Night Sky

九十九光

文字の大きさ
上 下
135 / 379

ドキドキしたいじゃんか誰だってー2

しおりを挟む
 食い下がらない下級生2人にあきれる弔李。物欲の少ない彼女にはプレゼントも大したエサにはならなかった。

 だが人から頼られるというのは悪くなかった。空気のような存在で、特異なユニゾンを持っているということ以外秀でた能力もなかった彼女は、このように人に何かを頼まれるという経験が少なかった。

「……。別に報酬はいらない。今度の日曜、本当に一瞬だけ力を貸してあげる」



 同じ日の晩、遊大は夕食ができあがるのを待つ間、灰色仁が持ってきた『歴史は消えない』を読んでいた。

「その本、何周目だ」

 そこに早乙女文活が後ろから話しかける。

「今7週半です。いくら読んでもただのオカルト本ですけど」

 遊大は振り返って答え、こう続けた。

「でも何もないとは思えないじゃないですか。5人の特級兵士の一人がオススメする本ですよ。紙質とか怪しい部分も多いですし。何より鶯谷で対処したエッチなガスを撒く犯罪者。あの人もこの本を持っていた。100部も売れずに半世紀以上前に絶版になったこの本を」

 遊大は読み途中のページに指を挟んで表紙を文活に見せながら、何かの陰謀があると訴える。

「……。まあ、その気持ちは分からんでもない。俺もその本について、色々調べている途中だしな」

 文活はそう言ってスマホを取り出し、とある画面を見せた。掲示板サイトのスレッドの一つで、『歴史は消えないって本最近よく見るんだけど』というタイトルだった。

「内容を総括すると、全国各地でその本がかなり質のいい状態で見つかっているというものだ。自称古書店の店員が、状態のいいその本を50冊まとめて売りに来た客がいたと語るケース。自称警察官が、危険なユニゾン犯罪を犯した犯人宅の家宅捜索を行ったところ、非常に状態のいいその本を見つけたというケース。全国各地でその本が見つかっているという話が、ここ最近多く出ているのだ」

 文活の話を聞きながら、遊大は彼から受け取ったスマホでそのスレッドを確認する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最期の晩餐

ジャック
SF
少女死刑囚が望んだのは、ハンバーガーと珈琲。 管理社会での死刑執行を描いた短編です。 マク◯ナルドを食べて美味しかった感動を込めて。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

処理中です...