Night Sky

僕ら 今、敬礼の合図をとり 三流映画の主役に成り下がったー15

「お二人とも……！　生き返ったって認識でいいんですね……！　それでいいんですね……！」

「ああ、その認識が正解だ」

　光が呟く。その次の瞬間だった。

　光と文活が糸美の肩に食らいついた。糸美は激痛に顔を歪めた。

「な、何を！」

「ここはこの世とあの世の境目。俺らが生き返るには人間の生きた血肉が必要なんだよ」

「俺たちに生き返ってほしいんだろ？　だったら犠牲になってくれよ、八脚」

「……！　待ってください！　お二人とも！」

　肩を食いちぎられ、二の腕や脇腹を噛まれる糸美はそのまま急な坂を転がり落ちる。坂は舗装が一部ボロボロになっているため、転がるだけでダメージになる。

「やめ……！　やめて！　考え直して！」

「優しいお前なら俺たちの生け贄になってくれるよなぁ!?」

「イヤァァァァァ！」

　そして現実では、糸美の運転する車は街路樹に激突してボンネットから煙を出していた。

「八脚さん！　どうしたの、八脚さん！」

　糸美は両目から涙を流しており、体の各部位を欠損し、全身を打撲した状態で死んでいた。

「ロンリーガールハイツマデモ……。届カナイ夢見テ……」

　それをビルの隙間から１体のロイドが見ていた。

《ロイド番号：vnw8zURAxkU　素体名：騒頭転(ソウトウ　テン)　ユニゾン名：ローリンガール……対象を眠らせ、登り坂の上に望むものがある夢を見せる。坂を上がって望むものにふれると、それに襲われる。夢の中で負ったダメージや状態は現実の肉体に反映される。》

『夜空君。聞こえてますか』

　遊大の視界が再び鳥籠の中に変わる。目の前には糸美がいた。

『これで試練は』

「いい加減にしてくれよ！」

　遊大が自分の太ももを拳で殴る。

「これで半分だ！　こんな辛い経験まだあと６回繰り返せって言うのか！」

　遊大は自暴自棄になっていた。出撃してまだ２時間。この短時間で４人を失えばこうなっても仕方がなかった。

『落ち着いて。今は有事。これは仕方のない話です』

　糸美は諭すように遊大をたしなめる。

『基本、失ったものは帰ってこない。私はそれが分かっていたはずなのに、そんな夢を見て足を掬われた。でもあなたは違う。失ったものはすべて帰ってくる。それを糧にこの先の試練にも耐えてほしい。……』