Night Sky

九十九光

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かつては無邪気に笑えた人ー8

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 壱軸のユニゾンの性質を見抜いた遊大は、食らいつこうとするエラスモサウルスの口を回避して、長い首の中間辺りに到達する。そのまま弱点である首に蹴りを入れようとしたその時だった。

 壱軸の長い首が一気に縮んだと思うと、彼の頭はトゲが多いトカゲの頭になった。

 むしろさっきより弱そうになった。

 遊大は急降下して壱軸に攻撃を仕掛けようをする。

 すると突然、壱軸の目から赤い液体が勢いよく飛んでくる。遊大はその液体をまともに両目に食らい、バランスと視界を奪われて地面に落下した。

 壱軸が変身したのは、北米から中南米に棲むツノトカゲの仲間。外敵を撃退するために自身の血を目から噴出する能力を持つトカゲだった。

「……! 遊大君!」

 車から人陰が飛び出し、ラストバトルを呼び出す。壱軸は自身に突っ込んできた影の怪物を巧みなバイクさばきで回避し、頭を別の生き物に変化させる。

 ラストバトルをかわされたのを見て、人陰は開かれた助手席のドアを盾にしながら、ラストバトルを近くに戻しつつ警戒する。壱軸のユニゾンが正面への攻撃に特化したものだと考えたための行動だった。

 しかし壱軸が変身したのは、長い首を特徴にしているキリンだった。キリンは群れの長を決める際、その首を振り回し、ぶつけ合って戦う生き物である。

 壱軸の首は側面から車もろとも人陰を吹き飛ばした。

「相……ボ……!」

 人陰が気を失ったことにより、ラストバトルは普通の影に戻る。失斗と信也はひっくり返った車内でもみくちゃになりながら、暴走族のしたっぱたちが高笑いするのを聞いていた。

「……! 藍枚さん、なんとかしてくださいよ!」

 泣きつく信也に失斗は「そうしたいのは山々なんだけどね」と答えた。

「私のユニゾンは最後のダメ押しで活きるユニゾン。敗北や恐怖のサインを見せてくれないと機能しないんだ。とりあえず私は増援を呼んで、西後君の救護にあたる。君は夜空君のフォローを」

 フォロー。つまり戦場に出ろということ。

 兵士候補生なら当然のことだが、今の信也にそんな勇気はなかった。車からは出たが、そこから先ができなかった。
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