Night Sky

九十九光

文字の大きさ
上 下
206 / 379

you're never coming backー9

しおりを挟む
「国を滅ぼした期間が世に言う空白の10年だ……。そして当時たまたま存在した、全人類の記憶を改竄できるユニゾン持ちが、国の存在を人類の記憶から消した……」

「そん……な……、与太話……。信じ……ろ……と……」

 穂花の手からライターが滑り落ちる。リッチャルデットの後ろから、水のドームで身を守るオリヴィエがやって来た。

「もう彼女は有毒ガスの吸いすぎで虫の息です。あなたも同じ目に遇いたくなければ、早急にワープしてください」

 そう語る彼女の手にはスマホが握られており、ワープゲートが出てきていた。

「……。あばよ。憐れな国の被害者」

 リッチャルデットは息を引き取った穂花にそう言い残した。



 一方、関東支部に向かって飛んでいく遊大。埼玉県内は革命隊がワープで襲ってくる可能性があると独断で判断し、一番安全で信用できる場所へと向かっていた。時折後ろや真下を見て、追っ手が来ていないことを確認する。

 こうして東京と埼玉の境目辺りまで来た遊大。目標地点まであと少しだと思った、その時だった。

『聞こえているか、遊大』

 次の瞬間、遊大はベッドの上に座っていた。巨大な鳥籠の中、床におもちゃが散乱する、あの夢と同じ光景だった。

 目の前にいたのは文活だった。白いワイシャツに白い半ズボンという格好であり、まるで先ほど見た光との夢と重なって見えた。遊大の下半身が動かないことも同じだった。

「早乙女さん? どうしてここに? というかどうして僕今夢見てるんですか?」

『これは夢ではない。お前のユニゾンの中で起こっている現象に、俺とお前が巻き込まれているのだ』

 いまいち文活の言っていることが掴めない遊大。とにかくこれが夢ではないということだけが呑み込めた。

『お前はこれで、大事なものの2つ目を失った。だがそれは、お前が捕まったせいではない。なるべくしてなった結果だ。そしてこの程度で心を折ってはいけない。まだ試練は1/6を過ぎたところなのだからな』

 1/6。その言葉で遊大は何かを察し、文活に尋ねる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派
SF
『科学の魔女は、空色の髪をなびかせて宙を舞う』 高校を卒業後、亡くなった両親の後を継いで工場長となったニ十歳の女性――空鳥 隼《そらとり じゅん》 彼女は両親との思い出が詰まった工場を守るため、単身で経営を続けてはいたものの、その運営状況は火の車。残された借金さえも返せない。 それでも持ち前の知識で独自の商品開発を進め、なんとかこの状況からの脱出を図っていた。 そんなある日、隼は自身の開発物の影響で、スーパーパワーに目覚めてしまう。 その力は、隼にさらなる可能性を見出させ、その運命さえも大きく変えていく。 持ち前の科学知識を応用することで、世に魔法を再現することをも可能とした力。 その力をもってして、隼は日々空を駆け巡り、世のため人のためのヒーロー活動を始めることにした。 そしていつしか、彼女はこう呼ばれるようになる。 魔法の杖に腰かけて、大空を鳥のように舞う【空色の魔女】と。 ※この作品の科学知識云々はフィクションです。参考にしないでください。 ※ノベルアッププラス様での連載分を後追いで公開いたします。 ※2022/10/25 完結まで投稿しました。

オンライン・メモリーズ ~VRMMOの世界に閉じ込められた。内気な小学生の女の子が頑張るダークファンタジー~

北条氏成
SF
 黒髪ロングに紫色の瞳で個性もなく自己主張も少なく、本来ならば物語で取り上げられることもないモブキャラ程度の存在感しかない女の子。  登校時の出来事に教室を思わず飛び出した内気な小学4年生『夜空 星』はズル休みをしたその日に、街で不思議な男性からゲームのハードであるブレスレットを渡され、世界的に人気のVRMMOゲーム【FREEDOM】を始めることになる。  しかし、ゲーム開始したその日に謎の組織『シルバーウルフ』の陰謀によって、星はゲームの世界に閉じ込められてしまう。 凄腕のプレイヤー達に囲まれ、日々自分の力の無さに悶々としていた星が湖で伝説の聖剣『エクスカリバー』を手にしたことで、彼女を取り巻く状況が目まぐるしく変わっていく……。 ※感想など書いて頂ければ、モチベーションに繋がります!※ 表紙の画像はAIによって作りました。なので少しおかしい部分もあると思います。一応、主人公の女の子のイメージ像です!

グールムーンワールド

神坂 セイ
SF
 佐々木 セイ 27歳、しがないサラリーマンで4人兄妹の長男。  ある暑い日の夜、コンビニに向かう途中で光に包まれた!  気が付くと、大勢のゾンビと戦う少女たちと出会うが、みんな剣と魔法、銃もありありで戦ってる??  近未来転移SFバトルサバイバル!  これは1人の青年が荒廃した未来に転移し、グールと呼ばれる怪物たちと闘いながら、少しずつ成長して元の時代への戻り方を探し強くなっていく物語。  成り上がり最強と兄弟愛。  ※一歩ずつ着実に強くなり成長しながら、最強になる物語です。  覚醒などは極力ないような展開の物語です。  話の展開はゆっくりめです。

狂気の姫君〜妾の娘だと虐げられますがぶっ飛んだ発想でざまぁしてやる話〜

abang
恋愛
国王の不貞で出来た、望まれぬ子であるアテ・マキシマは真っ白な肌に殆ど白髪に近いブロンドの毛先は何故かいつも淡い桃色に染まる。 美しい容姿に、頭脳明晰、魔法完璧、踊り子で戦闘民族であった母の血統でしなやかな体術はまるで舞のようである。 完璧なプリンセスに見える彼女は… ただちょっとだけ……クレイジー!?!? 「あぁこれ?妾の娘だとワインをかけられたの。ちょうど白より赤のドレスがいいなぁって思ってたから。え?なんではしたないの?じゃ、アンタ達もかぶってみる?結構いいよ。流行るかも。」 巷で噂のクレイジープリンセス、父もお手上げ。 教育以外を放置されて育った彼女は、常識の欠落が著しかった。 品行方正な妹はあの手この手でアテを貶めるが… 「シャーロット?いい子なんじゃない?」 快活な笑みで相手にもされずイライラするばかり。 貴族の常識!? 人間らしさ!? 「何言ってんのか、わかんない。アンタ。」 子供とお年寄りに弱くて、動物が好きなクレイジープリンセス。 そんな彼女に突然訪れる初恋とプリンセスとしての生き残りサバイバル。 「んーかいかんっ!」

アンドロイドちゃんねる

kurobusi
SF
 文明が滅ぶよりはるか前。  ある一人の人物によって生み出された 金属とプラスチックそして人の願望から構築された存在。  アンドロイドさんの使命はただ一つ。  【マスターに寄り添い最大の利益をもたらすこと】  そんなアンドロイドさん達が互いの通信機能を用いてマスター由来の惚気話を取り留めなく話したり  未だにマスターが見つからない機体同士で愚痴を言い合ったり  機体の不調を相談し合ったりする そんなお話です  

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

復讐に燃えたところで身体は燃え尽きて鋼になり果てた。~とある傭兵に復讐しようと傭兵になってみたら実は全部仕組まれていた件

坂樋戸伊(さかつうといさ)
SF
平凡なシティの一市民として人生を送っていたはずだった杉屋 亮平の人生は、その日を境に一変した。 とある傭兵が平和を享受していただけのシティにおいてテロ行為を起こし、亮平は家族、友人、そして日常の全てを蹂躙された。 復讐を果たすための手段を模索していた亮平に、アリス=R=ルミナリスが接近。亮平のコーチング、マネジメントをすると 持ちかけられ、亮平はこれを了承。彼は自分から平穏を奪った傭兵を倒すべく、自分もFAV-汎用戦闘歩行車両-を使い、 そして復讐を果たすことを誓う。 しかし、それはある思惑によって引き起こされたことを彼は全く知らず、悪鬼羅刹に変わっていくのであった。 他方、市街地襲撃の依頼を受けた傭兵、荒川 尊史は、自分が傭兵であることに意味を見失っていた。 周りの物を何も見ず、頼らず、ただただ無為に時間を過ごし、怠惰に時間を過ごす日々。 見かねた女房役兼専属オペレーター、藤木 恵令奈が経済的な危機を訴えてきた。 そして、尊史と恵令奈は手ごろな依頼を受ける。 その依頼に眠る思惑がどういったものかも知らず。 交錯する幾つもの魂。 絡まり、もつれ合う彼らの運命の先に待つものは、悲願の達成なのか。 それとも、空虚な絶望か。 ※他小説投稿サイト(カクヨム様、小説家になろう様)にも投稿中

ヒューリアン 巨人の惑星

雨川 海(旧 つくね)
SF
繁栄を謳歌する人類に、冷や水を浴びせる事態が起こる。 突如、宇宙からエイリアンが攻めて来たのだ。昆虫型の完全生物は、頑強なカプセルに乗っていて、核兵器を含む既存の兵器が役に立たない。唯一の攻略法は、エイリアンが出入りする場所から乗り込む事で、それには、敵との肉弾戦を余儀なくされる。 対エイリアン用の近接格闘兵器として登場したのは、鋼殻体と呼ばれるパワードスーツだった。そして、パイロットとして選ばれたのは、工場作業員やコンビニ店員だった。 『物語』 近未来、火星の基地を襲った昆虫型エイリアンは、月まで侵略し、地球圏を脅かし、人類の存在を危うくしていた。 それに対抗するべく、国境や宗教の違いや人種を乗り越え、団結した人類は、地球連邦軍を強化し、戦いに備えていた。 日本でも、専守防衛とばかりは言っていられず、徴兵制が開始される。そんな中、下層労働者のハジメは、徴兵検査で鋼殻体への適性が認められ、パイロットとしての道を歩むことになる。 厳しい訓練を受け、心身共に成長したハジメは、初めて日本に襲来するエイリアンの方舟と対峙し、激戦に巻き込まれる! 一部のシーンで、複数視点から描く事により、立体的な表現を試みています。 『第二部』 第二部に入り、主人公はハジメから顕に代わります。 エイリアンの侵略から五十年後の地球に新たな火種が出現します。人類は、エイリアンの置き土産に亡ぼされるのか? それとも、新たな進化を遂げるのか? 『備考』 SF小説の傑作「宇宙の戦士」へのオマージュ作品です。 星屑の戦士たちへ 眼鏡女子に~のアレンジ作品になります。

処理中です...