Night Sky

おっきいね おっきいね 夢 おっきいね おっきいねー３

　雨はやがて包丁から手を離し、ふらふらと後方に２、３歩下がる。そして仰向けに倒れ込んだ。すでに自分が出す声すら聞こえない状態だった。

　それと同時にオジェも尻餅をついた。息は荒く、今にも事切れそうな状態だった。失血死を少しでも遅らせるため、腹に刺さった包丁は抜かない。あとは自分の残りの寿命までに雨か光のどちらかが敗北宣言すれば、最低限の仕事はしたと言えるだろう。オジェはそう考えながら雨をじっと見ていた。

　その時だった。

　雨は地面に潜ったのだ。

　五感を奪われた状態で精密な動作を要求されるユニゾンを使う？　いや、使えるわけがない。オジェは行動に移ろうにも、移れなかった。

　そして次の瞬間、雨がオジェの真正面の床から出てきて包丁の柄を掴んだ。すでにオジェにはこれに抵抗する力は残っていない。

「さっきお前、俺がどうやってお前の位置を特定してるかって疑問に思ったよな……！」

　顔を出した雨が、刃を上に向け、飛び上がる要領で刃を動かす。

「長年で培った勘だよ！　五感なんか関係ねえ！」

　刃が上がってくる瞬間、オジェの頭の中を知らない記憶が駆け巡る。

『妬増間練君……。触れた人間のユニゾンをコピーできるユニゾンか……。その場の状況に適切なユニゾンが毎回使えるとは限らない。ここまで状況を選びすぎると、兵士になれるユニゾンじゃないね』

『間練？　また夜遅くまでタブレットでなんの動画見てるの？』

『お母さん……。兵士ってカッコいいよね……。どんなに困ってる人でも必ず助けるんだから……。僕も、なりたかったなぁ……』

『妬増君。またケンカを止めようとしたんだってね。その気持ちは大事だよ。でも君のユニゾンは争いを止めるのには向いていないんだ。無理してケガでもしたら大変だから、今度からは先生を呼ぶようにしようね』

『おい、また妬増が来やがったぜ』

『カツアゲしようとするとほぼ必ず出てくるんだ。兵士適正なしのザコのくせに』

『こっちは兵士適正ありが４人だぜ？　ケガしたくなかったらとっとと失せろ、外れユニゾン』

『誰の……！　ユニゾンが……！　外れだって……！　ただ力を振るうお前らとは違って……！　こっちにはよくできたおつむがあるんだよ……！　この通り……！　お前ら４人ぶち殺すなんて……！　どうってことないんだぜ……！』

『それで４人殺して今は少年院と。君のユニゾンは素晴らしい。このまま犯罪者のレッテルを張られたまま生きるなんてもったいない。ユニゾン革命隊に来たらどうだい？　僕らは君のような行き場のない人間を救うための存在だ。君は兵士を越えた戦士になれる』