Night Sky

Hip hip HOORAYー６

　遊大は１曲選択すると、お立ち台に上がってマイクスタンドの高さを調節する。そして遊大が入れた曲が流れた。

　ビートルズのYesterdayだった。

　マッカートニー曰く、癌で亡くなった母を想って歌った曲を、遊大は見事なハスキーボイスで歌った。英語の発音も完璧であり、聞き慣れた、歌い慣れたとしか思えないと花子は感じた。

　歌い終わった遊大に、花子が声をかける。

「この曲、1960年代の曲だよ？　なんで知ってるうえに歌えるの？」

「おばあちゃんが子守唄としてよく歌ってくれたんです。それで覚えて」

　ソファに戻った遊大は、一言述べる。

　またおばあちゃんかと思った花子は、興味本意で質問した。

「君、やたらとおばあちゃんっ子だね。どんな家庭だったの？」

　その質問に対して遊大は少し考えてから、残っていたジンジャーエールを飲み干し、こう答えた。

「僕んち、そこそこ貧乏で、両親も不仲だったんです。顔を合わせればしょっちゅう怒鳴り合ってて。僕の誕生日を祝ってくれる余裕もありませんでした。そんな中優しくしてくれたのが、同居するアイヌ直系の白弥(ビャクヤ)おばあちゃんだったんです。いつもそばにいてくれて、僕のユニゾンは人を笑顔にできるって言ってくれたり、寝る時には子守唄を歌ってくれたり。白弥おばあちゃんの言葉に背中を押される形で、兵士コースの初等部に入学したんです。この力で一人でも多くの人を笑顔にしたくて。でも周りの同級生たちは違ってました。いつ何が理由で退学になるか分からない中で、みんな他人を蹴落とし合ったり競い合ったりする関係でした。その上、みんなお金や地位、強い愛国心で兵士を目指していた。人を笑顔になんて理由で兵士を目指していたのは僕だけでした。時々迷いましたよ。兵士じゃなくて医者になって、国の許可取ってユニゾンを使って病気やケガを治す仕事をしたほうがいいんじゃないかって。そんな時に飛び級の話と、癌で白弥おばあちゃんが亡くなったって話が同時に舞い込んできた。そこでようやく吹っ切れたんです。おばあちゃんは間違ったことを言ってなかった。今の自分のまま兵士を目指していいんだって」