Night Sky

九十九光

文字の大きさ
上 下
375 / 379

壊せ 予定調和の未来をー14

しおりを挟む
「秋晴さん」

 後ろから聞き慣れた声がする。小麦が振り返ると、そこには遊大を除いた第一部隊のメンバー11人がいた。

「みんな、何が起きたか説明し」

 小麦がそう言いかけた瞬間、全員が小麦に抱きついてきた。

「勝ったんだよ、俺たちは! 望んだ世界を手に入れられたんだよ!」

 王子が簡潔に説明する。

「勝ったって……。あの状況からどうやって」

「細かいことは気にするな。中に入ろう。寒いだろ」

 大樹に促されるまま、小麦は11人とともに寮に入る。

 そこで小麦は思い知らされた。

 戦いはまだ終わっていないことを。

 部屋の内装はすべて肉などでできていた。壁紙の代わりに剥がされた人間の皮が貼られ、椅子やテーブルの骨組みは文字通り人骨が使われ、クッション代わりに肉の塊が使われていた。

「こ、これは……!」

「料理できてんぞ。シチューだ」

 颯天が厨房から持ってきた寸胴鍋には、人間の頭が丸ごと一つ盛られたシチューが入っていた。

 それら気持ちの悪い光景を見て、思わずその場にうずくまって嘔吐する小麦。汚れた人の皮でできた床は、光がさっさと拭いた。

「早くご飯にしようよ! 戦勝記念にさ!」

 信也が皿にシチューを取り分け、頭をトングで取り出して包丁で解体し出す。

「おい、ベロは俺が食うからな」

「じゃあ顎回りの肉はもらっていい?」

「脳はどうするー? やっぱり均等に分けるー?」

 和気あいあいとした会話をする一同。それに置いてかれている小麦は、全員の目に生気がないことに気がついた。

 遊大が見せている幻覚なのは確かだった。

「許せない……」

「え? 今なんて?」

 小麦の呟きに他の面々が反応する。

「どうせみんなにも、こんな感じにひどい幻覚を見せてるんでしょ……。そうやって降参と言わせるつもりなんでしょ……。私はそれが……!」

 小麦が手を叩くと、植物の小麦でできた巨大な怪物が出現する。

「……! 秋晴さん、どうしてユニゾンが」

「許せない!」

 怪物が床を殴りつけると、ガラスが割れる音とともに小麦は、幻覚を見せるガラス状のボックスから解放された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

異世界で農業を -異世界編-

半道海豚
SF
地球温暖化が進んだ近未来のお話しです。世界は食糧難に陥っていますが、日本はどうにか食糧の確保に成功しています。しかし、その裏で、食糧マフィアが暗躍。誰もが食費の高騰に悩み、危機に陥っています。 そんな世界で自給自足で乗り越えようとした男性がいました。彼は農地を作るため、祖先が残した管理されていない荒れた山に戻ります。そして、異世界への通路を発見するのです。異常気象の元世界ではなく、気候が安定した異世界での農業に活路を見出そうとしますが、異世界は理不尽な封建制社会でした。

エイリアンチートで新人類に進化した俺は、異星文明で現代地球を開拓して南朝復活をめざします

大沢 雅紀
SF
人類(デモンズ)』に進化した勇人は、自分が日本の歴史の闇に消えていった南朝の正統後継者であったことをしり、財閥の力と異星人のオーバーテクノロジーを使って海洋に新たな国の建設を目指す。しかし、やがて人類の亜種である亜人類たちとの争いに巻き込まれていくのだった。やがて高麗半島の北を支配する北句麗王国、南を支配する大韓朝国との闘いを経て、人類を裏から支配する存在に挑む勇人達は、自分達知的生物の存在意義と文明の意味を知っていく。人類進化と文明をテーマにしたSFファンタジー

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

新事記ミカド・ミライ

今田勝手
SF
西暦2118年、世界から旧人類が絶滅して30年が経った頃の話。 男子高校生の日向雅は山の中で不思議な力を使う少女を助ける。精密検査の結果、彼女は絶滅したはずの旧人類であることが発覚する。この物語は、いつか来るかもしれない未来を描いたオカルティックアクションである。

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています

もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。 使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

七人の執行者ー執行者の名を以てー

Yuto_Miyake
SF
気づいたら自分の知らないところにいた和中隼人。隼人はそこである男に会う。男から「次は君の番だ。世界の均衡を保て。それが君の使命だ」と言われ、リボルバーを授けられる。そこから数日後、隼人が通う高校に転校生が来た。しかし、その転校生はただの転校生ではなく、授けられたリボルバーに関して知っている少女だった。その少女とともに国家を揺るがす組織の行動を阻止し、弾圧するため行動を始める。

処理中です...