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爪噛む悪い癖 今更止めても意味ないじゃんー4
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『空太! 空太! まだお夕食はできあがらないのかい! お客様に見せれない異形ユニゾンなんだから、裏方の仕事くらいテキパキこなしなさい! 』
『爪紙女将の息子さん、かわいそうよね。異形ユニゾンに生まれるなんて。第一子で旅館の跡取りになれたかもなのに、異形だったせいで全部パーだもの』
『うわ~! ランドセルが宙に浮いてるぞ~! お化けだお化けだ~! 塩まけ塩まけ~!』
『こんばんは~。ホラー系YouTuberの九十九です~。今日泊まってるこの旅館、夜になると服しか見えない幽霊が出るということなんで、取材しに来ました~』
『それはさぞつらかっただろうね。異形ユニゾンに生まれたせいで、一番愛してくれるはずの母親からも見放されるなんて。でもこの僕、シャルルはそんな真似しない。君が輝くのはあんな寂れた田舎の旅館じゃない。僕の手を取って』
唐突にレーザーの反射がなくなった。最初の10秒ほどはサロモンの奇襲を警戒する光だったが、それもなさそうだった。それより許容オーバーのレーザーを撃ったことによる手のやけどのほうが気になった。
*
「死ね」
「死んじゃえ」
「今すぐ降参しちゃえ」
下田通りの大通りでは、人陰がテュルパンの精神攻撃に苦しんでいた。人陰は路上で丸くうずくまり、涙を流していた。
「もうかれこれ何十分経ったと思ってんだよぉ! いい加減降参しろよぉ!」
テュルパンは情けない言いぐさで人陰を説得する。それでも人陰は丸くなるだけで降参のこの字も言わない。
「それともなんだぁ!? 怖すぎて降参の4文字も言えないのかぁ!? だったらもうすぐ幻聴が治まるリミットだから、てめえの本心を聞いてるよぉ!」
テュルパンは制限時間で幻聴が切れた人陰をしばらく放置してみる。
すると人陰はゆっくりと立ち上がり、袖で涙を拭きながらこう言った。
「本当に怖いのは、俺だけがいなくなることだ。他のみんなは必ず最後まで食らいついて十二使徒を倒す。そうして遊大との対面が始まった時に俺だけがいない瞬間が来たら、その時初めて俺は見捨てられる。お前が遊大に捨てられるのを恐れてるように! 俺はみんなに捨てられるのが怖いんだ! だから何をされても耐えてみせる!」
『爪紙女将の息子さん、かわいそうよね。異形ユニゾンに生まれるなんて。第一子で旅館の跡取りになれたかもなのに、異形だったせいで全部パーだもの』
『うわ~! ランドセルが宙に浮いてるぞ~! お化けだお化けだ~! 塩まけ塩まけ~!』
『こんばんは~。ホラー系YouTuberの九十九です~。今日泊まってるこの旅館、夜になると服しか見えない幽霊が出るということなんで、取材しに来ました~』
『それはさぞつらかっただろうね。異形ユニゾンに生まれたせいで、一番愛してくれるはずの母親からも見放されるなんて。でもこの僕、シャルルはそんな真似しない。君が輝くのはあんな寂れた田舎の旅館じゃない。僕の手を取って』
唐突にレーザーの反射がなくなった。最初の10秒ほどはサロモンの奇襲を警戒する光だったが、それもなさそうだった。それより許容オーバーのレーザーを撃ったことによる手のやけどのほうが気になった。
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「死ね」
「死んじゃえ」
「今すぐ降参しちゃえ」
下田通りの大通りでは、人陰がテュルパンの精神攻撃に苦しんでいた。人陰は路上で丸くうずくまり、涙を流していた。
「もうかれこれ何十分経ったと思ってんだよぉ! いい加減降参しろよぉ!」
テュルパンは情けない言いぐさで人陰を説得する。それでも人陰は丸くなるだけで降参のこの字も言わない。
「それともなんだぁ!? 怖すぎて降参の4文字も言えないのかぁ!? だったらもうすぐ幻聴が治まるリミットだから、てめえの本心を聞いてるよぉ!」
テュルパンは制限時間で幻聴が切れた人陰をしばらく放置してみる。
すると人陰はゆっくりと立ち上がり、袖で涙を拭きながらこう言った。
「本当に怖いのは、俺だけがいなくなることだ。他のみんなは必ず最後まで食らいついて十二使徒を倒す。そうして遊大との対面が始まった時に俺だけがいない瞬間が来たら、その時初めて俺は見捨てられる。お前が遊大に捨てられるのを恐れてるように! 俺はみんなに捨てられるのが怖いんだ! だから何をされても耐えてみせる!」
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