか?
馬鹿馬鹿しい、どこまで迷惑をかければ済むってんだ。
「……」
結愛はこの未来を見据えているだろうか。
いや、きっと見ていないだろう。
結愛はぼくが救われた時点で、目的は達せられている。
そこから踏み込むのは愚者のやる事だ。
「悠斗、ご飯よ~早く起きなさい」
考えるな、考えるな!
とにかく学校に行こう。
「おはよう」
「ねえねえ、昨日のテレビでさ~」
学校は平穏そのものだった。
いつもと変わらない朝。例えば一人に何かが起こったとしても、学校はそれまでと変わらない様相を見せるのだ。もしもその日、その学校の生徒が死ぬとしても、当日の朝は日常。
でも変わった事もある。
校門前で朝の挨拶に励む先生の姿がない。
上靴を履いて、その足で職員室に寄った。
『職員会議中』
そんな立て看板と共に、出入りが禁止されていた。
十中八九、昨日送った結愛の動画だろう。
この前、タバコをクラスに捨てた事があった。
その事件と今回の一件を先生達は容易に紐付けるだろう。一旦は迷宮入りした事件も、ここで新たな証拠を突き付けられれば、自ずと容疑者は浮かぶ。
送ったのは、放課後になった頃。
きっとその日の内に、安藤家に学校から連絡が行ったはずだ。今日安藤くんが学校に来ていなかったとしてもなにも不思議ではない。
案の定、隣の教室を覗くと安藤くんの席がぽっかりと空いていた。周りの生徒達はその様子を訝しんでいたが、彼を好き好んで慕う生徒はどこにもいない。寧ろ騒がしい者が来ていなくて安心というような、薄情な反応に教室が包み込まれていた。
「成功したね」
結愛は特に驚いたという様子は無く、いつもの如く上品な振る舞いで席に座っていた。本当の悪人はヤンキーみたいな奴じゃなくて、結愛みたいな知的キャラって相場が決まっている。特にアニメだと、糸目キャラとかが一番怖いってもんだ。
結愛には感謝してる。
でも、やっぱり安藤くんの事が気になる。
その日は、少し遅れた朝礼が始まってからというもの、全く授業が身に入らなかった。学校に来なくてもぼくにここまで悩ませるなんて、安藤くんは筋金入りの悪だ。
「では未来研究部、栄えある二回目の議題を」
「ごめん結愛。ぼくはちょっと行かなきゃいけない所があるんだ」
「そうなの、じゃあ仕方ないか」
結愛は残念そうに唇を歪ませる。
「それで。今日はどこに行くの? もしかして彼女とか」
「違うよ。……安藤くんに会いにさ」
空気が本当に千切れたかと思った。
「馬鹿なの。どうして!? 悠斗は助かったんだよ、もう会う必要がない相手にわざわざ会いに行くなんて、正気じゃないっ、何を考えているの!」
「もし……ぼくらがした事で、安藤くん自身を追い詰めていたのだとしたら、それはぼくらも同罪なんじゃないか。いや、寧ろ陰ながら彼を告発した分、余程ぼくらが悪だ」
「意味わからない。今更同情したって言うの!?」
「違う。違うんだ!」
結愛はぼくの為に尽くしてくれた。
それは分かっている、悪気がない事も全部さ。
だが、こうなる事を。安藤くんが自殺する未来をたった一度でも考えただろうか、己が持つ未来視という武器が、ここまで人の人生を左右させると想像しただろうか。
ぼくは、ぼくが持つこの能力に向き合う必要がある。
じゃなきゃぼくらは列記とした、殺人者だ。
「結愛。ぼくはある未来をみた」
「……それは」
「実は、安藤くんが───」
どうしてあんな夢を見たのだろう。
まるで祟りのようだった。
ぼくのせいで安藤くんが死ぬって言うのか?
馬鹿馬鹿しい、どこまで迷惑をかければ済むってんだ。
「……」
結愛はこの未来を見据えているだろうか。
いや、きっと見ていないだろう。
結愛はぼくが救われた時点で、目的は達せられている。
そこから踏み込むのは愚者のやる事だ。
「悠斗、ご飯よ~早く起きなさい」
考えるな、考えるな!
とにかく学校に行こう。
「おはよう」
「ねえねえ、昨日のテレビでさ~」
学校は平穏そのものだった。
いつもと変わらない朝。例えば一人に何かが起こったとしても、学校はそれまでと変わらない様相を見せるのだ。もしもその日、その学校の生徒が死ぬとしても、当日の朝は日常。
でも変わった事もある。
校門前で朝の挨拶に励む先生の姿がない。
上靴を履いて、その足で職員室に寄った。
『職員会議中』
そんな立て看板と共に、出入りが禁止されていた。
十中八九、昨日送った結愛の動画だろう。
この前、タバコをクラスに捨てた事があった。
その事件と今回の一件を先生達は容易に紐付けるだろう。一旦は迷宮入りした事件も、ここで新たな証拠を突き付けられれば、自ずと容疑者は浮かぶ。
送ったのは、放課後になった頃。
きっとその日の内に、安藤家に学校から連絡が行ったはずだ。今日安藤くんが学校に来ていなかったとしてもなにも不思議ではない。
案の定、隣の教室を覗くと安藤くんの席がぽっかりと空いていた。周りの生徒達はその様子を訝しんでいたが、彼を好き好んで慕う生徒はどこにもいない。寧ろ騒がしい者が来ていなくて安心というような、薄情な反応に教室が包み込まれていた。
「成功したね」
結愛は特に驚いたという様子は無く、いつもの如く上品な振る舞いで席に座っていた。本当の悪人はヤンキーみたいな奴じゃなくて、結愛みたいな知的キャラって相場が決まっている。特にアニメだと、糸目キャラとかが一番怖いってもんだ。
結愛には感謝してる。
でも、やっぱり安藤くんの事が気になる。
その日は、少し遅れた朝礼が始まってからというもの、全く授業が身に入らなかった。学校に来なくてもぼくにここまで悩ませるなんて、安藤くんは筋金入りの悪だ。
「では未来研究部、栄えある二回目の議題を」
「ごめん結愛。ぼくはちょっと行かなきゃいけない所があるんだ」
「そうなの、じゃあ仕方ないか」
結愛は残念そうに唇を歪ませる。
「それで。今日はどこに行くの? もしかして彼女とか」
「違うよ。……安藤くんに会いにさ」
空気が本当に千切れたかと思った。
「馬鹿なの。どうして!? 悠斗は助かったんだよ、もう会う必要がない相手にわざわざ会いに行くなんて、正気じゃないっ、何を考えているの!」
「もし……ぼくらがした事で、安藤くん自身を追い詰めていたのだとしたら、それはぼくらも同罪なんじゃないか。いや、寧ろ陰ながら彼を告発した分、余程ぼくらが悪だ」
「意味わからない。今更同情したって言うの!?」
「違う。違うんだ!」
結愛はぼくの為に尽くしてくれた。
それは分かっている、悪気がない事も全部さ。
だが、こうなる事を。安藤くんが自殺する未来をたった一度でも考えただろうか、己が持つ未来視という武器が、ここまで人の人生を左右させると想像しただろうか。
ぼくは、ぼくが持つこの能力に向き合う必要がある。
じゃなきゃぼくらは列記とした、殺人者だ。
「結愛。ぼくはある未来をみた」
「……それは」
「実は、安藤くんが───」
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