Night Sky

九十九光

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かなしみのなみにおぼれるー6

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「長年のよしみで全員一瞬で殺してやろうと思ったんだけどね」

 格下相手に余裕を見せる仁は、気が変わった旨を伝える。

「抵抗するなら一人ずつ消してやる。カスユニゾンの悪魔の民族に生まれたことを後悔させてやる」

 物理攻撃は無意味。連携で放った拡散攻撃も裏目に出た。時間稼ぎができるかどうかすら怪しいと感じ、黙り込む一同。しかし颯天は饒舌だった。

「あの燃えカス野郎は、さわったものを灰にできる能力を隠してた。だがそれはおそらく無生物限定。生き物にも使えるんなら、真っ先に俺らを灰にしていた。俺らにできることは、コイツがよそに行かないようにできるだけここに釘付けにしておくことくらい。だが残った面子で何ができるかと言われりゃ……。」

 小麦たちは知っていた。どうしようもない状態に陥った時、颯天は思ったことを口にし続ける癖があることを。

 一番冷静そうな人間がこの様。信也は自分が動かなければという、無根虚無計画な衝動に駆り立てられた。

 周囲を見渡す信也。そして一台の乗り捨てられた薄緑の車を後方に見つけた。

「みんな! 後ろの薄緑の車に乗って!」

 信也はそう言いながら仁に向かって突っ込んでいく。

「信也!?」

「何する気だショタホモ!」

 風雅と颯天が呼び止めるが、信也は止まらない。やけになったかと感じた仁は、両手を残して全身を灰にする。

 先程の連携作戦の時に、灰の一部でも引っ掻けばすべての灰が動きを遅くすることを知った信也。彼は迷わず灰の中で爪を振り回した。

 それで彼のやりたいことを悟った小麦は、残りの2人に車に乗るよう指示し、エンジンをかける。

 その間に、仁は残していた手で信也のガスマスクにさわろうとする。だが動きが遅すぎてすべて信也にかわされる。信也は絶えず灰を引っ掻き続け、仁の移動速度低下時間を延ばし続ける。

 その間に、3人を乗せた車はその場を離れていった。

 互いに決定打はない。捨て身の覚悟で3人を逃がすつもりか。

 そう察した仁は、ゆっくりと片手をアスファルトに近づける。目の前を飛び交う灰に必死な信也は、それに気づけないでいた。
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