Night Sky

九十九光

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壊せ 予定調和の未来をー14

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「秋晴さん」

 後ろから聞き慣れた声がする。小麦が振り返ると、そこには遊大を除いた第一部隊のメンバー11人がいた。

「みんな、何が起きたか説明し」

 小麦がそう言いかけた瞬間、全員が小麦に抱きついてきた。

「勝ったんだよ、俺たちは! 望んだ世界を手に入れられたんだよ!」

 王子が簡潔に説明する。

「勝ったって……。あの状況からどうやって」

「細かいことは気にするな。中に入ろう。寒いだろ」

 大樹に促されるまま、小麦は11人とともに寮に入る。

 そこで小麦は思い知らされた。

 戦いはまだ終わっていないことを。

 部屋の内装はすべて肉などでできていた。壁紙の代わりに剥がされた人間の皮が貼られ、椅子やテーブルの骨組みは文字通り人骨が使われ、クッション代わりに肉の塊が使われていた。

「こ、これは……!」

「料理できてんぞ。シチューだ」

 颯天が厨房から持ってきた寸胴鍋には、人間の頭が丸ごと一つ盛られたシチューが入っていた。

 それら気持ちの悪い光景を見て、思わずその場にうずくまって嘔吐する小麦。汚れた人の皮でできた床は、光がさっさと拭いた。

「早くご飯にしようよ! 戦勝記念にさ!」

 信也が皿にシチューを取り分け、頭をトングで取り出して包丁で解体し出す。

「おい、ベロは俺が食うからな」

「じゃあ顎回りの肉はもらっていい?」

「脳はどうするー? やっぱり均等に分けるー?」

 和気あいあいとした会話をする一同。それに置いてかれている小麦は、全員の目に生気がないことに気がついた。

 遊大が見せている幻覚なのは確かだった。

「許せない……」

「え? 今なんて?」

 小麦の呟きに他の面々が反応する。

「どうせみんなにも、こんな感じにひどい幻覚を見せてるんでしょ……。そうやって降参と言わせるつもりなんでしょ……。私はそれが……!」

 小麦が手を叩くと、植物の小麦でできた巨大な怪物が出現する。

「……! 秋晴さん、どうしてユニゾンが」

「許せない!」

 怪物が床を殴りつけると、ガラスが割れる音とともに小麦は、幻覚を見せるガラス状のボックスから解放された。
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