Night Sky

九十九光

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明日の準備はまだできてないからー4

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 4日目。この日は事前の天気予報通り雨だった。遊大が洗面所の鏡に向かって髪の毛の白い部分をいじっていると、そこに糸美が入ってきた。

「夜空君! ちょっといいですか!?」

 慌てている様子の彼女に尋常じゃない何かを感じた遊大は、手を引かれるまま玄関口につれられた。

 そこにいたのは佰年支部長と、彼女に抱き抱えられている濡れた子猫だった。

「第六グラウンドの隅の方で見つかってのぉ。どうやら右の後ろ足をケガしとるらしい。夜空、治してやってくれ」

 なんだそんなことかと内心思った遊大は、時間逆行でケガを治すため子猫に触れようとする。すると子猫はシャーという威嚇の声を上げ、爪の尖った手を振るう。

「やはり野性動物。人間にさわられるのは抵抗ありますか」

 糸美が感想を述べるが、さわらなければ治せないことを知っている遊大はもう一度挑戦する。今度は左手で顎を、右手で頭を撫でるように触れようとする。

 すると子猫は遊大の左手人差し指に噛みついた。佰年と糸美がビクッとする。

「大丈夫です。こういうことができるなら、大して弱ってない証拠です」

 小さい頃からケガをした猫や角の折れたカブトムシを治してきた遊大にとって、この程度の触れ合いは慣れていた。彼は空いた右手で猫の頭を撫でながら、ケガをする前の状態に時間逆行させる。

「八脚さん、使わなくなったタオル持ってきてくれますか?」

 遊大は指を噛まれたまま糸美に指示を出す。彼女がそれに従い、タオルを持ってきた頃には、子猫は遊大の指を放していた。

「とりあえず多忙なわしにはコイツの世話はできん。保護団体に連絡して、引き取ってもらう」

 佰年はそう言いながら、タオルで子猫の体を拭いていた。

 5日目。昼過ぎに第一部隊に客がやって来た。有名なシュークリーム専門店の紙袋を持った得星玉玲だった。

「お久しぶりですねー、皆さん。こちらもゴタゴタしててなかなか顔を出せなくてすいませーん」

 それを見て小麦がお茶を淹れに調理場へと消えた。
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