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九十九光

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「全肯定」に酔ってる勇者に反吐が出たー12

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 易々とへこむ盾を見て、退くことしかできない王子。結局は盾も棒も放してしまい、ぬいぐるみコーナーに叩きつけられた。

「……! これなら!」

 王子はフロリマールとの距離を取り、強化プラスチックと合成ゴムの即席の弓矢を作り出す。それでフロリマールを射ぬこうとしたその時だった。

 ぬいぐるみコーナーにあったマンモスやクマ、グレイ型宇宙人などのぬいぐるみが一斉に動き出し、王子に襲いかかったのだ。

 王子は慌てて宇宙人に弓を射るが、マンモスとクマが体当たりをしてくる。その威力は本物そのもの。王子は遠くのミニカー、プラレールコーナーまで飛ばされた。

 2つ餅じゃなくて2つ持ち。ぬいぐるみを操るユニゾンでも付け加えられたのか。

 王子がそう考えた次の瞬間。プラレールやミニカーが、ジオラマケースや紙の箱を突き破って出てきて体当たりをしてきた。その威力も本物さながら。王子は骨や内蔵にダメージがくるのを実感した。

「漢だろ? 俺だってこんな汚ねえ手で勝ちたかねえ! 間合いとらねえで正面からぶつかってこいよ!」

《大ヤコブのフロリマール 本名:半田球次郎 ユニゾン名:パンダヒーロー……ジャイアントパンダの力が身につく。クマ科特有の凶暴性とパワーを持つ。 第二のユニゾン名:フォニイ……造花、人形、プラモデルなどを、大きさはそのまま、本物同様の出力にして操れる。》

 とりあえずユニゾン2つ持ちだという情報だけでも伝えないと。

 そう考えた王子はスマホでメッセージを送る。

『餅じゃなくて持ちだ 俺は今デパートでパンダと高専中』

 このメッセージを真っ先に受け取ったのは、ターミナル地下街、公衆トイレ内にてサロモンと交戦中の風雅だった。

(高専中? とりあえずこれで敵はユニゾン2つ持ちだってのは分かったが……。この文面、まだ何かあるのか?)

 サロモンに早々に全裸になられたせいで彼を見失い、風雅は誤字を深読みする余裕ができた。

 そこにドアの空いている個室の便器から、陶器を叩く音がする。

 誘っているのか。

 風雅は掃除用具入れのドアを裏拳で破壊し、デッキブラシを1本持って問題の個室を確認する。
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