Night Sky

僕らの革命前夜ー13

「俺もだ。俺の夢は日本で初めて、異形型ユニゾンで特級兵士になること。基本それしか考えていなかった。その夢を奪われた今、俺は何を糧に生きればいい。少なくともほしいものがなんの苦労もなく手に入るこの世界を、俺は理想郷だなんて思えない」

　続いて風雅が口を開いた。

「僕の父さん、一度うつになって転職してるんだよね。パチンコホールに勤めて、そこでうつになって、工場関係の仕事に就いた。ホールで常に笑うのがつらかったそうだ。笑うことを考えるだけでつらい気持ちになるそうだ。つらい時こそ笑えなんて、傷口にツバつけるくらいの民間療法さ。つらい時に泣けない世界なんて、そもそもつらいという感情すら抱けない世界なんて、理想郷じゃない」

　光が口を開いた。

「クレヨンしんちゃんの……、いつの映画だっけな。この世界とほぼまんまの世界になるって話があったんだよ。野原家はみんな俺らと同じ反応をして、気味悪がってたよ。酸いも甘いもあるから世界は面白いんだ。今日歌った歌でそれを認識できたよ」

　雨が口を開いた。

「みんなの気持ち、充分分かるよ。身を粉にして訓練して、脳ミソ蒸発するかもってレベルで知識詰め込んで、そのあとにみんなで飯食って、男子みんなで風呂入って、自分の部屋で泥のように寝る。前半部分が欠けて後半だけになっても、それは幸せとは言わないんだ」

　太陽が口を開いた。

「エロ本の知識で悪いんだけどよ。いつかネットで見たエロ同人のセリフで、幸せの中にいるとバッドエンドを見たくなるって感じのがあったんだよ。今まさにその気持ち。こんな幸せしかない世界、一刻も早く出たい」

　信也が口を開いた。

「確かに僕も、この世界は気持ち悪いと思ってた。でも遊大君が望むならそれも仕方ないかと、半分考えてた。でもみんなの言葉を聞いたら吹っ切れたよ。この世界は理想郷じゃない。薄気味悪い笑顔と上っ面だけの幸せでデコった、甘ったるいケーキみたいな世界だ」