Night Sky

九十九光

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「全肯定」に酔ってる勇者に反吐が出たー14

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「まだ戦う気ですか~? あきれた人たちですね~」

 それを背後から、首から下を歯車にしたジラールが覗き込む。大樹は反射的に肘でジラールの顔を叩こうとする。それをジラールは大量の歯車を盾にして受け止めた。

「痛いですね~。歯車の状態でも痛覚はあるんですから~」

 ジラールが空中を浮遊しながら距離を取る。それを追おうと大樹が足を踏み出そうとした時だった。

 ジャリンという金属音がし、右足の動きが鈍る。大樹が確認すると、鎖の先にボウリング玉大の大きさの鉄球が繋がった足かせがついていた。

「これが貴様の第2のユニゾンか!」

 4本の腕の1つで鉄球を持ち、大樹がジラールに向かって走り出す。

「その通り。愛のない人には罰を与える。それが私のユニゾンです」

《ピリポのジラール 本名:同家喜界 ユニゾン名:カラクリ・ピエロ……自身の体を最大100個の金属製の歯車にできる。 第二のユニゾン名:ラブ・トライアル……相手から受けたダメージに応じて、相手を拘束する器具が発生する。ダメージが大きければ大きいほど、拘束はより厳しく、固いものになっていく。》



 その頃、ビル内のトイレの個室に逃げ込んだ小麦は、LINE上で行われている、まったく的を得ていない会話に困惑していた。

(私たち12人の居場所を聞いただけなのに、どうしてここまで話がこんがらがってるんだろう。最初に誤字ったのは私だけど、別にそこから煮るとか餅とかに繋がるとも思えない。みんな頭いいんだから意味くらい汲んでもよさげなのに)

 どうしてこんなことになっているのか。じっと画面を見つめる小麦。そこにカツカツという、ゆっくりとした足音がする。

 アストルフォが来た。

 画面の明かりでバレないように、小麦は慌ててスマホの画面を落とす。すべての個室のドアは自動的に閉まる形のドアとなっている。仮に総当たりで探しに来たのなら、ドアを開けた瞬間植物の小麦を出して拘束する。そう思いながら小麦は便座の上に腰を屈めて立ち、手を叩く準備をする。
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