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第2章 いじめ問題。
第8話 作戦会議。
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未来研究部は、昼ドラの修羅場シーンでも近年稀なドロドロな私怨を込めた活動内容に決定してしまった。復讐は何も生まないとも言うが、少なくともぼくは、結愛がぼくの為に怒り、更には行動を共にする口実を得た事に十分な成果を生んでいる気がした。
日々傷を隠し、痛みに耐えて来た甲斐があった。
さて、その作戦会議第一回が開催される訳なのだが、結愛が旧校舎に立ち寄っていた事が安藤くんにバレてしまった以上、音楽準備室を使い続けるのは難しい。
第二のアジトを探さなくちゃいけないのだ。
「私の部屋でいいでしょ」
そんな、当然の悩みを抱えていた時に、結愛がとんでもない爆弾を投下した。健全な男子高校生の悶々としたこの感情をどうしてくれる。異性を自室に呼び込む事に彼女は何も感じていないのだろうか。
それともなにか、ぼくは部屋の隅に飾られている観葉植物のサボテンくらいの価値しかないとでもいうのか! なんという侮辱、到底許しがたい!
なので早速、結愛の家に向かう事にしよう。
他意は無い、無いったらないのだ。
登下校の様子を誰かに見られでもしたらまずい。
針に糸を通す時のような、細心の注意を払ってぼくは人目を気にしながら、バラバラの時刻に学校を出た結愛と途中で合流した。
結愛は本当に何も思わないのか。
うん、何も思っていないだろうな。
結愛のモテ具合は、学校の中でも最早言うまでもないが、男子から向けられる好意があまりにも多くて一周回って感覚が麻痺しているのかもしれない。
結愛の隣を歩くと、風に乗せられて彼女のいい匂いが漂ってくる。まるで花の蜜に吸い寄せられるミツバチの気分だ。理性云々より遺伝子に刻まれた本能レベルで、彼女の魅力が伝わってくる。
最寄駅から少し歩くと、すぐに住宅地に差し掛かり、ようやく辿り着いた一軒家。有名会社の社長令嬢とかを想像していたが、一般的なモダン建築で少しばかり安心した。広大な日本庭園が広がる和風建築を目にしたら、すぐに回れ右して帰っていたところだ。
「上がって」
「お、おじゃましまーす」
「今家に両親いないから」
だから、結愛さん。そうやって、ご都合展開をどうしてこうぽんぽんと呼び込んでくるんですが。両親が海外旅行、他界、共働きはラブコメ必須案件だけども!
と、いう事は今ぼくは結愛と二人きり……?
なんてありきたりな妄想を済ませて玄関を上がった。私室は二階にあるらしい、廊下で数分待っていると、結愛の方から扉を開け部屋に招かれた。
「少女趣味って感じのピンクっぽい部屋を想像してた」
「どこの世界線の部屋なのそれ? もしかしなくても、女の子の部屋に入った事ないよね。別に普通でしょ、ベットと勉強机、それから小型のテレビがあって……」
間取りや家具については、ぼくと大差ないくらいだ。
日々真面目に勉強に励む天海結愛らしいと言えばらしいけど。
違うと言えば、そこかしこからいい匂いがするってくらいか。
「じろじろ見るの禁止」
「はい」
いやいや、そう言われても落ち着かないでしょうよ。さながら小学一年生の遠足気分だ。見る物全てが新鮮に映っている。結愛はこの部屋に男子を一度でも入れた事があるのだろうか。公には、結愛に彼氏がいない事になっている(いたら大規模テロが起きると予想)、もしぼくがその最初の人間であるというならばしかと目にこの光景を焼き付け、墓まで持っていくのだ。
なんなら戦時中の話をするご老人のように後世にまで深く語り継いでいってもいいくらいだ。五感を最大限に研ぎ澄ませろ、ぼく。
「真面目にやって」
「はい」
そろそろ、結愛の怒りメーターが臨界点を突破しそうなので自重しておく事にした。なに、一度は入れたんだ、次はコンビニ感覚で立ち寄って見せるとしよう。
「それじゃあ、作戦を考えていくけれど。まずは、悠斗へのいじめに加担している人物を把握する事から始めるの。見張りの生徒を徹底的に抑える。それが第一歩」
「うーん。でも、あいつらだって一部を除けば、安藤くんに乱暴されたくなくて逆らわない可能性だってあるし、全員が同罪だと可哀想だよ」
「それは全部吐かせてからでも分かるでしょ。まずは、安藤くんの手駒に落ちた人物をピックアップする方が先よ。で、その後彼らの悪事をスマホなり物品なり証拠として押さえる」
なんだか、逃亡犯を追い詰める刑事になった気分だ。
密着24時みたいなドキュメンタリーで見た気がする。
「未来視で、安藤くんと出会う時間と場所を予め知っておくんだよね」
「そう、そこを裏からパシャリッと」
スマホのカメラ機能で床を撮ってみせた。
「でも、また襲ってくるかな。今度は、打撲だけじゃ済まないかもしれない。一度ヒートアップしたら、もう止まらないかも」
背筋が凍るような不安に駆られる。絶望感が波の如く押し寄せて、ぐわんぐわんと脳が揺さぶられていく。学校に行くのが嫌になる、怖くなる。
「そうさせない為に私がいるんだよ」
あれ……女神ですか?
誰よりも頼りになる言葉だ。
今なら宗教勧誘されても、涙を流しながらサインする自信があるね。結愛の後ろから神々しい光を幻視した。
「特に安藤くんを追い詰められそうなネタはないかな」
「あ、それなら安藤くん。ポケットにタバコの入れ箱を隠してたんだ。ちょうどそれをぼくが見ちゃって」
「彼は悪の大魔神にでもなるつもりなの? どうしてこうポンポンと悪事が見つかるのよ」
ぼくに聞かれても困るんですよ。
物語以外で絶対悪ってそうそう居ない気がするけど、安藤くんは正直に言って悪の権化みたいな奴だ。どんな処罰を受け、悲惨な末路を辿ろうと、同情する気がしないね。
「この調子だと近いうちに窃盗とか飲酒とかやりそう」
「じゃあそれも引っ括めて全部の証拠を掴みにいく。これは決定事項、準備出来た、悠斗!?」
「お、おーう?」
という訳で、早速復讐劇が幕を開けた!
日々傷を隠し、痛みに耐えて来た甲斐があった。
さて、その作戦会議第一回が開催される訳なのだが、結愛が旧校舎に立ち寄っていた事が安藤くんにバレてしまった以上、音楽準備室を使い続けるのは難しい。
第二のアジトを探さなくちゃいけないのだ。
「私の部屋でいいでしょ」
そんな、当然の悩みを抱えていた時に、結愛がとんでもない爆弾を投下した。健全な男子高校生の悶々としたこの感情をどうしてくれる。異性を自室に呼び込む事に彼女は何も感じていないのだろうか。
それともなにか、ぼくは部屋の隅に飾られている観葉植物のサボテンくらいの価値しかないとでもいうのか! なんという侮辱、到底許しがたい!
なので早速、結愛の家に向かう事にしよう。
他意は無い、無いったらないのだ。
登下校の様子を誰かに見られでもしたらまずい。
針に糸を通す時のような、細心の注意を払ってぼくは人目を気にしながら、バラバラの時刻に学校を出た結愛と途中で合流した。
結愛は本当に何も思わないのか。
うん、何も思っていないだろうな。
結愛のモテ具合は、学校の中でも最早言うまでもないが、男子から向けられる好意があまりにも多くて一周回って感覚が麻痺しているのかもしれない。
結愛の隣を歩くと、風に乗せられて彼女のいい匂いが漂ってくる。まるで花の蜜に吸い寄せられるミツバチの気分だ。理性云々より遺伝子に刻まれた本能レベルで、彼女の魅力が伝わってくる。
最寄駅から少し歩くと、すぐに住宅地に差し掛かり、ようやく辿り着いた一軒家。有名会社の社長令嬢とかを想像していたが、一般的なモダン建築で少しばかり安心した。広大な日本庭園が広がる和風建築を目にしたら、すぐに回れ右して帰っていたところだ。
「上がって」
「お、おじゃましまーす」
「今家に両親いないから」
だから、結愛さん。そうやって、ご都合展開をどうしてこうぽんぽんと呼び込んでくるんですが。両親が海外旅行、他界、共働きはラブコメ必須案件だけども!
と、いう事は今ぼくは結愛と二人きり……?
なんてありきたりな妄想を済ませて玄関を上がった。私室は二階にあるらしい、廊下で数分待っていると、結愛の方から扉を開け部屋に招かれた。
「少女趣味って感じのピンクっぽい部屋を想像してた」
「どこの世界線の部屋なのそれ? もしかしなくても、女の子の部屋に入った事ないよね。別に普通でしょ、ベットと勉強机、それから小型のテレビがあって……」
間取りや家具については、ぼくと大差ないくらいだ。
日々真面目に勉強に励む天海結愛らしいと言えばらしいけど。
違うと言えば、そこかしこからいい匂いがするってくらいか。
「じろじろ見るの禁止」
「はい」
いやいや、そう言われても落ち着かないでしょうよ。さながら小学一年生の遠足気分だ。見る物全てが新鮮に映っている。結愛はこの部屋に男子を一度でも入れた事があるのだろうか。公には、結愛に彼氏がいない事になっている(いたら大規模テロが起きると予想)、もしぼくがその最初の人間であるというならばしかと目にこの光景を焼き付け、墓まで持っていくのだ。
なんなら戦時中の話をするご老人のように後世にまで深く語り継いでいってもいいくらいだ。五感を最大限に研ぎ澄ませろ、ぼく。
「真面目にやって」
「はい」
そろそろ、結愛の怒りメーターが臨界点を突破しそうなので自重しておく事にした。なに、一度は入れたんだ、次はコンビニ感覚で立ち寄って見せるとしよう。
「それじゃあ、作戦を考えていくけれど。まずは、悠斗へのいじめに加担している人物を把握する事から始めるの。見張りの生徒を徹底的に抑える。それが第一歩」
「うーん。でも、あいつらだって一部を除けば、安藤くんに乱暴されたくなくて逆らわない可能性だってあるし、全員が同罪だと可哀想だよ」
「それは全部吐かせてからでも分かるでしょ。まずは、安藤くんの手駒に落ちた人物をピックアップする方が先よ。で、その後彼らの悪事をスマホなり物品なり証拠として押さえる」
なんだか、逃亡犯を追い詰める刑事になった気分だ。
密着24時みたいなドキュメンタリーで見た気がする。
「未来視で、安藤くんと出会う時間と場所を予め知っておくんだよね」
「そう、そこを裏からパシャリッと」
スマホのカメラ機能で床を撮ってみせた。
「でも、また襲ってくるかな。今度は、打撲だけじゃ済まないかもしれない。一度ヒートアップしたら、もう止まらないかも」
背筋が凍るような不安に駆られる。絶望感が波の如く押し寄せて、ぐわんぐわんと脳が揺さぶられていく。学校に行くのが嫌になる、怖くなる。
「そうさせない為に私がいるんだよ」
あれ……女神ですか?
誰よりも頼りになる言葉だ。
今なら宗教勧誘されても、涙を流しながらサインする自信があるね。結愛の後ろから神々しい光を幻視した。
「特に安藤くんを追い詰められそうなネタはないかな」
「あ、それなら安藤くん。ポケットにタバコの入れ箱を隠してたんだ。ちょうどそれをぼくが見ちゃって」
「彼は悪の大魔神にでもなるつもりなの? どうしてこうポンポンと悪事が見つかるのよ」
ぼくに聞かれても困るんですよ。
物語以外で絶対悪ってそうそう居ない気がするけど、安藤くんは正直に言って悪の権化みたいな奴だ。どんな処罰を受け、悲惨な末路を辿ろうと、同情する気がしないね。
「この調子だと近いうちに窃盗とか飲酒とかやりそう」
「じゃあそれも引っ括めて全部の証拠を掴みにいく。これは決定事項、準備出来た、悠斗!?」
「お、おーう?」
という訳で、早速復讐劇が幕を開けた!
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