Night Sky

九十九光

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「全肯定」に酔ってる勇者に反吐が出たー3

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「そうか……。みんななら気に入ってくれると思ったんだけどな。笑顔と幸せで溢れたこの世界」

「俺たちの会話を聞いたのなら分かるだろ? こんな世界は理想郷なんかじゃないと」

 文活が説得するように語りかける。

「……。誰がなんと言おうと、僕はこの世界を理想郷だと思ってる。苦しみも悲しみも、差別も争いもない。笑顔と幸せで満ち溢れた世界。前の世界で凄惨な死を遂げたみんななら、気に入ると思ってたんだけどね」

「こんなクソみたいな世界をか? 規制たっぷりになった日本アニメの海外版以下の世界をか?」

 光が吐き捨てるように言った。

「……。この世界をそんな風に思ってるのは君たち12人だけだよ。みんなはすでに多数決で負けたんだ。国政選挙なら国会で意見も言えない立場にある」

「何が多数決だ! お前が世界中の人の思考をお前好みにして票を集めただけだろ!」

 王子が叫ぶ。

「……。この世界じゃ幸福なのは義務なんだ。笑顔でいるのは当然なんだ。それが守れないなら矯正するしかない」

 そう言うと遊大は再び指を鳴らす。すると彼の両脇に6つずつ、計12の泥状の塊が出現した。旧世界でシャルルが開発したワープゲートだった。

 そこから一人ずつ、計12人、赤と黒の十字架があしらわれたフードつきのマントを羽織った人物が現れる。

「彼彼女らは使徒。旧世界でシャルルや灰色以下とはいえ罪を犯した者たちだ。これからみんなには、彼彼女らと戦ってもらう。戦場は僕のいる地点から半径10キロ圏内だ。ただし、使徒はこの世界をイレギュラーから守る存在。旧世界の時より強力に仕上げてある。このまま戦ったらみんなは5分と持たずに全滅だ。そこで特別ハンデとして、みんなは死に直結する傷を負ってもすぐにそれが再生し、死なないものとする。ただし痛みやしびれはそのままだ。この条件ですべての使徒を倒したら、僕と戦う権利をあげる」

「待ってください、夜空君! 私たちは戦いに来たんじゃないんです! 話し合いがしたくて来たん」

「話し合いならもう充分した。でも平行線だったでしょ? 八脚さん」
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